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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 C23C |
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管理番号 | 1027484 |
異議申立番号 | 異議1999-74595 |
総通号数 | 16 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-12-07 |
確定日 | 2000-05-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2902586号「保護銀皮膜形成方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2902586号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2902586号(以下「本件特許」という。)は、平成7年12月11日(優先権主張 1994年12月9日 イギリス)に特許出願され、特許権の設定の登録がなされた後、特許異議申立人 田嶋順治より本件特許の請求項1に係る特許について特許異議の申立がなされたものである。 II.特許異議申立理由 特許異議申立人は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭60-100679号公報)、甲第2号証(特開昭63-114081号公報)及び甲第3号証(「金属表面技術」VOL.26 No.9(1975)第21〜25頁)を提出して、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であると主張している。 III.本件発明 本件発明1は、願書に添付した明細書及び図面(以下「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 導電性金属パッド及び/又は裸板のスルーホールからなる銅表面を有し且つ被覆しないままとされる非金属領域を含む基板に、銀イオンと、多座錯化剤と、水性ビヒクルに溶け込んでいる銀の変色防止剤からなるとともにpHが2〜12であって銀イオンを銀の金属へ還元可能な還元剤を含有しない水性置換めっき組成物を、前記銅表面と接触させて銅表面に銀被膜を形成する保護銀被膜形成方法。」 IV.証拠の記載事実 甲第1号証 (a)「硫酸銀とアミノカルボン酸類とを含有し、pHが6以上である化学めっき液を用いて金属材料を処理し、この金属材料表面に金属銀被膜を形成することを特徴とする銀被覆方法。」(特許請求の範囲第1項) (b)「本発明は安価な金属材料に銀を被覆する方法に関するものであり、更に詳しくは母体金属材料の酸化又は腐食を防止すると共に・・・導電性材料を得るための金属材料に対する銀被覆方法に関する。」(第1頁右下欄第6〜10行) (c)「アミノカルボン酸類としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)・・・・或いはこれらの塩等が挙げられ」(第2頁左下欄第15行〜右下欄第1行) (d)「本発明にあっては、上述しためっき液中に金属材料を浸漬し、この金属材料表面に置換めっき法により銀皮膜を形成するものであるが、ここで金属材料としては銅・・・これらの合金等、置換めっき可能な材質であればいかなるものでも使用できる。またこれら材料は・・・板状等であって差支えない」(第3頁右下欄第1〜8行) 甲第2号証 (a)「ガラス等の透明絶縁基板上に透明導電膜パターンを形成したパネル上でICその他の素子を実装するパネルの配線パターンにおいて、素子を実装する部分のパターン表面をはんだ濡れ性の良い金属膜で構成し、上記領域の周辺部のパターン表面ははんだ濡れ性の悪い金属膜を配置し、その他のパターンは透明導電膜のみで構成したことを特徴とする配線パターンの構造。」(特許請求の範囲) (b)「素子を実装する部分の領域とその周辺部にクロム、ニッケルなどのはんだ濡れ性の悪い金属3を単独あるいは複合して形成し、次に素子を実装する部分の領域に金、銀、銅などのはんだ濡れ性の良い金属4を単独あるいは複合して形成した配線パターンとした。」(第2頁右上欄第14〜19行) (c)「はんだ濡れ性の悪い金属膜、はんだ濡れ性の良い金属の形成方法としては、PVD法により2種の膜を形成し、フォトエッチング法により上記の構成とする方法、無電解メッキ法、フォトエッチング法、部分メッキ法を組み合わせて上記の構成とする方法など各種の方法が使用できる。」(第2頁右上欄第20行〜左下欄第6行) 甲第3号証 「銀の変色、腐食に対するベンゾトリアゾールの抑制効果」(標題)として、以下の事項が記載されている。 (a)「ベンゾトリアゾール(B.T.A)は銅に有効な腐食抑制剤としてよく知られているが、銀の変色、腐食もまたある程度抑制できるといわれており、クロム酸処理に代わりうる可能性がある。」(第21頁左欄) (b)「本報では・・・硫化水素ガス(H2S)や亜硫酸ガス(SO2)による加速腐食試験を行ない、B.T.Aの銀に対する変色防止、腐食抑制効果および作用機構について検討を行なった。」(第21頁左欄) (c)「加速腐食試験には銅板素材・・・を用い・・・銀メッキおよび水洗したのち、未処理片はそのまま、B.T.A処理片はB.T.A溶液で処理し・・・実験に供した。メッキ液の組成と条件は表1に示した。またB.T.A処理については浸セキと電解(陽極)による方法を採用し」(第21頁右欄) (d)「(2)H2Sガスふんい気中において、B.T.A溶液で浸セキまたは電解処理した銀メッキ片は変色しにくいことが認められた。 (3)SO2ガスふんい気中において、銀メッキのピンホールで起こった腐食に対するB.T.Aの抑制効果はB.T.A溶液で浸セキよりも電解処理したときの方が顕著であった。」(第25頁左欄) V.対比・判断 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、両者は、銀イオンと多座錯化剤を含むと共にpHが2〜12であって銀イオンを銀の金属へ還元可能な還元剤を含有しない水性置換めっき組成物を、銅表面と接触させて銅表面に銀被膜を形成する保護銀被膜形成方法の点で一致し、そして、(A)本件発明1では、銀被膜を、導電性金属パッド及び/又は裸板のスルーホールからなる銅表面を有し且つ被覆しないままとされる非金属領域を含む基板に形成するものであるのに対して、甲第1号証には当該基板の記載がない点、及び、(B)本件発明1ではめっき組成物が、水性ビヒクルに溶け込んでいる銀の変色防止剤を含有するものであるのに対して、甲第1号証には、そのような銀メッキ液の水性ビヒクルに溶け込んだ特定の変色防止剤についての記載がない点で、本件発明1は甲第1号証に記載された発明と相違している。 そこでこれらの相違点について検討する。 相違点(B)について 甲第3号証には、硫化水素ガス及び亜硫酸ガスによる加速腐食試験を行ない、ベンゾトリアゾールの銀に対する変色防止、腐食抑制効果および作用機構について検討を行なったこと、上記加速腐食試験は、銅板素材を銀メッキした後、ベンゾトリアゾール溶液で浸漬又は電解処理して行ったことが記載されている。 しかし、甲第3号証に記載の試験は、試験片を銀めっきした後に、ベンゾトリアゾール溶液に浸漬又は電解処理したものであって、銀めっき液中にベンゾトリアゾール又は他の変色防止剤を含有させたものではなく、またそれを示唆する記載もない。そして他の甲号証のいずれにも、当該相違点(B)に係る構成の記載は見あたらない。 そして本件発明1は、上記特定の変色防止剤に関する相違点(B)に係る構成を含む前記認定のとおりの構成を有することにより、爆発性溶液を生じるアンモニアを必要とせず、有毒なシアン化物イオンを不要にでき、プリント回路板(PCB)に対する良好な接着及びはんだ付け適性を有し、酸化に対する保護を与える銀被膜が形成されるという効果を奏したものと認められる(段落【0033】参照)。 してみれば、本件発明1は、上記残余の相違点(A)について別途検討するまでもなく、甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。 VI.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提示した証拠によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとはいえない。 以上のとおりであるから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-05-10 |
出願番号 | 特願平7-348908 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(C23C)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 北村 明弘、高木 正博 |
特許庁審判長 |
酒井 正己 |
特許庁審判官 |
中澤 登 池田 正人 |
登録日 | 1999-03-19 |
登録番号 | 特許第2902586号(P2902586) |
権利者 | アルファ フライ リミテッド |
発明の名称 | 保護銀皮膜形成方法 |
代理人 | 高月 猛 |