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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01F
管理番号 1027578
異議申立番号 異議1999-71497  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-08-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-20 
確定日 2000-08-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第2814509号「穀粒移送装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2814509号の特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第2814509号の発明についての出願は、平成1年1月20日に特許出願されたものであって、平成10年8月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てが、ヤンマー農機株式会社(以下、「申立人」という。)よりなされ、取消理由通知が通知され、その指定期間内に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由が通知されたところ、その指定期間内である平成12年5月15日に訂正明細書を補正する手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
[2-1]訂正明細書の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、補正後の訂正明細書における特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、次の事項により特定されるものである。
「移送螺旋(1)を内装する一方の排出筒(2)に対して、移送螺旋(3)を内装する他方の排出筒(4)を、これら排出筒(2),(4)の長手方向に沿って移動自在に構成し、前記排出筒(2)の底部には開口部(5)を設ける一方、前記移送螺旋(3)の始端側の上部に前記上側の開口部(5)から落入される穀粒を受ける受口(9)を開口して設け、且つ、前記一方の排出筒(2)の移送螺旋軸(11)の移送下手側と、他方の排出筒(4)の移送螺旋軸(12)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容する伝動手段(15)を介して連動したことを特徴とする穀粒移送装置。」
[2-2]引用刊行物記載の発明
当審において通知した訂正拒絶理由で通知で引用した刊行物1(実願昭49-148434号(実開昭51-73660号)のマイクロフィルム)には、「(5)は脱穀装置で、(6)は穀粒取出樋、移送筒(3)の下端にはこの穀粒取出樋(6)に連通し、螺旋(1)に回転連動させている。移送筒(3)の上端部には案内筒(7)を設け、移送筒(4)はこの案内筒(7)に嵌挿して上下方向に移動自在となし」(第2頁第13〜17行)、「螺旋(1)と(2)との連動は、螺旋(2)軸(11)にギヤ(12)を固着し、この螺旋軸(11)と平行なスプライン軸(13)のギヤ(14)とを噛合し、スプライン軸(13)の下端を螺旋(1)の軸(15)内のスプライン孔に嵌合させ、移送筒(4)が昇降すると共にスプライン軸(13)も軸(15)にスライドして、螺旋(1)から回転連動する形態とし」(第3頁第11〜16行)、「移送筒(4)の連通口部(9)を上端から下端に至るまで開設し、移送筒(3)の上端部の連通口部(9)においてのみ連通しうるが、他の部分は移送筒(3)と一体の案内壁面が形成されていて、移送筒(4)の連通口部(9)を閉鎖しうる形態」(第3頁第4〜9行)、第1図の記載からみて、
「螺旋(1)を内装する一方の移送筒(3)に対して、螺旋(2)を内装する他方の移送筒(4)を、これら移送筒(3),(4)の長手方向に沿って移動自在に構成し、前記移送筒(3)の側部には連通口部(9)を設ける一方、前記螺旋(2)の始端側の側部に前記移送筒(3)の側部の連通口部(9)から搬入される穀粒を受ける連通口部(9)を開口して設け、且つ、前記一方の移送筒(3)の螺旋の軸(15)の移送下手側と、他方の移送筒(4)の螺旋の軸(11)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容するスプライン軸(13)を介して連動した螺旋移送装置。」が記載されている。
刊行物2(実願昭62-92353号(実開昭63-201427号)のマイクロフィルム)には、「籾タンクから籾を所定の位置に向かって排出せしめる排出オーガを具えたコンバインにおいて、排出オーガにおけるその基部横オーガと、先端横オーガとを、そのスパイラ部とパイプ部とで伸縮可能に連結したことを特徴とするコンバインの籾タンクにおける排出オーガ。」(実用新案登録請求の範囲)、「第1図において、基部横オーガ(12a)のパイプと先端横オーガ(12b)のパイプとはスプライン結合(21)で、外側のパイプすなわち先端横オーガのパイプが、基部横オーガ(12a)に対してスライド自在となっている。」(第5頁第12〜16行)、第1図の記載からみて、
「スパイラ(23a)を内装する基部横オーガ(12a)に対して、スパイラ(23b)を内装する先端横オーガ(12b)を、これら横オーガ(12a),(12b)の長手方向に沿って移動自在に構成した排出オーガ。」が記載されている。
[2-3]対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と刊行物2に記載された発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、後者における「スパイラ(23a)」、「基部横オーガ(12a)」、「スパイラ(23b)」、「先端横オーガ(12b)」、「排出オーガ」は、前者における「移送螺旋(1)」、「一方の排出筒(2)」、「移送螺旋(3)」、「他方の排出筒(4)」、「穀粒移送装置」に相当し、両者は、「移送螺旋(1)を内装する一方の排出筒(2)に対して、移送螺旋(3)を内装する他方の排出筒(4)を、これら排出筒(2),(4)の長手方向に沿って移動自在に構成した穀粒移送装置」である点で一致し、前者が、「前記排出筒(2)の底部には開口部(5)を設ける一方、前記移送螺旋(3)の始端側の上部に前記上側の開口部(5)から落入される穀粒を受ける受口(9)を開口して設け、且つ、前記一方の排出筒(2)の移送螺旋軸(11)の移送下手側と、他方の排出筒(4)の移送螺旋軸(12)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容する伝動手段(15)を介して連動した」点を有するのに対し、後者は、上記の事項を有しない点で両者は相違する。
上記相違点について検討すると、刊行物1に記載された発明における「移送筒(3)の上端部の連通口部(9)」、「移送筒(4)の連通口部(9)」、「一方の移送筒(3)の螺旋の軸(15)の移送下手側と、他方の移送筒(4)の螺旋の軸(11)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容するスプライン軸(13)」は、前者における「開口部(5)」、「受口(9)」、「一方の排出筒(2)の移送螺旋軸(11)の移送下手側と、他方の排出筒(4)の移送螺旋軸(12)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容する伝動手段(15)」に相当し、刊行物1には、「排出筒(2)には開口部(5)を設ける一方、前記移送螺旋(3)の始端側に前記開口部(5)から搬入される穀粒を受ける受口(9)を開口して設け、且つ、前記一方の排出筒(2)の移送螺旋軸(11)の移送下手側と、他方の排出筒(4)の移送螺旋軸(12)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容する伝動手段(15)を介して連動した」構成が記載されている。
刊行物1に記載された発明と後者は、移送螺旋を内装する一方の排出筒に対して、移送螺旋を内装する他方の排出筒を、これら排出筒の長手方向に沿って移動自在に構成した穀粒移送装置として前者と共通の技術分野に属し、上記刊行物1に記載された構成を横向きの方向に使用することを阻害する要因も認められないから、後者における先端横オーガと基部横オーガとを移動自在にする構成として、刊行物1に記載された上記構成を採用することは、当業者にとって格別な困難性はなかったものと認める。その際、重力に従って穀物が移動されるように、穀物が流出する一方の移送筒(3)を流入する他方の移送筒(4)の上に配置させることは当業者にとって、当然採用することができる程度の技術的事項にすぎない。
そして訂正明細書の請求項1に係る発明が奏する効果は、刊行物1,2に記載された発明から予測できる程度のものであって格別のものではない。
よって、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記刊行物1、2にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
[2-4]むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議の申立てについて
[3-1]本件発明
本件特許明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「移送螺旋(1)を内装する一方の排出筒(2)に対して、移送螺旋(3)を内装する他方の排出筒(4)を、これら排出筒(2),(4)の長手方向に沿って移動自在に構成すると共に、前記一方の排出筒(2)の移送螺旋軸(11)の移送下手側と、他方の排出筒(4)の移送螺旋軸(12)とを、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容する伝動手段(15)を介して連動したことを特徴とする穀粒移送装置。」
[3-2]特許法第29条第1項第3号違反について
当審が平成11年7月28日に通知した取消理由において引用した刊行物1には、上記[2-3]の引用刊行物記載の発明の項に記載のとおりの発明が記載されている。
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の各構成要件は、本件発明の各構成要件に以下のように相当する。すなわち、刊行物1に記載された発明の「螺旋(1)」は本件発明の「移送螺旋(1)」に、「移送筒(3)」は「一方の排出筒(2)」に、「螺旋(2)」は「移送螺旋(3)」に、「移送筒(4)」は「他方の排出筒(4)」に、「軸(15)」は「移送螺旋軸(11)」に、「螺旋軸(11)」は「移送螺旋軸(12)」に、「スプライン軸(13)」および「螺旋(1)の軸(15)内のスプライン孔」は「伝動手段(15)」に相当し、刊行物1に記載された発明においても、移送筒(3)の軸(15)の移送下手側と、移送筒(4)の螺旋軸(11)とは、相対回転を規制しながら長手方向への相対移動を許容するスプライン軸(13)および螺旋(1)の軸(15)内のスプライン孔を介して連動する構成となっている。
したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明であり、本件発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
[3-3]むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第百十六号)付則第十4条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成七年政令第二百五号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-07-11 
出願番号 特願平1-12565
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A01F)
P 1 651・ 113- ZB (A01F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 佐藤 昭喜
新井 重雄
登録日 1998-08-14 
登録番号 特許第2814509号(P2814509)
権利者 井関農機株式会社
発明の名称 穀粒移送装置  

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