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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  C08L
管理番号 1027769
異議申立番号 異議2000-71646  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-02-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-13 
確定日 2000-10-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第2973353号「粉末成形に使用する粉末樹脂組成物」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2973353号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由
[1]手続きの経緯及び本件発明

本件特許第2973353号は、出願日が平成7年8月10日であって、平成11年9月3日に特許権の設定登録がなされ、その後、住友化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。
そして、本件特許の請求項1〜3に係る発明(以下各々「本件発明1」〜「本件発明3」という)は、願書に添付した明細書の記載からみて、請求項1〜3に記載された、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ポリプロピレン樹脂と水素添加スチレンブタジエンランダム共重合ゴムとを重量比80/20〜20/80の割合で混合したもの100重量部に、エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・オクテンブロック共重合体から選ばれるエチレン単位を保有する熱可塑性エラストマーを5〜50重量部の割合で混合したものを粉砕して得られたものであることを特徴とする粉末成形に使用する粉末樹脂組成物。
【請求項2】 ポリプロピレン樹脂と、スチレン含量20重量%以下の水素添加スチレンブタジエンランダム共重合ゴムと、エチレン単位を保有する熱可塑性エラストマーとしてエチレン・オクテンブロック共重合体を混合して用いることを特徴とする請求項1に記載の粉末成形に使用する粉末樹脂組成物。
【請求項3】 ポリプロピレン樹脂と水素添加スチレンブタジエンランダム共重合ゴム、そしてエチレン単位を保有する熱可塑性エラストマーを2軸押出機等で混練してペレット化し、このペレットを冷凍粉砕して得られた粉末物である請求項1記載の粉末成形に使用する粉末樹脂組成物。」

[2]特許異議の申立ての理由の概要

特許異議申立人は、甲第1号証(特開平10-30036号公報)、甲第2号証(住友化学工業株式会社の石油化学品研究所に所属する杉本博之の作成になる実験証明書)を提出し、本件発明1〜3は、特願平8-157782号(出願日:平成8年6月19日、優先日:平成7年6月20日、平成8年5月15日)の願書に最初に添付した明細書(甲第1号証参照)に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであると主張している。

[3]対比、判断

特願平8-157782号の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という)の請求項1には、
「エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム、ポリオレフィン系樹脂および、前記エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂との合計量100重量部あたり0.1〜150重量部の下記(A)で示される水添ジエン系重合体を含有してなり、複素動的粘度η*(1)が1.5×105ポイズ以下かつニュートン粘性指数nが0.67以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
(A)共役ジエン重合体またはビニル芳香族化合物単位含有量が25重量%以下である共役ジエン-ビニル芳香族化合物ランダム共重合体が水添されてなり、かつ水添率が70%以上である水添ジエン系重合体」
と記載され、該「ポリオレフィン系樹脂」として、「ポリプロピレン樹脂」が、該「(A)で示される水添ジエン系重合体」として、「水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体」が、それぞれ具体的に記載されている。
また、上記熱可塑性エラストマー組成物を粉砕して得られた粉末を粉末成形に使用することについても記載されている。
したがって、先願明細書には、「ポリプロピレン樹脂と水素添加スチレンブタジエンランダム共重合体を混合したものに、エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴムを混合したものを粉砕して得られた粉末成形に使用する粉末樹脂組成物の発明」(以下「先願発明」という)が記載されているといえる。
そこで、本件発明1と、先願発明を対比すると、本件発明1における「エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体」と「エチレン・オクテンブロック共重合体」は、いずれも「エチレン・α-オレフィン系共重合体」に含まれる下位概念の化合物であるから、両者は、「ポリプロピレン樹脂」と「水素添加スチレンブタジエンランダム共重合ゴム」とを混合したものに、「エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム」を混合したものを粉砕して得られた、粉末成形に使用する粉末樹脂組成物である点で一致している。
しかし、前者における「エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム」が「エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・オクテンブロック共重合体から選ばれる」のに対して、後者では、この特定がなされていない点で両者は相違している。
この相違点について、特許異議申立人は、以下のaとbの理由により、この点は相違点ではないと主張している。
a.後者における、「エチレン・α-オレフィン系共重合体ゴム」が、「エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体」や、「エチレン・オクテンブロック共重合体」を除外する理由がない。
b.甲第2号証の実験結果が示すように、成形温度の低下の効果は、エチレン・オクテンブロック共重合体を用いるからではなく、共重合体のMFR(メルトフローレート)に依っているにすぎず、先願発明に具体的に示されたエチレン・プロピレン共重合体であっても、MFRが同レベルであれば、低温成形性に差はないから、本件発明1におけるエチレン・オクテンブロック共重合体を用いるとの規定は、エチレン・プロピレン共重合体を用いる場合に対して、技術的意義を有しない。
そこで、まず、aの理由について検討する。
単に、「エチレン・α-オレフィン系共重合体」と、「エチレン・エチレンブチレン・エチレンブロック共重合体」や、「エチレン・オクテンブロック共重合体」を対比すれば、特許異議申立人がいうように、前者が、後者を排除しているものではないといえる。しかし、後者が先願明細書に記載されているか否かは、これとは別の問題である。前者は、後者の上位概念であるが、上位概念が記載されているだけでは、下位概念が記載されているとはいえない。
したがって、技術的意義に関するbの主張を検討するまでもなく、上記相違点は、本件発明1と、先願発明との相違点といえるから、両者は同一発明ではない。
さらに、先願明細書の記載全般を検討しても、本件発明1と同一の発明は記載されていない。
すなわち、本件発明1は、特願平8-157782号の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一とは認められない。
本件発明2〜3も、同様の理由により、該明細書に記載された発明と同一とは認められない。

[4]むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張および証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他にこれらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-09-20 
出願番号 特願平7-227539
審決分類 P 1 651・ 161- Y (C08L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 中島 次一
石井 あき子
登録日 1999-09-03 
登録番号 特許第2973353号(P2973353)
権利者 三ツ星ベルト株式会社
発明の名称 粉末成形に使用する粉末樹脂組成物  
代理人 久保山 隆  
代理人 中山 亨  
代理人 神野 直美  

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