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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  E04F
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  E04F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04F
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1027835
異議申立番号 異議2000-72380  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-10-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-09 
確定日 2000-11-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第3004211号「床パネル支持脚」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3004211号の特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3004211号に係る出願は、昭和61年2月18日に出願した特願昭61-33475号の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して平成8年10月21日に新たな特許出願としたものであって、平成11年11月19日に特許の設定の登録がなされ、その特許第3004211号の発明(以下、「本件発明」という。)は、特許査定時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。

2.申立ての理由の概要
申立人安川勤は、「本願は、第1に、本願出願前に公知であった甲第1号証〜甲第3号証に記載された技術と同一又は実質的に同一であり、特許法第29条の2の規定を満たしていない。 第2に、甲第3号証と、甲第4号証〜甲第7号証又は甲第8号証〜甲第12号証のいずれかとの少なくとも2つの周知技術に基づいて、単なる和又は寄せ集め、或いは設計的事項程度に創作されたに過ぎない周知慣用技術であること明らかであります。従いまして、本願は、当業者であれば、何の困難も無く極めて容易に想起することができる程度の極めて単純な周知慣用技術であり、特許法第29条の規定を満たしていません。 第3に、本願請求項1記載において、下記事項の意味、定義付けが不明瞭であるから記載不備に相当し、特許法第36条の規定を満たしていません。・・・以上のことから、本願は、特許法第49条の規定により拒絶されるべきものであります。」と申し立てているが、これは、本件発明は、本件の出願日(上記したように本件出願は分割出願であるから、出願日は、昭和61年2月18日に遡及されている)前の他の出願であって、その出願後に出願公開された、甲第1号証(実願昭59-162785号(実開昭61-78925号公報参照)の明細書及び図面)又は、甲第2号証(実願昭59-160927号(実開昭61-77208号公報参照)の明細書及び図面)に記載された考案と同一又は実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により、また、本件の出願前に公知であった甲第3号証(特開昭60-208553号公報)に記載された発明と同一又は実質的に同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により、同一でなくとも、甲第3号証と、甲第4号証(実公昭41-21095号公報)、甲第5号証(実公昭41-12598号公報)、甲第6号証(実公昭60-35708号公報)、甲第7号証(実願昭56-73262号(実開昭57-185842号)のマイクロフィルム)又は甲第8号証(実願昭53-108558号(実開昭55-27316号)のマイクロフィルム)、甲第9号証(特開昭56-12462号公報)、甲第10号証(実願昭55-16995号(実開昭56-118238号)のマイクロフィルム)、甲第11号証(特開昭57-9946号公報)、甲第12号証(実願昭58-157169号(実開昭60-63610号)のマイクロフィルム)のいずれかとの少なくとも2つの周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、さらに、特許請求の範囲において、(1)「床パネルに係合するための係合部」とはどのようなものを意味するのか、その定義が不明瞭であり、(2)「床パネルに係合するための係合部」と「係合部を中空体の先端に形成された突起部」との記載の関係が曖昧であり、何と何の構成によりどの様に、床パネルと支持脚とが係合するのか、係合部と突起部とはどれを指し示すのか不明瞭であり、以上のような不明瞭な構成があるから、特許法第36条第4項の規定により、本件発明は特許を受けることができないと、主張しているものと解される。

3.特許法第36条第4項に関して
特許請求の範囲において、「中空体の床パネル載置面に床パネルに係合するための係合部を形成し、この係合部を中空体の先端に形成された突起部で構成し」と記載されており、「床パネルに係合するための係合部」すなわち「中空体の先端に形成された突起部」と解され、意味するものは不明瞭ではない。さらに、実施例として「この真空成形時に、膨出形成される中空体6の先端に突起部9を形成しておく。この突起部9は床パネル2の下面に形成された貫通孔2Aに嵌合する。従って、この突起部9が係合部を構成し、貫通孔2Aが被係合部を構成する。」(特許公報第2頁第4欄第7〜11行)との記載もあり、特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されているといえる。

4.特許法第29条の2に関して
甲第1号証には、明細書(以下、「先願明細書1」という。)の第3頁第9行〜第5頁第17行、同第6頁第3〜6行及び第2、3図の記載からみて、肉厚が比較的薄い合成樹脂素材を用いて頂板付の切頭角錐体状をなす筒体からなる外層体を形成し、筒体の空所にポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、コンクリート、モルタル、石膏、発泡セメント等の充填材を充填すると共に、筒体の内面に適宜突起を設けて、充填材と筒体とが分離するのを防止し、外層体の頂板には柱材(例えば玄関ポーチに立設される飾り柱)の下端部のほぞを嵌入させうるほぞ穴が凹設せしめられてなる柱材支持台(以下、「先願考案1」という。)が記載されている。
甲第2号証には、明細書(以下、「先願明細書2」という。)の実用新案登録請求の範囲、同第5頁第15行から第6頁第6行、同第10頁第11〜17行及び第6〜9図の記載からみて、合成樹脂シートを真空成形して形成された成形用型の成形用凹部にコンクリートやモルタル等のスペーサー成形用原料を注入する時に、成形用凹部周縁の上面に半円状の凹入部を形成し、円弧状の成形用凸型を成形用凹部上面を横断して凹入部に配置した状態で成形を行ない、スペーサーの面積が広い面に鉄筋の載置用凹溝を形成したスペーサー成形用型(以下、「先願考案2」という。)が記載されている。
ここで、先願明細書1に記載された先願考案1は、例えば玄関ポーチに立設される飾り柱のような柱材の支持台であり、また、先願明細書2に記載された先願考案2は、鉄筋を載置するスペーサーであり、いずれも、本件発明の床基盤から所定の間隔をあけて床パネルを支持し、床パネル下方に形成された空間に配線類を収容できるようにした床パネル支持脚とは、対象物が異なり、同一とも実質的に同一ともいえない。

5.特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項に関して
甲第3号証には、特許請求の範囲の第1項の「パネルと床基盤との間に空間を設定するための多数の支持脚を介在させるとともに、支持脚に嵌合する穴又は凹所若しくは両者を備えたスペーサを少なくともパネル突き合わせ個所あるいはパネル端部に位置させて床基盤とパネルとの間に配設したことを特徴とする床下地パネル。」、第2頁左下欄第17〜20行の「支持脚20は、第2図及び第3図に明示するように合成樹脂シート2に多数膨出された膨出凸部3と、この膨出凸部3の頂部が嵌入するパネル1の下面に設けた台座凹部4とから構成してある。」、第3頁左上欄第4〜11行の「合成樹脂シート2,5は、厚み0.5〜3.0mm程度の塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂材料を真空成形して膨出凸部3や台座凹部4を成形したもの等が使用される。この膨出凸部3の高さ(空間Sの高さともなる)は、床下空間に配線14等を収納できるようにするため、15mm以上の高さにすることが望ましい。」、第3頁右上欄第3〜10行の「膨出凸部3は、第3図に示す切頭円錐台形状のもののみならず、第4図に示すように補強部材3aとしてリブを形成したものであっても良いし、第5図に示すような四角柱形状のものであっても良く、各種形状が採用可能である。リブ以外の補強部材3aとしては、第6図に示すように、膨出凸部3の先端内部に反応硬化型液状樹脂を注入し、硬化させたものでも良い。」及び第1〜6、8図の記載を参照すると、床基盤から所望の高さにパネルを支持し、パネルと床基盤との間の床下空間に配線類を収納できるようにした支持脚において、厚み0.5〜3.0mm程度の合成樹脂シートに多数の切頭円錐台形状の膨出凸部を膨出させ、この膨出凸部の頂部はパネルの下面に設けた台座凹部に嵌入するように構成してあり、膨出凸部には、補強部材としてリブを形成したり、膨出凸部の先端内部に反応硬化型液状樹脂を注入、硬化させたりしてある支持脚が記載されている。
本件発明と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された発明の「パネル」、「膨出凸部」及び「支持脚」は、それぞれの機能に照らし、各々、本件発明の「床パネル」、「中空体」及び「床パネル支持脚」に相当し、甲第3号証に記載された発明の合成樹脂シートの厚みが0.5〜3.0mm程度ということは薄板といえ、また、膨出凸部の形状は切頭円錐台形状ということはカップ状といえ、さらに、反応硬化型液状樹脂は、硬質充填材ではあるから、両者は、床基盤から所定の間隔をあけて床パネルを支持し、床パネル下方に形成された空間に配線類を収容できるようにした床パネル支持脚において、合成樹脂シートからなる薄板を真空成形してカップ状の中空体に成形し、この中空体内に硬質充填材を注入し、中空体の床パネル載置面と床パネルとは係合するようになっている床パネル支持脚の点で一致しているが、下記の点で相違する。
a.本件発明では、中空体内にセメント、石膏の各材料から選択されたもの又は合成樹脂製パイプから成る硬質充填材を充填し、中空体は充填材の抜止手段を有しているのに対し、甲第3号証に記載された発明では、膨出凸部の先端内部に反応硬化型液状樹脂を注入、硬化させている点。
b.中空体の床パネル載置面と床パネルとの係合構造が、本件発明では、中空体の床パネル載置面の床パネルに係合するための係合部を、中空体の先端に形成された突起部で構成しているのに対し、甲第3号証に記載された発明では、膨出凸部の頂部をパネルの下面に設けた台座凹部に嵌入するように構成している点。
ここで、甲第4〜7号証には、床パネルを支持し、床パネル下方に形成された空間に配線類を収容できるようにした床パネル支持脚において、床パネル載置面の床パネルに係合するための係合部を、床パネル支持脚の先端に形成された突起部で構成している床パネルとの係合構造が記載されており、これを、甲第3号証に記載された発明の床パネルとの係合構造として採用して、上記相違点bにおける本件発明のようにすることは、当業者が容易になしうる程度のことである。
一方、相違点aについては、甲第8号証に記載されているのはゴム等の弾性物質製型枠内にコンクリートまたはモルタルを充填した舗装板、第9号証に記載されているのはゴム床を構成する裏面にコンクリートを積層したゴム系板材、第10号証に記載されているのは金属製、木製、合成樹脂製または合成ゴム製の囲み枠中に硬化性組成物を充填した床用タイル、第11号証に記載されているのは波型鉄板にモルタルを流し込んだモルタル施工鉄板、第12号証に記載されているのはプラスチックを含浸した厚紙・エキスパンドメタル・薄鋼板などからなり、下面に複数本の逆テーパーの付いたリブを有し側縁には内側に窪んだ溝が設けられた薄皿状体に、石膏・モルタル・アスファルトなどの流動性のある可塑性物体を充填、固化してなる遮音床の下地材となるリブ付き板体であって、甲第8〜12号証のいずれにも、枠状体の中に硬質充填材を充填固化して板体を形成する際の充填材の抜止手段を有するものが記載されているとはいえるが、甲第3号証に記載された発明では、膨出凸部の先端内部のみにしか反応硬化型液状樹脂を注入、硬化させておらず、床パネル支持脚となる中空体に充填材の抜止手段を有する必要性が生じるほど硬質充填材を充填する点がない以上、甲第8〜12号証に記載されている技術を適用する必然性がなく、甲第3号証に記載された発明に甲第8〜12号証に記載されている技術を適用して、上記相違点aにおける本件発明のようにすることは、当業者が容易に推考しうるものではない。そして、本件発明は、この点により明細書記載の作用効果を奏するものである。
以上のとおり、本件発明は、上記甲第3号証に記載された発明と同一又は実質的に同一であるとも、甲第3号証に記載された発明と、甲第4〜7号証又は甲第8〜12号証のいずれかに記載されている少なくとも2つの周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

6.むすび
したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-10-20 
出願番号 特願平8-297775
審決分類 P 1 651・ 161- Y (E04F)
P 1 651・ 113- Y (E04F)
P 1 651・ 532- Y (E04F)
P 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山口 由木服部 秀男七字 ひろみ  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 宮崎 恭
鈴木 憲子
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3004211号(P3004211)
権利者 株式会社ブリヂストン
発明の名称 床パネル支持脚  

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