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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1027920
異議申立番号 異議2000-72293  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-05 
確定日 2000-11-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2985622号「カレンダー成形加工用熱可塑性エラストマー組成物」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2985622号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 [1]本件発明
本件特許第2985622号の発明(平成5年12月15日出願、平成11年10月1日設定登録。)は、特許明細書の記載からみて、その請求項1乃至請求項6に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】100℃ムーニー粘度(ML1+4100℃)が120〜350であるオレフィン系共重合体ゴム100重量部当たり、該オレフィン系共重合体ゴムを含む溶液に鉱物油系軟化剤を添加し、その後脱溶媒して得られ、該鉱物油系軟化剤を20〜150重量部含有する油展オレフィン系共重合体ゴム(A)40〜95重量%とプロピレン系重合体樹脂(B)5〜60重量%からなる混合物を、有機過酸化物の存在下に動的に熱処理してなる部分架橋組成物100重量部に対し、エチレン系重合体樹脂(C)5〜100重量部および高級脂肪酸アミド(D)0.03〜2重量部を含有してなることを特徴とするカレンダー成形加工用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】オレフィン系共重合体ゴムが、エチレン-プロピレン-非共役ジエン系共重合体ゴムである請求項1記載の組成物。
【請求項3】エチレン-プロピレン-非共役ジエン系ゴムが、プロピレン含有量が10〜55重量%、エチリデンノルボルネン含有量が1〜30重量%のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体ゴムである請求項2記載の組成物。
【請求項4】油展オレフィン系共重合体ゴム(A)の100℃ムーニー粘度(ML1+4100℃)が、30〜100である請求項1記載の組成物。
【請求項5】プロピレン系重合体樹脂(B)が、ポリプロピレン又はプロピレン-α-オレフィン共重合体樹脂である請求項1記載の組成物。
【請求項6】鉱物油系軟化剤が、パラフィン系軟化剤である請求項1記載の組成物。」

[2]特許異議申立理由の概要
特許異議申立人金子しのは、本件出願前に日本国内において頒布された甲第1号証(特開昭58-141224号公報)及び甲第2号証(特開平1-103639号公報)、発行日不詳の甲第3号証(「Handbook of Thermoplastic Elastomer」p56-65 Van Nostrannd Reinhold Company発行)を提出し、本件請求項1〜6に係る発明は甲第1号証に記載された発明であり、そうでないとしても、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易にできた発明であるから、本件請求項1〜6に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号或いは特許法第29条第2項の規定に違反して特許がなされたものであるので、本件特許は取り消されるものであると主張している。

[3]甲各号証の記載事実
甲第1号証には、次のことが記載されている。
(a)『エチレン・α-オレフィン共重合ゴムの部分架橋物、ポリプロピレン樹脂および鉱物油系軟化剤からなる熱可塑性エラストマー中に高級脂肪酸アミド及びポリエチレン樹脂が添加されたカレンダー成形用熱可塑性エラストマー組成物。』(特許請求の範囲)
(b)『少量の高級脂肪酸アミド及びポリエチレン樹脂を添加した熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性エラストマーが本来有する好ましい物性を保持しつつカレンダーによるシート成形を円滑に行なうことができるという効果を奏する。』(第2頁右下欄第6〜11行)
(c)『実施例1
エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン3元共重合体ゴム〔エチレン/プロピレンのモル比70/30、ヨウ素化15、ムーニー粘度ML1+4(100℃)70〕70部(重量、以下同じ)、ポリイソブチレン(エッソ社製品、ビスタネックスMML-100)15部、ポリプロピレン〔密度0.91 g/cm3、メルトインデックス(ASTM-D-1238-65T、230℃)13〕15部、ナフテン系プロセスオイル30部およびエルカ酸アミドの所定量を、バンバリーミキサーを用い、窒素雰囲気中、180℃で5分間混練した後ロールを通し、シートカッターによりペレットを造粒した。次に、このペレットと1,3-ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン0.3部を0.5部のジビニルベンゼンに溶解分散させた溶液とを、タンブラーブレンダーを用いて混合し、ペルオキシド溶液をペレット表面に均一に付着させた。その後、このペレットを、押出機を用いて窒素雰囲気下に210℃で押し出すことにより、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを調整した。
次にこのペレット100量部に対して30量部の割合でメルトインデックス1(190℃)密度0.92のポリエチレンペレットを混合した。この混合ペレットを160〜180℃に加熱した8インチ径の2本ロールに巻き付けロールからシートを取り出す操作を行った処、シートがロールに粘着することなく均一なシートを容易に引き出すことができた。
これはカレンダー成形法によりシートが容易に得られることを示すものである。
比較例1.
実施例1に於いて、エルカ酸アミド及びポリエチレン樹脂を配合しない他は実施例1と同様に行いカレンダー成形性を評価した処、シートがロールに粘着し、シートを引き出す事ができなかった。』(第2頁右下欄第13行〜第3頁右上欄第9行)
甲第2号証には、次のことが記載されている。
(a)『(1)100℃ムーニー粘度(ML1+4100℃)が150〜350であるオレフィン系共重合体ゴム100重量部当たり、鉱物油系軟化剤を20〜150重量部含有する油展オレフィン系共重合体ゴム(A)40〜95重量%とオレフィン系プラスチック(B)5〜60重量%からなる混合物を部分架橋してなることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
(2)オレフィン系共重合体ゴムが、エチレン-プロピレン-非共役ジエン系ゴムである特許請求の範囲第1項記載の組成物。
(3)エチレン-プロピレン-非共役ジエン系ゴムが、プロピレン含有量が10〜55重量%、エチリデンノルボルネン含有量が1〜30重量%のエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体ゴムである特許請求の範囲第2項記載の組成物。
(4)油展オレフィン系共重合体ゴム(A)の100℃ムーニー粘度(ML1+4100℃)が、30〜150であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の組成物。
(5)オレフィン系プラスチック(B)が、ポリプロピレン又はプロピレン-α-オレフィン共重合体樹脂である特許請求の範囲第1項記載の組成物。
(6)鉱物油系軟化剤が、パラフィン系軟化剤である特許請求の範囲第1項記載の組成物。』(特許請求の範囲)
(b)『本願発明が解決すべき課題は、オレフィン系TPE(註、熱可塑性エラストマー)、特に、低硬度(ショアーA硬度で90以下)のオレフィン系TPEにおいて、柔軟性、機械的特性(特に引張り破断強度、破断伸び、圧縮永久歪み)で加硫ゴム代替が可能で、ブロー成形、押出成形又は射出成形等の良好なオレフィン系TPE組成物を提供することにある。』(第2頁右上欄第4〜11行)
(c)『100℃ムーニー粘度が150〜350のEPDM(註、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体ゴム)100重量部当たり20〜150重量部の鉱物油系軟化剤を予め配合されている油展EPDMを用いると軟化剤のブリードがなく、製品の汚染や粘着が認められず、かつ破断強度、破断伸び、圧縮永久歪みなどの物性の秀れたTPE組成物を得ることが出来る。
・・・
EPDMの油展方法は公知の方法が用いられる。例えば、ロールやバンバリーミキサーのような装置を用い、EPDMと鉱物油系軟化剤を機械的に混練する方法で油展する方法、あるいはEPDM溶液に所定量の鉱物油系軟化剤を添加し、その後、スチームストリッピング等の方法により脱溶媒して得る方法などがある。このうち好ましい油展方法としてはEPDM溶液を用いる方法であり、EPDM溶液は重合で得られるEPDM溶液を用いる方が、操作が容易である。』(第3頁左下欄第1行〜同頁右下欄第4行)
甲第3号証には、次のことが記載されている。
(a)『Telcar TR 400、TR 402、TR 100を用いて樹脂の押出成形(Extrusion)を行なっている。』(第61〜63頁)
(b)『Telcar TR 400、TR 402、TR 100を用いて樹脂のカレンダー成形(Calendering)を行なっている。』(第63〜64頁)

[4]特許異議申立てについての判断
〈特許法第29条第1項第3号の規定の適用について〉
甲第1号証には、「エチレン・α-オレフィン共重合ゴムの部分架橋物、ポリプロピレン樹脂および鉱物油系軟化剤からなる熱可塑性エラストマー中に高級脂肪酸アミド及びポリエチレン樹脂が添加されたカレンダー成形用熱可塑性エラストマー組成物」についての発明が記載されており(摘示事項a)、これと本件請求項1〜6に係る発明(以下、一括して「本件発明」という。)とを対比すると、(1)該エチレン・α-オレフイン共重合ゴム(本件発明ではオレフィン系共重合体ゴム)のムーニー粘度(ML1+4100℃)について、甲第1号証には、実施例1において70のものが使用されたことが記載されているものの、これ以上の記載はなく、これが120〜350のものを用いることは、甲第1号証には実質上記載されていないといわざるを得ない。また、(2)本件発明では、オレフィン系共重合ゴムとプロピレン系共重合体樹脂とを混合するに先立ち鉱物油系軟化剤による処理、いわゆる油展処理をしているのに対し、甲第1号証にはその点の記載はなく、この本件発明の操作は、本件明細書によれば最終組成物自体に影響するものと認められ、かかる認定を左右するに足りる証拠は見出せない。
したがって、以上2点の相違点の存在により、本件発明は甲第1号証に記載された発明とすることはできない。
〈特許法第29条第2項の規定の適用について〉
甲第2号証には、「100℃ムーニー粘度(ML1+4100℃)が150〜350であるオレフィン系共重合体ゴム100重量部当たり、鉱物油系軟化剤を20〜150重量部含有する油展オレフィン系共重合体ゴム(A)40〜95重量%とオレフィン系プラスチック(B)5〜60重量%からなる混合物を部分架橋してなることを特徴とするオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物」についての発明が記載され(摘示事項a)、「100℃ムーニー粘度が150〜350のEPDM(註、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体ゴム)100重量部当たり20〜150重量部の鉱物油系軟化剤を予め配合されている油展EPDMを用いると軟化剤のブリードがなく、製品の汚染や粘着が認められず、かつ破断強度、破断伸び、圧縮永久歪みなどの物性の秀れたTPE組成物を得ることが出来る。」ことが記載されている(摘示事項c)。
しかしながら、甲第2号証には、ブロー成形性、押出成形性又は射出成形性等の良好なオレフィン系TPE組成物を提供するとは記載されているものの、カレンダー成形に該組成物を供することは記載されていない。特許異議申立人は、甲第3号証の記載を根拠に押出成形に用いられる樹脂がカレンダー成形にも適用できることは明らかであると主張しているが、同号証には、特定のポリオレフィンエラストマー3種が両成形法で成形されたと記載されているにすぎず、押出成形に適するものが常にカレンダー成形にも適すると記載されている訳ではない。
したがって、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証乃至甲第3号証に記載された発明を併せ検討しても、これから直ちに本件発明が当業者の容易に想到し得るとすることはできない。
一方本件発明は、本件明細書によれば、その採用する構成により、カレンダー成形において優れた効果を奏すると認められ、かかる効果は甲第1号証〜甲第3号証の記載からは予測することは困難といわざるを得ない。
したがって、本件発明は甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1〜6に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-06 
出願番号 特願平5-315501
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08L)
P 1 651・ 113- Y (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松井 佳章三谷 祥子  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 石井 あき子
中島 次一
登録日 1999-10-01 
登録番号 特許第2985622号(P2985622)
権利者 住友化学工業株式会社
発明の名称 カレンダー成形加工用熱可塑性エラストマー組成物  
代理人 久保山 隆  
代理人 神野 直美  

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