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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G03G
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1028024
異議申立番号 異議1998-73563  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1987-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-07-21 
確定日 1999-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2707244号「電子写真現像方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2707244号の特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第2707244号は、昭和61年6月16日に特許出願され、平成9年10月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、ミノルタ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年12月15日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その指摘期間内である平成11年4月5日に手続補正がなされたものである。
(2)訂正の適否
ア.訂正の内容
(a)訂正事項a
本件特許掲載公報第1頁特許請求の範囲請求項1の「1.アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性体粒子を分散してなる平均粒径50μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。」
と訂正する。
(b)訂正事項b
本件特許掲載公報第2頁第3欄第33行乃至第35行における記載「特に、現像磁石として反発磁界あるいは幅広磁石を用いた場合、この現像は関著であった。」を、訂正事項aの訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「特に、現像磁石として凹部を有する反発磁界を用いた場合、この現像は関著であった。」と訂正する。
(c)訂正事項c
本件特許掲載公報第2頁第3欄第48行乃至第4欄第5行における特許請求の範囲を引用する記載「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性体粒子を分散してなる平均粒径50μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法」を訂正事項aによる訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、同様の記載、「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法」と訂正する。
(d)訂正事項d
本件特許掲載公報第2頁第4欄第22行乃至第24行における「反発磁界を形成するように」を、訂正事項aの訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、「反発磁界を形成し、凹部を有するように」と訂正する。
(e)訂正事項e
本件特許掲載公報第3頁第5欄第49行乃至第6欄第12行の記載「キャリアの粒径は、平均粒径として50μm以上が必要であるが感光体へのキャリアの付着や画質上の観点から、好ましくは50〜200μm、より好ましくは60〜150μmである。50μm以下の平均粒径を有する場合には、感光体への付着現象が生じ、現像剤の寿命が短くなる。
又、結着樹脂中に分散される磁性粉としては、従来磁性体として用いられているものがいずれも使用可能であるが、例えばマグネタイト、ガンマヘマタイト、ベンガラ、酸化クロム、ニッケル、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル合金などがあげられる。これ等磁性粉は平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmがよい。又、キャリア全成分中、磁性粉の占める割合は、30〜95重量%、好ましくは、45〜90重量%が良い。」を、不明りょうな記載の釈明を目的として、「キャリアの粒径は、平均粒径として60μm以上が必要であるが感光体へのキャリアの付着や画質上の観点から、好ましくは60〜150μmである。60μm以下の平均粒径を有する場合には、感光体への付着現象が生じ、現像剤の寿命が短くなる。
又、結着樹脂中に分散される磁性粉としては、磁性酸化鉄が使用される。例えばマグネタイト、ガンマヘマタイトがあげられる。これ等磁性粉は平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmがよい。又、キャリア全成分中、磁性粉の占める割合は、70〜95重量%、好ましくは、70〜90重量%が良い。」と訂正する。
(f)訂正事項f
本件特許掲載公報第4頁第8欄第30行乃至第36行の記載「スリーブ内部に固定配設された磁石部材は、第3図に示すごとく反発磁界を形成する様配設されていることが望ましい。この様な現像領域において反発磁界を形成する様配設する磁石部材は反発磁界を形成するものであれば、どの様な形状のものでも使用可能であり、例えば第4図(a)、(b)及び(c)に示す形状のものが利用できる。」を、不明りょうな記載の釈明を目的として、「スリーブ内部に固定配設された磁石部材は、第3図に示すごとく凹部を設けて反発磁界を形成する様配設されていることが望ましい。この様な現像領域において反発磁界を形成する様配設する磁石部材は凹部を設けて反発磁界を形成するものであれば、どの様な形状のものでも使用可能であり、例えば第4図(a)及び(b)に示す形状のものが利用できる。」と訂正する。
(g)訂正事項g
本件特許掲載公報第4頁第8欄第45行乃至第46行の記載「比較的大粒径(50μm以上)」を不明りょうな記載の釈明を目的として、
「比較的大粒径(60μm以上)」と訂正する。
(h)訂正事項h
本件特許掲載公報第6頁第11欄第4行乃至第5行の記載「第4図(a)、(b)及び(c)はそれぞれ反発磁界を形成する現像磁石」を、不明りょうな記載の釈明を目的として、「第4図(a)及び(b)はそれぞれ反発磁界を形成する凹部を有する現像磁石」と訂正するとともに、第4図(c)を削除する。
イ.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
訂正事項aに関して「磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリア」と限定する点については、本件特許明細書記載(本件特許掲載公報第3頁第6欄第11行〜第12行)及び実施例で使用している値を根拠とするものであり、「凹部を有する磁石部材」と限定する点については、本件特許明細書に添付されていた図面の第3図、第4図(a),(b)の記載を根拠とするものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。
訂正事項b〜gについては、訂正事項aの訂正に伴う不整合を解消するための、不明りょうな記載の釈明に相当するものである。
また、これらの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
ウ.訂正特許明細書に請求項1に記載される発明
訂正明細書の請求項1に記載される発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
特許請求の範囲
【請求項1】アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。
エ.独立要件の判断
刊行物1: 特開昭60-131548号公報
刊行物2: 特開昭60-147750号公報
刊行物3: 特開昭61- 53653号公報
刊行物4: 特開昭61- 53654号公報
刊行物5: 特開昭58- 46350号公報
刊行物6: 特開昭57- 22251号公報
刊行物7: 特開昭54- 95243号公報
刊行物8: 特開昭51- 43151号公報
刊行物9: 特開昭50-110642号公報
当審で通知した訂正拒絶理由は、前記「ア.訂正の内容」に示した請求項1に対して前記した刊行物を引用して、これら本件請求項1に記載される発明が、刊行物1に記載された発明と刊行物2乃至刊行物4に記載された周知事項に基づいて、あるいは、刊行物2に記載された発明と刊行物5乃至刊行物9に記載された周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるからして、特許法第29条第2項に違反しているとするものである。
なお、これらの刊行物は当審で通知した取消理由通知において引用したものと同じものであり、取消理由自体も、この訂正拒絶理由と同じものである。
引用した各刊行物には、取消理由通知で指摘した以下の内容が記載されている。
▲1▼刊行物1:本件発明と同様の樹脂分散型キャリア及び同様の現像装置を用いた現像方法が記載されている。
第3頁左下欄第2行〜第3行には、磁性キャリアの平均粒径が50μm以下であることが記載されている。
第3頁左下欄第4行〜第18行には、キャリア粒子が磁性体微粒子を分散して含有した樹脂粒子でもよいこと、樹脂としてアクリル系樹脂が使用できることが記載されている。
第8頁右上欄第15行〜右下欄第16行の実施例2には、微粉状フェライトをスチレン-アクリル樹脂に分散したキャリアを用いること、並びに第3図の現像装置を用いて現像することが記載されている。
第6頁左上欄第19行〜右下欄第4行には、第3図の現像装置が、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置であることが記載されている。
これらの記載からみて、刊行物1には、「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に微粉状の磁性体微粒子を分散してなる平均粒径50μmのキャリアとトナーを混合した2成分系乾式現像剤を、
円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する電子写真現像方法。」化する電子写真現像方法。」
なる発明が記載されていると把握できる。
▲2▼刊行物2:本件発明と同一の樹脂分散型キャリアが記載されている。
第1頁左下欄の特許請求の範囲には、内部に磁石を有する現像スリーブを回転させることによりトナーと磁性キャリアからなる現像剤の搬送させて、静電潜像を現像する現像方法に用いるキャリアとして、磁性体微粉末とバインダ樹脂を主成分とするキャリアを用いることが記載されている。
第4頁左上欄第10行〜第12行には、バインダ樹脂としてアクリル系樹脂を用いることが記載されている。
第4頁右上欄第19行〜右下欄第7行の実施例1には、磁性体微粉末として平均粒径0.6μmのフェライトを用いて平均粒径60μmの樹脂分散型キャリアを得たことが記載されている。
第6頁右下欄第3行〜第18行には、図面に記載された現像装置が、円筒状スリーブとその内部に固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置であることが記載されている。
これらの記載からみて、刊行物2には、「
A:アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.6μmの磁性体微粒子を分散してなる平均粒径50μm以上(60μm)のキャリアとトナーを混合した2成分系乾式現像剤を、
B’:円筒状スリーブとその内部に固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する電子写真現像方法。」
なる発明が記載されていると把握できる。
▲3▼刊行物3:本件発明と同一の樹脂分散型キャリアが記載されている。
第4頁右上欄第4行〜第5行には、磁性分の平均粒径が0.1から3μmであることが記載されている。
第4頁右上欄第10行〜第14行には、キャリアの結着樹脂としてアクリル系樹脂を用いることが記載されている。
第4頁左下欄第18行〜右下欄第1行には、キャリアの平均粒径が60〜150μmであることが記載されている。
▲4▼刊行物4:本件発明と同一の樹脂分散型キャリアが記載されている。
第3頁右上欄第2行〜第3行には、磁性分の平均粒径が0.1〜3μmであることが記載されている。
第3頁右上欄第9行〜第13行には、キャリアの結着樹脂としてアクリル系樹脂を用いることが記載されている。
第3頁左下欄第16行〜第19行には、キャリアの平均粒径が60〜150μmであることが記載されている。
▲5▼刊行物5:円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置が、第3図及び第4図に記載されている。
▲6▼刊行物6:円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置が、第5図に記載されている。
▲7▼刊行物7:円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置が、第3図〜第13図に記載されている。
▲8▼刊行物8:円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置が、第3図に記載されている。
▲9▼刊行物9:円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に2成分現像剤を担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化する現像装置が、第2図に記載されている。
なお、「円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材」において、「凹部を有する」ものを採用することについての周知文献として、特開昭57-116374号公報、実願昭56-141004号(実開昭58-45548号公報)のマイクロフィルム及び特開昭60-146276号公報等を引用した。
そこで、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明と、各刊行物記載の発明とを以下対比・検討する。
刊行物1は、キャリアの静電潜像上への付着を改善することが記載されているものの、キャリアの磁化を制御することによりキャリアオーバー現象を改善することものであって、現像磁極として凹部を有する現像磁極を使用することは記載も示唆もされていない。
また、同刊行物にはキャリア粒子の粒径の上限として50μmが記載されているものの、実施例2として実証されたキャリア粒径は30μmのものであり、磁性粉としてフェライトを少量用いただけのものであり、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明のように、キャリア粒子中に含有させる磁性粉として小さい粒径の酸化鉄を高含有量で用い、かつキャリア自身の粒径を大きくして保持力を向上させる技術思想は存在しない。
また、刊行物2乃至刊行物4においても、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明の技術思想を示唆する記載は認められない。
なお、反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材に凹部を有するものを採用することは前記文献により周知であるとしても、磁性トナーを用いた現像装置に係るものであり、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明の二成分現像剤を用いる装置におけるように特定のキャリアと組み合わせることでの格別な効果を示唆するものとはいえない。
次に、刊行物2は、確かにアクリル系樹脂中に0.1〜3μmの磁性フェライト粉を分散した粒径が60〜150μmの分散型キャリア粒子が記載されており、このキャリア粒子によりキャリア粒子の感光体上の静電潜像上へのキャリア付着を防止することが記載されているものの、現像装置における現像ニップの固定磁石において、凹部を有する固定磁石を使用することについての記載はなく、キャリア中の特殊なフェライトによる磁化と保持力の制御を行うことを主眼点とするものであり、酸化鉄を使用することは比較例に止まるものである。
また、刊行物5乃至刊行物9には、反発型現像磁極を複数の同極磁極が併設された形態のものであり、特許権者が特許異議意見書中で主張するごとくに、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明のように、急激な磁力線変化が生じずに、弱い同極の磁力線が形成されることで、山から山でのキャリア粒子のジャンプによる移動でなく、凹部に形成された弱い磁力線にそったなだらかな移動を期待し得るものであって、高い現像効率を確保しつつ磁力線の谷部でのキャリア粒子の離れを抑制し得るものではない。
そして、本件訂正特許明細書の請求項1に記載される発明は、特許明細書に記載されるごとくに、小粒径キャリアを用いた場合の長所である細線再現性、べた部の再現性の良さを全く低下させることなく、感光体へのキャリアの付着を防止でき、帯電性を維持することができ、長期にわたって良好な画像を得ることができる、等の格別な作用効果が得られるものである。
したがって、本件請求項1に記載される発明が、刊行物1記載のものと刊行物2乃至刊行物4記載の周知事項の組合せ、あるいは刊行物2記載のものと刊行物5乃至刊行物9に記載の周知事項の組合せであるとはいえず、またこれらの刊行物記載のものから当業者が容易に想到し得るものともいえない。
オ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(3)特許異議申立の理由について
(3-1)理由の概要
特許異議申立人は、証拠として
甲第1号証:特開昭60-131548号公報
甲第2号証:特開昭60-147750号公報
甲第3号証:特開昭61- 53653号公報
甲第4号証:特開昭61- 53654号公報
甲第5号証:特開昭58- 46350号公報
甲第6号証:特開昭57- 22251号公報
甲第7号証:特開昭54- 95243号公報
甲第8号証:特開昭51- 43151号公報
及び
甲第9号証:特開昭50-110642号公報を提出し、本件請求項1に記載される発明は、第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。
(3-2)特許異議申立人が提出した甲号各証記載の発明
特許異議申立人が提出した甲号各証は、各々当審で取消理由通知及び訂正拒絶理由通知に刊行物1乃至刊行物9として採用したと同じ文献である。
(3-3)訂正明細書の請求項1に記載される発明
訂正明細書の請求項1に記載される発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された前記「(2)訂正の適否」における「ウ.訂正特許明細書に請求項1に記載される発明」に示したとおりのものである。
(3-4)本件発明と特許異議申立人が提出した甲号各証記載の発明との対比・判断
本件訂正明細書の請求項1に記載された発明は、その特許請求の範囲の請求項1記載に「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする」と限定されるごとくに、
キャリア粒子中に含有させる磁性粉として小さい粒径の酸化鉄を高含有量で用い、かつキャリア自身の粒径を大きくして保持力を向上させるとともに、凹部を有する磁石部材を用いることで、凹部で急激な磁力線変化が生じないで、凹部でも弱い同極の磁力線が形成されるようにすることで、特定キャリアと凹部を有する現像磁極の組合せによる格別な作用効果を得られるものである。
これに対して、特許異議申立人が提出した甲号各証には、前記「(2)訂正の適否」における「エ.独立要件の判断」で指摘したように、本件訂正明細書の請求項1に記載された発明における構成要件の組合せが記載も示唆もないことからして、特許異議申立人の主張は採用できない。
以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、特許異議申立人が提出した甲号各証に記載された発明であるとはいえず、また、それらから当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。
(4)むすび
以上のごとくであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子写真現像方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアをトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。
【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
本発明は2成分系乾式現像剤を用いる電子写真現像方法に関する。
【従来の技術】
電子写真法あるいは静電記録法において、感光体あるいは静電記録体に形成された静電潜像を磁気ブラシ現像法により現像し、顕像化した像を転写体に転写した後、定着し、複写物を得る方法は、周知である。
現像に用いる現像剤としては、キヤリヤとトナーからなる2成分現像剤が一般に用いられているが、これはキヤリヤとトナーを現像装置内で撹拌することにより摩擦帯電させ、トナーに静電潜像と逆極性の電荷を付与して静電潜像に付着せしめ、現像を行うものである。このような2成分系現像剤のキヤリヤとしては、通常トナーより粒径の大きい100ないし500μmのものが用いられるが、粒径の大きなキヤリヤを用いた場合には、静電潜像中の低電位部分の現像性が悪く、階調再現性が劣るという欠点がある。又、トナーのキヤリヤに対する割合が増加すると、非画像部へのトナー付着、いわゆるカブリ現象が生じ易く、更に長時間使用すると、帯電量の低下が生じ、像濃度再現性が低下するとともに背景部分へのカブリ現像が発生するという欠点があつた。
これらの欠点を解消する目的で、キヤリヤの重量を減ずること、あるいはキヤリヤの粒径を小さくすること等の試みがなされている。例えば特開昭48-68235号公報には、大粒径キヤリヤにトナーの粒径とほぼ等しい小粒径キヤリヤを混合したキヤリヤを用いた磁気ブラシ現像剤が記載されている。この現像剤は、階調再現性がよく、キヤリヤにトナーが付着する現像が生じにくく、帯電性の変化が少ない利点を有している。又、特開昭54-66134号公報及び特開昭55-32073号公報には、キヤリヤ粒子として、結着樹脂中に磁性粉を分散させた、粒径が例えば5〜40μmの範囲にある粒子を用いて磁気ブラシ現像を行う方法が記載されている。この現像法は、階調再現性に優れ、キヤリヤ粒子が潜像面に付着しにくいという利点を有している。
【発明が解決しようとする問題点】
しかしながら、特開昭48-68235号公報に記載の現像剤を用い、長時間磁気ブラシ現像を行うと、小粒径キヤリヤが潜像に付着してしまい、現像剤中の小粒径キヤリヤの含有量が徐々に減少し、小粒径キヤリヤを混合した効果がなくなり、大粒キヤリヤを用いたときと同様の欠点を生じてくる。
一方、特開昭54-66134号公報及び特開昭55-32073号公報に記載されている現像法は、高速現像を行う場合、種々の欠点を有する。すなわち、現像ロールとしてスリーブと内部固定磁石を有し、スリーブを回転させて現像剤を搬送するタイプのものを用いると、たとえこのようなキヤリヤを用いたとしても、キヤリヤ粒子の潜像面への付着が生じ、更に帯電性の変化が生じたり、あるいは現像領域でのトナーの絶対量が減じたりして、長時間磁気ブラシ現像を行うと、画像濃度の低下あるいはカブリの発生などの現像を呈するものであつた。特に、現像磁極として凹部を有する反発磁極を用いた場合、この現像は関著であつた。
結着樹脂と、磁性体からなる小粒径キヤリヤを含む現像剤を用いて、耐久性テストを行った場合、複写枚数の増加に従つて、画像濃度の低下、濃度ムラ、カブリ等の発生がみられるが、これはトナー帯電量の低下によるものと考えられる。すなわち現像剤中のキヤリヤの絶対量が付着によつて低下するために、トナーとキヤリヤが十分に摩擦帯電されなくなることに起因すると考えられる。従つて、本発明の目的は感光体上へのキヤリヤ付着による画質劣化、カブリ、白ヌケ現象あるいは実質的な帯電量の低下による現像剤寿命低下等の欠点が改善された電子写真現像方法を提供することにある。
【問題点を解決するための手段】
本発明の目的は、アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアをトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電線像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法によって達成することができる。すなわち、本願発明者らはアクリル系結着樹脂中に磁性酸化鉄粉を70〜95重量%分散させた比較的大粒径のキヤリヤとトナーからなる2成分現像剤を用いた場合に、同じく結着樹脂と磁性粉からなる50μm以下の粒径を有する分散型キヤリヤを用いた場合に比べて、細線再現性および帯電量の低下によつて起こると考えられる現像剤寿命の低下、高湿下でのカブリ現象等の全ての点において優れていることを発見し、この知見に基づいて本発明を完成したのである。
また、上記現像剤を用いた場合には、公知の任意の磁気ブラシ現像法を採用したときに上記の効果がみられるものの、現像方法として特に円筒状スリーブとその内部に固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上にトナーを担持させ、円筒状スリーブを回転させることにより静電潜像担持体表面にトナーを接触させて顕像化せしめる現像方法を用いた場合に顕著な効果がみられた。
さらに、磁石部材が現像ニツプ位置において反発磁界を形成し、凹部を有するように配設されている場合に一層良好な結果が得られた。本発明において用いられる現像剤キヤリヤの結着樹脂はアクリル系重合体を主成分として構成される。
本発明に係るキヤリヤの結着樹脂として用いられるアクリル系重合体はアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの単独重合体あるいは共重合体であり、これらアクリル系重合体を構成するモノマーの具体例として次の各化合物を挙げることができる。
すなわち、アクリル酸、メタクリル酸のアルキルアルコール、ハロゲン化アルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、アラルキルアルコール、アルケニルアルコールの如きアルコールとのエステル化物等が挙げられる。そして、前記エステルを構成するアルコールの具体例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコールの如きアルキルアルコール;これらアルキルアルコールを一部ハロゲン化したハロゲン化アルキルアルコール;メトキシエチルアルコール、エトキシエチルアルコー
ル、エトキシエトキシエチルアルコール、メトキシプロピルアルコール、エトキシプ口ピルアルコールの如きアルコキシアルキルアルコール;ベンジルアルコール、フエニルエチルアルコール、フエニルプロピルアルコールの如きアラルキルアルコール;アリルアルコール、クロトニルアルコールの如きアルケニルアルコールが挙げられる。
前記のアクリル系モノマーは1種または2種以上が用いられるが、必要に応じて他の共重合可能なモノマーの1種又は2種以上を用いても良い。この場合、アクリル系モノマーが全モノマーの50重量%以上、好ましくは60重量%以上を占めることが望ましい。
他の共重合可能なモノマーの具体例として、次の化合物を挙げることができる。
すなわち、スチレン及びその誘導体、例えばメチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン。ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレンの如きアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレンの如きハロゲン化スチレン、更にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等が挙げられる。
また重合性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、α-エチルアクリル酸、クロトン酸、α-メチルクロトン酸、α-エチルクロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、ウンゲリカ酸の如き付加重合性不飽和脂肪族モノカルボン酸、又はマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、ジヒドロムコン酸の如き付加重合性不飽和脂肪族ジルカボン酸が挙げられる。
また、これらカルボン酸を金属塩化したものも用いることができ、この金属塩化は重合の終了後に行うことができる。
また、前記付加重合性不飽和カルボン酸とアルキルアルコール、ハロゲン化アルキルアルコール、アルコキシアルキルアルコール、アラルキルアルコール、アルケニルアルコールの如きアルコールとのエステル化物等が挙げられる。
更に、前記付加重合性不飽和カルボン酸より誘導されるアミド及びニトリル;エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレンの如き脂肪族モノオレフイン;塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、1,2-ジクロルエチレン、1,2-ジブロムエチレン、1,2-ジヨードエチレン、塩化イソプロペニル、臭化イソプロペニル、塩化アリル、臭化アリル、塩化ビニリデン、弗化ビニル、弗化ビニリデンの如きハロゲン化脂肪族オレフイン;1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,4-へキサジエン、3-メチル-2,4-ヘキサジエンの如き共役ジエン系脂肪族ジオレフインが挙げられる。
更に酢酸ビニル類、ビニルエーテル類;ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルピロリドン等の含窒素ビニル化合物が挙げられる。
キヤリヤの粒径は、平均粒径として60μm以上が必要であるが感光体へのキヤリヤの付着や画質上の観点から、好ましくは60〜150μmである。60μm以下の平均粒径を有する場合には、感光体への付着現象が生じ、現像剤の寿命が短かくなる。
又、結着樹脂中に分散される磁性粉としては、磁性酸化鉄が使用される。例えばマグネタイト、ガンマヘマタイトがあげられる。これ等磁性粉は平均粒径が0.05μ〜5μ、好ましくは0.1μ〜1μがよい。又、キヤリヤ全成分中、磁性粉の占める割合は、70〜95重量%、好ましくは、70%〜90%重量%が良い。
これ等磁性粉と結着樹脂からなるキヤリヤは種種の方法により製造することができる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル、エクストルーダーなどにより樹脂と磁性粉を溶融混練し、冷却後粉砕し、分級する方法、あるいは樹脂溶液中に磁性粉を混合分散した後、噴霧乾燥するスプレードライ法、あるいは結着樹脂を構成すべき単量体と樹脂分などの所定材料を適当な溶媒中に分散し、この懸濁液を重合させることにより、所望のキヤリヤを得る懸濁重合法などが適用可能である。又、キヤリヤの粒径を調整する方法としては、溶融混練後の粉砕条件を制御することにより調節したり、分級により所望の粒径のものを得たり、あるいは予め、粒度分布の異なる複数種のキヤリヤを作成しておき、混合することにより、所望の粒度分布を有するキヤリヤを得るなどの方法がある。
本発明では前記のキヤリヤはそのままキヤリヤ粒子として用いることもできるがキヤリヤ表面を樹脂、カツプリング剤、界面界性剤、帯電制御剤、微粉末等で表面処理あるいは被覆処理を施すこともできる。
また、キヤリヤ粒子は球形化処理を施した球形のものが好ましい。
本発明に用いるトナーとしては、結着樹脂中に着色剤を分散した微細な粒子であつて、例えば平均粒径が3〜20μm、好ましくは5〜18μmのものが用いられる。 トナーに用いる結着樹脂としては、公知のものはいずれも使用可能である。たとえば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、アミノスチレン等のスチレン及びその誘導体の単独重合体あるいは共重合体、メタクリル酸及びメチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸及びメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸エステル類、ブタジエン、イソプレン等のジエン類、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、マレイン酸及びマレイン酸エステル類、無水マレイン酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、シリコン樹脂、フツ素系樹脂、フエノール樹脂、石油樹脂、ロジン及びその誘導体、合成及び天然のワツクス状物質などを単独若しくは混合した形で用いることができる。
又、着色剤としては、カーボンブラツク、オイルブラツク、黒鉛などの黒色系染顔料、ニグロシン染料、アニリンブルー、アルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレツド、キノリンイエロー、メチレンブルー、フタロシアニンブルー、マラカイト、ランプブラツク、ローズベンガル等のほか、C,I.ピグメントイエロー1、同3、同74、同97、同98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料、C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料、C.I.ソルベントイエロー19、同77、同79、C.I.デイスパースイエロー164等の黄色染料、C.I.ピグメントレツド48、同49:1、同53:1、同57:1、同81、同122、同5等の赤色もしくは紅色顔料、C.I.ソルベントレツド52、同58、同8等の赤色系染料、C.I.ピグメントブルー15:3、同フタロシアニン及びその誘導体あるいは変性体などの青色系顔料等、及びその他の有色若しくは無色の昇華性染料等をあげることができる。
更にトナー中に種々の添加剤を加えることができる。添加剤としては、帯電制御剤、流動性向上剤(シリカ、アルミナ等)定着助剤(ワツクス類)、可塑剤等をあげることができる。
トナーは前述のキヤリヤの製造法と同様の方法で作成でき、又、芯材と壁材とからなる、いわゆるマイクロカプセルトナーであつても良い。
トナーとキヤリヤとの配合はキヤリヤ100重量部に対し、トナーが2〜30重量部、好ましくは3〜20重量部になる様にするのが良い。
更に、本発明に係る現像剤には、外添剤を添加しても良い。この外添剤としては、研磨剤、流動性向上剤あるいはフイルミング防止剤等、通常用いられる外添剤をあげることができる。
本発明に好適に用いることのできる外添剤は、アルミナ、シリカ、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル系重合体あるいは共重合体の微粉末である。
本発明の現像方法が適用される電子写真プロセスを図面に基いて説明する。
第1図は本発明の電子写真現像方法を実施する装置例の概要図である。感光体1は表面に光導電層を有しており、プロセス方向に沿つてまず帯電装置2を通過する。
帯電装置2はコロナ放電を発生させる機構を有しており、通過した感光体1の光導電層は一様に帯電される。
その後一様に帯電された光導電層には露光スリツト3を通過することにより、その光導電性を利用して画像情報に相当する静電潜像が形成され、次の現像部へと搬送される。現像部は、現像剤の供給源4をその内部に具備するハウジング5、現像剤及び現像剤を担持する現像ロール6から構成されており、現像部へ搬送されてきた静電潜像を現像ロール表面に担持された現像剤により摺擦することによりトナーを潜像に静電気力により付着させ、潜像を可視化する。可視化された画像部は次いで給紙部7から給紙ロール8を介して搬送されてきた転写材と、転写装置部分において接触する。転写装置9もコロナ放電を発生する機構を有している。転写装置を通過する潜像に対応したトナー像は転写材上に吸引され転写材上にトナー画像が形成される。
次いで剥離部材10によって転写材は感光体から剥離され、定着器11に搬送され、加熱もしくは加圧により転写材上に永久的トナー画像が形成される。
前記電子写真プロセスにおいて、本発明の現像方法に用いる現像部は現像剤の供給源4をその内部に具備するハウジング5、現像剤及び現像剤を担持する現像ロール6から構成されているが、現像ロールは第2図に拡大図を示すように現像剤を担持する非磁性導電性円筒状の現像スリーブ12およびその内部に配設された磁石部材13からなつており磁石部材の磁気吸引力によつて現像スリーブ12上に現像剤が担持され、磁気ブラシを形成している。本発明の現像方法においては、特にスリーブ内部の磁石部材は固定配設されていて、外側スリーブが回転することにより現像剤の搬送が行われ、感光体に面した現像領域に現像剤を供給する方式が用いられ、この方式により本発明の現像剤中のキヤリヤが感光体表面へ付着するのを有効に防止でき、また現像剤の帯電量を低下させることなく、長期にわたつて非常に良好な画像を得ることができる。
スリーブ内部に固定配設された磁石部材は、第3図に示すごとく凹部を設けて反発磁界を形成する様配設されていることが望ましい。この様な現像領域において反発磁界を形成する様配設する磁石部材は凹部を設けて反発磁界を形成するものであれば、どの様な形状のものでも使用可能であり、例えば第4図(a)及び(b)に示す形状のものが利用できる。
【発明の効果】
磁石を固定してスリーブを回転せしめる現像方式の場合に、従来結着樹脂と磁性粉とからなる比較的小粒径のキヤリヤを含む現像剤を用いた場合に生じていたキヤリヤの感光体への付着、帯電量が低下することによる画像劣化(濃度低下、カブリの早期発生)等の現象が本発明の方法によりキヤリヤ粒子としてアクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に磁性粉を分散せしめた比較的大粒径(60μm以上)のキヤリヤを用いることにより改善された。すなわち、小粒径キヤリヤを用いた場合の長所である細線再現性、べた部の再現性の良さを全く低下させることなく、感光体へのキヤリヤの付着を防止でき、帯電性を維持することができ、長期にわたつて良好な画像を得ることができる。
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
メチルメタアクリレート/スチレン=80/20(重量比)の共重合体(重量平均分子量約2万)30重量部と磁性酸化鉄微粉(平均粒径0.4μm)70重量部を加熱混練する。この混練物を180℃に加熱した溶融液を冷風処理スプレードライヤーを用いて微粉化し、得られた粉末を篩分して平均粒径100μm、粒度範囲53〜200μmの本発明に係るキヤリヤ(サンプル1)を得た。
このキヤリヤを他の従来から知られているキヤリヤ、すなわち絶縁性キヤリヤ(CuZnフエライトコアに実施例と同じ共重合体をコーテイングした平均粒径90μmのキヤリヤ:サンプル)、入導電性キヤリヤ(平均粒径100μmの酸化鉄粉:サンプル3)および磁性微粒子分散小粒径キヤリヤ(実施例と同じ組成のキヤリヤ、重合体と磁性粉を溶融混練した後粉砕分級した平均粒径25μmのもの:サンプル4)と共に現像剤として評価した。
トナーとしてはスチレン-アクリル樹脂とカーボンブラツクとのみからなる平均粒径11μmのものを用い、マイクロトーニング用キヤリヤのみトナー濃度を10重量%として、他のキヤリヤについては全てトナー濃度を3重量%の割合で混合し現像剤とした。
これらの現像剤について、第1図に示す構成の装置で感光体速度350mm/sec及び磁石固定磁気スリーブ速度550mm/secとして、初期の帯電量、ソリツド画像濃度、背景部汚れ、細線再現性および感光体へのキヤリヤの付着性、および5万枚ランニング時の帯電量、ソリツド画像濃度、背景汚れ、細線再現性を評価し、更に高湿(30℃、80%R.H.)及び低湿(10℃、30%R.H.)環境条件でもテストを行ない、次表に示す結果を得た。

【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の電子写真現像方法を実地する装置例の概要図、第2図は現像ロール部分の拡大図、第3図は現像ニツプ部の拡大図、第4図(a)及び(b)はそれぞれ反発磁界を形成する凹部を有する現像磁石の構成例を示す。
図中符号:
1……感光体;2……帯電装置;
3……露光スリツト;4……現像剤供給源;
5……ハウジング;6……現像ロール;
7……給紙部;8……給紙ロール;
9……転写装置;10……剥離部材;
11……定着器;12……現像スリーブ;
13……磁石部材。
【図面】





 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.訂正事項a
本件特許掲載公報第1頁特許請求の範囲請求項1の
「1.アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性体粒子を分散してなる平均粒径50μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。」を、
特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法。」
と訂正する。
2.訂正事項b
本件特許掲載公報第2頁第3欄第33行乃至第35行における記載
「特に、現像磁石として反発磁界あるいは幅広磁石を用いた場合、この現像は関著であった。」を、訂正事項aの訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「特に、現像磁石として凹部を有する反発磁界を用いた場合、この現像は関著であった。」と訂正する。
3.訂正事項c
本件特許掲載公報第2頁第3欄第48行乃至第4欄第5行における特許請求の範囲を引用する記載
「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性体粒子を分散してなる平均粒径50μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法」
を訂正事項aによる訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、同様の記載、
「アクリル系重合体を主成分とする結着樹脂中に平均粒径が0.05〜5μmの磁性酸化鉄微粒子を70〜95重量%分散してなる平均粒径60μm以上のキャリアとトナーと混合した2成分系乾式現像剤を、円筒状スリーブとその内部に現像ニップ位置において反発磁界を形成するように固定配設された凹部を有する磁石部材とからなる現像ロール上に担持しながら前記円筒状スリーブを回転させることによって静電潜像を顕像化することを特徴とする電子写真現像方法」と訂正する。
4.訂正事項d
本件特許掲載公報第2頁第4欄第22行乃至第24行における
「反発磁界を形成するように」を、訂正事項aの訂正に伴い、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「反発磁界を形成し、凹部を有するように」と訂正する。
5.訂正事項e
本件特許掲載公報第3頁第5欄第49行乃至第6欄第12行の記載
「キャリアの粒径は、平均粒径として50μm以上が必要であるが感光体へのキャリアの付着や画質上の観点から、好ましくは50〜200μm、より好ましくは60〜150μmである。50μm以下の平均粒径を有する場合には、感光体への付着現象が生じ、現像剤の寿命が短くなる。
又、結着樹脂中に分散される磁性粉としては、従来磁性体として用いられているものがいずれも使用可能であるが、例えばマグネタイト、ガンマヘマタイト、ベンガラ、酸化クロム、ニッケル、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル合金などがあげられる。これ等磁性粉は平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmがよい。又、キャリア全成分中、磁性粉の占める割合は、30〜95重量%、好ましくは、45〜90重量%が良い。」
を、不明りような記載の釈明を目的として、
「キャリアの粒径は、平均粒径として60μm以上が必要であるが感光体へのキャリアの付着や画質上の観点から、好ましくは60〜150μmである。60μm以下の平均粒径を有する場合には、感光体への付着現象が生じ、現像剤の寿命が短くなる。
又、結着樹脂中に分散される磁性粉としては、磁性酸化鉄が使用される。例えばマグネタイト、ガンマヘマタイトがあげられる。これ等磁性粉は平均粒径が0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmがよい。又、キャリア全成分中、磁性粉の占める割合は、70〜95重量%、好ましくは、70〜90重量%が良い。」と訂正する。
6.訂正事項f
本件特許掲載公報第4頁第8欄第30行乃至第36行の記載
「スリーブ内部に固定配設された磁石部材は、第3図に示すごとく反発磁界を形成する様配設されていることが望ましい。この様な現像領域において反発磁界を形成する様配設する磁石部材は反発磁界を形成するものであれば、どの様な形状のものでも使用可能であり、例えば第4図(a)、(b)及び(c)に示す形状のものが利用できる。」
を、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「スリーブ内部に固定配設された磁石部材は、第3図に示すごとく凹部を設けて反発磁界を形成する様配設されていることが望ましい。この様な現像領域において反発磁界を形成する様配設する磁石部材は凹部を設けて反発磁界を形成するものであれば、どの様な形状のものでも使用可能であり、例えば第4図(a)及び(b)に示す形状のものが利用できる。」と訂正する。
7.訂正事項g
本件特許掲載公報第4頁第8欄第45行乃至第46行の記載
「比較的大粒径(50μm以上)」を、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「比較的大粒径(60μm以上)」と訂正する。
8.訂正事項h
本件特許掲載公報第6頁第11欄第4行乃至第5行の記載
「第4図(a)、(b)及び(c)はそれぞれ反発磁界を形成する現像磁石」
を、不明りょうな記載の釈明を目的として、
「第4図(a)及び(b)はそれぞれ反発磁界を形成する凹部を有する現像磁石」と訂正するとともに、第4図(c)を削除する。
異議決定日 1999-06-11 
出願番号 特願昭61-138178
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G03G)
P 1 651・ 113- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 信田 昌男  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 水垣 親房
小橋 立昌
登録日 1997-10-17 
登録番号 特許第2707244号(P2707244)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 電子写真現像方法  
代理人 小田 富士雄  
代理人 早川 明  
代理人 早川 明  
代理人 小田 富士雄  

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