• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1028101
異議申立番号 異議1999-73621  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-03-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-24 
確定日 2000-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2873607号「納豆製造方法」の請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2873607号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.本件発明
特許第2873607号(平成2年7月4日出願、平成11年1月14日設定登録)の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。

II.特許異議申立ての概要
特許異議申立人中村宏毅は、下記甲第1〜5号証を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第2〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきである旨主張している。



甲第1号証:特許第2873607号公報(本件特許公報)
甲第2号証:実開昭60-150035号明細書マイクロフィルム
甲第3号証:特開平2-138948号公報
甲第4号証:実開平59-87463号明細書マイクロフィルム
甲第5号証:実開平2-10262号明細書マイクロフィルム

III.特許異議申立ての検討
まず、上記甲2〜5号証に記載された事項を見るに、甲第2号証の実用新案登録請求の範囲の請求項1には、「紙と熱可塑性樹脂発泡多孔フィルムを長手方向に延伸して製造した無数のモノフィラメントの不規則で極微細なな網目状構造を有する不織布の多数枚と、孔径0.05〜5mmの細孔を多数有する熱可塑性樹脂フィルムとを積層し、これらを熱接着することによって通気性、保湿性を主として調節することを特徴とする発酵食品の包装材」、同請求項2には「紙を表面に用い、熱可塑性フィルムを裏面に用い、紙と熱可塑性フィルムとの間に多数の不織布をはさみ、これらを積層した実用新案登録請求の範囲第1項記載の発酵食品の包装材。」と記載されている。
また、発砲スチロール容器(以下PSP容器という)を使用した納豆の従来の製造方法として、「煮沸され菌を接種されてPSP容器に充填された豆は通常40分以内に発酵ムロに入れて発酵させる」と記載され(第14頁第17〜19行)、当該考案に係る包装材を使用した場合の納豆の製造方法については、「前述した通りである」とあり(第17頁第11〜12行)、PSP容器の場合と同様に、上記包装材を使用した場合であっても発酵ムロに入れて発酵させる旨が記載されている。
また、上記紙については、「通常、包装紙として使用されるものであれば何でもよく、・・・通気性、保湿性、・・・が異なるので、使用目的に従って適宜選択する。」(第7頁第3〜7行)と、又、上記不織布については「綿のように保湿性を有するなどの優れた特性を有している」(第8頁第8行〜第9頁第2行)と記載されている。
甲第3号証には、大豆を入れて発酵させる容器として、蓋及び底に多数の孔が設けられた容器が記載され(特許請求の範囲 請求項1、第2頁右下欄第1行目、及び、第4図)、当該容器の蓋の穴によって納豆菌への空気供給が行われ、底に設けられた穴は囲まれた空間への熱の供給を円滑にするためのものであること(第2頁右下欄第1〜4行)、容器内の底に漏斗型袋を入れ、該袋の開口部が作る空間に大豆を入れて納豆菌を混合し、穴あきフィルムで覆うこと(特許請求の範囲 請求項1、第2頁左下欄第16行、及び、図4)が記載されている。
甲第4号証には、納豆容器に使用するフィルムとして、十字型の多数の細孔(第3頁第10行、及び、第3図参照)を設けたものが記載されている。
甲第5号証には、「ポリエステルのような耐熱性で毒性のない合成樹脂材料から通気性のよい不織布を形成し、該不織布で袋体を構成すると共に、袋体には切込みによる十文字状の多数の切れ目を散在せしめたスープ用ガラ袋」(実用新案登録請求の範囲請求項(1))、「前記袋体の切れ目がY字状である請求項(1)記載のスープ用ガラ袋」(同請求項(2))に係る考案が記載され、十文字状切込の作用として、「十字状に切断されている4個の揺動片は、通常は閉塞しているが、袋体内外の圧力変化により弁のような作用を行うものであり、袋体1内外の熱湯の交流が適切に行われ、仮令、不織布の通気性が不十分となっても適度の交流が行われることとなる」(第6頁第7〜12行)ことが記載されている。
そこで検討するに、特許異議申立人のいうように、甲第2号証には、表面層が紙、中間層が不織布裏面層が特定の細孔有する熱可塑性フィルムからなる包装材で大豆を包装し発酵させて納豆を製造する方法が記載されており、甲第3号証には、多数の孔が設けられた容器に漏斗形袋を敷き、大豆及び納豆菌を入れた後、穴あきフィルムで覆い、更に、多数の穴を設けた蓋を被せて温室に入れ、豆を発酵させて納豆を製造する方法が記載されており、又、上記熱可塑性フィルムが保温性の包装シートといえるものであるとしても、これら甲号証には、納豆の製造にあたり、内外の圧力変化に応じて開閉自在な通気口となるH型、T型或いはY型の切込を多数穿設した包装シートで納豆菌を接種した蒸煮大豆を包むことを構成とすることは記載も示唆もない。
もっとも、当該相違点に関して、特許異議申立人は、甲第4号証には納豆容器に使用するフィルムとして十字型の多数の細孔を設けたものが記載され、食品に使用する袋に係る甲第5号証には、十文字状又はY字状の多数の切れ目を散在させたスープ用ガラ袋が記載され、その作用として上述の記載があり、本件請求項1に係る発明における切込の機能・作用と共通するから、甲第2号証に記載されている細孔を有するフィルムに代えて、内外の圧力変化に応じて開閉自在な通気口となるH型、T型或いはY型の切込を多数穿設した包装シートで納豆菌を接種した蒸煮大豆を包むことを構成とすることは、当業者が容易に想到しうる旨主張している。
ところで、シートの切込がH型、T型或いはY型のものは揺動片を形成できるので、シートによって内部と外部を隔てられる態様において使用される場合は、当該切込は開閉弁様作用をすると認められ、その機能は、甲第2号証における細孔(明細書の「孔径との記載からすると円形状のものと認められる)等の切込とは異なり独特のものになるといえる。
そして、納豆は、発酵製品であって、容器内部の発酵・熟成の調整は必ずしも容易ではない。特に、品質にむらのない上質の納豆を一度に(一個の容器あたり)多量製造する際には、容器内部をむらなく適切な状態に調整する必要があるが、そのための空気、水蒸気、熱等の管理は微妙であって、その調整は困難であると認められるところ、本件請求項1に係る発明は、H型、T型或いはY型の切込を有するシートで発酵させる大豆を包み込む構成をその一部として採用することにより、当該課題を達成したものである。
しかるに、上記甲第4号証におけるフィルムは大豆を包み込む態様のものではない。
又、甲第4号証には、フィルムによって、内部と外部が隔てられていることは記載されておらず、むしろ、当該明細書の「被覆片」等の記載からすると、フィルムは、単に、納豆上に置く形で被覆されているものと認められる。そして、フィルムを使用する目的・作用についても、納豆の品質保持、並びに、販売取扱中に雑菌ゴミ等侵入を防止するもの旨の記載しかなく、フィルムによって内部と外部が隔てられている場合のフィルムの切込の形状と納豆製造の発酵・熟成に与える影響との関係を想起させるに足る記載はない。
又、甲第5号証には、切込が袋体の内外圧力の差に応じて開閉弁様作用をすることについて記載されているが、甲第5号証に係る技術は、液体中で鶏ガラを煮沸するに際して採用されているものであり、上述のように微妙な発酵・熟成の調整が必要な納豆の製造にあたり当該開閉弁作用を有する切込がどのような影響をもたらすかを示唆する記載は甲第5号証にはない。
そうしてみると、上記相違点に係る構成は、甲第4号証及び甲第5号証から当業者がただちに想到し得たものとはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記切込に係る構成と共に請求項1で規定する他の構成を採用することによって当該課題を達成することができたものであり、その効果は、各甲号証又はその組み合わせからは予想される範囲のものではない。
してみれば、本件請求項1に係る発明の進歩性は、特許異議申立人の提出した証拠によって否定されるものではない。

IV.結び
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
又、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-28 
出願番号 特願平2-175253
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨永 みどり  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 大高 とし子
佐伯 裕子
登録日 1999-01-14 
登録番号 特許第2873607号(P2873607)
権利者 日本パック株式会社
発明の名称 納豆製造方法  
代理人 小田 治親  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ