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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特29条の2  A23L
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A23L
管理番号 1028102
異議申立番号 異議1999-73326  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-03 
確定日 2000-12-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第2864053号「包装容器入り納豆の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2864053号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 I.本件発明
特許第2864053号(平成3年3月5日出願、平成10年12月18日設定登録)の請求項1、2に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。

II.特許異議申立ての概要
特許異議申立人中村宏毅は、下記甲第1〜3号証を提出して、(イ)本件特許明細書には記載不備があり、本件請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第36条第4項乃至6項に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであるから、取り消されるべきである、又、仮に記載不備がないとしても、(ロ)本件請求項1、2に係る発明は、甲第2号証で示される先願に記載された発明と同一であり、その特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきである、旨主張している。



甲第1号証:特許第2864053号公報(本件特許公報)
甲第2号証:特開平3-240458号公報
甲第3号証:実開昭59-87463号明細書マイクロフィルム

III.特許異議申立ての検討
特許異議申立人の上記(イ)、(ロ)の主張について検討する。
(イ)についての検討
特許異議申立人は、上記記載不備に関し、具体的には、(a)特許請求の範囲の請求項1及び2における「微細」の範囲については何ら把握できず、発明の外縁が不明確であり、又、(b)特許請求の範囲の請求項1及び2における、「前記微細な通気部」がどの部分を受けるのかが明確でなく、「保温性に優れ且つH型、X型或いはY型の切込を全面に渡って多数穿設した微細な通気部」なのか、「H型、X型或いはY型の切込を全面に渡って多数穿設した微細な通気部」なのか理解できず、発明の外縁が不明確であると述べている。
(a)についての検討
本件明細書によれば、「微細」の程度の点に特徴があるものではなく、当業者が当該技術分野の技術常識を持って設定する程度のものと認められるので、特許異議申立人の主張は採用できない(明細書には、小蠅が入らない程度のものにすること、シート部材の硬さ、厚さ、弾性等の物理的性質により適宜設定される旨の記載がある(特許公報の第5欄【0012】参照)が、これら事項は、当業者が、発明の実施にあたり、当然考慮すべき範囲の事項である。)。
(b)についての検討
一般に、前述のものと異なるものを言及する際には、それがわかるよう記載するのが通常であるところ、本件においては特にその旨の記載もないから、「前記微細な通気部」は、「保温性に優れ且つH型、X型或いはY型の切込を全面に渡って多数穿設した微細な通気部」であると解するのが自然である。そして、発明の詳細な説明の項にも、例えば、発明の効果に係る【0024】には、「・・・発酵させるようにしたため、納豆菌による大豆発酵時に生じた熱や湿気を小型容器から逃がさずに保持・・・」と記載されているように、上記の解釈を裏付ける記載はあっても、これに反する事項は特に記載されていない。
してみれば、「前記微細な通気部」の意味するところは前示のとおりであり、明かであるといえるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ロ)についての検討
甲第2号証で示される先願明細書の特許請求の範囲の請求項1には、「大豆を蒸す工程と、蒸した大豆に納豆菌を混入する工程と、その大豆を、溶孔有孔加工による直径が100μ乃至500μの孔を多数有するプラスチックフィルムであって、その有孔率が0.8%乃至6.5%のもので覆った後、室に入れて発酵させる工程とからなる納豆製造方法」と記載されている。
又、発明の詳細な説明の項には、「本発明の納豆用トップシールは、プラスチックフィルムであって、溶孔有孔加工(フィルムの所望部分を溶かして孔を有するように加工すること)による直径が」(公開公報頁第2頁左下欄第1〜4行参照)と記載され、納豆をフィルムで覆う一手段として「納豆容器の上部の縁に接着剤により、あるいは熱溶着等により定着される」(同第3頁右上欄第10行目〜13行目参照)が記載されている。
そして、その[作用]の項には、「本発明にあっては、トップシールとして微小径の通孔を多数設けたプラスチックフィルムを使用することにより大豆又は納豆から発する水蒸気はまんべんなくかつ十分に外部に放出され、更に、ゴミや虫が混入できないという作用が生じる。本発明の納豆製造方法にあっては、上記作用の他、トップシールを大豆に被せる工程を室での発酵前に行うことを可能にする。」(同第2頁左下欄下から4行〜同右下欄第4行参照)と記載されている。
ここで、先願明細書の上記詳細な説明の項の孔に関する「直径」との記載からすると、当該孔は、円形状のものと考えるのが自然である。又、「トップシール」は、本件でいう「シート」に相当するものと認められる。
そうすると、本件請求項1及び2に係る発明と先願明細書に記載された発明とは、シートにおける通気部の形状が、本件請求項1、2においてはH型、X型或いはY型の切込であるのに対し、先願明細書では、円形状のものである点が相違している。
もっとも、当該相違点に関し、特許異議申立人は、フィルム業界全般において、フィルムに開ける孔の形状を種々の形状に変形することは頻繁になされることであり、特にH型、X型、Y型に切込を入れることは周知・慣用されており、納豆の包装フィルムにおいても、同様であること、このことは、例えば、納豆容器に関する公開公報である甲第3号証に「第3図は、「十字型」の多数の細孔を適当なピッチ間隔で通気孔4を配設した状態を示す。」(第3頁第9〜11行)との記載及び図3からも明かである旨、又、本件においては通気部をH型、X型、Y型としたことによる特別な効果は何ら記載されていないので、通気部の形状をH型、X型、Y型とすることは課題解決のための具体的手段における微差の範囲内である旨述べている。
そこで、検討するに、なるほど、一般に、フィルム業界における切込の形状は種々あり、期待する機能が切込の形状に影響されない場合は、当然ながら、その形状は適宜設定すれば足りるといえる。
ところで、本件請求項1、2に係る発明は、発酵むらのない、品質が一定の納豆を製造すべく、熱シールされたシートで隔てられた容器内で発酵を行うことを構成とするものであるが、その際、容器はフィルムによってその内外が隔てられ、容器内部圧力は、発酵のすすみ具合により変化すると認められる。
係る態様においては、切込がX型、Y型、H型のものは揺動片を形成でき、当該切込は内外圧の変化に対応して開閉弁様機能を奏することは明らかであるから、その機能は、円形等の切込とは異なり独特のものになるといえるし、その効果も同様とはいえない。
なお、甲第3号証に記載のフィルムは、当該明細書の「被覆片」等の記載によれば、単に納豆の上に被覆されているものと認められるので、甲第3号証は、当該フィルムが内外圧の変化に対応する態様において使用されること、及び、その際の効果を示すものとはいえない。
そうしてみると、H型、X型、Y型の切込とすることは、本件課題解決のための具体的手段における微差の範囲内のものとは認められない。
従って、特許異議申立人の(ロ)に係る主張も採用できない。

IV.結び
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
又、他に本件請求項1、2に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-28 
出願番号 特願平3-62371
審決分類 P 1 651・ 534- Y (A23L)
P 1 651・ 16- Y (A23L)
P 1 651・ 531- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 冨永 みどり  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 佐伯 裕子
大高 とし子
登録日 1998-12-18 
登録番号 特許第2864053号(P2864053)
権利者 日本パック株式会社
発明の名称 包装容器入り納豆の製造方法  
代理人 小田 治親  

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