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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23Q
管理番号 1028203
異議申立番号 異議2000-72139  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-22 
確定日 2000-12-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2980078号「移動案内装置」の請求項1乃至請求項4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2980078号の請求項1乃至請求項4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第2980078号については、昭和63年1月22日に出願された特願昭63-12137号(以下「原々出願という。)の一部につき平成8年6月17日に新たに出願された特願平8-177381号の一部について更に同9年9月19日に新たに出願され、同11年9月17日に設定の登録がされ、その後、同12年5月22日に株式会社ニコンより全請求項に係る特許について特許異議の申立てがされ、同12年9月11日付で取消しの理由が通知され、その指定期間内である同12年11月24日に意見書が提出された。
第2 本件発明
本件の請求項1乃至請求項4に係る発明(以下「本件発明1乃至本件発明4」という。)は、登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載された事項により特定される下記のとおりのものであると認める。
「【請求項1】 基準面を有する定盤と、前記基準面に沿って第1方向に移動する第1移動体と、前記基準面に垂直な方向に関して前記第1移動体を前記基準面に対して支持する第1静圧軸受と、前記第1移動体の前記第1方向への移動により前記第1方向に移動すると共に、前記第1移動体に対して第2方向に移動することにより前記基準面に沿って二次元的に移動する第2移動体と、前記第1移動体の前記第1方向への移動を前記第2移動体に伝達する第2静圧軸受と、前記基準面に垂直な方向に関して前記第2移動体を前記基準面に対して支持する第3静圧軸受と、前記第1移動体の前記基準面に対する姿勢を一定に保つために前記基準面に向けて前記第1移動体に予圧を与える第1予圧機構と、前記第2移動体の前記基準面に対する姿勢を一定に保つために前記基準面に向けて前記第2移動体に予圧を与える第2予圧機構とを有し、前記第2移動体は前記第2静圧軸受を取り付けるために前記第1方向に関して前記第1移動体の両側にそれぞれ設けられる複数の第1軸受取付板と、前記第3静圧軸受を取り付けるために前記基準面に垂直な方向に関して前記第1移動体と前記基準面の間に位置し、前記複数の第1軸受取付板のそれぞれに連結される第2軸受取付板を有し、第2予圧機構は前記第2軸受取付板に取り付けられていると共に、前記第2軸受取付板の前記基準面に対向する面の四隅に前記第3静圧軸受を配置し、複数の第2予圧機構を第1
及び第2方向に関して対称的に配置されていることを特徴とする移動案内装置。
【請求項2】 前記第1,第2及び第3静圧軸受は、多孔質の静圧空気軸受であることを特徴とする請求項1記載の移動案内装置。
【請求項3】 前記第1及び第2予圧機構は、磁力によって予圧を与えるための磁石を有することを特徴とする請求項1記載の移動案内装置。
【請求項4】 前記第1移動体及び第2移動体はそれぞれリニアモータで駆動されることを特徴とする請求項1記載の移動案内装置。」
第3 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として原々出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第1号証(特開昭61-209831号公報)、甲第2号証(特開昭59-73625号公報)、甲第3号証(特開昭61-214934号公報)、甲第4号証(特開昭62-75125号公報)、甲第5号証(特開昭61-290231号公報)、甲第6号証(特開昭59-101835号公報)、甲第7号証(特開昭62-276612号公報)、甲第8号証(実願昭60-69870号(実開昭61-186829号)のマイクロフィルム)及び甲第9号証(「電子材料別冊 1982年版 超LSI製造・試験装置ガイドブック」昭和56年11月10日 株式会社工業調査会発行 第117〜124頁)を提出して、本件発明1乃至本件発明4は、甲第1号証乃至甲第9号証記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1乃至請求項4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反して特許されたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
また、当審では、甲第1号証乃至甲第9号証を刊行物1乃至刊行物9として引用して上記取消しの理由を通知した。
第4 特許異議申立ての理由の検討
1 甲各号証の記載内容
(1) 甲第1号証
甲第1号証には、「移動テーブル装置」に関連して以下の事項が記載されている。
「<従来の技術>
従来のこの種移動テーブル装置は、第2図に示す如く、定盤6上の4辺に固定した縦横固定ガイド61a,61bにそれぞれ可動体7a,7bを取付け、縦横互いに対向する可動体7a,7aおよび7b,7b間に高さを違えて直交させた縦横可動ガイド8a,8bを架設し、両ガイド8a,8bの交叉部にテーブル9をスライド自在に係合支持している。斯るテーブル装置では、縦横2本の可動ガイド8a,8bを要し、構造が複雑且つ直角度の設定に高度な製作技術を要すと共に、特に、テーブル9の重心位置が高く、これが動的走り精度の悪化およびヨーイングの一因をなす等の問題を有す。」(第1頁右欄第7〜20行)
「<実施例の説明>
図面は本発明に係る移動テーブル装置を示し、定盤1上の対向辺に取付け固定した固定ガイド11上に駆動装置2,2を構成するリニアモータ21,21が平行して配設され、両リニアモータ21の可動体22,22には、それぞれ固定ガイド11および定盤1との対向面に空気噴出口を開設した空気軸受23を取付けて、両空気軸受23,23間に可動ガイド3が架設され、この可動ガイド3にテーブル4を支持すると共に、ガイド3とテーブル4との間にテーブル4を移行させる作動装置5を設けている。
作動装置5は、前記可動ガイド3をリニアモータ51にてなすと共に、その可動体52をテーブル4に取付けて構成され、テーブル4には、定盤1および可動ガイド3対向面に空気噴出口を有す空気軸受41を取付けている。」(第2頁左上欄第17行〜同右上欄第13行)
「然して、駆動装置における可動体22,22の動作により可動ガイド3はテーブル4と共に固定ガイド11方向に移行し、また、可動ガイド3に構成した作動装置5における可動体52の動作により、テーブル4は可動ガイド3の軸身方向に移行し、従って、両可動体22,52が作動することによってテーブル4は定盤1上の縦横任意の目標位置に移行する。」(第2頁左下欄第4〜11行)
「テーブル4は、従来の縦横可動ガイドの交叉部に支持した構成に比較して、重心が一段と低下して静的、動的走り精度が向上し、ヨーイングが抑えられ、以て、超精密位置決めを実現し得る等、構成簡易にして実用上の顕著な効果を有す。」(第2頁右下欄第4〜9行)
空気軸受23は、可動体22と可動ガイド3とを連結する部材に取付けられていること。(第1図)
これらの記載事項から、結局、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認める。
定盤1と、定盤1の上面に沿って定盤1上の対向辺に取付け固定した固定ガイド11方向にリニアモータにより移動する空気軸受23の取付け部を備えた可動ガイド3と、この可動ガイド3を前記固定ガイド11の側面及び定盤1の上面に対して案内支持する前記空気軸受23と、前記可動ガイド3の前記固定ガイド11方向への移動により前記固定ガイド11方向に移動すると共に、前記可動ガイド3に対してその軸身方向にリニアモータにより移動することにより前記定盤1の上面に沿って二次元的に移動するテーブル4と、前記可動ガイド3の前記固定ガイド11方向への移動を前記テーブル4に伝達すると共に前記テーブル4を前記可動ガイド3の側面及び定盤1の上面に対して案内支持する空気軸受41とを有し、前記空気軸受23は、前記可動ガイド3の軸身方向に関して離して取付けられ、両空気軸受23,23間に可動ガイド3が架設されている移動テーブル装置。
(2) 甲第2号証
甲第2号証には、「空気軸受平面案内」に関連して以下の事項が記載されている。
「次に本発明の実施例を図面について説明すると第4図において平坦な上面4aを有する台4上に固定された支持枠7に案内体となる四角柱形の固定体6が両端において支持されており、固定体6には箱形の可動体5が摺動自在に嵌合されている。可動体5の4方の内壁の内、上下の内壁5a,5bと固定体の6上、下の外壁6a,6bとの間は空気軸受を構成することなく単なる空隙となっており、可動体5の下面5fと台4の上面4aとによって構成される空気軸受面によって可動体5の上面5eに加わる荷重Wを支持するようになっている。
従って可動体5の上面5eに加わった荷重Wは第6図に示すように固定体2(当審注:「固定体6」の誤り。)に力を及ぼすことなく平坦な台4の上面4a上に受けとめられる。そのため可動体上面5eの変位量e″は可動体5の下面5fと台の平坦な上面4aとの間に構成される空気軸受の剛性K″のみによってあたえられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
尚可動体5の固定体による案内は可動体の内壁の内、左、右の側壁5c,5dと固定体の両側壁6c,6dとの間に構成される空気軸受によって行われるので、スライドとしての機能は損なわれることはない。また可動体5の内壁5c,5d及び下面5fの面に組込む空気軸受の形式は限定しない。」
(第2頁左上欄第12行〜同右上欄第18行)
上記記載事項から、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると認める。
箱形の可動体5は固定体6の両側壁6c,6dとの間に構成される空気軸受を取り付けるために固定体6の両側にそれぞれ設けられる複数の第1軸受取付板と、台4の平坦な上面4aとの間に構成される空気軸受を取り付けるために前記上面4aに垂直な方向に関して前記固定体6と前記上面4aの間に位置し、前記複数の第1軸受取付板のそれぞれに連結される第2軸受取付板を有する空気軸受平面案内。
(3) 甲第3号証
甲第3号証には、「静圧空気軸受」に関連して以下の事項が記載されている。
「空気軸受では、軸受機構の共振周波数を高め、制御特性を向上させるために軸受剛性を大きくする必要があるが、自浮上形軸受では、不可重量Wを大きくすると、軸受剛性が大きくなるが、反面、装置が重くなって高速化、小型化が困難になるという問題点があった。
この問題点を解決するため、従来、軸受パッド部に磁石を組み込み、固定ベースに鉄等の磁性体を用いて、固定べースと軸受パッド部との間に磁気吸引力を発生させることにより負荷重量Wを見かけ上増加させ、これによって、空気軸受の高剛性化を計る構造の空気軸受が提案されている。」(第2頁右上欄第3〜15行)
「第1図および第2図において、2は軸受パッドであって、位置決め装置の可動部3に・・・固定されており、・・・・・・・。4は、軸受パッド2の軸受パッド面であって、外周部には4個の扇形の真空ポケット部が対称的に配置されている。真空ポケット部には、それぞれ1個の真空排気口5aが設けられており、この真空排気口5aは真空排気導孔5bを介して図示しない真空ポンプ等の真空源に接続されている。6は圧縮空気吹出用のオリフイスであって、軸受パッド面4の中心に形成されており、図示しない圧縮空気源に接続されている。」(第2頁右下欄第3〜14行)
「次に動作説明を行なう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。つまり、軸受パッド2と固定べース1とは、非接触に案内支持されることになる。・・・・・。この状態において、真空排気孔5aを介して真空源により、真空排気を行なうと、真空ポケット部5内が負圧になり、軸受パッド2と固定ベース1との間には吸引力が作用する。・・・・・。真空ポケット部5は、軸受パッド2の外周に中心対称的に配置されているため、軸受パッド2には固定べース1の方向に均等に吸引力が作用し、回転モーメントが働かない。このため、軸受パッド2は、固定ベース1側に平行に引き寄せられる。軸受パツド2の自重を含めた負荷に加えて上述の真空吸引力が圧縮空気の吹出しによる空気軸受の反力とつり合って、非接触支持状態となる。つまり、軸受負荷が増加したのと同じ効果が得られ、空気軸受としての剛性は、真空ポケット部5がない場合と比較して、増大する。このように、軸受剛性が大きくなると、機構系の共振周波数が高まり、制御特性が向上するなど装置の特性が良くなるので、好ましい。」(第3頁左上欄第11行〜同頁左下欄第3行)
したがって、甲第3号証には、静圧空気軸受において、固定ベース1に対する静圧空気軸受面に、固定ベース1と軸受パッド2との間に吸引力を与える真空ポケット部5を設けること、複数の真空ポケット部5を対称的に配置すること及び固定ベース1と軸受パッド2との間に与える吸引力を、磁石によって与えることが記載されていると認める。
(4) 甲第4号証
甲第4号証には、ガイド面(ベース)と軸受面との間に、磁気的な吸引力を与える軸受機構が記載されていると認める。
(5) 甲第5号証
甲第5号証には、ガイド面(ベース)と軸受面との間に、磁気的な吸引力を与える軸受機構及び多孔質の静圧軸受が記載されていると認める。
(6) 甲第6号証
甲第6号証には、「変位装置」に関連して以下の事項が記載されている。
「本発明装置は下方部分1及び上方部分2よりなる移動台を具え、・・・・上方移動台部分2を空気支持板として構成する。」(第3頁左上欄第3〜6行)
「本発明装置には更に3個の駆動部材3,4,5を設け、これらをH字型に配置する。・・・・・・・・・・・・。液圧モータ3の外筺6は上方移動台部分2を下方移動台部分1に対し相対的にX方向へ移動させるようにし、・・・・・。移動台部分2のY方向の移動は駆動部材4,5により行なわせ、・・・・・。X方向移動用駆動部材3の駆動エレメント12,13は夫々Y方向移動用駆動部材4,5の外筺7,8に枢着する。」(第3頁左上欄第15行〜同頁右上欄第14行)
「上方移動台部分2に圧搾空気用入ロ24を設け、これから絞り25を経て下方移動台部分1と対向する上方移動台2の平坦面に圧搾空気を導びく。絞り25から流出した圧搾空気は移動台部分1,2間を気体静力学的に支持する。また、移動台部分2に空所26を設けその内部に負圧を生じせしめて、気体静力学的支持のための所望の予備応力を提供し得るようにする。」(第3頁右下欄第5〜12行)
これらの記載事項から、甲第6号証には、以下の発明が記載されていると認める。
Y方向移動用駆動部材4,5と、部材4,5を連結するとともに、Y方向に移動可能な駆動エレメント12,13によって構成される第1移動体と、駆動エレメント12,13にそって、X方向に移動可能な第2移動体(上方移動台部分2)を備えた所謂H字型構造のステージにおいて、第2移動体(上方移動台部分2)と下方移動体部分1(基準面)間を、圧搾空気によって気体静力的に支持する絞り25と、気体静力的支持のために負圧による予備応力を提供する空所26との両方を設けた変位装置。
(7) 甲第7号証
甲第7号証には、「位置決め装置」に関連して以下の事項が記載されてい
「第1図に示した位置決め装置1の第1実施例は例えば花崗岩より成る水平に配設された板上のベース3を有する。このベースには下面7と平行な極めて平滑に研磨された水平な上面5が設けられる。・・・・・。位置決め装置は、上方のテーブル状の第1支持体9と下方の第2支持体11とを有し、この第2支持体は空気脚として形成されている。この第2支持体11は、空気膜13によってベース3に対して案内され且つ支持される。この空気膜13は、簡単のために図示してない圧縮空気源により通常のようにして維持される。このようにして得られた空気軸受は、十分な強さを有するように前応力(プレストレス)形である。これは公知のように第2支持体11の室15を真空源(図示せず)に連結することによって達成される。」(第4頁左上欄第8行〜同頁右上欄第4行)
「第2図からわかるように、トランスレータ29(以下「X-トランスレータ」という)はリニヤモータを有する駆動機構のH形システムの一部を形成する・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
第3図と4図によって詳しく説明するローラによって、Y1-トランスレータ47はY1-ステータ39に沿って案内され、Y2-トランスレータ49はY2-ステータ45に沿って案内される。Y1-トランスレータ47とY2-トランスレータ49は夫々ステータ51と固定連結され、このステータに沿って、前述のX-トランスレータ29がローラによって案内される。」(第4頁左下欄第19行〜同右下欄第20行)
これらの記載事項から、甲第7号証には、以下の発明が記載されていると認める。
Y方向移動用トランスレータ47、49と、トランスレータ47、49を連結するとともに、Y方向に移動可能なステータ51によって構成される第1移動体と、ステータ51にそって、X方向に移動可能な第2移動体(第2支持体11)を備えたH字型構造のステージにおいて、第2移動体(第2支持体11)に設けられた空気軸受13と、前応力を与えるために真空源に連結された室15との両方を設けた位置決め装置。
(8) 甲第8号証
甲第8号証には、「XYステージ」に関連して以下の事項が記載されている。
「<実施例の説明>
第1図はXYステージの全体構成を示している。XYステージは、定盤1の上面に軸受案内面10が形成され、4辺に互いに対向してリニアモータ等の往復駆動装置2a,2a,2b,2bが配設され、対向する駆動装置2aと2a、2bと2bの間に段違いに交叉した縦横可動ガイド3,4の両端を取付けて、各ガイド3,4が互いに直交方向に往復動するようになしてい る。両ガイド3,4の交叉部にはステージ5が摺動自在に支持せられ、該ステージ5は、下面4隅に空気軸受5a,5b,5c,5dを取付けて、軸受案内面10に対し所定の浮上すきまhを存して支持され、非接触にて移動案内するようになしている。」(第3頁第16行〜第4頁第10行)
(9) 甲第9号証
甲第9号証の第120頁第22〜35行には「ウェハのステッピングステージとしては,空気軸受で浮上するXYステージを開発した。上述のウェハ微動機構を搭載した浮上ステージと,これに駆動力を伝達するクロスガイドおよびベースの相互はすべて空気軸受で案内されている。・・・・・・。 ウェハステージと送り機構,駆動機構のそれぞれを一平面上に配置し,案内面すべてを非接触化したため相互干渉が無視でき,高精度送りが可能になった」と記載されていることから、甲第9号証には、浮上ステージのベースに対向する面に空気軸受を設けることが開示されていると認める。
2 対比・判断
本件発明1と甲各号証記載の発明乃至技術的事項とを対比すると、甲各号証記載の発明乃至技術的事項は、それぞれ本件発明1と部分的に共通する構成を備えているものの、いずれも本件発明1の「第2予圧機構は前記第2軸受取付板に取り付けられていると共に、前記第2軸受取付板の前記基準面に対向する面の四隅に前記第3静圧軸受を配置し、複数の第2予圧機構を第1
及び第2方向に関して対称的に配置されていること」という構成を備えていない。
そして、本件発明1は、上記構成を備えることによって明細書記載の「本発明の移動案内装置によれば、第1及び第2移動体は共に同一の基準面上に静圧軸受で支持され、第1及び第2移動体の両方に予圧機構を設けて、二次元に移動する第2移動体の基準面に対向する面には4つの静圧軸受ならびに複数の第2予圧機構が対称的に配置されているので、二次元の移動に伴って各方向に加速度が生じても移動体の不要な傾きを極めて小さくできる上に極めて高精度な位置決めが可能になる。」という効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第9号証記載の発明乃至技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
また、本件発明2乃至本件発明4は、本件発明1を更に限定するものであるので、同じく甲第1号証乃至甲第9号証記載の発明乃至技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する特許異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件の請求項1乃至請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1乃至請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件の請求項1乃至請求項4に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-07 
出願番号 特願平9-273897
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B23Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 信男岡野 卓也  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 播 博
宮崎 侑久
登録日 1999-09-17 
登録番号 特許第2980078号(P2980078)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 移動案内装置  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 高梨 幸雄  

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