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審決分類 |
審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない F16G 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない F16G |
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管理番号 | 1030059 |
審判番号 | 審判1999-35488 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-07-15 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 1999-09-09 |
確定日 | 2000-09-20 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1572963号発明「サイレントチエ-ン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1,手続きの経緯 (1)本件特許第1572963号発明に係る出願は、昭和61年1月9日に特許出願がなされたものであって、平成1年11月29日に出願公告された後、平成2年8月20日にこの発明について特許の設定登録がされたものである。 (2)これに対して、特許無効審判請求人は、平成11年9月9日に、証拠方法として甲第1号証(米国特許第1878882号明細書)を提示したうえで、本件特許発明は甲第1号証記載の発明であるか、或いは甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は無効とされるべき旨主張している。 (3)被請求人は、平成11年12月20日付けの訂正請求書を提出して訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めた。 (4)請求人は、平成12年3月23日付けの弁駁書を提出し、上記訂正がなされても、依然として本件特許は、甲第1号証記載の発明であるか、或いは甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は無効とされるべき旨弁駁している。 (5)また、上記訂正請求について、平成12年5月25日に行われた口頭審理の場で口頭により訂正拒絶理由が通知され、同日、上記訂正請求書についての手続補正書と補正された訂正明細書が提出された。 2,訂正の適否に対する判断 (1)訂正請求書についての補正について そこで、先ず、平成11年12月20日付けで被請求人のした訂正請求について検討すると、この訂正請求は、一部に「主語と述語を呼応させる訂正」「読みやすさのため読点を付与した訂正」を含み、その点で特許法第134条第2項各号に掲げる事項を目的としたものとは認められないものであった。 それに対して、上記の1,手続の経緯(5)で述べた訂正拒絶理由の通知に対して平成12年5月25日付けで提出された手続補正書(補正された訂正明細書)は、上記の不適切な訂正事項を削除するものであって、訂正請求の一部を取り下げたものに該当するから、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、訂正請求書に対する補正は適法に行われたものと認められる。 (2)訂正の要旨について 適法に補正された訂正請求書によれば、訂正の要旨は以下のとおりのものである。 A,本件特許第1572963号に係る明細書(以下、単に「特許明細書」という。)における特許請求の範囲の第1項を削除するとともに、第2項を必須要件項である第1項として次のように訂正する。 「各々が内側フランクおよび外側フランクによって限定される一対の歯と、連結部材を挿入する一対の穴とを有するリンクプレートを複数枚該連結部材により無端状に連結してなるサイレントチェーンにおいて、該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランクおよび外側フランクの形状を、該対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチをP1、該サイレントチェーンがほぼ直線状に伸びているときの該対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレートの歯の内側フランク間のピッチをP2、および該サイレントチェーンがスプロケットに巻き付いているときの該内側フランク間のピッチをP3としたとき ![]() となるように形成するとともに、該内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置したことを特徴とするサイレントチェーン。」 B,特許明細書の第6頁第5行(公告公報第2頁第4欄第5行参照)の、「て、該内側フランク」を「て、該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランク」に訂正する。 C,特許明細書の第6頁第6行(公告公報第2頁第4欄第6行参照)の、「該対の歯を」を「該対の歯の」に訂正する。 D,特許明細書の第6頁第8〜9行(公告公報第2頁第4欄第8〜9行参照)の、「かみ合う」を「重なり合う」に訂正する。 (3)訂正の適否について{但し、独立特許要件については下記(4)参照} 上記訂正事項Aは、もとの特許請求の範囲第1項を削除してもとの特許請求の範囲第2項を新たな第1項に繰り上げるとともに、構成要件である「内側フランク」について、特許明細書第7頁第15〜20行目(公告公報第2頁第4欄第34〜39行目)の「内側フランク5が円弧状に形成され、・・・・内側フランク5が外側フランクより突出するように形成されている」の記載ならびに第1図および第3図の記載からみて特許明細書に記載された事項の範囲内と認められる「該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに」と内側フランクの形状を限定する訂正を行い、「該対の歯を」を「該対の歯の」と明らかに誤記と認められる記載の訂正を行い、かつ、「かみ合う」という記載がリンクプレートの歯同士がかみ合うこととなって意味が不明となり、しかも発明の詳細な説明の欄の記載では相当するリングプレートの歯の関係が一貫して「重なっている」と記載されている点からみて誤記であると認められる「かみ合う」という記載を「重なり合う」とする訂正である。 したがって、訂正事項Aは、特許請求の範囲の記載について誤記の訂正及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、かつ、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 また、訂正事項B,C,Dは、いずれも特許請求の範囲について、上記訂正事項Aのとおり訂正したことにより必要となった発明の詳細な説明の欄の記載の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもない。 (4)独立特許要件について 上記訂正がなされた本件特許発明は、 上記2,(2)Aに記載したとおりのものである。 これに対して、請求人の提示した甲第1号証には、 「本発明は、動力の伝達に用いられるチェーン、特に、通常サイレントチェーンとして知られているタイプのチェーンに関するもので、このチェーンは、スプロケットホイールの歯と噛合する内側に向かって突出する歯を持つリンクプレートが互いに混在して形成されている。」(甲第1号証第1頁左欄第1〜6行、訳文第1頁第5〜8行)、 「図1は、2段階係合の第1の位置を示す図であり、スプロケットの歯とリンク内側とが最初の係合をする。 図2は、2段階係合の第2の位置すなわち最終位置を示す図であり、スプロケットの歯と先行する隣接リンクの外側すなわち末尾部とが最終的に係合する。」(甲第1号証第1頁左欄第20〜27行、訳文第1頁14〜17行)、 「図には、チェーンとスプロケットの一部が示されており、走行中のチェーンとかみ合い移行過程にあるスプロケットの歯が描かれている。スプロケットとチェーンは矢印の方向に走行しており、スプロケットSの歯Tは係合過程の状態にある。図示されたチェーンの部分は、ピントルPによって連結されたリンクLと先行リンクL’の一部とからなるものである。」(甲第1号証第1頁左欄第28〜37行、訳文第1頁第19〜23行)、 「内側係合面1及び外側係合面2は、上記両位置の双方において、実質的な歯の係合が行われ、内側接触から外側接触への変遷がきわめて円滑に緩やかに行われるような外形をしている。チェーンは、スプロケットホイールに向う走行及び、このスプロケットホイールの周囲の回転走行過程において、2つの接触段階を通過することが分かる。第1の接触段階はリンクLとの内側接触であり、第2の接触段階はリンクL’との外側接触である。」(甲第1号証第1頁右欄第76〜88行、訳文第2頁第17〜22行)、 「チェーンが図1に示されている位置から図2に示されている位置に移動するにつれて、表面1に沿ってカム動作が発生し、これによって、最初の接触位置からチェーンがスプロケット上に完全に巻き付く最終位置に至るまで、歯とチェーンはきわめて円滑に接触することになる。この円滑な動作によって衝撃が軽減されると共に不快な振動が解消され、よって円滑な走行性を有するチェーンがもたらされる。」(甲第1号証第2頁左欄第19〜28行、訳文第3頁第12〜17行) と記載されており、また、その図1,2の記載から、噛み合いの始めに内側係合面1とスプロケットSの歯Tが接触を始め(図1)、次にスプロケットSにチェーンが巻き付くと外側係合面2がスプロケットSの歯Tに接触する(図2)ことが看取できる。 したがって、甲第1号証には、 「各々が内側係合面1および外側係合面2によって限定される一対の歯と、ピントルPを挿入する一対の穴とを有するリンクL、L’を複数枚該ピントルPにより無端状に連結してなるサイレントチェーン」 が記載されているものと認められる。 そして、甲第1号証記載の発明の「内側係合面1」は本件特許発明における「内側フランク」に相当し、以下、同様に「外側係合面2」は「外側フランク」に、「ピントルP」は「連結部材」に、「リンクL、L’」は「リンクプレート」にそれぞれ、相当するので、両者は、 「各々が内側フランクおよび外側フランクによって限定される一対の歯と、連結部材を挿入する一対の穴とを有するリンクプレートを複数枚該連結部材により無端状に連結してなるサイレントチェーン」 である点で一致し、本件特許発明が、 イ、「内側フランクを円弧状の突出面から形成する」点。 ロ、「内側フランクおよび外側フランクの形状を、該対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチをP1、該サイレントチェーンがほぼ直線状に伸びているときの該対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレー トの歯の内側フランク間のピッチをP2、および該サイレントチェーンがスプロケットに巻き付いているときの該内側フランク間のピッチをP3とした とき ![]() となるように形成する」点。 ハ、「内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置した」点。 を構成要件として有しているのに対して、甲第1号証記載の発明においては、上記イ、ロの点について文言上明記されていない点で相違し、上記ハの点については記載がされていない点で相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 [相違点イについて] 甲第1号証記載の発明では内側フランクに相当する内側係合面1が図1の記載からみて円弧状とは認められず、二つの直線をつないだ全体として緩やかな凸部を有する面である点で相違する。 しかし、これはスプロケットSの歯Tの形状と合わせた形状とした結果であって、サイレントチェーンがスプロケットと組み合わせて使用され、かつ、その噛み合い面は互いに円滑に接触するように形成することは設計上の常識的事項と認められる。したがって、スプロケットの歯の形状に合わせて内側フランクを円弧状の突出面として形成する程度のことは、スプロケットの歯の形状によって定まる単なる設計事項にすぎないものである。 したがって、相違点イは格別の相違とは認められない。 [相違点ロについて] 上記相違点ロにおけるP1,P2,P3は、それぞれ外側フランクのピッチ、内側フランクのピッチ、チェーンが巻き付いているときの内側フランクのピッチであることは、特許明細書の記載に照らして明らかであるところ、甲第1号証の、 「内側係合面1及び外側係合面2は、上記両位置の双方において、実質的な歯の係合が行われ、内側接触から外側接触への変遷がきわめて円滑に緩やかに行われるような外形をしている。チェーンは、スプロケットホイールに向う走行及び、このスプロケットホイールの周囲の回転走行過程において、2つの接触段階を通過することが分かる。第1の接触段階はリンクLとの内側接触であり、第2の接触段階はリンクL’との外側接触である。」(甲第1号証第1頁右欄第76〜88行、訳文第2頁第17〜22行) 及び、 「チェーンが図1に示されている位置から図2に示されている位置に移動するにつれて、表面1に沿ってカム動作が発生し、これによって、最初の接触位置からチェーンがスプロケット上に完全に巻き付く最終位置に至るまで、歯とチェーンはきわめて円滑に接触することになる。この円滑な動作によって衝撃が軽減されると共に不快な振動が解消され、よって円滑な走行性を有するチェーンがもたらされる。」(甲第1号証第2頁左欄第19〜28行、訳文第3頁第12〜17行) 及び、 図1,2の記載からみて、 甲第1号証記載の発明においても、外側フランクのピッチ、内側フランクのピッチ、チェーンが巻き付いているときの内側フランクのピッチについては明文の記載がなくても、チェーンがまっすぐに伸びているとき、 「内側フランクのピッチ」>「外側フランクのピッチ」であって、かつ、 「外側フランクのピッチ」>「チェーンが巻き付いているときの内側フランクのピッチ」 となるように構成されていることは当業者において明らかであり、しかもそれによって内側フランクから外側フランクへの接触の移行が円滑に行われ衝撃が緩和される作用も同一である。 したがって、相違点ロは、文言上記載してあるか否かの単なる表現上の相違でしかなく格別の相違とは認められない。 [相違点ハについて] 相違点ハについては、甲第1号証には、内側フランクの突出量が異なる点についても、その内側フランクの突出量を異ならせたリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置した点についても、記載されておらず、示唆するところもない。 したがって、甲第1号証には、内側フランクから外側フランクへの接触の移行が円滑に行われ衝撃が緩和される点については記載されているものの、この接触の移行時期を不規則にすることにより、上記接触の移行時における周期的な騒音の発生を抑制して騒音発生周期を分散化させ、もって低騒音化を図る点については記載がない。 この点について、審判請求人は、平成12年3月23日付けの弁駁書において、「内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置した」点は普通に行われることで、その効果も自明のものであり、単なる設計変更にすぎないと主張しているが、その主張の根拠は何ら示されず、理由あるものとすることはできない。 したがって、甲第1号証には本件特許発明が記載されていると認められないばかりか、本件発明が甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることはできない。 (5)訂正の適否についてのむすび 以上のとおりであるから、本件に係る訂正請求は、平成6年改正前の特許法第134条第2項ただし書き及び同法同条第5項の規定により準用する平成6年改正前の特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものであるから、訂正を認める。 3,特許無効の審判に対する判断 (1)本件特許発明 上記2で検討したとおりの理由で、本件特許発明についての訂正は認められるので、本件特許発明は上記2,(2)Aに記載したとおりのものと認める。 (2)これに対して、審判請求人は、証拠方法として甲第1号証を提示したうえで、本件特許発明は甲第1号証記載の発明であるか、或いは甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は無効とされるべき旨主張している。(なお、審判請求人は、本件特許に係る明細書には記載上の不備がある旨の無効理由を主張していたが、その後撤回した。審判請求書の7.2(1)無効理由1、(2)無効理由2及び第1回口頭審理調書の「第二 主張の確認」参照。) しかしながら、上記「2.(4)独立特許要件について」で検討したように、本件特許発明は、甲第1号証には記載も示唆もないと認められる「内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置した」点を構成要件としているものであり、それによって明細書記載の作用効果を奏しているものであるから、本件特許発明は甲第1号証に記載された発明であるとも、或いは、甲第1号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることはできない。 (3)むすび したがって、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 サイレントチェーン (57)【特許請求の範囲】 各々が内側フランクおよび外側フランクによって限定される一対の歯と、連結部材を挿入する一対の穴とを有するリンクプレートを複数枚該連結部材により無端状に連結してなるサイレントチェーンにおいて、 該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランクおよび外側フランクの形状を、該対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチをP1、該サイレントチェーンがほぼ直線状に伸びているときの該対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレートの歯の内側フランク間のピッチをP2、および該サイレントチェーンがスプロケットに巻き付いているときの該内側フランク間のピッチをP3としたとき ![]() となるように形成するとともに、該内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置したことを特徴とするサイレントチェーン。 【発明の詳細な説明】 (イ)産業上の利用分野 本発明はサイレントチェーンに関し、更に詳しくは、スプロケットヘのかみ合い時にリンクプレートの歯の内側フランクがスプロケットの歯に当たりしかる後その歯と異なっている他のリンクプレートの歯の外側フランクがそのスプロケットの歯とかみ合うようにすることにより、かみ合い時の衝撃および騒音の減少を図ったサイレントチェーンに関する。 (ロ)従来の技術 従来一般的に知られたサイレントチェーンには、スプロケットとのかみ合い時にリンクプレートの外側フランクがスプロケットの歯に接触する形式のものと内側フランクがスプロケットの歯に接触する形式のものとがある。そのうち前者の形式のものは、第5図に示されるようにサイレントチェーンをほぼ一直線状に伸ばしたときおよびスプロケットに巻き付いたときに、かみ合いピッチ線l上において、サイレントチェーンを構成する一つのリンクプレートa2の一対の歯b2の外側フランクc2がその歯と重なり合っている他のリンクプレートa1の歯b1の内側フランクd1より外側に出張るようにつくられていて、スプロケットにかみ合うとき第6図に示されるように進行方向後側の外側フランクがスプロケットSの歯tに接触し、サイレントチェーンがスプロケットに完全に巻き付いたとき進行方向前側の外側フランクもスプロケットの他の歯に接触してスプロケットの歯とリンクプレートの歯とのがたをなくすようになっている。この形式のサイレントチェーンでは、一つのリンクプレートaの一対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチP′1はその歯と重り合う他の二つのリンクプレートの歯のかみ合いピッチ線上における内側フランク間のピッチP′2よりも常に大きくなっている。 一方前記後者の形式のものは、第7図に示されるようにサイレントチェーンをほぼ一直線状に伸ばしたときおよびスプロケットに巻き付いたときに、かみ合いピッチ線l上において、サイレントチェーンを構成する一つのリンクプレートa1′の一対の歯b1′の内側フランクd1′がその歯と重なり合っている他のリンクプレートa2′の歯b2′の外側フランクc2′より外側に出張るようにつくられていて、スプロケットにかみ合うとき第8図に示されるように一つのリンクプレートの進行方向前方の内側フランクがスプロケットSの歯tと接触し、サイレントチェーンがスプロケットに完全に巻き付いたとき一つ前のリンクプレートの進行方向後方の内側フランクもスプロケットの他の歯に接触してスプロケットの歯とリンクプレートの歯とのがたをなくすようになっている。この形式のサイレントチェーンでは、一つのリンクプレートa′の一対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチP1″はその歯と重なり合う他の二つのリンクプレートの歯のかみ合いピッチ線上における内側フランク間のピッチP2″よりも常に小さくなっている。 このような従来のサイレントチェーンでは、サイレントチェーンがスプロケットにかみ合うときに、互いに重なり合ったリンクプレートの外側フランクのみか或は内側フランクのみしかスプロケットの歯に当接せず、それらのフランクに大きな衝撃力が加わってフランクの早期の摩耗を招くだけでなく、耳ざわりな騒音の発生原因にもなっていた。 (ハ)発明が解決しようとする問題点 本発明が解決しようとする問題点は、サイレントチェーンがスプロケットにかみ合うとき一つのリンクプレートの歯の外側フランクとその歯と重り合う他のリンクプレートの歯の内側フランクとを同時に又は時間をずらしてスプロケットの同じ歯に当接させることによりリンクプレートのフランクの摩耗の防止と騒音の軽減を図ることである。 (ニ)問題点を解決するための手段 上記問題を解決するため、本発明は、各々が内側フランクおよび外側フランクによって限定される一対の歯と、連結部材を挿入する一対の穴とを有するリンクプレートを複数枚該連結部材により無端状に連結してなるサイレントチェーンにおいて、該内側フランク面を円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランクおよび外側フランクの形状を、該対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチをP1、該サイレントチェーンがほぼ直線状に伸びているときの該対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレートの歯の内側フランク間のピッチをP2、および該サイレントチェーンがスプロケットに巻き付いているときの該内側フランク間のピッチをP3としたとき ![]() となるように、構成されている。 (ホ)作用 上記構成のサイレントチェーンは一対のスプロケットに掛けられ、そのスプロケット間で動力の伝達を行う。そしてサイレントチェーンがスプロケットにかみ合うとき、リンクプレートの歯の外側フランクとその歯に重なっている他のリンクプレートの歯の内側フランクとが同時に或いは時をずらしてスプロケットの同じ歯に当接する。 (へ)実施例 以下図面を参照して本発明の実施例について説明する。 第1図および第2図に本発明のサイレントチェーンの第1の実施例の一部が示されている。同図において、1はサイレントチェーン、2は外側フランク4および内側フランク5によって限定された一対の歯3を有するリンクプレート、7はリンクプレート2の穴6内に挿通されかつリンクプレートを回動可能に連結している連結部材すなわち連結ピンである。 このリンクプレート2は、外側フランク4がほぼ直線状にかつ内側フランク5が円弧状に形成され、サイレントチェーン1をほぼ直線状に伸ばした場合に隣接するリンクプレートの重なり合う歯のかみ合いピッチ線l近傍において内側フランク5が外側フランクより突出するように形成されている。すなわち、かみ合いピッチ線上におけるリンクプレート2の一対の歯の外側フランク間のピッチをP1、サイレントチェーンをほぼ一直線状に伸ばしたときの一つのリンクプレート2(2b)の一対の歯と重なり合う他のリンクプレート2(2a,2b)の歯の内側フランク間のピッチをP2、サイレントチェーン1が第3図に示されるようにスプロケット10に巻き付いて円弧状になっているとき、一つのリンクプレート(例えば第3図で2e)の一対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレート(例えば第3図で2dと2f)の歯のかみ合いピッチ線上のピッチ又は互いに連結された一対のリンクプレート(例えば2dと2e)の互いに重り合っていない歯(図でリンクプレート2eの右側の歯とリンクプレート2dの左側の歯)のかみ合いピッチ線上における内側フランク間のピッチをP3としたとき、各リンクプレートの内側フランク5と外側フランクとは、 ![]() となるように形成されている。ここで≒は「ほぼ等しい」ことを意味する。 上記構成のサイレントチェーンも通常のサイレントチェーンと同様に駆動スプロケットおよび被駆動スプロケットに掛けられてそれらの間で動力の伝達を行うが、スプロケットの歯にかみ合うときおよびかみ合い後の歯との係合が従来のサイレントチェーンと異なる。 すなわち、第3図に示されるように、リンクプレートの歯(第3図でリンクプレート2aの右側の歯およびそれと重なり合っているリンクプレート2bの左側の歯)がスプロケット10の歯11とかみ合うとき、 ![]() の場合にはリンクプレート2aの右側の歯の内側フランク5がまずスプロケット10の歯のピッチ円r上またはその近傍に当り、 P2≒P1≒P3 の場合にはリンクプレート2aの右側の歯の内側フランクおよびその歯と重なり合うリンクプレート2bの左側の歯の外側フランクが同時にまずスプロケット10の歯のピッチ円r上またはその近傍に当る。そしてチェーンが更に進んでスプロケットに巻き付いて行ってリンクプレートが連結ピン6の回りで回ると、第3図のリンクプレート2cのように両外側フランク4がスプロケットのかみ合いピッチ円上でスプロケットの歯11に接触する。以下スプロケットから離れるまでこの状態を保ってスプロケットの歯にかみ合って共に移動する。 第4図に、本発明の他の実施例の一部分が示されている。この実施例において、リンクプレートの内側フランクの突出量を P2>P1>P3 の範囲内でリンクプレートの横列毎に不規則にしてある。 この実施例ではかみ合い時に発生する音を周期的でなくし、耳ざわりな騒音を軽減するとともに衝撃を緩和する。 (ト)効果 本発明によれば次のような効果を奏することができる。 ▲1▼ かみ合い時に内側フランクがスプロケットの歯に当った後外側フランクが当るように二段階の当りにできるため、サイレントチェーンがスプロケットの歯にかみ合うとき、かみ合い時の周期音の低減し、分散させることができる。 ▲2▼ かみ合い時の衝撃が緩和され、リンクプレートの歯およびスプロケットの歯の接触面の耐久性を向上できる。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明のサイレントチェーンの一実施例の一部の側面図、第2図は第1図のサイレントチェーンの上面図、第3図は第1図のサイレントチェーンがスプロケットにかみ合う状態を示す図、第4図は本発明のサイレントチェーンの他の実施例の一部の側面図、第5図は従来のサイレントチェーンの一例の一部分を示す図、第6図は第5図のサイレントチェーンがスプロケットにかみ合う状態を示す図、第7図は従来のサイレントチェーンの他の例の一部分を示す図、第8図は第7図のサイレントチェーンがスプロケットにかみ合う状態を示す図である。 1,1′… サイレントチェーン 2 … リンクプレート 3 … 歯 4,4′… 外側フランク 5,5′,5″… 内側フランク |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 A,特許請求の範囲の第1項を削除するとともに、第2項を必須要件項である第1項として次のように訂正する。 「各々が内側フランクおよび外側フランクによって限定される一対の歯と、連結部材を挿入する一対の穴とを有するリンクプレートを複数枚該連結部材により無端状に連結してなるサイレントチェーンにおいて、該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランクおよび外側フランクの形状を、該対の歯のかみ合いピッチ線上における外側フランク間のピッチをP1、該サイレントチェーンがほぼ直線状に伸びているときの該対の歯と重なり合う他の二つのリンクプレートの歯の内側フランク間のピッチをP2、および該サイレントチェーンがスプロケットに巻き付いているときの該内側フランク間のピッチをP3としたとき ![]() となるように形成するとともに、該内側フランクの円弧状の突出量が異なるリンクプレートをサイレントチェーンの長手方向に不規則に配置したことを特徴とするサイレントチェーン。」 B,特許明細書の第6頁第5行(公告公報第2頁第4欄第5行参照)の、「て、該内側フランク」を「て、該内側フランクを円弧状の突出面から形成するとともに、該内側フランク」に訂正する。 C,特許明細書の第6頁第6行(公告公報第2頁第4欄第6行参照)の、「該対の歯を」を「該対の歯の」に訂正する。 D,特許明細書の第6頁第8〜9行(公告公報第2頁第4欄第8〜9行参照)の、「かみ合う」を「重なり合う」に訂正する。 |
審理終結日 | 2000-06-30 |
結審通知日 | 2000-07-11 |
審決日 | 2000-07-25 |
出願番号 | 特願昭61-2747 |
審決分類 |
P
1
112・
113-
YA
(F16G)
P 1 112・ 121- YA (F16G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 良雄、幸長 保次郎 |
特許庁審判長 |
佐藤 洋 |
特許庁審判官 |
和田 雄二 舟木 進 |
登録日 | 1990-08-20 |
登録番号 | 特許第1572963号(P1572963) |
発明の名称 | サイレントチエ-ン |
代理人 | 河合 厚夫 |
代理人 | 高崎 健一 |
代理人 | 樋口 和博 |
代理人 | 津野 孝 |
代理人 | 高崎 健一 |