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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認める。無効としない B65D
審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない B65D
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない B65D
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない B65D
管理番号 1030060
審判番号 審判1998-35272  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-04-27 
確定日 2000-09-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2504930号発明「コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケ―ス」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 <1> 手続の経緯
(1)本件特許第2504930号の請求項1乃至5に係る発明は、平成4年8月7日(パリ条約による優先権主張1991年11月12日、イギリス)に出願され、平成8年4月2日に設定登録されたものである。
(2)これに対して、大栄商会株式会社より無効審判の請求がなされ、平成11年4月27日付けで答弁書の提出と同時に訂正請求書の提出がなされ、平成11年8月12日付けで弁駁書が提出され、平成11年9月3日付で訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内に意見書が提出されたものである。

<2> 訂正の適否
(1)訂正事項
上記訂正請求における訂正は、
(a)特許請求の範囲における請求項1を次のとおりに訂正すること、
「【請求項1】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、
ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、
を含んで構成し、
ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。」
(b)特許請求の範囲における請求項5を次のとおりに訂正すること、
「【請求項5】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えた少なくとも1つのキャリア部と、
前記ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する少なくとも1つの第2の軸結合手段と、
を含んで構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。」
(c)上記請求項1及び5の訂正に伴い、特許明細書段落【0010】及び【0013】の「前記一端縁部若しくはその付近で、前記第1の軸結合手段の軸と略平行に」を「前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、」と訂正すること、
を求めるものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)及び(b)は、第1の軸結合手段と第2の軸結合手段が同軸であること含まないことを明確に特定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、また、特許明細書段落【0019】及び【0026】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
上記訂正事項(c)は、請求項の訂正に伴い明細書の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、また、特許明細書段落【0019】及び【0026】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件の判断
(3-1)訂正明細書請求項1〜5に係る発明について
訂正明細書の請求項1〜5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、
ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、
を含んで構成し、
ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項2】ケースを閉じたときに、前記表蓋部或いは前記裏蓋部に設けた側壁部により、前記キャリア部の端縁部を実質的に全体的に取り囲むように形成したことを特徴
とする請求項1に記載のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項3】 前記キャリア部の横方向寸法は、ケースを閉じたときに、表蓋部および裏蓋部の端縁部が前記キャリア部の端縁部より大きくなるように、表蓋部および裏蓋部の横方向寸法より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項4】表蓋部と、裏蓋部と、当該表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースが、
単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースであることを特徴
とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のコンパクトディスク等ディスク
類の保持用ケース。
【請求項5】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えた少なくとも1つのキャリア部と、
前記ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する少なくとも1つの第2の軸結合手段と、
を含んで構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。」

(3-2)引用例の記載
これに対して、当審において通知した拒絶の理由に引用したドイツ特許公開第3414903号(以下、「引用刊行物1」という。)には下記の事項が記載されている。
(a)「包装容器1は、カバー2、ケース3,ディスクキャリア4から構成されている。カバー2,ケース3,ディスクキャリア4は、ジョイント55,56により結合されている。ケース3に向いたカバー2の終端部5に、フランジスタッド6,7が形成され、これらは軸支用突起8,9を持っている。軸支用突起8,9は、ディスクキャリア4,ケース3に形成された他のフランジスタッグ14,15;16,17の長孔10,11;12,13の中へ挿入される。フランジスタッグ14,15;16,17の中心軸18,19は交差する(図1,2)。」(第8頁第1〜12行;訳文)
(b)「カバー2がボトムプレート32の上に折り畳まれたとき、カバー2のベースプレート34とケース3のボトムプレート32との周辺で、ベースプレート34とボトムプレート32の面に垂直なスタッグ部品42,43;44;45,46,47が、互いに係合して、閉じた中空体が形成される」(第10頁第7〜11行;訳文)
(c)「1つの包装容器1で、2枚のディスク57をディスクキャリア4に保管できる(第6a図、第6b図)」(第10頁第28〜31行;訳文)
また、当審において通知した拒絶の理由に引用した特開昭63-161577号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には下記の事項が記載されている。
(d)「本発明は、記録媒体、特にデジタル・オーディオ・コンパクトディスクのための使用し易い保管容器、及びその製造方法に関する。」(第4頁左下欄第11〜13行)
(e)「参照番号10で相対的に示されたこの保管容器は、長方形のベース12と、記録媒体ホルダー14と、記録媒体18を保持するための保持手段16と、ベース12に枢動自在に取付けられたカバー20と、作動手段22とから成る。」(第6頁左下欄第13〜17行)
(f)「記録媒体ホルダー14は、濃い色の、中程度の耐衝撃性を有するスチレンで製造することが好ましく、その第1端54に第1細長部分50を有し、細長部分に第2三角形状部分54が付設されている。第1部分50の両端60,62にはには、それぞれ突起56,58が形成されている。これらの突起は、ベース12の壁部分32,32に穿設された穴40,40に挿通され、ホルダー14をベース12に対し枢動自在に取付けることができるようになされている。」(第6頁右下欄第11〜20行)
(g)「カバー20は、又、2つの同一の側壁98,100を有し、各側壁からカバー20の第1端の近くにおいて内方へピン102,104が突設されている。ピン102,104も、ベース12の壁部分32に穿設された対応する穴40に嵌合するようになされている。」(第7頁右上欄第16行〜左下欄第1行)
(h)「しかしながら、第1実施例とは異なり、ホルダー14の第1端163は、一体ヒンジ130によってベース12の第1端24に連結されている。」(第9頁左上欄第4〜7行)
さらに、当審において通知した拒絶の理由に引用した特開平3-275483号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には下記の事項が記載されている。
(i)「第1図は、この既知のパッケージの斜視図であり、デジタル光学読み取りオーディオディスク、いわゆる標準コンパクトディスク即ち、CDをパッケージする。中心孔1を有する2乃至4個のCD3をこのパッケージにパッケージすることができる。このパッケージは互いに平行な回動軸線5,7の周りに回動自在に互いに連結した3個の部材を有し、これら部材としては、互いに反対側の側面に設けた2個のカバー9と、これらカバー間に設けてディスクキャリアとして機能する中間部分11とがある。」(第2頁左下欄第15行〜右下欄第5行)
(j)「第20図に示すパッケージは第4および5図に示すパッケージの変更例と見なすことができる。この実施例においては、上述のパッケージのカバー53、57と同一のカバー151および153を設ける。3個の個別ディスクキャリア155,157,159よりなる複数個の中間部分を設け、これらディスクキャリアは上述の個別パッケージのディスクキャリア55に完全に同じものとすることができる。ディスクキャリア間には他の中間部分161,163を設ける。これら中間部分の形状は、互いに背中合わせにした2個のカバーとほぼ同じものとすることができる。他の部分と同様に、これらはプラスチックにより一体部品として接続することができる。中間部分161,163の各々は隣接のディスクキャリアのためのカバーとして各側面で機能する。」(第7頁右下欄第6〜20行)

(3-3)対比・判断
(3-3-1)請求項1に係る発明について
ここで、訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と上記引用刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明1」という。)を対比する。
引用発明1の「包装容器」が本件発明1の「コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース」に対応し、引用発明1のカバー2,ケース3,ディスクキャリア4が本件発明1の表蓋部、裏蓋部、キャリア部にそれぞれ対応する。そして、引用発明1においては、上記(a)に「カバー2,ケース3,ディスクキャリア4は、ジョイント55,56により結合されている。」と記載されており、第1,2図を併せてみれば、カバー2,ケース3,ディスクキャリア4が枢動可能に軸着されていることがわかる。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、
「表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、
ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、を含んで構成したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース」である点で一致し、下記の点で相違しする。
(相違点1)本件発明1においては、キャリアと裏蓋部(又は表蓋部)と軸着する軸(第1の軸結合手段)が表蓋部と裏蓋部を軸着する軸(第2の軸結合手段)とは平行の関係にはあるが同軸ではないのに対し、引用発明1においては、第1および2の軸結合手段が同軸の関係にある点。
(相違点2)本件発明1においては、「ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成した」のに対し、引用発明1においては、ディスクの厚さについては明確な特定はない点。
同様に、本件発明1と上記引用刊行物2に記載の発明(以下、「引用発明2」という。)とを対比した場合においても、引用刊行物2の上記(d)〜(h)の記載等からもわかるように、本件発明1と引用発明2は上記相違点1および相違点2のみで相違し、その他の点では一致する。
上記の相違点について検討する。
まず、相違点1について。コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、ケース端縁部に2つの軸結合手段を配設するに当たり、該2つの軸結合をずらして、同軸でない平行の関係にすること自体は、結合される部材の関係を考慮しなければ、上記記載(i)(j)からわかるように、上記引用刊行物3に記載の公知技術である。しかしながら、本件発明1や引用発明1または2における結合が、本件発明1においては表蓋部、裏蓋部およびキャリア部(引用発明1においてはカバー、ケースおよびディスクキャリア、また、引用発明2においてはカバー、ベースおよびホルダー)の3層に重なった構造における結合であるのに対し、上記引用刊行物3に記載の公知技術においては、一方のカバーとディスクキャリアの結合、他方のカバーとディスクキャリアの結合の別々の箇所における2つの結合に関するものである。したがって、引用刊行物3に記載の公知技術においては、そもそも、2つの結合軸がずれていることが当然であり、同軸であることが考えられないものであるから、技術の前提を異にしているものである。すなわち、技術の課題を全く異にするものであるから、例え、2つの軸結合をずらして同軸でない平行の関係にすること自体が公知であったとしても、それを引用発明1または2に適用することが容易であるということはできない。
そして、本件発明1は、相違点1に関する上記の構成を有することにより、標準ケースを大幅に変更することなく、これを利用(流用)して形成することができる等の実用上優れた効果を奏するものであるから、相違点2については検討するまでもなく、本件発明1は引用発明1または2と上記公知技術との組み合わせに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。なお、引用発明1および2は、ともに上記相違点1に関する構成を有さないから、引用発明1および2を組み合わせても、本件発明1を構成することはできない。したがって、本件発明1は、上記引用刊行物1乃至3に記載の事項の組み合わせによって当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
すなわち、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

(3-3-2)訂正明細書の請求項2乃至5に係る発明について
訂正明細書の請求項2乃至4に係る発明は、いずれも、請求項1に係る発明を引用したものであり、少なくとも、本件発明1の上記相違点1および2に係る技術事項を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により上記引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めることができない。
訂正明細書の請求項5に係る発明についても、本件発明1の上記相違点1および2に係る技術事項を有するものであり、本発明1に対する判断で、相違点2に関しては検討するまでもなく相違点1のみを検討することにより上記の結論を導いたことに鑑みれば、本件発明1と同様の理由により上記引用刊行物1乃至3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認めることができない。

また、他に本件訂正明細書の請求項1乃至5に係る発明が、本件出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も発見しない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条第5項で準用する特許法第126条第2乃至4項に適合するので、当該訂正を認める。

<3> 無効理由についての判断
(1)本件請求項1乃至5に係る発明
本件訂正明細書の請求項1乃至5に係る発明は、上記(3)独立特許要件の判断の(3-1)の請求項1乃至5に係る発明の項に記載されたとおりのものと認める。
(2)請求人および被請求人の主張
(2-1)請求人の主張
請求人は、本件特許の請求項1乃至5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、該発明の特許は特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであると主張し、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該発明の特許は特許法第29条第2項に違反してなされたものであると主張して、証拠方法として甲第1号証および甲第2号証を提出している。さらに、本件特許出願の明細書に記載不備があるから、特許法第36条第4項および5項に違反している旨を主張している。
ところで、請求人が、特許法第29条第1項3号第29条第2項違反を主張して提出した、甲第1号証、甲第2号証および参考資料1については、下記のとおり、それぞれ、甲第1号証、甲第2号証が上記引用刊行物1、引用刊行物2と同じ刊行物であり、参考資料1は、これに対応する日本の特許公開公報が引用刊行物3と同じ刊行物である。
甲第1号証:ドイツ特許公開第3414903号(引用刊行物1)
甲第2号証:特開昭63-161577号公報(引用刊行物2)
参考資料1:ヨーロッパ特許公開0420350号
(対応する日本の特許公開公報:特開平3-275483号公報(引用刊行物3))
(2-2)被請求人の主張
被請求人は、平成11年4月27日に訂正請求書を提出して訂正を求めたうえ、訂正後の請求項1〜5に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができないから、本件請求項1〜5に係る発明は、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものということもできず、当該訂正は認められるべきである旨を主張した。
(3)請求人の主張する無効理由について
(3-1)特許法第29条第1,2項違反について
本件の請求項1乃至5に係る発明と甲第1号証、甲第2号証及び参考資料1との対比・判断は、上記<2>(3)独立特許要件の判断の項で記述したとおりであって、本件の請求項1乃至5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であると認めることができないばかりでなく、甲第1号証に記載された発明から、或いは、公知慣用の技術を考慮したとしても甲第1号証及び甲第2号証を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたということはできない。
(2)特許法第36条第4,5項違反について
請求人は、請求項1および4に記載されている「標準ケース」が明細書の【発明の詳細な説明】においても特定されていないから、記載不備である旨を主張している。
しかしながら、【発明の詳細な説明】の【0002】から「標準ケース」が工業規格の範囲内で形成されたものであることは明らかであり、請求項の記載が不明瞭であるということはできないから、上記請求人の主張は採用できない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、請求人が主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1乃至5に係る発明の特許を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、
ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、
を含んで構成し、
ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項2】 ケースを閉じたときに、前記表蓋部或いは前記裏蓋部に設けた側壁部により、前記キャリア部の端縁部を実質的に全体的に取り囲むように形成したことを特徴とする請求項1に記載のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項3】 前記キャリア部の横方向寸法は、ケースを閉じたときに、表蓋部および裏蓋部の端縁部が前記キャリア部の端縁部より大きくなるように、表蓋部および裏蓋部の横方向寸法より小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項4】 表蓋部と、裏蓋部と、当該表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースが、
単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【請求項5】 表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えた少なくとも1つのキャリア部と、
前記ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する少なくとも1つの第2の軸結合手段と、を含んで構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースに関する。但し、本明細書において使用するコンパクトディスクという用語は、特にデジタルコード化光ディスクに関するが、ビデオディスク、オーディオディスク或いはCD-ROMディスクをも含むものであって、一般のディスク類を代表するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンパクトディスク、単一のコンパクトディスクの保持用ケース、および2枚のコンパクトディスクの保持用ケースに関する寸法および形状については、工業規格が既に確立している。例えば、前記コンパクトディスクは数種類の直径寸法で製造されるが、最も一般的な直径寸法は12cmである。したがって、コンパクトディスク製造業者は、工業規格範囲内でコンパクトディスクの保持用ケースを製造することにより、標準寸法のコンパクトディスクの収納用に使用でき、また店頭の陳列棚に容易に陳列することができ、さらには標準形式の印刷挿入紙の差込みも可能である。このことは、末端の消費者にとっても、該コンパクトディスクの保持用ケースを他のコンパクトディスク収集品と一緒に容易に保管することを可能にしている。
【0003】
しかしながら、従来の2枚のコンパクトディスクの保持用ケースは、単一のコンパクトディスクの保持用ケースに比べ、深さあるいは厚さが二倍以上あり、その他は同じ寸法となっていた。すなわち、単一のコンパクトディスクの保持用ケースの標準の厚さが、ケースを閉じた状態で表から裏まで計測すると、約10mmであるのに対し、2枚のコンパクトディスクの保持用ケースの標準の厚さは約24mmであった。このことは、製造業者にとっては製造費用および搬送費用の増大を意味し、消費者にとってはより広い保管スペースが必要になることを意味する。更に、通常の単一のコンパクトディスク用保管ラックは、単一のコンパクトディスクの保持用ケースおよび2枚のコンパクトディスクの保持用ケースを混ぜて同一ラックに保管するのにはケースを収納するには適さなかった。
【0004】
そこで、前記問題点を解決するために、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと同じ外のり寸法を有する2枚のコンパクトディスクの保持用ケースが先行技術文献により開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の2枚のコンパクトディスクの保持用ケースには他の問題点がある。
例えば、ヨーロッパ特許公開0420350号は、中間部の一端部に回動可能に軸着された表蓋部と、前記中間部の他端部に回動可能に軸着された裏蓋部を有するケースを開示している。該ケースは表蓋部および裏蓋部を共に開くと、ジグザグ形状を成す。しかしながら、該ケースは、通常の単一のコンパクトディスクの保持用標準ケース用印刷挿入紙の標準形式では適合できないため、特別な形式の印刷挿入紙を使用する必要がある。従来の挿入紙の形式は、表蓋部の内側に差込むためのもので、内容および演奏者を記載した数ページから成るかなり詳細な小冊子と、裏蓋部の内側に差込むためのもので、簡単な記載がある一枚の裏表紙とにより構成される。したがって、代わりの挿入紙のデザインおよび印刷術、さらに新規挿入紙に適合するのに必要な機械装置が、製造費用に加えられることになる。
【0006】
一方、従来の単一のコンパクトディスクの保持用ケースと全体寸法を同じにするためには、表蓋部および裏蓋部の厚さを、より薄くする必要があるので、従来の単一のコンパクトディスクの保持用ケースよりも強度が低下する傾向がある。さらに、表蓋部と裏蓋部が並列位置に在るため、第1のコンパクトディスクを取り出した後、あるいは戻した後に、第2のコンパクトディスクを取り出すためには、ケース全体を裏返す必要がある。
【0007】
つづいて、比較的薄い2枚のコンパクトディスクの保持用ケースとして別のケースが知られている。かかるケースは、表蓋部と裏蓋部とを蝶番結合し、2枚のコンパクトディスクを保持するトレーは、裏蓋部の前記蝶番結合端部の反対端部で、裏蓋部と蝶番結合してある。使用者は、トレーを表蓋部と裏蓋部から離れて外側方向に開くことにより、トレーの下側に保持されているコンパクトディスクを取り出すことができるようになっている。
【0008】
しかしながら、かかるケースには、トレーを開いた時に、トレーが表蓋部と裏蓋部の外側に前記蝶番結合部を中心に回動するため、最初にトレーの上側表面に載っていたコンパクトディスクが、ケースの外側で下向きに吊るされるようになり、コンパクトディスクが適当にトレーに固定されていない場合には、表蓋部および裏蓋部のいずれにも保護されないために、落下して壊れる可能性があるという大きな問題点がある。
【0009】
更にまた、ケースをいっぱいに開いた時に、最初にトレーの上面にあったディスクが逆にトレーの下側に位置することは、使用者にとっては紛らわしいものとなる。
本発明は、このような従来の技術の問題点を解消すべくなされたもので、ケースの可塑性材料の厚さを薄くすることなく、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ外形寸法を有すると共に、印刷挿入紙の標準形式に適合させる一方、取扱方法をも容易にした複数のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及びその作用】
このため本発明の請求項1に記載の発明に係るコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースは、表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、を含んで構成し、ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成した。上記構成により、2枚のコンパクトディスクを保持するキャリア部を、前記第2の軸結合手段を介して、前記第1の軸結合手段により軸結合される表蓋部と裏蓋部との間に取り付けるようにしたので、例えば、従来の単一のコンパクトディスクの保持用ケースの軸結合される表蓋部と裏蓋部とを流用することが可能となり、以って単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの略同等の大きさ・厚さを維持しつつ2枚のコンパクトディスクを保持することができるようになる。しかも、従来の2枚のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースに対し、下記の点で格段に優れている。第一に、従来の単一のコンパクトディスクの保持用ケースの軸結合される表蓋部と裏蓋部とを流用することができるので、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースに従来より用いられてきた印刷挿入紙を、そのまま流用することができるので、コストの増大を防止することが可能となる。第二に、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同等の厚さとしても、表蓋部と裏蓋部自体の厚さを薄くしなくて済み、ケースの剛性の低下を防止することができる。即ち、例えば、従来のジグザグ型式の2枚のコンパクトディスクの保持用ケースは、構成が複雑であったため、ケースを閉じたときに、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さにするためには、表蓋部や裏蓋部自体の厚さを薄くせざるを得なかったが、本発明によれば、2枚のコンパクトディスク収容ケースを保持するキャリア部を、前記第2の軸結合手段を介して、前記第1の軸結合手段により軸結合される表蓋部と裏蓋部との間に取り付けるようにしたので、従来の単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの軸結合される表蓋部と裏蓋部との間のスペースを有効活用でき、以って単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同等の厚さとしても、表蓋部と裏蓋部自体の厚さを薄くしなくて済み、ケースの剛性の低下を防止することができることになるのである。第三に、従来の2枚のコンパクトディスクの保持用ケースでは、何れのものであっても、保持用ケースを開きディスクの脱着操作を行なう際に、保持されているディスクの何れかが下方を向いて剥き出しで吊るされる状態が存在するようになっていたため、ディスクの地面等への落下や脱着操作性に問題があったが、本発明によれば、ディスクは表蓋部と裏蓋部との間で常に保持されるので、保持用ケースを開いたときでも、ディスクの地面への落下等を確実に防止することができる。しかも、表蓋部と裏蓋部との間に軸着されているキャリア部を、第2の軸結合手段を介して自由に反転させることができるので、簡単な操作により、2枚のディスクの何れをも作業者に容易に対面させることができるので、脱着操作性を大幅に向上させることができることとなる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、ケースを閉じたときに、前記表蓋部或いは前記裏蓋部に設けた側壁部により、前記キャリア部の端縁部を実質的に全体的に取り囲むように形成した。請求項3に記載の発明では、前記キャリア部の横方向寸法が、ケースを閉じたときに、表蓋部および裏蓋部の端縁部が前記キャリア部の端縁部より大きくなるように、表蓋部および裏蓋部の横方向寸法より小さくなるように構成した。上記請求項2、請求項3に記載の発明の構成により、キャリア部延いては保持しているディスク等に直接外部からの衝撃が加わることを極力抑制できることになる。更に、請求項2に記載の発明によれば、側壁部によって、ディスク等の落下の可能性を極力排除できることになる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースを、単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースで構成するようにした。上記構成によれば、従来の単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースを流用し、この標準ケースの表蓋部或いは裏蓋部に、第2の軸結合手段を設けて前記キャリア部を取り付けるようにしたので、大幅なコストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えた少なくとも1つのキャリア部と、前記ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する少なくとも1つの第2の軸結合手段と、を含んで構成した。上記構成のように、2枚のコンパクトディスク等ディスク類を保持するキャリア部を少なくとも1つ備えると共に、これに応じて前記キャリア部を軸結合する第2の軸結合手段を備えるようにすれば、例えば、単一のコンパクトディスク保持用標準ケースの整数倍の厚さのケースで、3枚以上のコンパクトディスク等ディスク類を保持できるように構成することが可能となる。
【0014】
【実施例】
本発明の実施例を、添付の図面を参照して説明する。
図1によれば、図示しない2枚のコンパクトディスクを保持するための保持用ケース10は、表蓋部12、裏蓋部14、およびトレーすなわちキャリア部18を含んで構成される。表蓋部12および裏蓋部14は透明な可塑性材料で製造されるのが好ましいが、不透明な材料で製造してもよい。キャリア部18は、透明または不透明な可塑性材料で製造してよい。
【0015】
表蓋部12は、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの表蓋部と実質的に同一であり、図3に示すように、ケースを閉じた時には、裏蓋部14方向に延びる略方形の平面部20と2つの側壁22とを含んで構成される。側壁22は、平面部20の端縁部23を超えて突出して、端縁部23にコ字形開口部25を形成する。2つの第1軸突起24が、コ字形開口部25の相対する面で互いに内側に向き合って側壁22に形成される。また、内側に延びる2つの位置決めタブ26が、平面部20の下方に位置する各側壁22に形成される。タブ26は、表蓋部12の内側面に隣接して図示しない第1の印刷挿入紙を保持するためのものである。ここでいう印刷挿入紙は、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの表蓋部に使用される標準デザインのパンフレットである。
【0016】
裏蓋部14は、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの裏蓋部と実質的に同一であり、2つのコ字形端壁30、32を備えた平面部28を含んで構成される。 2つのコ字形端壁30、32は、ケースを閉じた時に、表蓋部12の側壁22の問に嵌合し、キャリア部18の端縁部を実質的に全体的に取り囲むケースの4つの端壁を形成するように配列される。コ字形開口部25に隣接する端壁30には、第1軸突起24を収容するための一対の第1軸開口部34が形成されるので、これによりケースの一端縁部に沿って表蓋部12と裏蓋部14との間に第1の軸結合または蝶番結合をすることができる。
【0017】
裏蓋部14は、平面部28の内側面に隣接して配置される図示しない第2の印刷挿入紙を収容する。ここでいう印刷挿入紙は、コンパクトディスクの保持用標準ケースの裏蓋部に使用される標準デザインの単一シートである。 キャリア部18は、表面部38および裏面部40を有する平面部36を含んで構成される。平面部36の中心付近に円形開口部42が形成されて、12個の半径方向内方に延びるディスク保持タブ44a、44bが、円形開口部42の周囲に形成される。各ディスク保持タブ44a、44bはL字形状であり、ディスク保持タブ44aに関する6個のタブはその末端部がキャリア部の表面部38上に突出して配列され、またディスク保持タブ44bに関する他の6個のタブはその末端部がキャリア部の裏面部40上に突出して配列される。2組のディスク保持タブ44a、44bは円周回りに交互に配列される。ディスク保持タブ44a、44bの末端部は、コンパクトディスクの中心部の孔の寸法と同じ約10mmのピッチ円直径で配置される。1組のディスク保持タブ44aは、キャリア部18の
表面部38に1枚のコンパクトディスクを保持できる保持手段を形成し、他の1組のディスク保持タブ44bは、キャリア部18の裏面部40に2枚目のコンパクトディスクを保持できる保持手段を形成する。ディスク保持タブ44は、コンパクトディスクを普通の方法で取外しできるような弾性を有する。
【0018】
略半円形の開口部46が、平面部の各四隅付近に形成される。これらの切込みは、使用者が、ディスク保持タブ44a、44bからコンパクトディスクを取り外すために、コンパクトディスクの周囲付近に指を置く場所を、指孔として提供している。 表蓋部12のコ字形開口部25に隣接するキャリア部18の端部は、隆起ステップ部48として形成され、2つの外側に向いた第2軸突起50がステップ部48の両側に形成される。キャリア部18は、裏蓋部14のコ字形端壁30、32の間に嵌合する寸法である。2つの第2軸開口部が、コ字形端壁30で第1軸開口部34の付近に形成されて、キャリア部の第2軸突起50を収容する。これにより、裏蓋部14とキャリア部18との間に第2の軸結合または蝶番結合をすることができる。
【0019】
図2に示すように、第2軸開口部52は第1軸開口部34からわずかな距離だけ離れて位置する。キャリア部18は裏蓋部14に回動自由に軸支される。その回動支軸は、表蓋部12と裏蓋部14との間のケースの一端縁部に沿った軸結合の軸に隣接し、かつ、.これと実質的に平行である。このように、キャリア部18はケース端縁部付近で表蓋部と裏蓋部との間に回動可能に取り付けられる。
【0020】
ステップ部48の下側角部53を面取りして、角部53と裏蓋部14との間の間隙を設ける。これにより、ケース10が開いた時にキャリア部18が矢印55の方向に自由に回動できる。この様な構成により、キャリア部18が表蓋部12上に接するように移動して、キャリア部の裏面部40に対面して保持されたディスクを取り出すことができる。
【0021】
リム54は、キャリア部18の端縁部周囲に形成され、表面部38および裏面部40からわずかな距離だけ突出して、ケースを閉じた時に、コンパクトディスクが蓋部12、14に押しつぶされるのを防ぐ。また、キャリア部18の端部には、ケースを閉じた時に、表蓋部12のタブ26を逃がす場所を提供している4つの半円形凹部56と、ケースを閉じた時に、裏蓋部14のコ字形端壁30の先端部とコ字形端壁32の先端部との間の隙間に位置するように2つの凸部58が形成される。
【0022】
本実施例により、わずかな修正を加えるだけで、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの表蓋部および裏蓋部を使用して2枚のコンパクトディスクの保持用ケースを提供することができる。詳しくは、単一のコンパクトディスクを保持するケースに通常取付けられている保持トレーを取り外し、代わりに、表蓋部と裏蓋部との間の従来の軸結合部に隣接して、裏蓋部に回動可能に軸着されるキャリア部18を使用する。2つの軸(または蝶番)結合を使用すると言っても、表蓋部と裏蓋部との間の従来の軸結合を修正する必要があるものではない。図3から明らかなように、第2の軸結合のための開口部52を、第1の軸結合のためのもとの開口部34より小さくして、角部における可塑性材料の量を減少させないようにして、ケースの強度を低下させないようにした。
【0023】
本実施例により、キャリア部18の横方向寸法は、ケースを閉じた時に表蓋部および裏蓋部の端縁部がキャリア部18の端縁部より長くなるような寸法であることは明らかである。また、表蓋部および裏蓋部の側壁および端壁は、キャリア部18の端縁部を実質的に取り囲んでいる。これにより、キャリア部18は前記2つの蓋部によりケースの端縁部からの直接の衝撃から保護される。
【0024】
本実施例により、単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースと略同じ寸法で、従来技術における問題点を解消できる2枚のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースを提供できることは明らかである。即ち、第一に、ケースを適当に設計することにより、単一のコンパクトディスクの保持用ケース用の標準形式の印刷挿入紙を使用できる。このため、新しい挿入紙をデザインし印刷する必要がなく、ケースに挿入紙を取り付けるのに、従来の製造機械装置を使用できる。
【0025】
第二に、表蓋部および裏蓋部を製造する可塑性材料の厚さを、コンパクトディスクの保持用標準ケースの蓋部の厚さと比較して薄くする必要がない。 第三に、ケースを開いた時に、表にでていないコンパクトディスクが蓋部のいずれかにより保護される。例えば、キャリア部の表面部に保持された第1のコンパクトディスクを見るために表蓋部を開く時、第2のコンパクトディスクは、逆さまに吊るされてはいるが、取り外されるまでは裏蓋部によって保護される。同様に、第2のコンパクトディスクを見るためにキャリア部を表蓋部側に移動させた時、第1のコンパクトディスクは、逆さまに吊るされてはいるが、取り外されるまでは表蓋部によって保護される。
【0026】
更に、第2のコンパクトディスクに接近するためにケース全体を裏返す必要がない。上記実施例により、第2のコンパクトディスクを見るために、または第2のコンパクトディスクを固定するための保持タブを見るために、キャリア部を表蓋部側に移動させるだけで良い。 上記実施例では、ケースの表蓋部、裏蓋部およびキャリア部を軸結合するのに2つの軸結合を組み合わせたが、他の実施例として単一の軸結合も可能である。例えば、表蓋部、裏蓋部およびキャリア部をケースの一端縁部に沿って共通の回転軸で軸支する。しかしながら、かかるケースでは、標準の軸結合構成を変更する必要があるので、単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの表蓋部および裏蓋部をかかるケースに使用することはできない。
【0027】
なお、上記実施例では、単一のキャリア部を有するケースを開示したが、本発明は、複数のキャリア部を有し、かつ、従来の単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースの例えば2倍の厚さを有する等、厚さの厚いケースをも含むことができるものである。
【発明の効果】 以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースと略同じ寸法で、従来技術における問題点を解消できる2枚のコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースを提供することができる。請求項2、請求項3に記載の発明によれば、キャリア部延いては保持しているディスク等に直接外部からの衝撃が加わることを極力抑制できる。更に、請求項2に記載の発明によれば、側壁部によって、ディスク等の落下の可能性を格段に低減することができる。請求項4に記載の発明によれば、従来の単一のコンパクトディスク等ディスク類の保持用標準ケースを流用し、この標準ケースの表蓋部或いは裏蓋部に、第2の軸結合手段を設けて前記キャリア部を取り付けるようにしたので、大幅なコストの低減を図ることができる。請求項5に記載の発明のように、2枚のコンパクトディスク等ディスク類を保持するキャリア部を少なくとも1つ備えると共に、これに応じて前記キャリア部を軸結合する第2の軸結合手段を備えるようにすれば、例えば、単一のコンパクトディスク保持用標準ケースの整数倍の厚さのケースで、3枚以上のコンパクトディスク等ディスク類を保持できるように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
開いた状態の2枚のコンパクトディスクの保持用ケースを示す透視図。
【図2】
上記コンパクトディスクの保持用ケースを開いた状態の結合部の詳細を示す拡大平面概略図。
【図3】
上記ケースの各部品の分解図。
【符号の説明】
10 ケース
12 表蓋部
14 裏蓋部
18 キャリア部
22 表蓋部の側壁部
23 表蓋部の平面部の端縁部
24 第1軸突起
25 表蓋部のコ字形開口部
30 裏蓋部のコ字形端壁
32 裏蓋部のコ字形端壁
34 第1軸開口部
38 キャリア部の表面部
40 キャリア部の裏面部
44a 表面側コンパクトディスク保持タブ
44b 裏面側コンパクトディスク保持タブ
50 第2軸突起
52 第2軸開口部
 
訂正の要旨 <訂正の要旨>
訂正事項(a)
特許第2504930号明細書の特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として次のとおりに訂正すること。
「【請求項1】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と前記裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えたキャリア部と、
ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する第2の軸結合手段と、
を含んで構成し、
ケースを閉じたときに単一のコンパクトディスクの保持用標準ケースと略同じ厚さを有するように構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。」
訂正事項(b)
特許第2504930号明細書の特許請求の範囲の請求項5を、特許請求の範囲の減縮を目的として次のとおりに訂正すること。
「【請求項5】表蓋部と、裏蓋部と、前記表蓋部と裏蓋部の一端縁部を相互に軸着する第1の軸結合手段と、を備え、前記表蓋部と裏蓋部とを前記第1の軸結合手段を介して開閉可能に軸着したコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケースにおいて、
2枚のコンパクトディスク等ディスク類を表裏面に対面させて保持する保持手段を備えた少なくとも1つのキャリア部と、
前記ケースを閉じたときに、前記キャリア部が前記表蓋部と前記裏蓋部との間に介装されるように、前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、前記表蓋部或いは裏蓋部に前記キャリア部の一端縁部を軸結合する少なくとも1つの第2の軸結合手段と、
を含んで構成したことを特徴とするコンパクトディスク等ディスク類の保持用ケース。」
訂正事項(c)
上記請求項1及び5の訂正に伴い、特許明細書段落【0010】及び【0013】の「前記一端縁部若しくはその付近で、前記第1の軸結合手段の軸と略平行に」を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「前記一端縁部の付近で、前記第1の軸結合手段の軸に隣接し、且つ該軸を含まず該軸と略平行な回動支軸を介して、」と訂正すること。
審理終結日 2000-05-24 
結審通知日 2000-06-06 
審決日 2000-07-11 
出願番号 特願平4-211688
審決分類 P 1 112・ 113- YA (B65D)
P 1 112・ 121- YA (B65D)
P 1 112・ 534- YA (B65D)
P 1 112・ 531- YA (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前田 幸雄生越 由美  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 杉原 進
森林 克郎
登録日 1996-04-02 
登録番号 特許第2504930号(P2504930)
発明の名称 コンパクトディスク等ディスク類の保持用ケ―ス  
代理人 笹島 富二雄  
代理人 笹島 富二雄  
代理人 西山 春之  
代理人 西山 春之  
代理人 藁科 孝雄  

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