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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1030203
審判番号 審判1999-6731  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-22 
確定日 2000-11-10 
事件の表示 平成 8年特許願第184286号「発光装置」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 1月16日出願公開、特開平10- 12387]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成8年6月26日に出願されたものである。また、平成11年5月21日付けで手続補正書が提出されたが、上記手続補正書による補正は当審決と同日付けで却下され、上記補正はないものとなった。それゆえ、本願の請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書および図面の記載からみて、その特許請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「電池を電源として発光ダイオードを点滅させる発光装置において、前記電池の電圧を印加されてほぼ0電圧より一定電圧までの立ち上がり時間Aが0.3〜0.7秒、一定電圧以上のハイレベル時間Bが0.7〜2.0秒、ほぼ0電圧までの立ち下がり時間Cが0.3〜0.7秒、ほぼ0電圧のロウレベル時間Dが約1.0秒、周期が1.8〜4.9秒となる点滅信号を前記発光ダイオードに印加する点滅駆動回路を備えたことを特徴とする発光装置。」(以下「本願発明」という。)
2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-295677号公報(以下引用例という)には、第1〜2図と共に以下の事項が記載されている。
(1-1)「発光ダイオードの点灯、消灯を行う駆動装置で、前記点灯、消灯の動作持に電流を漸増、漸減する点滅制御部を設けたものにおいて、該点滅制御部はデジタル回路と積分回路で成り、該デジタル回路の出力に該積分回路の入力を接続したことを特徴とする発光ダイオードの駆動装置。」(特許請求の範囲第1項)
(1-2)「発光ダイオードの別の特徴として応答速度が電球に比較して速いので、例えば、多数の整列させた発光ダイオードを順次点灯させて、光が流れる効果を得る様な場合、あるいは二色以上の発光ダイオードを順次点灯させて混色を行う場合に、変化が突然であり、ややその効果を発揮し難い場合があり、その様な場合には、駆動装置中に点滅制御部を設けて、点灯時には発光ダイオードに供給する電流を漸増させ、消灯時には同じく電流を漸減することでスムーズな変化を行つているものである。」(第1頁右欄第3〜13行)
(1-3)第1図は発光ダイオードの駆動装置の一実施例を略示的に示すブロック回路図であって、その説明として、
「つぎに、本発明を第1図の一実施例に基づいて詳細に説明する。尚理解を容易にするために従来例と同様な動作の2色の混色の例で説明を行う。
図中符号1は点滅制御部であり、該点滅制御部は、デジタル回路である8ビットのシフトレジスター2と、4入力のOR回路3,4、及び積分回路5,6より構成され、さらにその入力側には発信器7が接続され、出力側には発光ダイオード10,11を駆動するトランジスタ8,9が接続されている。」(第2頁左下欄第16行〜右下欄第4行)
(1-4)第2図は第1図の回路の出力を示すグラフであって、その説明として、
「上記動作を第2図を用いて、さらに詳細に説明する。尚対照を容易にするために図中に示された波形R1,G1,R2,G2は全て第1図中に示された同符号の信号線に生ずる波形と対応するものとなつていて、さらに第4図に示した従来例のものと同じ動作を目的としている。図中前記OR回路3の出力の波形R1は時間軸上の各区間b,c,d,eに出力を生じ、同じくOR回路4の出力の波形G1は、d,e,f,gの各区間に出力を生じている事は前記の説明の通りであり、その出力はON、又はOFFの二値のいずれかである。このデジタル量による出力を前記積分回路5,6に夫々に通じることにより波形R1はその立上りエッヂ部Rh1と立下りエッヂ部Rd1において適宜に設定された前記積分回路5の時定数により漸増する立上りエッヂ部Rh2と、漸減する立下りエッヂ部Rd2を持つ波形R2に加工され、同様に波形G1は前記積分回路6によつて波形G2に加工される。これによつてデジタル出力はONとOFFの中間値を含むものに形成されスムーズな混色の目的を達する。」(第3頁左上欄第3行〜右上欄第2行)
(1-5)「以上二色の混色を行う混色の実施例につき説明したが、例えばシフトレジスター2、OR回路3、積分回路5の片側チャンネルのみで実施する時には、単色のスムーズな点灯、及びスムーズな消灯が行われ本考案の主旨が混色の実施例と同様に発揮出来るものである。」(第3頁右上欄第5〜10行)
(1-6)「この後に再度区間aからの動作が繰返される。」(第2頁右上欄第15〜16行)
3.対比
本願発明と引用例に記載されたものとを比較すると、引用例の「発信器」、「点滅制御部」及び「トランジスタ」から成る回路が、本願発明の「点滅駆動回路」に相当し、引用例第2図における波形R2において、時間軸上の「区間c,d,e」で出力がデジタル回路のONレベル、「区間g、h、a」でOFFレベルであり、「区間b」で「立上りエッヂ部Rh2」、「区間f」で「立下りエッヂ部Rd2」が生じていると認められるので、「区間b」、「区間c、d、e」、「区間f」、「区間g,h,a」がそれぞれ本願発明の「立ち上がり時間A」、「ハイレベル時間B」、「立ち下がり時間C」、「ロウレベル時間D」に相当する。
また、引用例のものは前記2.(1-5)に記載されたように、動作が周期的に繰り返されるので、結局両者は、
「発光ダイオードを点滅させる発光装置において、電圧を印加されてほぼ0電圧より一定電圧までの立ち上がり時間A、一定電圧以上のハイレベル時間B、ほぼ0電圧までの立ち下がり時間C、ほぼ0電圧のロウレベル時間D(を有する)点滅信号を前記発光ダイオードに印加する点滅駆動回路を備えたことを特徴とする発光装置」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:
本願発明では、点滅信号の立ち上がり時間Aを0.3〜0.7秒、ハイレベル時間Bを0.7〜2.0秒、立ち下がり時間Cが0.3〜0.7秒、ロウレベル時間Dを1.0秒、周期を1.8〜4.9秒としているのに対し、引用例では、これらの時間を特に限定していない点。
相違点2:
本願発明では、電池を電源としているのに対し、引用例では、電源を特に限定していない点。
4.当審の判断
前記相違点1について検討すると、本願発明は、点滅信号の立ち上がり時間、ハイレベル時間、立ち下がり時間、ロウレベル時間、周期を前述のように設定することによって、「このようなパターンの電圧及び周期の点滅信号で発光ダイオード8を点滅させると、発光ダイオード8が、急峻に点滅しないで、0.5秒の緩やかな光度上層推移で徐々に発行して1.5秒間にわたりほぼ同じ光度の状態を維持し、0.5秒の緩やかな光度下降推移で徐々に消光し、1.0秒の間隔をおいて同じ点滅を繰り返すので、蛍の発行態様のように、人間の感性にとって視覚的に優しくかつ心地よい点滅パターンとなる。」(段落【0012】)と明細書に記載されている様な効果を奏するものであるが、前記2.(1-2)及び(1-4)で指摘したように、点滅の応答速度が速い発光ダイオードにおいて、点滅制御部を設けて、人間の感性にとってスムーズな変化の点滅を行なわせることは引用例に記載されており、このような目的で、立ち上がり時間、ハイレベル時間、立ち下がり時間、ロウレベル時間、周期を定めることは当業者が必要に応じて適宜なしうる事項に過ぎない。
そして、これらを特に本願発明のように限定することに臨界的な意義は認められず、また、これによって格別な効果を奏したとも認めれない。
前記相違点2について検討すると、電子回路において、電源として電池を用いることは慣用的な技術であり、当業者が適宜なしえたものと認める。
したがって、本願発明は引用例に記載された技術に当業者が適宜なしえた技術を適用することにより容易に発明をすることができたものであると認められ、本願発明によってもたらされる効果も、引用例に記載されたものから当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
5.むすび
以上より、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-08-24 
結審通知日 2000-09-05 
審決日 2000-09-20 
出願番号 特願平8-184286
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 善弘  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
熊倉 強
発明の名称 発光装置  
代理人 磯村 雅俊  
代理人 渡辺 昌幸  

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