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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1030380
審判番号 審判1999-2644  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-12-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-18 
確定日 2000-11-17 
事件の表示 平成 5年特許願第118585号「半導体装置における微細電極の製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年12月 2日出願公開、特開平 6-333931]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成5年5月20日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年11月24日付けの手続補正書及び平成11年3月18日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「半導体基板に形成された素子部に対応して、前記基板表面に配線層を形成する第1の工程と、
前記配線層上に前記配線層に貫通する開口を形成した絶縁物保護層を形成する第2の工程と、
前記保護層上に前記開口を介して前記配線層に接続される導電膜を形成する第3の工程と、
前記導電膜上に形成しようとする微細電極の高さに相当する膜厚のレジスト膜を形成する第4の工程と、
前記レジスト膜に前記絶縁物保護層の開口部に対応して、除去液にて前記導電膜に至るホト穴を形成し、前記導電膜を露出させる第5の工程と、
リアクティブイオンエッチングによって、酸素ガスのラジカルをプラズマ中で生成し、前記ホト穴を電界で加速衝撃することで異方性エッチングする第6の工程と、
前記異方性エッチングされた前記ホト穴にメッキ金属を埋め込み、前記レジスト膜を除去して柱状電極を形成する第7の工程とを具備し、
前記第6の工程によって前記第5の工程で形成されたホト穴の底部に形成されたテーリング部が除去されるようにしたことを特徴とする半導体装置における微細電極の製造方法。」
II.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平5-102160号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開昭63-229826号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の(ア)〜(ケ)の事項が記載されている。
引用例1:
(ア)「【請求項1】チップ上に突起電極を設ける半導体装置の製造方法において、電極上の保護膜表面に下地金属層を形成する工程と、この下地金属層上にフォトレジストを設けパターン形成する工程と、このパターン形成された上記レジストをプラズマアッシングする工程と、上記パターンに突起電極を形成する工程と、この突起電極をマスクとして上記下地金属層をエッチングする工程とを備えた半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲)
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は半導体装置のTAB(Tape Automated Bonding)アセンブリ時にテープと接合される半導体装置の突起電極(バンプ)部・・・の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図8(A)〜(C)は半導体装置のTABアセンブリプロセスを説明する図である。図8(A)のウエハ上のチップに図8(B)にて突起電極(バンプ)を形成し、図8(C)に示すようにこの突起電極とリードがボンディングされる。図7は図8(B)のバンプ部を拡大した従来例を示す断面図であり、例えばアルミ合金等からなる電極1上に突起電極6を形成している。なお2は絶縁膜、3は下地金属層である。この種の突起電極6の形成方法を図9によって説明する。
【0003】図9(A)は電極1と図示しない半導体部分を保護する絶縁膜2を示す。図9(B)において、上記電極1と絶縁膜2の表面上に突起電極6と電極1との機械的密着力および電気的な導電性を上げるために全面に下地金属層3を例えばスパッタリングで形成する。この下地金属層3は例えば銅,クロム,金等の多層金属膜が用いられている。
【0004】次に図9(C)において突起電極を形成するためのマスクとしてネガレジスト4をパターン形成する。このマスク厚さは例えば30μm程度あり、これは突起電極6が後工程のTAB時にハンダ層の拡散防止や機械的耐性を確保するため厚いものが要求されているからであり、マスク4の厚さは当然のことながら突起電極6より厚い。
【0005】次に図9(D)において例えば金等をメッキすることにより突起電極6を形成する。
【0006】次に図9(E)においてレジスト4を除去後、図9(B)で全面スパッタリング形成した下地金属層3を突起電極6をマスクとしてウエットエッチング除去し、突起電極6形成の部分工程は完了する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】(1)従来の突起電極6の形成方法では、厚膜レジスト4のパターンを形成したとき、現像時の残留液の影響によって形成されると考えられる裾引きが生じ、その後工程におけるメッキ時に裾引き個所にメッキ金属が充填されない。その形状を図7の5に示す。このため下地金属層3と突起電極6との接触面積が少なくなり機械的耐力が劣るとともに電気的接触性能が低下するという問題があった。さらにまた、半導体装置の微細化に伴って相隣り合う突起電極間ピッチが狭くなってきており、上記裾引きがあると微細化が困難であるという問題点もあった。(2)さらにまた図9(E)に示したように、下地金属層をウエットエッチングしたとき、図7に示すように下地金属層3がサイドエッチングされる。結局のところ所定より幅のせまい下地金属層3s となり、このようなものでは突起電極6との接続の機械的、電気的性能が劣るものであるという問題点もあった。
【0008】この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、
(1)裾引きを除去する製造方法。
(2)裾引きを発生させない装置構造であってかつ、下地金属層のサイドエッチングを防止する構造の提供を目的とする。」(第2頁左欄18行〜同頁右欄26行)
(ウ)「【0011】
【実施例】実施例1.以下この発明の一実施例を図について説明する。図1は第1の発明に係る突起電極の製造方法を示すもので、プロセス途中の断面図である。詳しくは従来例で説明した図9(C)の後に来るものであり、この本発明の図1の後に図9(D)の工程が来る。つまり図1におけるネガレジストの厚膜レジスト4a をパターン形成するまでは従来例と同じ製造方法であり、この第1の発明ではレジスト4a をパターニング後、図示しない半導体基板(図8のAに相当する)の裏面から約100℃程度加熱し、表面を酸素プラズマによるアッシング(灰化)によりレジスト4a の表面層4b のみを除去する。このようにして表面層4b のみが除去されたレジスト4a は裾引き5a が小さなものとなり、その後の工程でメッキされる突起電極6と下地金属層3との接触面積は小さくならない。
【0012】なお、この酸素プラズマによるアッシング条件を図2に示す。この一実施例による条件では基板の裏面から加熱されているのでレジスト4a の底部ほどアッシングされやすい。このようにアッシング処理時の基板温度、処理時間等を制御することにより、レジスト4a のパターン形状補正が可能となり、より垂直性のあるパターンが得られる。その実験の一例を図3、図4に示す。なお、図3に示したポジ型レジストはレジスト4の側壁傾きは小さいが後工程のメッキ性が悪いため採用され難い。」(第2頁右欄43行〜第3頁左欄18行)
(エ)「【0015】
【発明の効果】以上のように第1の発明によれば、電極上の保護膜表面に下地金属層を形成する工程と、この下地金属層上にフォトレジストを設けパターン形成する工程と、このパターン形成された上記レジストをプラズマアッシングする工程と、上記パターンに突起電極を形成する工程と、この突起電極をマスクとして上記下地金属層をエッチングする工程とによって半導体装置を製造しているので
(1)突起電極と下地金属層との接触面積が従来のものに比べ増加し
(2)その結果、下地金属層と突起電極との機械的、電気的性能が向上する。
(3)また突起電極と下地金属層との接触が所望通りとなるので狭ピッチの突起電極が得られることになり
(4)半導体デバイスの微細化が可能となる。 」(第3頁右欄12〜27行)
(オ)第9図に従来の突起電極形成プロセス図として、(A)チップの電極1の上に半導体部分を保護する絶縁膜2を電極1に貫通する開口を有する状態で形成し、次に、(B)上記電極1と絶縁膜2との全面に下地金属層3を形成し、次に、(C)上記絶縁膜の開口部に対応する部分に開口を有するレジスト4を形成し、次に、(D)上記レジストの開口部にメッキし、次に、(E)上記レジストとレジストに対応する部分の下地金属層3を除去して突起電極6を形成すること(第4頁の図9の説明と符号の説明、及び、図9参照) が記載されている。
以上の記載事項をまとめると、引用例1には、
チップに電極を形成する第1の工程(上記(ア)参照)
上記電極の上に電極に貫通する開口を有する絶縁膜を形成する第2の工程
上記絶縁膜上にその開口を介して電極に接続される下地金属層を形成する第3の工程
上記下地金属層の上に形成しようとする突起電極より膜厚のレジストを形成する第4の工程(上記(イ)参照)
上記レジストの上記絶縁膜の開口に対応した部分を現像液により下地金属層に至るまで除去し未現像の裾引き部が残存する開口部を形成する第5の工程(上記(イ)参照)
上記レジストの開口部を前記裾引き部が除去されたより垂直性のあるものとするべく酸素プラズマによるアッシングを行う第6の工程(上記(ウ)参照)
上記アッシングされたレジストの開口部にメッキ金属を埋め込む第7の工程(上記(イ)、(ウ)、(オ)参照)
その後に上記レジストを除去して突起電極を形成する第8の工程(上記(ウ)、(オ)参照))
を有する半導体装置における突起電極の製造方法の発明(以下、「引用発明1」という。)
が記載されていると認められる。
引用例2:
(カ)「現像後に発生するレジスト残りを防止する半導体装置の製造方法において、現像液でレジストを除去する現像工程を経た後、平行平板電極を備えたドライエッチング装置を用いて前記現像工程後になお残存したレジスト残りを取り除くことを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲)
(キ)「従来の現像法では、現像液がレジストと下地との界面に達するまでにレジストと下地とで何らかの反応が起こり、界面付近のレジストが現像液で取りきれず、その結果レジスト残りが生ずるという問題点がある。」(第1頁右下欄4〜8行)
(ク)「本実施例では、エッチング室1内に一対の平行平板電極2,3を配置し、高周波電圧印加電極3上に被エッチング物4を載置するように構成されており、ガス導入孔1aから反応ガスをエッチング室1内に導入すると共に、排気孔1bから排気し、この状態で前記電極2,3間に高周波電源5を用いて高周波電圧を印加して放電を起させ、プラズマを発生させて半導体ウェハ4をエッチングするようにしている。
第1図(a)乃至第1図(c)は、露光後に現像液で80%乃至90%程度までレジストを除去した後、第3図のエッチング装置を用いて、残りのレジストを除去する場合のエッチング状況を工程別に順次示した断面図である。
まず、第1図(a)において、半導体基板10上にポリシリコン膜11を形成し、さらにフォトレジスト12を形成し、露光後現像液を用いて、フォトレジスト12の露光部を80%乃至90%程度取り除いたものが示されており、第4図(a)とほぼ同じである。この時点ではまだ現像されていない部分12aが存在する。
この状態で、前記のエッチング装置を用いてO2 プラズマ13を低圧力でしかも短時間放電させる。平行平板型エッチング装置を用いたエッチングでは、反応性イオンエッチングが主に進行する。即ち、O2 プラズマ13中のイオンは陰極付近で半導体ウェハに垂直な方向に加速され、そのうちレジストに到達したものが、レジストと反応していくことによりエッチングが進行する。よって反応性イオンエッチングは異方性であり、この装置を用いてレジストをO2 プラズマ13でエッチングする場合、レジストは垂直方向にエッチングされる。
したがって、第1図(b)に示すように、レジストは上の層が多少目減りするものの、レジストの狭い間隔に残っていたレジスト12aは垂直に除去され、第1図(c)に示すような、レジスト残りがなく、しかも寸法幅精度の優れた形状が得られる。
本実施例では、O2 プラズマ13を用いることにより、残りのレジスト12aをエッチングしていくが、レジストの上の層もエッチングされて多少目減りしていくという欠点がある。よって、上層のレジストの目減りの度合を最小限に抑えるためにレジスト12を厚く塗布すると共に、現像液によってレジストを界面近くまで除去し、O2 プラズマ13によるエッチングをできるだけ短い時間で行うことが重要である。」(第2頁右上欄10行〜同頁右下欄15行)
(ケ)現像のみで形成される凹部の形状が底部にレジストが残存したものであること(第4図(a)、同(b)、第1図(a)参照)
が記載されている。
以上の記載事項をまとめると、引用例2には、
半導体装置の製造において、現像工程で形成された凹部の底部に残存するレジスト残りを取り除く手段として平行平板電極を備えたドライエッチング装置を用いること(上記(カ)及び(キ)参照)、
及び、該平行平板型エッチング装置を用いたエッチングでは、反応性イオンエッチングが主に進行し、O2 プラズマ中のイオンは陰極付近で半導体ウェハに垂直な方向に加速され、そのうちレジストに到達したものが、レジストと反応していくことによりエッチングが進行するので、エッチングは異方性であり、レジストは垂直方向にエッチングされ、レジストの狭い間隔に残っていたレジストは垂直に除去され、レジスト残りがなく、しかも寸法幅精度の優れた形状が得られること(上記(ク)参照)
が記載されていると認められる。
III.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「電極」はチップの表面に素子部と対応して突起電極を形成すべき電極形成部を提供するものであることは明らかであり、前者における「配線層」は素子部と対応して基板表面に微細電極を形成すべき電極形成部を提供するものであるから、後者の「電極」と前者の「配線層」とはともに素子部に対応して形成された電極形成部であるという意味において同一であり、
後者における「突起電極」は「突起電極(バンプ)」との表現(上記(イ)参照)からみてバンプを示すものであり、前者における「微細電極」は「バンプ等の突出する微細電極」との表現(段落番号【0029】参照)からみてバンプをも示すものであるから、後者の「突起電極」と前者の「微細電極」とはバンプを示すという点で同一であり、
後者の「チップ」、「絶縁膜」、「下地金属層」、「レジスト」、「現像液」、「開口部」、「裾引き部」及び「第7の工程及び第8の工程」は、それぞれ、前者の「半導体基板」、「絶縁物保護層」、「導電膜」、「レジスト膜」、「除去液」、「ホト穴」、「テーリング部」及び「第7の工程」に相当するから、
両者は、「半導体基板に形成された素子部に対応して、前記基板表面に電極形成部を形成する第1の工程と、
前記電極形成部上に前記電極形成部に貫通する開口を形成した絶縁物保護層を形成する第2の工程と、
前記保護層上に前記開口を介して前記電極形成部に接続される導電膜を形成する第3の工程と、
前記導電膜上にレジスト膜を形成する第4の工程と、
前記レジスト膜に前記絶縁物保護層の開口部に対応して、除去液にて前記導電膜に至るホト穴を形成し、前記導電膜を露出させる第5の工程と、
前記第5の工程で形成されたホト穴の底部に形成されたテーリング部を除去する第6の工程と、
前記第6の工程で形成されたホト穴にメッキ金属を埋め込み、前記レジスト膜を除去して電極を形成する第7の工程
とを具備することを特徴とする半導体装置における微細電極の製造方法。」
である点で一致し、
以下の(1)〜(4)の点で相違する。
(1)電極形成部が、前者においては「配線層」であるのに対し、後者においては単に「電極」とされ配線層であるかどうかについて明示がない点、
(2)第4の工程におけるレジスト膜の膜厚について、前者は「形成しようとする微細電極の高さに相当する膜厚」としているのに対し、後者は「形成しようとする微細電極より膜厚」としている点、
(3)第6の工程として、前者は「リアクティブイオンエッチングによって、酸素ガスのラジカルをプラズマ中で生成し、前記ホト穴を電界で加速衝撃することで異方性エッチングする」としているのに対し、後者は「酸素プラズマによるアッシングを行う」としている点、
(4)第7の工程で形成される「電極」を、前者は「柱状電極」としているのに対し、後者は「突起電極」としている点。
IV.当審の判断
A.上記(1)の相違点について検討すると、
半導体基板表面に電極形成部を形成するのに配線層を用いることは本出願前に周知であるから、引用発明1における電極形成部としての電極を配線層とすることは当業者にとって適宜なし得ることである。
B.上記(2)の相違点について検討すると、
本願明細書には、本願発明の第4の工程におけるレジスト膜の膜厚の規定中の「 相当する」との表現の意味について特に記載したところはなく、第4工程におけるレジスト膜の膜厚が形成しようとする微細電極の高さより厚くてはいけないとする旨の記載もないから、本願発明の第4の工程におけるレジスト膜の膜厚に関する「 形成しようとする微細電極の高さに相当する膜厚」との表現は、通常の解釈に従って、レジスト膜の膜厚が正確に微細電極の高さに等しいことを表現したものでなく、レジスト膜の膜厚が微細電極の高さよりわずかに厚い場合、すなわち、引用発明1と同様に「形成しようとする微細電極より膜厚」とする場合をも含むものと解される。
してみると、上記(2)の相違点は実質的なものでない。
なお、本願明細書には、本願発明の実施例に関する図面として、図2には、アッシング後のレジスト膜の膜厚がCuメッキとはんだメッキにより形成した電極より低いものが記載されている(段落番号【0012】参照)が、該図2は、アッシングによりレジストがエッチングされる(段落番号【0020】〜【0028】参照)前の前記第4の工程におけるレジスト膜の厚さを示すものでないから、上記図2に関する記載をもって、本願発明の第4の工程におけるレジスト膜の膜厚が微細電極の高さより低いとすることはできない。
C.上記(3)の相違点について検討するに、
引用発明1において第6の工程を採用しているのは、第6の工程の内容からみて、第5の工程における現像工程においてレジストの開口部に形成される未現像による裾引き部を除去するためでありレジストの開口部をより垂直性のあるものとするためであると解されるところ、
引用例2には、上記したとおり、半導体装置の製造における現像後に発生するレジスト開口部のレジスト残りを除去し開口部を垂直にする方法が記載されており、その内容は引用発明1で第6の工程を採用している前記理由と同じであるから、引用発明1の第6の工程に代えて引用例2に記載された工程を採用してみること、及び、その結果として、レジスト残りが除去されレジストの開口部がより垂直性のあるものになるであろうことを予想することは当業者にとって容易なことである。
そして、引用例2には、レジストの開口部を垂直にする工程として、平行平板型エッチング装置を用いて、O2 プラズマを発生させ、プラズマ中のイオンを加速しレジストの開口部に残っているレジストを異方性にエッチングする工程を採用し、その工程は反応性イオンエッチングが主に進行するものであるとされており、前記「レジストの開口部」及び「反応性イオンエッチング」は、本願発明の「ホト穴」及び「リアクティブイオンエッチング」に相当するものであるから、引用例2には、前記工程として、「リアクティブイオンエッチングによって、酸素ガスのラジカルをプラズマ中で生成し、ホト穴を電界で加速衝撃することで異方性エッチングする」工程が記載されていると解される。
してみると、上記(3)の相違点は、当業者が容易に想到することができたものである。
なお、特許出願人は、引用発明1の第6の工程と引用例2に記載の異方性エッチングの工程とは、前者が柱状電極形成のための側壁をなすマスクを形成するための工程であり後者が被エッチング物上に形成したエッチングマスクを形成するための工程であるから、両工程はそれぞれ目的を異にし、引用例1と引用例2の記載を参照しても、引用発明1の第6の工程を引用例2に記載の異方性エッチングの工程に代えることは当業者に容易なことでないと主張するが、上記したように、引用発明1の第6の工程と引用例2に記載の異方性エッチングの工程とは、ともに、半導体装置の製造方法における、フォトレジストおよび現像液を用いたパターン形成工程において発生する、現像後のレジスト開口部のレジスト残りを除去しようとする工程であるという点、および、前記レジスト残りを除去してレジスト開口部を垂直にする工程であるという点で共通するのであるから、これら共通点に着眼して引用発明1の第6の工程を引用例2に記載の異方性エッチングの工程に代えてみることは当業者にとって容易なことであり、特許出願人の上記主張は採用できない。
D.上記(4)の相違点について検討すると、
前者における「柱状電極」は第7の工程でレジスト膜を除去して形成される上部径と下部径が一致した状態の電極であるところ、該電極は「柱状突起電極」及び「柱状の突起電極」とも表現される突起電極でもあることは、明細書中の段落番号【0006】、段落番号【0008】、および段落番号【0029】の記載内容からみて、明らかである。
したがって、上記(4)の相違点は実質的なものでない。
なお、上記段落番号には以下のとおりの記載がある。
「この発明は上記のような点に鑑みなされたもので、柱状突起電極を形成するに際して、この電極の上部の径と下部の径が常に等しく設定されるように、レジストに形成されたホト穴の径が上部と下部で一致させられるようにするもので、確実に形状が適正化されたホト穴によって、特に下部にくびれ等が存在しない微細化に適する突起電極が確実に形成されるようにする半導体装置における微細電極の製造方法を提供しようとするものである。」(段落番号【0006】)、
「ホト穴下部のテーリング部が除去され、したがってこのホト穴内にCuメッキによってCuを埋め込みレジストを除去すれば、上部径と下部径が一致した状態の柱状電極が形成されるようになる。すなわち、形状の適正化された突起電極が確実に形成されるようになるもので、特に微細化したはんだバンプ電極が高密度化可能にして容易に形成されるようになる。」(段落番号【0008】)、
「この発明に係る半導体装置におけるバンプ等の突出する微細電極の製造方法によれば、柱状の突起電極を形成するに際して、この電極の上部の径と下部の径が常に等しく設定されるように、レジストに形成されたホト穴の径が上部と下部で一致させられるもので、形状が適正化されたホト穴によって、特に下部にくびれ等が存在しない微細化に適する突起電極が確実に形成されるものである。」(段落番号【0029】)。
V.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-08-25 
結審通知日 2000-09-08 
審決日 2000-09-22 
出願番号 特願平5-118585
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池渕 立今井 拓也  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
中西 一友
発明の名称 半導体装置における微細電極の製造方法  
代理人 碓氷 裕彦  

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