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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1030397
審判番号 不服2000-8926  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-07-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-15 
確定日 2000-11-27 
事件の表示 平成 1年特許願第305880号「磁気テープ再生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 7月22日出願公開、特開平 3-168979]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成1年11月25日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成2年3月7日付及び平成12年7月17日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認めるところ、請求項2に係る発明は以下のとおりである。(以下「本願発明2」という。)
「標準モード及び長時間モードで記録された磁気テープを再生する磁気テープ再生装置であつて、
上記磁気テープが巻き付けられるとともに上記磁気テープに記録された信号を読み出す複数の磁気ヘツドが設けられた回転ドラムと、
上記回転ドラムに上記磁気テープが巻き付けられた状態で上記磁気テープを走行させる走行手段と、
上記回転ドラムと上記走行手段を駆動制御する制御手段と、
上記磁気ヘツドからの出力信号に復調処理を施して再生データを出力するとともに上記再生データの誤りを検出する再生信号処理手段と、
上記再生信号処理手段からの再生データが書き込まれるメモリと
を具え、
上記制御手段は、上記標準モードで記録された磁気テープを再生するときには上記回転ドラムの回転基準信号と上記回転ドラムの1回転周期で切り換わるパルス信号に基づいて上記走行手段を制御し、上記長時間モードで記録された磁気テープを再生する際に上記回転ドラムを上記標準モードで記録した磁気テープを再生するときと同一の回転速度で回転するように駆動制御するとともに上記長時間モードで記録された磁気テープを上記標準モードで記録された磁気テープを再生するときの走行速度の半分の速度で走行するように上記走行手段を駆動制御して上記磁気ヘツドが複数回上記磁気テープのトラツクを走査するようにし、
上記再生信号処理手段は、上記再生データの誤り検出結果に基づいて誤りの無いデータを上記メモリに書き込むようにした
ことを特徴とする磁気テープ再生装置。」

2.引用例記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例(実願昭60-145202号(実開昭62-55205号)のマイクロフィルム)には、「ディジタルオーディオテーププレーヤ」に関する発明について、以下の記載がある。
・「オーディオ入力信号をサンプリングし、アナログディジタル変換を行ないディジタル信号を回転ヘッドにより磁気テープ上を斜めに走査して記録するディジタルオーディオテープの標準速度規格と、その標準速度規格に対してシリンダの回転数およびテープ走行速度ともに1/2に定められた低速規格とを夫々再生できるようにしたディジタルオーディオテーププレーヤにおいて、低速規格での再生モード状態にあるにもかかわらず標準規格と同一の速度でシリンダを回転する手段と、前記状態の時はデータの2度読み出しを行うとともにその読み出した双方のデータに対し誤りの検出を行う手段と、前記誤りの検出をした2つのデータの内誤りの少ない方のデータをブロック単位で採用しそのデータに対して誤り訂正、補正を行う手段とを備えたことを特徴とするディジタルオーディオテーププレーヤ。」(実用新案登録請求の範囲)
・「(従来技術)
R-DATの標準速度規格(以下SPと記す)と低速規格(以下LPと記す)の規格案は第1表のようになっている。・・・このような規格を満足するR-DATの再生装置として一般的に考えられているものとしては、第4図に示すような構成のものがある。
この再生装置は、操作部1よりの指示(PLAYキー操作)に基づき、コントロール部2がキャプスタンサーボ3およびシリンダサーボ4に指示を出し、所定の標準速度(2000srpm)でシリンダ5を回転させ、キャプスタン(図示せず)で磁気テープを走行させる。・・・回転ヘッド7で取り出した再生信号は、ヘッドアンプ8で増幅され、再生用等価回路9を経てクロック抽出回路10でクロック信号を検出し、復調11される。・・・メモリ14に書き込まれた再生データは、復号演算器(信号処理部)21により誤りが検出され、訂正、補正される。
さらに、順に読み出し、D/Aコンバート22されローパスフィルタを経てオーディオ出力として取り出される。」(第2頁第16行〜第5頁第14行)
・「(作用)
オーディオ入力信号等を記録する時は、従来と同様の記録手段により行なうが、再生時は、SP、LPともに回転ヘッドの回転数をSP時の回転数とする。したがって、LPのパルス周波数帯域も、第5図(d)に示すSP時と同一にでき、再生用等価回路およびクロック抽出回路が共用できる。また、同一のデータを2度読み出し誤り率を減少することができる。」(第8頁第1行〜第9行)
・「第1図に示す本考案に係るR-DATの再生装置において、上述した第4図に示す従来のR-DATの再生装置と構成が異なる点の第1は、SP,LPともにシリンダ5の回転数を同一にするとともに、再生用等価回路9およびクロック抽出回路10の回路定数をSP,LP共用としたことにある。その第2は、同一のテープパターンを回転ヘッド7が2度トレースし同一のデータを2度読み出し、誤り率を減少するようにしたことにある。」(第8頁第13行〜第9頁第2行)
・「すなわち、同一のテープパターンを2度回転ヘッド7はトレースする(回転ヘッド7が乗っている幅は異なる)わけであり、同一データを2度読み出して来ることになる。そして、誤り検出回路26で誤りを検出し、第3図(b)のHの区間とLの区間の同一2ブロックを比較し、Lの方が誤りが少ない場合はLの区間のデータを、その他はHの区間のデータを訂正,補正用のメモリ14へ転送し、この符号に対して訂正,補正を行なう。」(第9頁第19行〜第10頁第8行)

以上の記載及び各図面の記載を参照すると引用例には、以下の発明が記載されているものと認める。

標準速度規格(SP)及び低速規格(LP)で記録された磁気テープを再生するディジタルオーディオテープレコーダであつて、
上記磁気テープが巻き付けられるとともに上記磁気テープに記録された信号を読み出す複数の回転ヘツド7が設けられたシリンダ5と、
上記シリンダ5に上記磁気テープが巻き付けられた状態で上記磁気テープを走行させるキャプスタンと、
上記シリンダ5と上記キャプスタンを制御するコントロール部2と、
上記回転ヘツド7からの再生信号を復調する復調回路11とその出力の再生データの誤りを検出する誤り検出回路26と、
上記再生データが書き込まれるメモリ14と
を具え、
上記コントロール部2は、上記低速規格(LP)で記録された磁気テープを再生する際に上記シリンダ5を上記標準速度規格(SP)で記録した磁気テープを再生するときと同一の回転速度で回転するようにシリンダサーボ制御するとともに
上記低速規格(LP)で記録された磁気テープを上記標準速度規格(SP)で記録された磁気テープを再生するときの走行速度の1/2の速度で走行するように上記キャプスタンをキャプスタンサーボ制御して上記回転ヘツド7が2回上記磁気テープのトラックをトレースするようにし、
誤り訂正、補正回路は、上記再生データの誤り検出回路26の出力に基づいて誤りの無いデータを上記メモリ14に書き込むようにした
ディジタルオーディオテーププレーヤ。

3.対比
ここで、本願発明2と引用例記載の発明を対比すると、
引用例記載の発明の「標準速度規格(SP)」、「低速規格(LP)」、「ディジタルオーディオテープレコーダ」、「回転ヘッド7」、「シリンダ5」、「キャプスタン」、「コントロール部2」、「メモリ14」、「トレース」は、
それぞれ本願発明2の「標準モード」、「長時間モード」、「磁気テープ再生装置」、「磁気ヘッド」、「回転ドラム」、「走行手段」、「制御手段」、「メモリ」、「走査」に相当することは明らかである。
また、引用例記載の「2回」は本願発明2の「複数回」に相当する。
したがって、本願発明2と引用例記載の発明は、
標準モード及び長時間モードで記録された磁気テープを再生する磁気テープ再生装置であつて、
上記磁気テープが巻き付けられるとともに上記磁気テープに記録された信号を読み出す複数の磁気ヘツドが設けられた回転ドラムと、
上記回転ドラムに上記磁気テープが巻き付けられた状態で上記磁気テープを走行させる走行手段と、
上記回転ドラムと上記走行手段を駆動制御する制御手段と、
上記再生データが書き込まれるメモリと
を具え、
上記制御手段は、上記長時間モードで記録された磁気テープを再生する際に上記回転ドラムを上記標準モードで記録した磁気テープを再生するときと同一の回転速度で回転するように駆動制御するとともに上記長時間モードで記録された磁気テープを上記標準モードで記録された磁気テープを再生するときの走行速度の半分の速度で走行するように上記走行手段を駆動制御して上記磁気ヘツドが複数回上記磁気テープのトラツクを走査するようにし、
上記磁気ヘツドからの出力信号に復調処理を施して再生データを出力するとともに上記再生データの誤りを検出し、
上記再生データの誤り検出結果に基づいて誤りの無いデータを上記メモリに書き込むようにした
ことを特徴とする磁気テープ再生装置。

である点で一致し、以下の各点で本願発明2は引用例記載の発明と相違するものと認められる。

(1)磁気ヘツドからの出力信号に復調処理を施して再生データを出力するとともに再生データの誤りを検出し、再生データの誤り検出結果に基づいて誤りの無いデータをメモリに書き込む処理を、本願発明2では、再生信号処理手段により行っているのに対し、引用例記載の発明では、変調回路11、誤り検出回路26と誤り訂正、補正回路にて行っている点、
(2) 本願発明2では、標準モードで記録された磁気テープを再生するときには上記回転ドラムの回転基準信号と上記回転ドラムの1回転周期で切り換わるパルス信号に基づいて走行手段を制御しているのに対し、引用例記載の発明では、この点について言及が無い点

4.当審の判断
上記相違点(1)について検討する。
記録媒体にディジタル記録されているデータを再生する際、復調処理を行うこと、復調処理により得られた再生データの誤りを検出する処理を行うこと、誤りの検出結果により該再生データを誤りの無いデータとする処理(誤り訂正処理)を行うことは、普通に行われる一連の処理である。これらの処理を、引用例のように処理別に回路を設けて行うようにするか、本願発明2のように一つの処理手段に統合させて行うようにするかは、必要に応じて当業者が適宜行い得ることであると認められる。
上記相違点(2)について検討する。
磁気テープを再生するときに、回転ドラムの基準信号と回転ドラムの1回転周期に応じた信号に基づいて走行手段を制御すること」は、磁気ヘッドのトレーシングのために普通に行われている走行制御にすぎず(必要があれば、特開昭62-202349号公報、実願昭63-9780号(実開昭1-113845号)のマイクロフィルムを参照されたい。)、回転ドラムの一回転周期に基づく信号を「一回転周期で切り換わるパルス信号」とするようなことは設計的事項であると認められ、したがって、このような走行制御を標準モード時に実施するようなことは当業者が容易に想到し得ることであると認められる。
5.むすび
以上のとおり、上記各相違点は格別なものとは言えないので、本願発明2は、上記引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-09-28 
結審通知日 2000-09-29 
審決日 2000-10-12 
出願番号 特願平1-305880
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川嵜 健▲吉▼澤 雅博  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 藤井 浩
田良島 潔
発明の名称 磁気テープ再生装置  
代理人 田辺 恵基  

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