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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01D
管理番号 1030445
審判番号 審判1999-17570  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-08-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-28 
確定日 2000-12-08 
事件の表示 平成10年特許願第 30249号「清浄化空気の製造方法及び空気清浄化装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 8月24日出願公開、特開平11-226351]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年2月12日の出願であって、本願請求項1乃至3に係る発明は、平成11年11月29日付け手続補正が別途補正却下されたので、平成11年1月25日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】藻体を含む培養液に大気汚染による窒素酸化物や硫黄酸化物を含む空気を導入して空気中の二酸化炭素と窒素酸化物や硫黄酸化物を培養液に溶解すると共に、培養液に含まれる藻体に光を照射して、これらの酸化物を栄養分として藻体の成長を促し酸素を発生させ、大きく成長した藻体を培養液から連続的に収穫除去して有効利用することを特徴とする清浄化空気の製造方法。」
2.引用刊行物
これに対して、原査定において引用された本願出願前に頒布された刊行物1乃至3には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用刊行物1:特開平9-136015号公報
(イ)「溶解槽中の藻類は、光合成によりNO2、CO2を消費し、酸素(以下O2と略記する)を放出し、ガスは浄化される。また、光合成により細胞分裂を行い、増殖の結果余剰となった藻類、あるいは老廃した藻類は、藻回収装置12により回収される。」(第4頁第5欄第25行乃至第29行)
(ロ)「副生物として回収された藻類は、家畜の飼料や、農作物の肥料、燃料として再利用することができる。」(第5頁第8欄第1行及び第2行)
引用刊行物2:特開平5-23541号公報
(イ)「なお、これらの藻類の余剰藻体及び代謝産物は処理装置から分離され、有用物質の回収、肥料化等資源として利用することができる。」(第3頁第3欄第40行乃至第43行)
(ロ)「図1に実験装置のフロー工程図を示す。図1において、CO21と空気2は、ガス混合槽3で混合されて光反応槽5の培養液6中に導入され、培養液6中にCO2が固定されて処理ガスは7から排出される。培養液は、8から抜き出され固液分離して、分離液は10から抜き取られ、余剰藻体は11から引き抜かれ、藻体は13から反応槽に返送される。新しい培地は12から供給され、槽内藻体濃度を一定に保っている。」(第4頁第5欄第2行乃至第9行)
引用刊行物3:特開平8-206434号公報
(イ)「以上のような構成を有する本発明に係る空気浄化装置においては、陳列容器内の藻体により空気中の二酸化炭素が酸素に変換され、同時に、空気中の汚染物が培養液に取り込まれる。従って、空気浄化装置から放出される空気は、二酸化炭素が酸素に変換され且つ汚染物が除去されたものになる。」(第2頁第2欄第50行乃至第3頁第3欄第5行)
(ロ)「このような装置において、陳列用容器に発光体を設けた場合には(請求項3)、発光体により藻体の光合成が促進され、酸素の発生が効率良く行われることになる。」(第3頁第3欄第20行乃至第23行)
(ハ)「以上のような装置において、藻体としてスピルリナを使用した場合(請求項7)には、それがそのまま食用となるため、宇宙ステーションなどの閉鎖系にうってつけである。また、スピルリナの培養液はアルカリ性であるため、硝酸塩や硫酸塩等の代表的な空中汚染物質を吸収し易く、汚染物質の除去に効果的なものとなる。なお、汚染物質として代表的な空中の硝酸塩や硫酸塩等は、スピルリナの培養液に限られず、概して藻体の培養液には溶け易く、外気が循環系に取り込まれることにより容易に溶解することとなるため、本発明に係る空気浄化装置の排出口から放出されたものからは汚染物質が除去されていることになる。」(第3頁第3欄第34行乃至第45行)
3.対比・判断
引用刊行物3には、スピルリナを利用した「空気浄化装置」に係り、空気の汚染物質である硝酸塩や硫酸塩を含む外気をスピルリナを含む培養液に送り込んで硝酸塩等を培養液に溶解させる(上記(ハ)参照)と共に、この培養液に発光体を照射して光合成を促進させて酸素を発生させる(上記(ロ)参照)「空気浄化装置」が記載されていると云える。
そして、引用刊行物3の「空気浄化装置」も、「清浄化空気を製造」するものであり、また、「スピルリナ」は「藻体」に相当し、さらに、引用刊行物3に記載の「空中の硝酸塩や硫酸塩」は、その前後の記載からみて、本願発明1の「空気中の窒素酸化物や硫黄酸化物」と実質的に同一の技術的事項を意味していると云えるから、本願発明1と上記引用刊行物3に記載の発明とを対比すると、両者は、「清浄化空気の製造方法」の点で軌を一にするものであり、しかも「藻体を含む培養液に大気汚染による窒素酸化物や硫黄酸化物を含む空気を導入して空気中の二酸化炭素と窒素酸化物や硫黄酸化物を培養液に溶解すると共に、培養液に含まれる藻体に光を照射して、これらの酸化物を栄養分として藻体の成長を促し酸素を発生させることを特徴とする清浄化空気の製造方法」の点で一致し、次の点で相違するのみと云うことができる。
相違点:
本願発明1は「大きく成長した藻体を培養液から連続的に収穫除去して有効利用する」のに対して、引用刊行物3に記載の発明はこの構成を有しない点。
次に、この相違点について検討すると、例えば上記引用刊行物1及び2にみられる如く、本願発明1と同様の「藻類を利用した空気浄化方法」において、増殖した余剰の藻類を回収除去して飼料等に有効利用することは周知・慣用手段と云えるから、成長した藻体を収穫除去して有効利用する程度のことは上記周知・慣用手段に基づいて当業者が容易に想到することができたと云える。
したがって、本願発明1は、上記引用刊行物3に記載の発明と上記引用刊行物1及び2に記載の周知・慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4、むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-09-13 
結審通知日 2000-10-06 
審決日 2000-10-17 
出願番号 特願平10-30249
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 服部 智  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 新居田 知生
山田 充
発明の名称 清浄化空気の製造方法及び空気清浄化装置  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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