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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1030533
審判番号 審判1999-11152  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-08 
確定日 2000-12-13 
事件の表示 平成 3年特許願第 30303号「無線送信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 9月25日出願公開、特開平 4-269018]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成3年2月25日の出願であって、その発明の要旨は、平成9年5月20日付け、及び平成11年8月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「時分割多重化装置から出力されるバースト信号を入力して増幅し、送信する衛星通信地球局の無線送信装置であって、前記時分割多重化装置からのバースト信号を入力し、該バースト信号を検出して、制御信号を発生させると共に前記バースト信号を出力するバースト信号検出手段と、前記バースト信号検出手段から出力されるバースト信号を入力し、遅延を与えて出力する遅延手段と、前記遅延手段により遅延されたバースト信号を増幅して出力する電力増幅器と、前記バースト検出手段により発生した制御信号により、前記電力増幅器の電源を供給するように制御する電源制御手段とから構成され、前記制御信号は、少なくとも電力増幅器が電源供給されてから安定動作するまでの時間にバースト信号の継続する時間を加えた時間の間、継続して電力増幅器に電源を供給するように出力され、前記遅延手段は、前記バースト信号がバースト信号検出手段に入力されてから前記制御信号が出力されるまでの時間に、電力増幅器が電源供給されてから安定動作するまでの時間を加えた時間の遅延を前記バースト信号に与えることを特徴とする無線送信装置。」

2.引用例
(1)これに対して原査定の拒絶理由に引用された特開昭60-132428号公報(昭和60年7月15日出願公開、以下、「引用例1」という。)には、「本発明は、衛星通信用に用いる大電力増幅器装置(例えば進行波管、クライストロン、トランジスタ等)の間欠的動作制御方式に関するものである。」(公報1頁左欄下から5行ないし2行)、「一般に、衛星通信においては、或る第1の地球局から衛星局へ向けて信号を送出し、衛星局では受信した信号を増幅し周波数変換してから第2の地球局の間で通信が行なわれる。」(公報1頁右欄1行から6行)、「ディジタル通信の場合には、情報を間欠的に送出することができるので、各地球局が順次定められた時間長の無線搬送波を送信し、これを受ける衛星中継器側では、入力信号を丁度重ならず時間軸上に並ぶようにして受信して多元接続を実現することが出来る。かかる方式を時分割多元接続(TDMA)方式という。」(公報第1頁右欄第18行ないし第2頁左上欄第5行)、「このようにTDMA方式によって衛星通信を実行するTDMA装置では、信号を発生している時間は非常に短いにもかかわらず、大電力増幅装置としての進行波管、トランジスタ増幅器等は電子ビーム等を常時流して動作状態にしており、熱の発生も大きく、このため送信出力が制限され、管球効率が上昇せず所要の消費電力量も大きくなるという欠点を有していた。」(公報第2頁左下欄第18行ないし右下欄第5行)、「本発明の目的は、TDMA信号がオフであるにもかかわらず、大電力増幅器装置が相変らず作動状態(発熱状態)にあって無用な雑音電波を発生している如き状態を生じないですむ如き大電力増幅器装置の間欠的動作制御方式を提供することにある。」(公報3頁左上欄11行ないし15行)、「本発明の要点は、TDMA装置における送信タイミング信号等の情報を用いて大電力増幅装置を構成する進行波管のアノード電圧等をオン・オフ制御できる構成とし、TDMA信号の送出が無い場合には進行波管にビーム電流を流さないようにすることにより、コレクタ部の温度上昇を低くおさえ、信頼性を高め、装置効率を増加させると共に雑音の発生を軽減させた点にある。」(公報3頁左上欄下から4行ないし右上欄4行)、「第2図は本発明の1実施例を示すブロック図である。同図において、8はTDMA装置、6は同装置8内の送信タイミング制御回路、9は送信タイミング信号出力端子、10はTDMA信号出力端子、11は大電力増幅装置制御処理部、12はTWT(進行波管)電源」(公報第3頁右上欄第7ないし12行)、「第3図は,TDMA方式の送信タイミングおよび大電力増幅装置の本発明による間欠動作のタイミングを示すタイミングチャートである。呼が発生していない場合は第3超フレーム(ニ)TDMA送信タイミング信号(1)の先頭の同期バーストSが0.3秒〜数秒毎に送出されている。この送出位置は(タイミング)は最初は受信信号情報から計算で求め、この位置において衛星局に向けて送出し、この結果を基に微調整を行って正確な送出位置を決めるものである。よって、大電力増幅装置16のビーム電流のオン・オフをアノード電圧(14)のオン・オフで行うとした場合、このビーム電流の立上り時間(通常数μsec)を考慮して、上記先頭バーストSより何ビットか(Δt時間)早めに立上るようにTWT電源制御タイミング信号(4)の先頭立上り指令パルスP1を発生させる。これは最初に計算で求めた送出位置から電源の余裕を満足する所要のビットだけ(Δt時間)早めた値を求めれば得られる値である。この先頭立上り指令パルスP1により,TWT電源(5)(第2図における12)をオンすることが出来る。この状態では、TWT電源12にはビームが流れており、TDMA信号の増幅のための準備が整ってるいる。ここで第2図においてTDMA装置出力端子10からのTDMA信号が大電力増幅装置(TWT)16に入力されると、第3図のTWT装置出力(6)が得られる。第3超フレーム(ニ)の(1)に示す先頭パルスSが消失したとき、TWT電源制御タイミング信号(4)にこれに対応する位置に立下がり指令パルスP2を送出することにより、TWT電源12はOFFの状態になる。このような動作は呼が発生したときの第2超フレーム、(ハ)第1超フレーム(ロ)での(2)、(3)に示す同期バーストSでも同様である。」(公報第3頁左上欄1行ないし右下欄16行)、「基本フレーム(イ)の中のデータバーストiの送出位置として第1超フレームの(3)に示す同期バーストSから何ビット目の位置を選択すれば良いかは、第2超フレーム(ハ)を送信することにより回線割当が決まるのでこれから求めることが出来る。よって、上記と同様にTWT電源の立上りを考慮してデータバーストiのためにTWT電源12をONにすべき制御信号を(4)に示す如く得ることが出来、TWT電源12をスタンバイの状態にすることが出来、ここに出力端子10、周波数変換器17を介してTDMA信号が入つてくると、増幅されたTDMA信号が出力端子18に現われる。このように、順次TWT電源12をTDMA信号の周期性に基づいてオン・オフすることにより大電力増幅装置16の間欠増幅動作が実現できる。(公報3頁右下欄下から4行ない4頁左上欄11行)、「本発明によればTDMA装置の送信タイミング信号等の情報を用いて、大電力増幅装置を構成する進行波管のアノード電圧をオン、オフ(または高圧、および電圧減少)できる構成とする」(公報4頁右下欄1行ないし5行)との記載がある。
これらの記載によれば、引用例1には、「衛星通信用のTDMA装置から時分割的に送出される信号を増幅して出力する大電力増幅装置と、上記TDMA装置から信号送出のタイミング信号を入力してこれに基づいて上記大電力増幅器の電源をオン・オフ制御する制御手段から成り、上記大電力増幅装置を信号送出のタイミングに合わせて間欠的に動作させるようにした大電力増幅装置の間欠的動作制御方式。」の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。
(2)同じく引用された特開昭60-103734号公報(昭和60年6月8日出願公開、以下、「引用例2」という。)には、「地震現象のように発生時期が不明な自然現象で、発現が突発的であり、かつ発生頻度が低く、その持続時間も比較的短い現象(以下、突発現象という。)を観測する場合に於いて、・・・上記観測局、特に大電力を消費する上記観測局の無線送信部に常時電力を供給しておくことは上記蓄電池の寿命等から好ましいことではない。」(公報第1頁左欄第20行ないし右欄第8行)、「第2図は実施例の動作説明図であり、以下この第2図を参照して実施例の動作を説明する。第1図に示すようにデータ送出部2,A/D変換器3,遅延回路部4、電源スイッチ部8及びレベル検出部9には常時電源部7から電力が供給されており、センサ1が例えば地震動を検知すると、この検知された地震動は次段のデータ検出部2で電気信号(アナログ信号)に変換され、当該電気信号はA/D変換部3でデジタル信号に変換されると同時に、レベル検出部9でそのレベルが監視されており、又上記A/D変換部3からのデジタル信号化された観測データは遅延回路部4に入力されて、ここで無線送信部6の立ち上がり時間(電力印加後、安定動作に達するまでの時間)t0以上に設定された遅延時間t1ののち次段(P/S変換部5)に出力されている。以上の動作は地震動の有無に関係なく常時行われている。レベル検出部9において、データ送出部2からのアナログ信号レベルが基準レベル±A以上(振幅が絶対値|A|以上であること、以下同じ)に達したことが検出されると、当該レベル検出部9から電源スイッチ部8に起動信号が与えられ、当該電源スイッチ部8がオンとなってP/S変換部5と無線送信部6に電源部7からの電力が供給され無線送信部6は、その立ち上がり時間t0ののち安定動作に達する。」(公報第2頁右上欄第4行ないし左下欄第10行)、「無線送信部への観測データの入力を当該無線送信部の電力印加時の立ち上り時間より長い遅延時間を経て入力し、また当該無線送信部への電力の供給断は観測データのしきい値(基準レベル)への下降後、上記遅延時間より更に長い時間の経過ののちに行うようにしたので、伝送すべき観測データが、その初期値から終期値にわたって欠落することなく正しく伝送できる等、本発明は極めて顕著な効果を奏するものである。」(公報3頁右上欄11行ないし末行)との記載がある。
これらの記載によれば、引用例2には、観測データ(本願発明の「バースト信号」に相当する。)を検出して、無線送信部(本願発明の「電力増幅器」に相当する。)の電力供給を制御するための制御信号を出力するレベル検出部及び電源スイッチ部(本願発明の「電力制御ユニット」に相当する。)と、観測データに遅延を与える遅延回路部とを有し、前記制御信号で、遅延された観測データを送信する無線送信部の電源をオン、オフ制御し、かつ、観測データの遅延時間を、無線送信部の電力印加時の立ち上り時間より長い遅延時間とすることにより、電力消費を節減すると共に、送信すべきデータの欠落をすることなく送信する技術が開示されていものと認められる。

3.対比
(1)本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、
引用例1には「本発明は、衛星通信用に用いる大電力増幅器装置(例えば進行波管、クライストロン、トランジスタ等)の間欠的動作制御方式に関するものである。」(公報1頁左欄下から5行ないし2行)、「一般に、衛星通信においては、或る第1の地球局から衛星局へ向けて信号を送出し、衛星局では受信した信号を増幅し周波数変換してから第2の地球局の間で通信が行なわれる。」(公報1頁右欄1行から6行)、「ディジタル通信の場合には、情報を間欠的に送出することができるので、各地球局が順次定められた時間長の無線搬送波を送信し、これを受ける衛星中継器側では、入力信号を丁度重ならず時間軸上に並ぶようにして受信して多元接続を実現することが出来る。かかる方式を時分割多元接続(TDMA)方式という。」(公報第1頁右欄第18行ないし第2頁左上欄第5行)の記載があることから、引用例1に記載された発明の「大電力増幅装置の間欠的動作制御方式」も、本願発明でいうところの「時分割多重化装置から出力されるバースト信号を入力して増幅し、送信する衛星通信地球局の無線送信装置」であるといえる。
また、引用例1に記載された発明の「TDMA装置」、「時分割的に送出される信号」、「TWT増幅装置(大電力増幅装置)」、「大電力増幅器の電源をオン、オフ制御する制御手段」は、それぞれ、本願発明の「時分割多重化装置」、「バースト信号」、「バースト信号を増幅して出力する電力増幅器」、「電力増幅器の電源を供給するように制御する電源制御手段」に相当する。
そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明とは、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違する。

(2)一致点
時分割多重化装置から出力されるバースト信号を入力して増幅し、送信する衛星通信地球局の無線送信装置であって、バースト信号を増幅して出力する電力増幅器と、制御信号によりバースト信号が発生したときのみ電力増幅器の電源を供給するように制御する電源制御手段を有し、前記制御信号は、少なくとも電力増幅器が電源供給されてから安定動作するまでの時間にバースト信号の継続する時間を加えた時間の間、継続して電力増幅器に電源を供給するように出力する無線送信装置。

(3)相違点
本願発明は、バースト信号を検出して、制御信号を発生させると共に前記バースト信号を出力するバースト信号検出手段と、前記バースト信号検出手段から出力されるバースト信号を入力し、遅延を与えて出力する遅延手段とを有し、前記制御信号で、遅延されたバースト信号を増幅する電力増幅器の電源を制御するものであって、かつ、バースト信号の遅延時間が、バースト信号がバースト信号検出手段に入力されてから前記制御信号が出力されるまでの時間に、電力増幅器が電源供給されてから安定動作するまでの時間を加えた時間であるのに対して、引用例1に記載された発明は、電力増幅器の電源供給を制御する制御信号がバースト信号の検出以前に発生し、制御信号は遅延を受けないバースト信号を増幅する電力増幅器の電源を制御する点、

4.当審の判断
そこで上記相違点について検討するに、引用例2には、観測データ(本願発明の「バースト信号」に相当する。)を検出して、無線送信部(本願発明の「電力増幅器」に相当する。)の電力供給を制御するための制御信号を出力するレベル検出部及び電源スイッチ部(本願発明の「電力制御ユニット」に相当する。)と、観測データに遅延を与える遅延回路部とを有し、前記制御信号で、遅延された観測データを送信する無線送信部の電源をオン、オフ制御し、かつ、観測データの遅延時間を、無線送信部の電力印加時の立ち上り時間より長い遅延時間とすることにより、電力消費を節減すると共に、送信すべきデータの欠落をすることなく送信する技術が開示されており、引用例2は観測データの送信方式として開示されているものの、上記技術は観測データの送信方式に限定されない汎用の技術であるといえるから、本願発明と同じ技術分野の引用例1に記載された発明において、上記技術を適用して本願発明の構成とすることは当業者であれ容易に想到し得ることである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1および2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-09-01 
結審通知日 2000-09-12 
審決日 2000-09-26 
出願番号 特願平3-30303
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 板橋 通孝溝本 安展  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 大塚 良平
山本 春樹
発明の名称 無線送信装置  
代理人 澤井 敬史  

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