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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1031258
審判番号 審判1997-7269  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-05-02 
確定日 2001-01-17 
事件の表示 平成 2年特許願第288331号「荷物配送管理システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 6月 9日出願公開、特開平 4-163665]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成2年10月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成9年6月2日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「運送会社の各営業店に設置した端末装置がセンタのホストコンピュータに接続され、
客先から配送を依頼された荷物を配送先の客先へ配送するため、荷物の配送状況を管理する荷物配送管理システムにおいて、
客先に、通信網を介して前記ホストコンピュータ及び営業店の端末装置と接続する客先端末装置を配備し、
荷物の配送を依頼した客先の客先端末装置により、荷物管理情報を入力すると共に、荷物番号が印刷され荷物に貼付される荷札を発行し、かつ入力した荷物管理情報を前記ホストコンピュータ及び配送を依頼された営業店の端末装置に送信し、
前記ホストコンピュータ及び前記配送を依頼された営業店の端末装置に前記荷物管理情報を蓄積し、
前記配送を依頼された営業店に荷物が運送されると、前記荷物番号を読み取ることにより該営業店に荷物が入庫されたことを前記ホストコンピュータに通知するとともに配送先の営業店の端末装置に荷物管理情報を送信し、
前記配送を依頼された営業店から荷物が前記配送先の営業店に運送された場合は、前記荷物番号を読み取ることにより該配送先の営業店に荷物が入庫されたことを前記ホストコンピュータに通知し、
前記配送を依頼された営業店または前記配送先の営業店から荷物が荷受人の客先へ配送されると、該荷受人の客先に荷物が届けられたことを配送先の客先を管轄する営業店の端末装置から前記ホストコンピュータに通知することを特徴とする荷物配送管理システム。」

2.引用例記載の発明
これに対して、原審で通知した拒絶の理由において引用した、特開昭61-33566号公報(以下、「引用例」という。)には、「宅配システムの取次店用端末装置」が、図面とともに記載されており、
その発明の背景に関して、
「以上のような従来方法では次のような問題があった。
取次店から集荷場に荷物を集めた時点で荷物情報をコンピュータに入力しているが、これは、顧客が取次店に荷物を持ち込んだ荷物情報の発生時点より相当に遅れている。どの地区へどれだけの大きさのトラックを何台手配して何時に発送するか、このような発送手配をいかに適切に行うかがコストダウンの重要な要因である。適切で効率的な発送手配を行うには、運ぶべき荷物の情報収集が早ければ早いほど良い。しかし従来は、情報発生時点から情報収集(コンピュータへの入力)までに非常に時間がかかっている。
(中略)
また荷物の行先不明などの事故が起ったとき、従来の方法では荷物の流れをトレースしにくく、原因究明に時間がかかる。」(公報第2頁左上欄第2行目〜右上欄第4行目)との記載があり、
また、その発明の目的に関して、
「この発明の目的は、預り荷物が発生した時点でその荷物情報をセンターコンピュータに登録でき、発送手配の最適化を可能にするとともに、料金計算や預り証の発行の手数を軽減することができるようにした宅配システムの取次店用端末装置を提供することにある。」(公報第2頁右上欄第6〜11行目)との記載があり、
その発明の構成と効果に関して、
「この構成によれば、顧客が荷物を取次店に持ってきた時点で、その荷物情報がセンターコンピュータに登録されるので、前述した発送手配が非常にやりやすく、効率的なトラック運用が可能になる。また料金計算などの面倒がなくなるので、取次店での手数が軽減され、かつ誤りも少くなる。さらに、コンピュータの登録情報 に基づいて、荷物の流れをその発生当初からトレースすることができる。」(公報第2頁左下欄第5〜13行目)との記載があり、
その発明の実施例に関して、
「次に、上記端末装置の使用手順とその動作を第3図のフローチャートに従って説明する。
顧客が荷物を取次店に持ち込んだならば、荷札票に送り先・氏名・電話番号などを記入してもらうとともに、取次店員は荷物の大きさ・重量を計測する。その後、本端末装置を操作する。
顧客が顧客カードを持った得意先である場合、そのカードをカードリーダ26に挿入し、それに記録された顧客番号を読み取らせる(ステップ301,302)。次にキーボード16により、送り先地区コード,荷物の個数,大きさ,重量を順次入力する(ステップ303,304,305,306)。次に、荷物に運送保険をかけるのであれば、キーボード16で保険コードを入力する(ステップ307,308)。これら荷物情報は通信用バッファメモリ20に記憶される。
上記荷物情報の入力が完了したら、キーボード16で「発信」のコマンドを入力する(ステップ309)。すると、公衆電話回線12を介してセンターコンピュータに自動ダイヤリングによって架電され、本端末装置とセンターコンピュータを結ぶデータ通信路が確立される。この通信路により、バッファメモリ20内の上記荷物情報がセンターコンピュータに送信される。
センターコンピュータでは受信した荷物情報を分析し、その荷物に対する伝票番号,運賃,配達予定日,それに上記保険をかける場合の保険料といった情報を作成し、それを端末装置に送信する。端末装置はステップ310でそれを受信し、次のステップ311で、先の荷物情報と上記受信情報とに基づいて、第4図に例示するようなフォーマットの荷物預り証をプリンタ24で印字する。これを顧客に渡すとともに、取次店にも控をとる。
なお、センターコンピュータに登録された上記荷物情報は、発送手配処理の入力データとなる。また、前述のように顧客カードから読み取った顧客番号も荷物情報の一部としてセンターコンピュータに伝送される。センターコンピュータでは、各顧客番号毎にその売掛管理,請求書の発行処理などを行う。」(公報第2頁右下欄第12行目〜第3頁右上欄第11行目)との記載がある。
ここで、上記「取次店から集荷場に荷物を集めた時点で荷物情報をコンピュータに入力しているが、これは、顧客が取次店に荷物を持ち込んだ荷物情報の発生時点より相当に遅れている。どの地区へどれだけの大きさのトラックを何台手配して何時に発送するか、このような発送手配をいかに適切に行うかがコストダウンの重要な要因である。」との記載から、荷物は、取次店からその地区の集荷場に集められ、配送先の集荷場に配送されることが明らかであり、更に、配送先の集荷所に配送された荷物は荷受人へ配送されることも明らかである。
また、上記「コンピュータの登録情報に基づいて、荷物の流れをその発生当初からトレースすることができる。」との記載からみて、上記引用例に記載された「宅配システム」は、「荷物の配送状況を管理する荷物配送管理システム」であるといえる。
そうすると、上記引用例には、
顧客から配送を依頼された荷物を配送先の顧客へ配送するため、荷物の配送状況を管理する荷物配送管理システムにおいて、
顧客が荷物を持ってくる取次店に、通信網を介してホストコンピュータと接続する取次店端末装置を配備し、
取次店の取次店端末装置により、荷物情報を入力し、かつ入力した荷物管理情報を前記ホストコンピュータに送信し、
前記ホストコンピュータに前記荷物情報を蓄積し、
前記取次店からその地区の集荷所に荷物を運送し、前記集荷所から荷物が前記配送先の集荷場に運送され荷受人に配送するようにした荷物配送管理システム、
が記載されているといえる。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と上記引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
後者の「顧客」、「荷物情報」、及び「集荷場」は、前者の「客先」、「荷物管理情報」、及び「営業店」に、それぞれ相当する。
また、前者の「客先」は、運送人が荷物を預かるため出向く先であり、後者の「顧客が荷物を持ってくる取次店」も、運送人が荷物を預かるため出向く先である。
そうすると、両者は、
客先から配送を依頼された荷物を配送先の客先へ配送するため、荷物の配送状況を管理する荷物配送管理システムにおいて、
運送人が荷物を預かるため出向く先に、通信網を介してホストコンピュータと接続する端末装置を配備し、
上記端末装置により、荷物管理情報を入力し、かつ入力した荷物管理情報を前記ホストコンピュータに送信し、前記ホストコンピュータに前記荷物管理情報を蓄積し、
運送人が荷物を預かるため出向いた先から営業店に荷物を運送し、前記営業店から荷物を前記配送先の営業店に運送し、前記配送先の営業店から荷物を荷受人の客先へ配送するようにした荷物配送管理システム、
である点で一致し、次の点で相違している。
(1)荷物管理情報を入力する端末装置が、前者では、客先に配備されているのに対して、後者では、取次店に配備されている点。
(2)運送会社の各営業店において、前者では、センタのホストコンピュータに接続される端末装置を配設しているのに対して、後者では、この点が不明な点。
(3)荷物管理情報を入力する端末装置が、前者では、通信網を介してホストコンピュータ及び営業店の端末装置と接続されているのに対して、後者では、通信網を介してホストコンピュータと接続されている点。
(4)荷物管理情報を入力する端末装置において、前者では、荷物管理情報を入力すると、荷物番号が印刷され荷物に貼付される荷札が発行されるのに対して、後者では、この点が不明である点。
(5)荷物の入庫管理において、前者では、運送人が荷物を預かるため出向いた先から営業店に荷物が運送されると、荷物番号を読み取ることにより該営業店に荷物が入庫されたことをホストコンピュータに通知するとともに配送先の営業店の端末装置に荷物管理情報を送信し、前記配送を依頼された営業店から荷物が前記配送先の営業店に運送された場合は、前記荷物番号を読み取ることにより該配送先の営業店に荷物が入庫されたことを前記ホストコンピュータに通知し、前記配送を依頼された営業店または前記配送先の営業店から荷物が荷受人の客先へ配送されると、該荷受人の客先に荷物が届けられたことを配送先の客先を管轄する営業店の端末装置から前記ホストコンピュータに通知するようにしたのに対して、後者では、この点が不明な点。
そこで、上記相違点について検討すると、
(1)上記相違点(1)について、
端末装置を客先に配備するか取次店に配備するかは、作業効率、すなわち、そこで取り扱われる荷物量を考慮して、当業者であれば適宜選択できる設計的事項と認める。
(2)上記相違点(2)について、
運送会社の各営業店にセンタのホストコンピュータに接続される端末装置を配設することは、本願の出願前周知(例えば、「NIKKEI COMMUNICATIONS 1987.10.12 ,P42-49 ”PART2 最先端を走り続ける「宅急便システム」”」のP44.図2-3参照)の事項である。
また、この点は、本願の明細書(第2図及びその説明)においても、従来技術として記載している。
(3)上記相違点(3)について、
複数の端末装置やコンピュータが存在するシステムにおいては、それらを相互に通信網を介して接続してデータのやりとりを行うことは、常套手段であり、また、運送会社の営業店にセンタのホストコンピュータに接続される端末装置を配備することは、上記(2)で述べたように本願の出願前周知の事項であるから、これらを相互に接続すること、すなわち、荷物管理情報を入力する端末装置を通信網を介して、ホストコンピュータ及び営業店の端末装置と接続するようにすることは、当業者が容易になし得るものと認める。
(4)上記相違点(4)について、
前記引用例には、荷物管理情報を入力する端末装置により、荷物管理情報を入力すると、伝票番号が印刷された荷物預り証が発行されることが記載されているから、この端末装置により荷物番号が印刷され荷物に貼付される荷札が発行されるようにすることは、当業者が容易になし得るものと認める。
(5)上記相違点(5)について、
荷物に貼付された荷物番号が印刷された荷札により、荷物が荷受人の客先へ配送されるまで、荷物を追跡管理することは、本願の出願前周知(例えば、「NIKKEI COMMUNICATIONS 1987.10.12 ,P42-49 ”PART2 最先端を走り続ける「宅急便システム」”」のP44.図2-3、及びP45.左欄第5〜13行目参照参照)の事項であるから、荷物が通過する地点である、配送を依頼された営業店、配送先の営業店、で荷物に貼付された荷札を読み取ることにより入庫及び配送完了を管理すること、すなわち、配送を依頼された営業店に荷物が運送されると、荷物番号を読み取ることにより該営業店に荷物が入庫されたとをホストコンピュータに通知し、前記配送を依頼された営業店から荷物が前記配送先の営業店に運送された場合は、前記荷物番号を読み取ることにより該配送先の営業店に荷物が入庫されたことを前記ホストコンピュータに通知し、前記配送を依頼された営業店または前記配送先の営業店から荷物が荷受人の客先へ配送されると、該荷受人の客先に荷物が届けられたことを配送先の客先を管轄する営業店の端末装置から前記ホストコンピュータに通知するようにすることは、当業者であれば容易になし得るものと認められ、また、その際に、配送先の営業店において配送を効率よく行うために、配送を依頼された営業店に荷物が入庫された時点で荷物管理情報を配送先の営業店の端末装置に送信することは、複数の端末装置やコンピュータが存在するシステムにおいては、それらを相互に通信網を介して接続してデータのやりとりを行うことが、常套手段であることを勘案すると、この点は、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものと認める。
そして、この点も、本願の明細書(第2図及びその説明)において、従来技術として記載している。
また、本願の請求項1に係る発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

4.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明および本願出願前の周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-20 
結審通知日 2000-10-31 
審決日 2000-11-13 
出願番号 特願平2-288331
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 茂和  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 久保田 健
鈴野 幹夫
発明の名称 荷物配送管理システム  
代理人 鈴木 敏明  

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