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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08B
管理番号 1031326
審判番号 審判1999-4681  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-03-24 
確定日 2001-01-24 
事件の表示 平成 5年特許願第 64415号「インテリジェント人体在否検知システム及びこの検知システムを使用した火災報知システム、防犯報知システム、出退表示システム、ビル制御システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月30日出願公開、特開平 6-274768]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・請求項1に係る発明
本願は、平成5年3月23日の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成12年5月15日付け手続補正書に補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】監視ゾーンの出入り口に設置され、人の出入りを検知する第1の検知センサと、
監視ゾーン内に設置され、人の存在を検知する第2の検知センサと、
上記第1の検知センサと、上記第2の検知センサとの検知出力の時系列的な変化パターンを識別し、上記監視ゾーンへの入退室、滞留、入出せずに通過する3種類のパターンを判別した判別信号を出力する論理判断部とを備えて成ることを特徴とするインテリジェント人体存否検知システム。」
2.引用例の記載事項
当審で平成12年6月30日付けで通知した拒絶の理由に引用した、特開平4-95794号公報(以下、引用例1という。)には、洗面所、会議室、展示室等に出入りする人の数を管理し、そこの付帯設備の自動オン・オフを行うための入退管理制御装置に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「図はこの発明の一実施例を示すブロック図である。図において、入口付近の天井または壁に30cm程度の間隔で入口進行方向に並べて取り付けられた複数個(この例では5個)の赤外線センサ1によって対象物2の有無を検出する。これらのセンサは並べられた方向に対しては検出角の広がりが小さく、並べられた方向と直角方向に対しては検出角の広がりが大きい特性を有している。利用者がセンサ1の前を通るとセンサからはその利用者が通過した順番に検出信号を発生し、それが通信制御装置3と入出力処理部4を介して方向検出制御部5に伝えられる。
通信制御装置3は、センサ1からの検出信号をデジタル化して順次送出し、RS-232C等のインターフェイスを介して入出力処理部4に出力する。入出力処理部4は、センサ1から送出されてくるデータを方向検出制御部5に出力し、方向検出制御部5は当該データをメモリ6に転送して記憶させる。そして、検査1から次のデータが送られてくると、方向検出制御部5はメモリ6に記憶されているデータを読み出して、両データを比較し、センサ1を構成するセンサ11〜15のオンまたはオフ状態を判定し、当該センサ11〜15の状態を方向検出制御部5内の記憶部に記憶すると共に、センサ1からの新データをメモリ6に記憶させる。センサ1からデータが送られてくる度に前記動作を繰り返し、方向検出部5の記憶部に経時的に記憶されたセンサ11〜15のオン・オフパターンから対象物2の移動方向を判定する。なお、センサ1のデータ群には、他センサのデータ群との区別を図るために、当該センサ1の識別符号が適宜付されている。
すなわち、センサの検出順序が11,12,13・・・・15の順の場合、対象物2の移動は図の左から右「入り」方向、検出順序が逆の場合は「出」方向であることが方向検出制御部5で判定される。
このとき検出対象の位置によって同時に2つのセンサが働く場合がある。例えばセンサ11と12がオンの場合、検出対象が例えば「入り」方向に移動するに従って、センサ11はオンからオフ、センサ12はオンの継続、センサ13はオフからオンと変化するため、センサ11〜15のオン・オフパターンからセンサ11〜15のオン・オフ方向を判定することによって、容易に移動方向の検出が行える。
そして、対象物2が特定方向に移動し、センサ11を通過、すなわち当該センサがオン状態からオフ状態になったときに、対象物2が入場または退出したとして入退場管理部7に出力する。
移動方向検出制御部5で検出した信号は入退管理制御部7において入場者の数と退出者の数を計数して比較し、「入場者の数>退出者の数」であるときは室内に人がいると判断し、入出力処理部4およびインターフェイスを介して付帯設備8に対してそれをオン状態に保持するように制御信号を出力する。「入場者の数=退出者の数」となれば」中に人はいないと判断し、その一定時間後に付帯設備8をオフ状態とするように制御する。付帯設備8は当該制御信号に基づき電磁リレー等でスイッチ操作される。
また付帯設備の稼働状態をモニタすることによって入退管理制御部で認識している運転モードと、設備の運転モードが一致しない場合(例えば装置の故障でオン指令を出力してもオン状態にならなかった場合等)、警報信号を出力して外部に異常発生を通報することもできる。」(第2頁左上欄14行〜右下欄20行、図面参照)
同じく引用した特開平3-58199号公報(以下、引用例2という。)には、集合住宅用監視通話システムに関して、下記の事項が図面とともに記載されている。
「管理人室などに設置される警報監視盤と、各住戸に設置される住宅情報盤とを多重信号線及び通話信号線を介して接続して、相互通話及びセキュリティー監視制御を行なうようにされた集合住宅用監視通話システムにおいて、
人体の動きを検知して検知信号を出力する少なくとも1以上の熱線センサーと、
該熱線センサーのいずれかが、各々予め定められた所定の時間継続して検知信号を出力しないときには、上記住宅情報盤を介して上記警報監視盤に救急信号を出力するセンサー制御回路部とを備えたことを特徴とする、集合住宅用監視通話システム。」(特許請求の範囲)
3.請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明との対比
引用例1に記載された上記技術事項からみて、入口付近の天井または壁に30cm程度の間隔で入口進行方向に並べて取り付けられる赤外線センサ1のうち、中間のセンサ12〜14は方向をより確実に検知するために設けられたものであって、入場と退出の判定は、最も入口側に設けられたセンサ11と最も室内側に設けられたセンサ15の時系列的なオン・オフの変化で行うものであるから、最も入口側のセンサ11と最も室内側のセンサ15の最低2個あれば、この2つのセンサの検知出力の時系列的な変化のパターンから入出力処理部4、方向検出制御部5、メモリ6及び入退管理制御部7(請求項1に係る発明の論理判断部に相当)によって室内への入場と退出及び室内の人の存否を判別できることは当業者であれば自明のことである。
そして、赤外線センサ1を配設する目的及びその配設態様からみて、最も室内側のセンサ15は、室内(監視ゾーン内に相当)に配置されることも明らかであるから、最も室内側のセンサ15は、請求項1に係る発明の「監視ゾーン内に設置され、人の存在を検知する第2の検知センサ」と同様の機能を奏するものである。
そうすると、引用例1に記載された発明の「洗面所、会議室、展示室等」、「対象物2」、「センサ11」、「センサ15」、「入出力処理部4、方向検出制御部5、メモリ6及び入退管理制御部7」及び「入退室制御装置」は、各々請求項1に係る発明の「監視ゾーン」、「人」、「第1の検知センサ」、「第2の検知センサ」、「論理判断部」及び「インテリジェント人体存否検知システム」に相当するものであるから、請求項1に係る発明の用語を使用して、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、「監視ゾーンの出入り口に設置され、人の出入りを検知する第1の検知センサと、監視ゾーン内に設置され、人の存在を検知する第2の検知センサと、上記第1の検知センサと、上記第2の検知センサとの検知出力の時系列的な変化パターンを識別し、上記監視ゾーンへの入退室のパターンを判別した判別信号を出力する論理判断部とを備えて成ることを特徴とするインテリジェント人体存否検知システム。」で一致しており、次の点で相違している。
相違点;請求項1に係る発明では、論理判断部で第1の検知センサと第2の検知センサの検出出力の時系列的な変化パターンを識別して、入退室だけでなく、滞留及び入出せずに通過するパターンも判別するものであるのに対して、引用例1に記載された発明では、入出力処理部4〜入退管理制御部7で入口側から室内側に並べた複数の赤外線センサ1の検知出力の時系列的な変化パターンを判定(判別)して入退室と室内に人がいるか、いないかを判断しているが、請求項1に係る発明のように監視ゾーンでの滞留及び入室せずに通過するパターンを判別して判別信号を出力するものではない点。
4.上記相違点に対する当審の判断
上記相違点について検討するに、引用例1に記載された発明では、滞留については特に判別していないが、室内に設けたセンサの時系列的な変化パターンから滞留を判別することは、引用例2にも記載されているように本願出願前周知の事項にすぎないものである。
また、引用例1に記載された発明では、人が入室せずに通過することを判別することについては、格別考慮していないものであるが、請求項1に係る発明でいうところの「入室せずに通過するパターンを判別した」とは、入口側のセンサがオンした後、第2の検知センサがオフのままであることを時系列的に判別することにすぎないものであって、監視ゾーンでの人の存否を判別するためには格別技術的意義を有しない事項であり、しかも、人が入口に接近しただけで入室せず通過したことは、入口側のセンサのオン動作で判別できることは、当業者であれば自明の事項にすぎないものである。
そして、引用例1に記載された発明でも、「方向検出制御部5はメモリ6に記憶されているデータを読み出して、両データを比較し、センサ1を構成するセンサ11〜15のオンまたはオフ状態を判定し、当該センサ11〜15の状態を方向検出制御部5内の記憶部に記憶すると共に、センサ1からの新データをメモリ6に記憶させる。センサ1からデータが送られてくる度に前記動作を繰り返し、方向検出部5の記憶部に経時的に記憶されたセンサ11〜15のオン・オフパターンから対象物2の移動方向を判定する」ものであって、赤外線センサ1を入口側のセンサ11と室内側のセンサ15の2つとした場合には、方向検出制御部5の記憶部に経時的に記憶されたセンサ11及び15のオン・オフパターンから対象物2の移動方向を判定するものであるから、方向検出制御部5では、センサ11と15の時系列的な変化パターンのうち、センサ11と15が順次時系列的にオフ→オン→オフと変化するパターンであれば入室或いは退室を判別して判別信号を入退管理制御部7へ出力し、センサ11がオフ→オン→オフと変化したが、センサ15がオフのままであれば、入室と判別せず(入室せずに通過と判別することに相当)、また、センサ15がオフ→オン→オフと変化したが、センサ11がオフのままであれば、退室と判別せず(室内で滞留と判別することに相当)、入退管理部7には判別信号を出力しないものである。
したがって、引用例1に記載された発明においても、2つのセンサでの時系列的な変化パターンのうち、請求項1に係る発明でいうところの滞留及び入出せずに通過するパターンについては、方向検出制御部5で入室しないパターン及び退室しないパターン(入室又は退室以外のパターン)として判別していることは明らかである。
そうすると、引用例1に記載された発明では、複数の赤外線センサ1による上記時系列的な変化パターンのうち、入室と退室についてのパターンのみ方向検出制御部5から入退管理制御部7へ判別信号を出力しているが、請求項1に係る発明のように、方向検出制御部5で入室或いは退室と判別しないパターンであるセンサ11がオフ→オン→オフと変化したがセンサ15がオフのままのパターン、及び、センサ15がオフ→オン→オフと変化したがセンサ11がオフのままのパターンについても、それぞれ、入室しない(入出せずに通過する)パターン、及び、退室しない(滞留)パターンと判別した判別信号を、入退室管理部7に出力するように構成することは、当業者であれば適宜採用することができる程度の技術事項であって、格別創意を要することではない。
そして、請求項1に係る発明の効果も、引用例1及び2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
5.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-30 
結審通知日 2000-11-14 
審決日 2000-11-27 
出願番号 特願平5-64415
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渋谷 知子  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 小林 武
船越 巧子
発明の名称 インテリジェント人体在否検知システム及びこの検知システムを使用した火災報知システム、防犯報知システム、出退表示システム、ビル制御システム  
代理人 中井 宏行  

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