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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61L
管理番号 1031441
審判番号 審判1999-19359  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-25 
確定日 2001-01-05 
事件の表示 平成 7年特許願第276994号「竹酢液を使用した殺菌剤」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 4月 8日出願公開、特開平 9- 94291]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,本願発明
本願は、平成7年9月28日の出願であって、請求項1に係る発明は、平成11年1月25日付け手続補正により補正された明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された、次のとおりのもと認める。
「イネ科タケ亜科の植物の茎部が炭化される際に生じる煙が冷却されてなる竹酢原液からタールを除いてなる粗竹酢液を精製した精製竹酢液からなり、サルモネラ(Salmonella typhimurium)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、黄色ブドウ球菌(Stapylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Stapylococcus aureus)に対する殺菌剤であることを特徴とする竹酢液を使用した殺菌剤。」(以下、本願発明という)
なお、平成11年12月22日付けでした手続補正は、この審決と同日付けで決定をもって却下された。
2,引用例に記載の事項
これに対し、原査定の拒絶の理由において引用された、本願出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平5-95769号公報(以下、引用例という)には、以下の記載がされている。
「【請求項1】 竹の茎の肉厚部分又は表皮を含む茎全体を適当な長さに切断し竹片とした上,粉砕機でミクロオーダ〜数ミリオーダの粒度の竹粉とし,この竹粉を加熱することにより竹粉活性炭を製造する工程中に生じた湿気を帯びた排煙を,冷却工程に導き,この冷却工程においてタール分とアルコール分を含んだ竹酢液として採取し,このタール分とアルコール分を含んだ竹酢液を濾過してタール分を除去し,さらに,このタール分の除去された竹酢液を蒸留してアルコール分をも除去するようにしたことを特徴とする竹酢精製液の製造方法。
【請求項2】 請求項1記載のものにおいて,最終工程にさらに,再蒸留工程を設けて竹酢精製液のにごりを除去するようにした竹酢精製液の製造方法。
【請求項4】 請求項1または2記載の製造方法で製造された竹酢精製液を抗菌剤として食品等の添加物として使用するようにしたことを特徴とする竹酢精製液の使用方法。
【請求項5】 請求項1または2記載の製造方法で製造された竹酢精製液を殺菌剤として農薬として使用するようにしたことを特徴とする竹酢精製液の使用方法。」(特許請求の範囲1,2,4,5項)
「本発明は竹の茎の肉厚部分又は表皮を含む茎全体を適当な長さに切断し竹片とした上,粉砕機でミクロオーダ〜数ミリオーダの粒度の竹粉とし,粉砕機でミクロオーダ〜数ミリオーダの粒度の竹粉とし,この竹粉を加熱することにより竹粉活性炭を製造する工程中に生じた湿気を帯びた排煙を冷却工程に導き,この冷却工程においてタール分とアルコール分を含んだ竹酢液として採取し,このタール分とアルコール分を含んだ竹酢液を濾過してタール分を除去し,さらに,このタール分の除去された竹酢液を蒸留してアルコール分をも除去するようにした竹酢精製液の製造方法に関する。なお,最終工程に,さらに,再蒸留工程を付加して精製液のにごりを除去するようにした方が良い。また,上記方法で製造された竹酢精製液を抗菌剤または殺菌剤として使用することができる。
【0005】【作用】本発明の製造方法によれば,竹粉活性炭の製造過程に僅かの工程を付加することにより,従来は廃棄していた排煙中から竹酢精製液を効率的に生成することができる。また,本発明により製造された竹酢精製液は抗菌剤または殺菌剤として機能を有するから,健康ドリンク剤または食品添加物あるいは農薬等の有用な用途での使用が可能である。」(2頁左欄48行〜右欄20行)
「さらに,2次蒸留を行った場合のように比較的純度の高い竹酢精製液の場合は,健康ドリンク剤として使用できるほか,食品添加物としても使用でき,後者の場合は,たとえば,豆腐の賞味期間を製造後10日から,その2倍に相当する20日へと延長させることができることが実験により確認されている。」(3頁右欄19行〜24行)
3,対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、
「イネ科タケ亜科の植物の茎部が炭化される際に生じる煙が冷却されてなる竹酢原液からタールを除いてなる粗竹酢液を精製した精製竹酢液からなる竹酢液を使用した殺菌剤」の点で一致し、次の点で相違している。
(1)本願発明が、殺菌剤の対象を「サルモネラ(Salmonella typhimurium)、腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)、黄色ブドウ球菌(Stapylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Stapylococcus aureus)に対する殺菌剤である」としているのに対し、引用例のものでは、殺菌剤の対象を格別明記していない点。
そこで、前記相違点について検討する。
引用例には、竹酢精製液は抗菌剤または殺菌剤として機能を有するから,健康ドリンク剤または食品添加物あるいは農薬等の有用な用途での使用が可能であると記載され、また、食品添加物としても使用できること、この場合,豆腐の賞味期間を製造後10日から,その2倍に相当する20日へと延長させることができることが実験により確認されたことも記載されている。
ところで、一般に食中毒の原因となる細菌を殺菌することにより食品の保存を図ることはよく行われることであり、その食中毒の起因菌としてサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、大腸菌は最もありふれたものであるから(必要なら、「食品と包装」医歯薬出版(株)昭和57年111月15日発行、第65〜73頁参照)、通常食品の殺菌を対象とする場合は前記の起因菌を含めた有害菌を対象とするものといえる。
そうすると、引用例に記載の食品添加物としての殺菌剤とは、殺菌剤の適用対象菌が明記されていなくても、食品の扱いによって生じる食中毒を防止することを主眼としてなされることは明らかであるから、前記殺菌剤の適用対象は食中毒の起因菌であるサルモネラ、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、大腸菌を含めた有害菌を意図したものであることは容易に理解できるところである。また、本願発明の「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」については、黄色ブドウ球菌の内、ペニシリン系抗生物質であるメチシリンに耐性であるところの菌を示すものであり、この菌が他の殺菌剤にも耐性であるというものではないから、ペニシリン系抗生物質とは異なる種類の殺菌剤であるタケ酢液からなる殺菌剤に対して、黄色ブドウ球菌同様に殺菌対象の菌としてとらえられることも容易に理解できるところである。
4,むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許をうけることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-17 
結審通知日 2000-10-31 
審決日 2000-11-15 
出願番号 特願平7-276994
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子内田 淳子  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 深津 弘
谷口 浩行
発明の名称 竹酢液を使用した殺菌剤  
代理人 清原 義博  
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