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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L |
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管理番号 | 1031444 |
審判番号 | 審判1997-928 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-06-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-01-16 |
確定日 | 2001-01-04 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第339095号「鶏卵」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 6月 6日出願公開、特開平 7-143864]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本願は、平成5年11月22日の出願であって、本件請求項1に係る発明は、平成9年2月17日付けの手続補正書により全文が補正された明細書、及び平成12年9月12日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「オキアミを添加した飼料を投与して産卵された、鶏卵の卵黄中に栄養素として十分である0.1から100ppm(鶏卵の全重量に対して)の量でアスタキサンチンを含有することを特徴とする鶏卵。」 2.引用刊行物 これに対して、当審において、平成12年7月3日付けの拒絶理由に引用した、この出願の出願前に頒布された特表平2-504101号公報(以下、「刊行物1」という)、Eric A. Johonson et. al.,1980 Poultry Science 59:1777-1782(以下、「刊行物2」という)には以下の事項が記載されている。 刊行物1: ア)酵母を所定の培養後、所定の工程(ボールミルで破砕等)を経て、所定の量のアスタキサンチンを一定量含むファフィア・ロドチーマ種に属する酵母細胞(特許請求の範囲請求項1,2項参照) イ)「動物の肉及び/又は動物により生産される生成物の赤色の着色を得るために動物を飼育する方法であって、該動物に、請求項1に記載の方法により測定した場合に酵母乾物g当たり300μg以上の量でアスタキサンチンを含有する酵母細胞又は細胞部分を、あるいはこれらの酵母細胞又はその部分から抽出されたアスタキサンチンを含有する飼料を供与することを含んで成り、該動物が好ましくは、魚、特にサケもしくはマス、バターに着色するためにウシ、あるいは卵黄を着色するために家禽である、前記方法。」(特許請求の範囲第23項) ウ)「家禽により生産される卵の黄味及び/又は家禽の肉もしくは皮膚の着色のために前記の方法により家禽を飼育する場合、飼料は常用の家禽飼料成分により構成することができ、その例は、好ましくは蛋白質及び炭水化物源、例えば大豆粉、大豆蛋白質、セルロス、澱粉及び脂肪源、例えば大豆油、ビタミン、例えば全ビタミン混合物、及びミネラル、例えば家禽のための一般的ミネラル成分の混合物、ならびに卵殻のためのカルシウム源、好ましくは炭酸カルシウム及びリン酸水素カルシウムを含有するものである。少量の塩化ナトリウムも存在することができる。飼料は常用の供与量で供与することができる。」(第10頁右下欄21行〜第11頁左上欄6行) エ)ニジマスに該アスタキサンチン含有破砕酵母入り飼料A〜D、および合成アスタキサンチン(飼料E)を供与し、飼育する方法(実施例11)、その結果が第11表に、該飼料A〜Dについては、魚g当たりのアスタキサンチンμg、魚の重量、魚肉の色について、16日後、23日後、30日後、43日後、72日後に測定されたもの、たとえば16日後では、魚g当たり0.30〜1.00μgであり、72日後では、魚g当たりのアスタキサンチンμg量は、0.30μg〜5.95μg(0.30ppm〜5.95ppm)であること。 オ)「魚を視覚実験にかけ、そして魅力的な赤色を有することが見出された。飼育の43日後、飼料D及びE(それぞれ本発明に従って製造されたアスタキサンチン40ppm及び合成アスタキサンチン40ppmを含有する)を供与された色の着色に実質的な差が観察されなかった。飼育の72時間後、飼料C、D及びE(それぞれ、本発明に従って製造されたアスタキサンチン40ppm、及び合成アスタキサンチン40ppmを含有する)により飼育された魚の着色に実験的な差が観察されなかった。」(第20頁左上欄2行〜10行) 刊行物2: アスタキサンチンを含有する赤色酵母ファフィア・ロドチーマ破砕物が卵黄の着色源として試験され、これを与えられた鶏が産卵する鶏卵は、その卵黄へ、該アスタキサンチンの代謝変質なしに移行、蓄積されること。 3.比較検討 そこで、本件請求項1に係る発明(以下、前者という)と刊行物1に記載された発明(以下、後者という)とを比較すると、先ず刊行物1には、ファフィア・ロドチーマ種に属する酵母細胞から抽出されたアスタキサンチン、又は所定培養下で培養されたアスタキサンチン含有破砕酵母を含ませた飼料を家禽に供与すると、卵黄を着色すること、すなわち卵黄の色を増加することが記載されている。そして、このアスタキサンチンが該卵黄に移行されることは、上記摘示事項エ)の記載、すなわちアスタキサンチンの投与量が増加すると、魚肉の赤色の着色も増加することの記載、および刊行物2の記載には、アスタキサンチン含有飼料を鶏に供与すると、その卵黄にアスタキサンチンが代謝変質することなく移行し、着色することが記載されていることからも確認できることから、両者は、鶏卵の卵黄中にアスタキサンチンを含有する鶏卵である点で一致し、1)アスタキサンチン由来のものが、前者は、オキアミを用いるのに対して、後者は、ファフィア・ロドチーマ種に属する酵母細胞由来のアスタキサンチン、又はアスタキサンチン含有の前記破砕酵母を用いる点、及び2)卵黄中に含有されるアスタキサンチンの量が、前者は、栄養素として十分である0.1ppmから100ppm(鶏卵の全重量に対して)であるのに対して、後者は着色のために用いており、その含量については明記されていない点で相違する。 そこで、これらの相違点について検討する。 相違点(1)について 刊行物1には、甲殻類の廃棄物から単離されたアスタキサンチンを合成赤色色素として餌中で使用することが記載されている(第3頁左下欄下から7行〜5行)。 また、オキアミ等の甲殻類を粉砕してミール状物とすること、すなわち、粉餌とし、着色・発色用飼料とすることも周知である(必要なら、特開平1-186860号公報、第1頁右欄第2段落〜第2頁左上欄9行参照)。 加えて、エビ、オキアミ、カニ等の甲殻類の殻の部分にアスタキサンチンが含まれていることも、周知である(必要なら、特開平1-186860号公報第1頁左欄下から2行〜同頁右欄1行、特開平2-255771号公報第2頁右上欄19行〜同頁左下欄2行参照) さらに、オキアミが優れた栄養価を示すものとして飼料に添加することは本件出願前周知のことである(必要であれば、特開昭61-108354号公報第5頁配合物3の項、特開昭63-42674号公報、特開昭56-64767号公報参照)。 したがって、刊行物1では、たまたまコスト等の観点からアスタキサンチンの供給方法として特定の酵母細胞破砕物又はそれに由来するものを採用しているが、如何なるものを用いるかは当業者が必要に応じて適宜決め得ることであり、その際の手段として周知のオキアミ自体を着色用の飼料として用いることに格別の創意工夫を要したものとは認められない。 そして、その効果について本件明細書を検討すると、卵黄の色調がアスタキサンチン無添加に比して良好であることは、刊行物1,2に、アスタキサンチンが卵黄の着色に効果のあることの記載がなされているから、当然予測しうることである。 また、ハウユニットについては、オキアミを着色目的で使用することにより附随的に得られる効果と認められ、オキアミが高い栄養効果を有する飼料であることも周知であるという事実を考慮すれば、この点で格別顕著な効果を奏したものとは認められない。 相違点(2)について 刊行物1,2には、アスタキサンチンが卵黄に移行されることが示唆乃至記載されている以上、卵黄中に含まれるアスタキサンチンの量を、卵黄の色の度合、および栄養素として十分であること等の観点から、その最適範囲を決定することは当業者が容易に想到できる程度のものといえる。 そして、前者は、本件明細書の記載をみてもアスタキサンチンの量を0.1から100ppmと限定することによって、格別顕著な効果を奏しえたものも認められない。 さらに、前者は、相違点1及び2を結合したことによっても、刊行物1,2に記載されたもの、及び周知の事柄から、予期し得ないような効果を奏し得たものとも認められない。 4.むすび したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明、及び周知の事柄に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-10-04 |
結審通知日 | 2000-10-20 |
審決日 | 2000-11-01 |
出願番号 | 特願平5-339095 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A23L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植野 浩志 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
大高 とし子 佐伯 裕子 |
発明の名称 | 鶏卵 |
代理人 | 倉内 基弘 |
代理人 | 倉内 基弘 |
代理人 | 風間 弘志 |
代理人 | 風間 弘志 |