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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) H02M
管理番号 1031564
審判番号 審判1999-35298  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-12-11 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-06-16 
確定日 2001-01-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第2109383号発明「平滑回路」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2109383号発明の特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第2109383号に係る発明は、昭和61年6月2日に特許出願され、平成8年11月21日に特許の設定登録がなされた。
これに対して、請求人は、検甲第1号証及び甲第1号証〜甲第8号証を提出し、本件特許発明は、
1.検甲第1号証の検証物と同一であり、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものである。または、
2.甲第1号証及び甲第4号証と同一であり、それぞれ特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。または、
3.同条第2項の規定により特許を受けることができないと主張している。
そして、被請求人は、平成11年11月8日付で答弁書及び訂正請求書を提出し、訂正を請求したが、これに対して請求人は平成12年3月6日付、及び平成12年5月8日付でそれぞれ弁駁書を提出している。
更に、上記訂正請求に対し、当合議体は平成12年6月12日付で訂正拒絶理由を通知し、これに対し被請求人は平成12年8月25日付で訂正拒絶理由意見書を提出している。
【2】訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(a)本件訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的として、
a1;請求項1中の「有極性コンデンサ」(第1頁6行)を「タンタル電解コンデンサからなる有極性コンデンサ」と訂正する。すなわち、請求項1を次のとおりに訂正する。
「(1)脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルとタンタル電解コンデンサからなる有極性コンデンサの直列回路とを設け、該有極性コンデンサの両端から出力を取り出すようにしたことを特徴とする平滑回路。」。
a2;請求項3を削除する。
(b)訂正a1及びa2に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明瞭でない記載の釈明を目的として、
b1;明細書第2頁19行〜20行の「、タンタル電解コンデンサのような」を「タンタル電解コンデンサからなる」と訂正する。
b2;明細書第3頁2行の「タンタル電解コンデンサなどの」を「タンタル電解コンデンサからなる」と訂正する。
b3;明細書第4頁12行〜13行の「タンタル電解コンデンサのような」を「タンタル電解コンデンサからなる」と訂正する。
2.訂正請求に対する請求人の主張の概要
請求人は審判請求書及び弁駁書において、下記の甲各号証を提出し、訂正請求における明細書の訂正に基づく発明は、検甲第1号証、検甲第2号証、甲第1、4、15、16、22号証の各々で周知のπ型平滑回路と実質的に同一、若しくはそれらと甲第4、17〜22号証とを組み合わせて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、且つ同法第29条第2項の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、と主張している。

(検甲第1号証)日本電気株式会社が製造販売した「Q7187A84-4NEC4091」と称する電源装置及びその図面。
(検甲第2号証)型番「Q7187A」の電源装置を内蔵した「DATAX2400FAST」と称する変復調装置
(甲第1号証)浅野勇監修、無線と実験別冊「魅惑の真空管アンプ」(昭和47年7月30日発行)(株)誠文堂新光社 、p18、p54、p174。
(甲第2号証)日本電信電話公社・技術局編「電気通信標準用語辞典」昭和46年6月15日発行、株式会社オーム社書店p2ー3
(甲第3号証)財団法人日本規格協会編「JISハンドブック製図ー1980」、1980年4月12日発行、p277
(甲第4号証)日本工業技術センター開催No.997工業技術セミナー、「スイッチングレギュレータの高周波ノイズ対策技術」昭和59年5月29日(火)・30日(水)開催のテキスト日本ケミコン(株)安藤進著「スイッチングレギュレータ用コンデンサ」、p30ー52
(甲第5号証)甲第4号証を頒布したことを示す株式会社日本工業技術センター(代表取締役 寺田 和男)の証明書
(甲第6号証)検証物が公然実施されたことを示す日本電気株式会社の証明書
(甲第7号証)検証物の回路図
(甲第8号証)検証物の部品表
(甲第9号証)作成日がわかる検証物の部品表
(甲第10号証)ELECTROLYTIC CONDENSER INVESTIGATION SOCIETY編「電解蓄電器評論」VOL.70.4 1954(第19号)、33-38頁
(甲第11号証)社団法人日本電子機会工業会編「電子工業50年史資料編」163頁
(甲第12号証)社団法人日本電子機会工業会編「電子部品技術史1 1945〜1998」、27頁,318頁
(甲第13号証)引用例2(甲第4号証)を不特定多数者に頒布したことを示す「安藤 進」の証明書
(甲第14号証)日本工業技術センター開催T-1195工業技術セミナー、「スイッチングレギュレータの回路設計と周辺応用技術」昭和60年4月17日〜18日開催のテキスト
日本ケミコン(株)安藤進著「高周波化対応コンデンサの技術動向と信頼性」および受講者名簿
(甲第15号証)「電源回路設計の基礎」8〜9頁,16〜17頁,98〜99頁 昭和57年6月10日、株式会社オーム社発行
(甲第16号証)「電源回路の設計マニュアル」145〜149頁 昭和46年2月10日、丸善株式会社発行
(甲第17号証)(社)日本電子機会工業会編「総合電子部品ハンドブック」
782〜788頁,814〜832頁
昭和55年7月30日、電波新聞社発行
(甲第18号証)製品カタログ「NCCタンタルコンデンサ」1〜39頁、1984年3月、松尾電機株式会社発行
(甲第19号証)「続安定化電源回路の設計」218頁,239〜240頁
昭和54年12月15日、株式会社CQ出版社発行
(甲第20号証)「トランジスタ技術」、20巻・第2号325〜333頁 昭和58年2月1日、CQ出版株式会社発行
(甲第21号証)「トランジスタ技術」、20巻・第5号 310〜320頁
昭和58年5月1日、CQ出版株式会社発行
(甲第22号証)「トランジスタ技術」、20巻・第11号 330〜333頁
昭和58年11月1日、CQ出版株式会社発行
(甲第23号証)学識経験者の見解書
(甲第24号証)DATAX SP2400 FAST 変復調装置 取扱説明書
(甲第25号証)NECフィールディング株式会社 西関東支社厚木支店支店長「熊谷 昭彦」氏の証明書
3.訂正の適否
訂正請求における明細書の訂正に基づく発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する。
[3ー1]本件訂正発明
訂正明細書の特許請求の範囲に記載の発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲第1項に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルとタンタル電解コンデンサからなる有極性コンデンサの直列回路とを設け、該有極性コンデンサの両端から出力を取り出すようにしたことを特徴とする平滑回路。」
[3ー2]本件出願前の周知技術
これに対して、例えばオーディオ用アンプにおける電源部の平滑回路において、
トランスと整流管でなる整流回路と、該整流回路に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと電解コンデンサの直列回路とを設け、該電解コンデンサの両端から出力を取り出すようにした平滑回路は周知である(例えば、浅野勇監修、無線と実験別冊「魅惑の真空管アンプ」(昭和47年7月30日発行)(株)誠文堂新光社 、p18、1ー15図、p54、1ー72図、p174、2ー14ー1図を参照)。
上記周知例の平滑回路に用いられている電解コンデンサについて以下に検討する。
電解コンデンサとしては、従来よりアルミニウム電解コンデンサやタンタル電解コンデンサがよく知られているが、
・電解コンデンサは本質的に有極性であるが(例えば、(社)日本電子機械工業会編「総合電子部品ハンドブック」816頁、818頁、昭和55年7月30日、電波新聞社発行、第1版参照)、
表記にあたっては、必要がない場合には極性を明示しないものであること(例えば、財団法人日本規格協会編「JISハンドブック製図ー1980」、1980年4月12日発行、第277頁参照)、
・電解コンデンサのなかには無極性のものも存在するが、オーディオアンプの電源部において、平滑回路部の電流は脈流であって電流の方向が一定であるから、オーディオアンプの平滑回路部にあえて無極性の電解コンデンサを用いる積極的理由は何ら見当たらないこと、更に、
・オーディオアンプの電源部において負荷側の電解コンデンサの極性を明示した平滑回路の例が存在すること(「無線と実験」1974年8月号、125頁〜131頁参照)、
・平滑回路部の電解コンデンサに極性を明示した例が存在すること(例えば、「トランジスタ技術」第20巻第5号、313頁、「トランジスタ技術」第20巻第11号、332頁参照)、
等を勘案すると、上記周知の平滑回路に用いられている負荷側の電解コンデンサは有極性のものであると解するのが相当である。
したがって、次の構成の平滑回路は周知であると言える。
トランスと整流管でなる整流回路と、該整流回路に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと有極性電解コンデンサの直列回路とを設け、該有極性電解コンデンサの両端から出力を取り出すようにした平滑回路(以下「周知の平滑回路」と言う)。
[3ー3]対比
そこで、本件訂正発明(前者)と上記周知の平滑回路(後者)とを対比すると、後者の「トランスと整流管でなる整流回路」は、前者の「脈動電源」に相当し、後者の「有極性電解コンデンサ」も前者の「タンタル電解コンデンサからなる有極性コンデンサ」も共に「有極性電解コンデンサ」であるから、両者は、
脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと有極性電解コンデンサの直列回路とを設け、該有極性電解コンデンサの両端から出力を取り出すようにした平滑回路、
である点で一致し、ただ、
本件訂正発明では有極性電解コンデンサをタンタル電解コンデンサと限定しているに対し、周知の平滑回路におけるものでは、特に電解コンデンサの種類を限定していない点、
で相違する。
[3ー4]当審の判断
そこで、上記相違点につき、以下に検討する。
タンタル電解コンデンサ素子自体は従来からよく知られており、また、その特徴、すなわち、
・タンタル電解コンデンサは有極性であること、
・タンタル(固体)コンデンサは電解液の蒸発や損耗が無く、単位容積当たりの容量が大きく、長寿命であること、
また、タンタル電解コンデンサを実際に用いるときの注意事項として、
・電源回路などリップルの多い回路に使用するときは、コンデンサの許容リップル電流値に対する考慮が必要であること、
はいずれも周知である(例えば、上記(社)日本電子機械工業会編「総合電子部品ハンドブック」816頁〜832頁、昭和55年7月30日、電波新聞社発行、第1版参照)。
そして、電源部において、平滑回路というフィルタを通過した後の出力信号はリップル分が減少していることは、当業者に常識的な事項である(必要であれば、「電源回路設計の基礎」16〜17頁、98〜99頁昭和57年6月10日、株式会社オーム社発行、第1版参照)こと、及び、平滑回路のコンデンサとして、タンタル電解コンデンサは広く普通に用いられていること(例えば、「続安定化電源回路の設計」239〜240頁、昭和54年株式会社CQ出版社発行、第7版、「トランジスタ技術」20巻、第5号、313頁、昭和58年CQ出版社発行、「トランジスタ技術」20巻、第11号、332頁、昭和58年CQ出版社発行、「無線と実験」1974年8月号、125頁〜131頁参照)を考慮すると、上記周知の平滑回路における、脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと有極性電解コンデンサの直列回路(この無極性コンデンサ、チョークコイル、有極性電解コンデンサによりフィルタを構成している)において、該有極性電解コンデンサの両端にかかる信号はリップル分が減少していることに着目して、許容リップル電流値の低いタンタル電解コンデンサを適用することは、当業者が容易に想到し得るところと認められ、かつ、それによって、小型で長寿命の平滑回路が得られることも、当業者が当然に予測し得るところと認められる。
なお、被請求人は平成12年8月25日付の訂正拒絶理由意見書において、下記の乙号証を提出し、
1.乙第8号証において、π型フィルタの負荷側のコンデンサに無極性のコンデンサを用いたものの例が多く見られるから、周知例の平滑回路におけるコンデンサを有極性コンデンサと認定した点は誤りである。
2.訂正拒絶理由通知書において周知例として示した「無線と実験」1974年8月号、125頁〜131頁における、第128頁右欄第22行目〜第32行目の記載をとらえて、「タンタル電解コンデンサが平滑回路に適用されることについては、否定的な見解が示されている」と主張している。
3.乙10号証の記載から、「タンタル電解コンデンサを電源の平滑用に利用することには難がある。」と主張している。
4.乙第12号証として提出された鑑定依頼書において、訂正拒絶理由通知書の「電解コンデンサのなかには無極性のものも存在するが、無極性の電解コンデンサは交流信号の経路中に用いるのが通例であるところ、オーディオアンプの電源部において、整流回路通過後の電流は脈流であって交流ではあり得ない以上、整流回路以後に無極性の電解コンデンサを用いる積極的理由は何ら見当たらない」について、
(1)無極性の電解コンデンサは交流信号の経路中に用いるのが通例とは言えない。時定数回路やバイパス回路では直流信号の経路中に用いる多くの例がある。
(2)整流回路以後に無極性の電解コンデンサを用いるものは、多く見受けられる。
との鑑定結果を提出している。

(乙第8号証) 浅野勇監修、無線と実験別冊「魅惑の真空管アンプ」第13頁、第15頁、第18頁、第20頁、第22頁、第25貫、第28頁〜第30頁、第32頁、第43頁、第66頁、第95頁、第98頁、第126頁、127頁、第139頁、第140頁、第169頁、第244頁、第246頁、第311頁
(乙第9号証) 日本工業規格JISハンドブック電子(1986年4月12日発行)第283頁、第288頁、第309頁
(乙第10号証) 「抵抗、コンデンサの使い方」蒲生他著、CQ出版、
第110頁〜第112頁
(乙第11号証) 日科技連信頼性工学シリーズ第10巻 信頼性試験-総論・部品第210頁、第214頁
(乙第12号証) 学識経験者への鑑定依頼書および鑑定書
上記1.〜4.について、検討する。
1.について、
乙第8号証に示された回路図中、π型フィルタの負荷側のコンデンサを表す図記号は、
a.極性も斜線も表記されていないもの、
又は、
b.斜線が施されているが極性は明示されていないもの、
のいずれかであるが、
甲第3号証(財団法人日本規格協会編「JISハンドブック製図ー1980」、1980年4月12日発行、p277)によれば、a.は電解コンデンサを表記したものではなく、b.は電解コンデンサの表記に従い単に極性を明示していないものであると解され、いずれも、π型フィルタの負荷側のコンデンサに無極性の電解コンデンサを用いた例を示すものとは解されない。したがって、乙第8号証をもって、周知例の平滑回路におけるコンデンサを有極性コンデンサと認定した点は誤りであるとすることはできない。
2.について、
周知例第128頁第3図には、整流管に無極性コンデンサ、チョークコイル、電解コンデンサからなるπ型フィルタを接続した平滑回路にフィルムコンデンサを並列接続した回路例が記載されており、同頁右欄の記載を読むと、フィルム・コンデンサをケミコンにパラレルに挿入している理由として、「超高域のバイパス作用をいくらかでも助ける働きを期待して入れたものである」と記載されており、特にタンタル・コンデンサになると、「10kHzにおいて容量変化率および損失は30%以上にもなる」ことから、「ケミコンにフィルム・コンデンサーをパラレルに用いることは高域特性の改善に大きな効果がある」と記載されている。すなわち、10kHz以上の高域において、ケミコンの特性が悪化する対策としてフィルムコンデンサをパラレルに挿入しているのである以上、平滑回路に使用するケミコンの中に、高域劣化の大きいタンタル・コンデンサも含まれると解されるから、被請求人の主張は採用し得ない。
3.について、
乙10号証図3-25の回路はワンショット・アナログ・タイマであり、訂正発明、及び周知例における脈動電源にフィルタを介在させた電源回路とは、構成を異にするものであるから、乙10号証をもって、脈動電源にフィルタを介在させた電源回路において「タンタル電解コンデンサを電源の平滑用に利用することには難がある。」とは言えず、被請求人の主張は採用し得ない。
4.について、
鑑定書の鑑定結果(1)、(2)は、無極性の電解コンデンサが、時定数回路やバイパス回路での直流信号の経路中、あるいは、整流回路以後において用いられることを述べており、平滑回路部において無極性の電解コンデンサが用いられるか否かについて言及していない以上、当審の判断に影響を与えるものではない。
[3ー5]むすび
したがって本件訂正発明は、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正請求は、特許法第134条第5項で準用する同法第126条第4項の規定が、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により「なお従前の例による」とされることから適用される平成5年改正特許法第126条第3項の規定に違反するので、当該訂正は認められない。
【3】特許無効の請求の理由についての判断
1.請求人の主張の概要
請求人は証拠として検甲第1号証、甲第1号証〜甲第4号証を提出し、本件特許発明は、その出願前に公然実施された検甲第1号証と同一、甲第1号証又は甲第4号証と同一、若しくは検甲第1号証、甲第1号証〜甲第4号証から容易に発明をすることができたものであると主張している。
2.被請求人の答弁の概要
被請求人の答弁の趣旨は、答弁書と同時に提出した訂正請求書により訂正した特許請求の範囲第1項に記載された事項を本件特許発明の要旨とし、下記の乙第1号証〜乙第7号証を提出して、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めるものである。
そしてその内容は、要するに、甲各号証のいずれにも、脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルとタンタル電解コンデンサからなる有極性コンデンサの直列回路とを設けた平滑回路、が記載されておらず、また、甲各号証に示されたものを組み合わせて、上記平滑回路を構成することは容易になし得ないとするものである。

(乙第1号証)被請求人の代理人 野上邦五郎が株式会社日本工業技術センターに赴き、寺田和男と面談し、作成した証明書
(乙第2号証)浅野勇監修、無線と実験別冊「魅惑の真空管アンプ」(昭和47年7月30日発行)(株)誠文堂新光社第174頁〜第181頁
(乙第3号証)オーム社発行「電気電子用語辞典」第597頁
(乙第4号証)特開昭55ー121633号公報
(乙第5号証)特開昭55ー134926号公報
(乙第6号証)実開昭55ー149940号公報
(乙第7号証)実開昭59ー31236号公報
3.本件特許発明
上記【2】訂正の適否についての判断の3.訂正の適否、において述べたように、本件訂正請求は認められないから、本件特許発明は、特許明細書の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】脈動電源に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと有極性コンデンサの直列回路とを設け、該有極性コンデンサの両端から出力を取り出すようにしたことを特徴とする平滑回路。」
4.甲号証に記載の発明
甲第1号証(浅野勇監修、無線と実験別冊「魅惑の真空管アンプ」(昭和47年7月30日発行)(株)誠文堂新光社 、p18、p54、p174)には、次の発明が記載されている([3ー2]本件出願前の周知技術の項参照)。
トランスと整流管でなる整流回路と、該整流回路に並列接続した無極性コンデンサと、該無極性コンデンサに並列接続したチョークコイルと電解コンデンサの直列回路とを設け、該電解コンデンサの両端から出力を取り出すようにした平滑回路。
5.対比・判断
甲第1号証に記載の発明における「電解コンデンサ」は、[3ー2]本件出願前の周知技術の項で述べたように、有極性のものであると解するのが相当である。
この点を考慮して本件特許発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の発明の「トランスと整流管でなる整流回路」、「電解コンデンサ」は、それぞれ本件特許発明の「脈動電源」、「有極性コンデンサ」に相当し、両者はその構成が一致するから、本件特許発明は甲第1号証に記載の発明と同一である。
なお、被請求人は提出された乙第4〜7号証によって、無極性アルミニウム電解コンデンサが周知であり、甲第1号証の負荷側のコンデンサはアルミニウム電解コンデンサとは言えても、必ずしも有極性コンデンサとは言えない旨、主張するが、無極性アルミニウム電解コンデンサが周知であるとしても、電源部の平滑回路において、無極性電解コンデンサを用いることが周知であるとする証拠が提出されておらず、また、[3ー2]本件出願前の周知技術の項で述べたように、電源部の平滑回路においては、負荷側の電解コンデンサは有極性と解するのが相当であるから、被請求人の主張は採用し得ない。
【4】むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とされるべきものである。
よって本件特許を無効とし、本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、結論のとおりに審決する。
 
審理終結日 2000-10-03 
結審通知日 2000-10-17 
審決日 2000-10-31 
出願番号 特願昭61-125921
審決分類 P 1 112・ 113- ZB (H02M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 張谷 雅人堀川 一郎  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 岩本 正義
西川 一
登録日 1996-11-21 
登録番号 特許第2109383号(P2109383)
発明の名称 平滑回路  
代理人 小柴 文男  
代理人 野上 邦五郎  
代理人 竹内 進  
代理人 清水 守  
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