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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  H04N
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H04N
管理番号 1031642
異議申立番号 異議1999-71146  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-10-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-25 
確定日 2000-07-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2805631号「固体撮像装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2805631号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る特許第2805631号の特許請求の範囲(請求項の数2)に記載された発明は、平成1年3月24日に出願され、平成10年7月24日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年11月1日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
(1)訂正明細書に係る発明
訂正明細書に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲(請求項の数2)に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板とを有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから16本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射する
と共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、上記固体撮像チップの上記水平走査方向の画素ピッチをPX、垂直方向の画素ピッチをPYとしたとき、
上記第1の複屈折板による分離距離が√2PX/4、
上記第2の複屈折板による分離距離がPX/2、
上記第3の複屈折板による分離距離が√2PX/4、
上記第4の複屈折板による分離距離がPY/2
となり、又は、
上記第1の複屈折板による分離距離が√2PX/2、
上記第2の複屈折板による分離距離がPX/4、
上記第3の複屈折板による分離距離が√2PX/2、
上記第4の複屈折板による分離距離がPY/2
となるように、上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置
【請求項2】
入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第5の複屈折板と
を有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから32本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射すると共に、
上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板について、上記固定撮像チップの上記水平走査方向の画素ピッチをPX、上記垂直方向の画素ピッチをPYとしたとき、
上記第1の複屈折板による分離距離がPY/2、
上記第2の複屈折板による分離距離が√2PX/2、
上記第3の複屈折板による分離距離がPX/4、
上記第4の複屈折板による分離距離が√2PX/2、
上記第5の複屈折板による分離距離がPY/4となるように、上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置」
(なお、√2は2の平方根を表す。以下同様)
(2)訂正の要旨の適否
上記【請求項1】についての訂正は、第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを、発明の詳細な説明に記載された数式(1)ないし(4)又は数式(9)ないし(12)と限定するものである。
上記【請求項2】についての訂正は、第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板の厚さを、発明の詳細な説明に記載された数式(13)ないし(17)と限定するものである。
したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付された明細書及び図面に記載された事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)独立特許要件の判断
(先願発明)
当審の取消理由で引用した先願明細書である特願昭63-253454号(特開平2-100018号公報、異議申立人が提出した甲第1号証)には、次に掲げるもの(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「入射光を固体撮像チツプの水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板とを有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから16本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射する
と共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、分離距離の比が1:√2:1:√2
となり、又は、
分離距離の比が1:1:1:1
となるように、上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置」
(刊行物1の発明)
また、同じく当審の取消理由で引用した刊行物1である特開昭62-3202号公報(異議申立人が提出した甲第2号証)には、次に掲げるもの(以下「刊行物1の発明」という。)が記載されている。
「入射光を固体撮像チツプの水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板とを有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから16本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射する
と共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、上記固体撮像チップの上記水平走査方向の画素ピッチをPX、垂直方向の画素ピッチをPYとしたとき、
上記第1の複屈折板による分離距離がPX、
上記第2の複屈折板による分離距離がPX/√2、
上記第3の複屈折板による分離距離がPY(=PX)、
上記第4の複屈折板による分離距離がPX/√2
となるように、上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置」
(刊行物2の発明)
また、同じく当審の取消理由で引用した刊行物2である特開昭60-242420号公報(異議申立人が提出した甲第3号証)には、次に掲げるもの(以下「刊行物2の発明」という。)が記載されている。
「入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して+134゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板とを有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから16本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射する
と共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、トラップ特性線と軸の交点は複屈折板の厚さにより決められるから、
更に第5の複屈折板を用いてもよい
ことを特徴とする固体撮像装置」
(対比判断)
【本件請求項1の発明】について
訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された発明(以下「本件請求項1の発明」という。)と上記先願発明及び刊行物1、2の発明とを対比すると、先願発明及び刊行物1、2の発明には、本件請求項1の発明おける次の事項1が記載ないしは示唆されていない。
「第1の複屈折板による分離距離を√2PX/4、
第2の複屈折板による分離距離をPX/2、
第3の複屈折板による分離距離を√2PX/4、
第4の複屈折板による分離距離をPY/2」とすること、
又は、
「第1の複屈折板による分離距離を√2PX/2、
第2の複屈折板による分離距離をPX/4、
第3の複屈折板による分離距離を√2PX/2、
第4の複屈折板による分離距離をPY/2」とすること
そして、本件請求項1の発明は、上記事項1によって、「ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上充分に抑圧した撮像出力を得ることができる」という明細書に記載された効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1の発明は、上記先願発明と同一のもの、上記刊行物1、2の発明に基いて容易に発明をすることができたものとは認められない。
よって、本件請求項1の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることができない。
【本件請求項2の発明】について
また、訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項2】に記載された発明(以下「本件請求項2の発明」という。)と上記先願発明及び刊行物1、2の発明とを対比すると、先願発明及び刊行物1、2の発明には、本件請求項2の発明おける次の事項2が記載ないしは示唆されていない。
「第1の複屈折板による分離距離をPY/2、
第2の複屈折板による分離距離を√2PX/2、
第3の複屈折板による分離距離をPX/4、
第4の複屈折板による分離距離を√2PX/2、
第5の複屈折板による分離距離をPY/4」とすること
そして、本件請求項2の発明は、上記事項2によって、「ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上充分に抑圧した撮像出力を得ることができる」という明細書に記載された効果を奏するものである。
したがって、本件請求項2の発明は、上記先願発明と同一でなく、上記刊行物1、2の発明に基いて容易に発明をすることができたものでもない。
よって、本件請求項2の発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることができない。
(4)訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項から第4項の規定に適合するので、上記訂正が認められる。
3.特許異議の申立の理由の概要
特許異議申立人は、本件請求項1、2の発明は、甲第1、2、3号証(上記先願明細書、刊行物1、2に同じ)に記載された発明又はこの発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2の発明に係る特許は、特許法第29条の2の規定、同法第29条第1項第3号、同法第29条第2項の規定に違反してなされたもので、この特許は取り消すべきものである旨主張している。
そこで、上記証拠を検討すると、甲第1号証には、上記2(3)(先願発明)の項で判断したとおりのものが、また、甲第2号証には、上記2(3)(刊行物1の発明)の項で判断したとおりのものが、さらに、甲第3号証には、上記2(3)(刊行物2の発明)の項で判断したとおりのものが記載されている。
しかし、上記甲第1、2、3号証には、上記2(3)(対比判断)の項で判断した本件請求項1の発明における事項1が記載されていないし、この事項1を示唆する記載もなされていない。
また、本件請求項2の発明についても同様に、上記甲第1、2、3号証には、上記2(3)(対比判断)の項で判断した本件請求項2の発明における事項2が記載されていないし、この事項2を示唆する記載もなされていない。
4.むすび
以上のとおり、本件請求項1、2の発明は、先願発明と同一のもの、又は刊行物1、2の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また、他に本件請求項1、2の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
固体撮像装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板と
を有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから16本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射すると共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、上記固体撮像チツプの上記水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、

となり、又は、

となるように、上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第1の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第2の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向と同一方向に常光線及び異常光線に分離する第3の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線及び異常光線に分離する第4の複屈折板と、
入射光を上記水平走査方向に対して垂直方向に常光線及び異常光線に分離する第5の複屈折板と
を有する光学的ローパスフイルタを具え、撮像入射光を上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板を所定の順序で通過させることにより上記光学的ローパスフイルタから32本の分離光束を得、当該分離光束を上記固体撮像チツプに入射すると共に、
上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板について、上記固体撮像チツプの上記水平走査方向の画素ピツチをPx、上記垂直方向の画素ピッチをPyとしたとき、

となるように、上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板の厚さを選定した
ことを特徴とする固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
以下の順序で本発明を説明する。
A産業上の利用分野
B発明の概要
C従来の技術(第18図)
D発明が解決しようとする問題点(第19図〜第 21図)
E問題点を解決するための手段(第1図、第13 図及び第15図)
F作用(第1図、第13図及び第15図)
G実施例(第1図〜第17図)
(G1)第1実施例(第1図〜第8図)
(G2)第2実施例(第9図及び第10図)
(G3)第3実施例(第11図及び第12図)
(G4)第4実施例(第13図及び第14図)
(G5)第5実施例(第15図〜第17図)
(G6)他の実施例
H発明の効果
A産業上の利用分野
本発明は固体撮像装置に関し、例えばCCD、MOSなどの固体撮像素子を用いた固体撮像装置に適用して好適なものである。
B発明の概要
本発明は、光学的ローパスフイルタを用いた固体撮像装置において、複数の複屈折手段を組み合わせることにより、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧し得る固体撮像装置を得ることができる。
C従来の技術
固体撮像装置は、例えばCCD(charge coupled device )、MOS(metal oxide semiconductor )などの固体撮像素子を2次元平面上に格子状に配列することにより、撮像レンズ系から取り込まれた撮像入射光を離散的にサンプリングするような構成を有し、小型カラーテレビジヨンカメラ等に適用して好適な撮像手段として用いられている。
ところがこの種の固体撮像装置は原理上、2次元的に規則性をもつように配列した3原色画素を構成する撮像素子によつて撮像入射光を2次元的にサンプリングするように構成されていることにより、サンプリング出力は各画素を構成する撮像素子間のピツチにより決まる水平方向周波数fx及び垂直方向周波数fyに基づいてベースバンドのキヤリア周波数に対して所定の周波数位置にキヤリア成分をもつような空間周波数スペクトラムを呈する。
ところがこれらのベースバンド成分以外のキヤリア成分は、これをそのまま放置すれば、サンプリング出力に基づいて画像を再現した際に、モアレ、クロスカラー現象などの悪影響を生ずる原因になるので、ベースバンド成分以外のキヤリア成分を除去することが望ましい。
この問題を解決する方法として、水晶板の複屈折作用を利用して、撮像レンズ系から到来する撮像入射光を、点拡散関数に基づいて光学的に8本に分離することによつて、空間スペクトラム内にトラツプ直線を形成することができるようにした光学的ローパスフイルタが提案されている(特開昭60-164719 号公報)。
この光学的フイルタは、第18図に示すように、1枚のチツプで構成された固体撮像チツプと撮像レンズ系との間に挿入される。固体撮像チツプは、水平走査方向(H方向)にピツチPx(=17〔μm〕)間隔で固体撮像素子(例えばCCDイメージセンサ)を順次配列すると共に、垂直走査方向(V方向)にピツチPy(=13〔μm〕)間隔で固体撮像素子を配列している。
D発明が解決しようとする問題点
この従来の光学的ローパスフイルタは、光学軸を含む主断面の水平走査方向(H方向)に対してなす角度が、互いに45゜ずつ変化してなる3枚の水晶板を順次積層して互いに貼り合わせ、第1の水晶板側から撮像入射光を入射し、この撮像入射光を第2、第3の水晶板を順次通して固体撮像チツプに射出させるような構成のものを適用し、かくして第19図に示すように、サンプリング出力に含まれる空間周波数スペクトラム成分に対して、周波数位置(fx=0、fy=1)より周波数軸fy(V方向に相当する)の方向に僅かに高い周波数位置において交差する正の勾配を有するトラツプ直線R(-2)と、同じ周波数位置において周波数軸fyと交差する負の勾配をもつトラツプ直線L(2)とを形成し得ると共に、周波数位置(fx=1、fy=0)において周波数軸fx(H方向に相当する)と交差して周波数軸fyと平行に延長するトラツプ直線TR(1)とを形成することができ、かくして斜線を付して示すように、周波数特性曲線K1(COS2)のようなCOS2カーブをもつローパスフイルタ周波数特性を呈するような光学的ローパスフイルタを形成できる。
この周波数特性K1(COS2)は、トラツプ直線R(-2)及びL(2)が周波数軸fyと交差する点近傍にある周波数位置(fx=0、fy=1)に生ずる有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧してなるサンプリング出力を固体撮像装置の出力として得ることができる。
ところが上述の従来の構成において、固体撮像チツプとして第20図に示すように、固体撮像素子のH方向のピツチ間隔Px及びV方向のピツチ間隔Pyがほぼ同じ程度の値に選定されている場合には、周波数位置(fx=0、fy=1)のキヤリア成分を十分に抑圧することができなくなる問題がある。
因にH方向のピツチ間隔PxがV方向のピツチ間隔Pyより僅かに短いような固体撮像チツプを用いた場合、第21図に示すように、トラツプ直線R(-2)及びL(2)が周波数軸fyと交差する点が周波数位置(fx=0、fy=2)より僅かに大きい位置に生じ、これにより周波数特性曲線K2(COS2)は周波数位置(fx=0、fy=1)のキヤリア成分に対して通過特性を呈するようになり、結局有害なキヤリア成分を十分に抑圧することができなくなる。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、H方向及びV方向のピツチ間隔Px及びPyが互いにほぼ等しいような固体撮像チツプを用いたような場合にも、有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧することかできるようなトラツプ特性を容易に形成し得るようにした固体撮像装置を提案しようとするものである。
E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため第1の発明においては、 入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線o1及び異常光線e1に分離する第1の複屈折板11、21と、入射光を水平走査方向と同一方向に常光線o2及び異常光線e2に分離する第2の複屈折板12、24と、入射光を水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線o3及び異常光線e3に分離する第3の複屈折板13、23と、入射光を水平走査方向に対して垂直方向に常光線o4及び異常光線e4に分離する第4の複屈折板14、22とを有する光学的ローパスフイルタ10、20とを具え、撮像入射光を第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11、12、13及び14)、(21、22、23、24)を所定の順序で通過させることにより光学的ローパスフイルタ10、20から16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4を得、当該分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4を固体撮像チツプに入射すると共に、第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11,12,13及び14)、(21,22,23及び24)について、固体撮像チツプの水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、第1の複屈折板11、

よる分離距離がPy/2となるように、第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11、12、13及び14)、(21、22、23及び24)の厚さを選定した。
また第2の発明においては、入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して垂直方向に常光線o1及び異常光線e1に分離する第1の複屈折板31と、入射光を水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線o2及び異常光線e2に分離する第2の複屈折板32と、入射光を水平走査方向と同一方向に常光線o3及び異常光線e3に分離する第3の複屈折板33と、入射光を水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線o4及び異常光線e4に分離する第4の複屈折板34と、入射光を水平走査方向に対して垂直方向に常光線o5及び異常光線e5に分離する第5の複屈折板35とを有する光学的ローパスフイルタ30を具え、撮像入射光を第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35を所定の順序で通過させることにより光学的ローパスフイルタ30から32本の分離光束o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5を得、当該分離光束o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5を固体撮像チツプに入射すると共に、第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35について、固体撮像チツプの水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、第1の複屈折板31に

に、第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35の厚さを選定した。
F作用
第1の発明において光学的ローパスフイルタ10、20は第1〜第4の複屈折板11〜14、21〜24によつて水平走査方向に対して+45゜の方向、同一の方向、-45゜の方向、垂直の方向に16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4を分離して固体撮像チツプに入射し、かくして撮像出力としてベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧した撮像出力信号を得ることができる。
また第2の発明においては、光学的ローパスフイルタ30を構成する第1〜第5の複屈折板31〜35によつて水平走査方向に対して垂直方向、+45゜の方向、同一の方向、-45゜の方向、垂直の方向に分離した32本の分離光束o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5を得て固体撮像チツプに入射するようにしたことにより、この場合もベースバンド成分を抑圧することなく有害なキヤリア成分だけを有効に抑圧してなる撮像出力信号を得ることができる。
G実施例
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
(G1)第1実施例
第1図は第1実施例を示し、光学的ローパスフイルタ10は複屈折板として4枚の水晶板11、12、13及び14を有し、第1の水晶板11は水平走査方向すなわちH方向に対して+45゜の角度位置に主断面11Aを有し、第2の水晶板12はH方向と同一の方向に主断面12Aを有し、第3の水晶板13はH方向に対して-45゜の主断面13Aを有し、第4の水晶板14は水平走査方向に対して垂直の方向すなわちV方向に主断面14Aを有する。
撮像レンズ系から到来する撮像入射光束は、第1の水晶板11に入射した後、順次水晶板12、13及び14を通つて射出する間に、順次45゜の方向に複屈折を受けて行くことにより等しい光量に分離されて行く。その結果第2図に示すように、H方向のピツチ間隔Px及びV方向のピツチ間隔Pyがほぼ等しい固体撮像チツプ(第20図)に、互いに等しい光量をもつ16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4が入射する。
ここで第1の水晶板11は入射光すなわち撮像入射光束を常光線o1と+45゜の方向に分離距離P1だけ分離された異常光線e1とを第2の水晶板12に入射する。
第2の水晶板12は入射光すなわち2本の分離光線についてそれぞれ常光線o2とH方向に分離距離P2だけ分離された異常光線e2とを第3の水晶板13に入射する。
第3の水晶板13は入射光すなわち4本の分離光線についてそれぞれ常光線o3とH方向に対して-45゜の方向に分離距離P3だけ分離された異常光線e3とを第4の水晶板14に入射する。
第4の水晶板14は入射光すなわち8本の分離光線についてそれぞれ常光線o4とV方向に分離距離P4だけ分離された異常光線e4とでなる16本の分離光束を固体撮像チツプに対して射出する。
なお第2図において、固体撮像チツプに射出された16本の分離光束について、水晶板11、12、13、14において順次分離される経過を常光線についての符号o1、o2、o3、o4及び異常光線についての符号e1、e2、e3、e4によつて表示する。
例えば分離光束o1o2o3o4は1順次水晶板11、12、13、14の常光線o1、o2、o3、o4でなる分離光線によつて得られることを表しており、また分離光束e1e2e3e4は水晶板11、12、13、14の異常光線e1、e2、e3、e4でなる分離光線によって得られることを表している。
ここで水晶板11、12、13、14の分離距離P1、P2、P3、P4は次式




のように、H方向のピツチ間隔Px及びV方向のピツチ間隔Pyに基づいて決まるような値になるように、各水晶板11、12、13、14の厚さを選定することにより選定されており、かくして当該光学的ローパスフイルタ10の周波数特性は、第3図(A)、(B)及び(C)に示すような分離特性を有する光学的ローパスフイルタ部10A、10B及び10Cを合成したものと等価であると考えることができる。
光学的ローパスフイルタ部10Aは、入射光をH方向に分離距離Px/2だけ離れた位置に常光線及び異常光線として分離するような光学的ローパスフイルタ特性を呈し、第2図の分離光束のうち、分離光束o1o2e3o4及びo1e2e3e4間の関係、o1o2o3o4及びo1e2o3o4間の関係、e1o2e3o4及びe1e2e3o4間の関係、e1o2o3o4及びe1e2o3o4間の関係、o1o2e3e4及びo1e2e3e4間の関係、o1o2o3e4及びo1e2o3o4間の関係、e1o2e3e4及びe1e2e3e4間の関係、e1o2o3e4及びe1e2o3e4間の関係によつて光学的ローパスフイルタ部10Aの周波数特性が得られる。
また光学的ローパスフイルタ部10Bは、入射光を分離距離Py/2だけV方向に分離してなる常光線及び異常光線を生ずるような光学的ローパスフイルタとしての特性を呈し、第2図の分離光線のうち、o1o2o3o4及びo1o2o3e4間の関係、o1o2e3o4及びo1o2e3e4間の関係、e1o2o3o4及びe1o2o3e4間の関係、o1e2o3o4及びo1e2o3e4間の関係、o1e2e3o4及びo1e2e3e4間の関係、e1e2o3o4及びe1e2o3e4間の関係、e1e2e3o4及びe1e2e3e4間の関係によつて光学的ローパスフイルタ部10Bが形成される。
また光学的ローパスフイルタ部10Cは、1本の入射光を対角線間の距離がPx/2をもつ菱形の頂点位置に生ずる4本の分離光束に分離するような光学的ローパスフイルタ特性を呈するもので、第2図の分離光束のうち、(o1o2o3o4、e1o2o3o4、e1o2e3o4、o1o2e3o4)、(e1o2e3o4、e1e2o3o4、e1e2e3o4、o1e2e3o4)、(o1o2o3e4、e1o2o3e4、o1e2o3e4、o1o2e3e4)、(e1o2e3e4、e1e2o3e4、e1e2e3e4、o1e2e3e4)の関係が光学的ローパスフイルタ部10Cの特性を呈する。
これらの光学的ローパスフイルタ部10A、10B、10Cの周波数特性を合成すると、空間周波数トラツプ特性は第4図に示すように、周波数位置(fx=0、fy=2)より高い周波数位置で周波数軸fyと交差する正及び負の勾配を有するトラツプ曲線R(-2)及びL(2)と、周波数位置(fx=2、fy=0)で周波数軸fxと交差する正及び負の勾配のトラツプ直線R(2)及びL(2)と、周波数位置(fx=0、fy=1)、(fx=0、fy=3)を通り周波数軸fxと平行なトラツプ直線TRY(1)、TRY(3)と、周波数位置(fx=1、fy=0)、(fx=3、fy=0)を通り周波数軸fyと平行なトラツプ直線TRX(1)、TRX(3)とを周波数位置(fx=0、fy=0)のベースバンド成分の周囲に形成することができる。
この結果光学的ローパスフイルタ10(第1図)は第3図(A)について上述した光学的ローパスフイルタ部10Aの周波数特性に基づいて第5図において特性曲線K3(COS)で示すように周波数位置fx=1にトラツプ点を有するような水平方向の周波数特性を得ることができると同時に、第3図(C)について上述した光学的ローパスフイルタ部10Cの周波数特性に基づいて第5図において特性曲線K3(COS2)で示すように、周波数位置fx=2にトラツプ点を有するような水平方向の周波数特性とを得ることができ、その合成特性として第5図において斜線を付して示すような合成特性曲線K3が得られる。
これに加えて光学的ローパスフイルタ10(第1図)の垂直方向の周波数特性は、第3図(B)について上述した光学的ローパスフイルタ部10Bの周波数特性に基づいて第6図において特性曲線K4(COS)で示すように、周波数位置fy=1、3にトラツプ点を有するようなCOS 曲線を呈すると共に、第3図(C)の光学的ローパスフイルタ部10Cの周波数特性に基づいて、第6図において特性曲線K4(COS2)で示すように、周波数位置fy=2Py/Pxにトラツプ点を有するCOS2特性を呈する。
その結果合成特性曲線K4は第6図において斜線を付して示すような合成特性曲線K4が得られる。
この実施例の場合、固体撮像チツプは、第8図に示すように、760H分の画素配列を有する3枚(すなわち3原色分)の固体撮像チツプ板を1/2画素分だけH方向にずらせて重ね合わせた構成を有し、これにより第7図に示すような空間周波数スペクトラムが生ずるのに対して第1図の光学的ローパスフイルタ10を用いることにより、そのベースバンド成分を除く有害なキヤリア成分をトラツプ直線によつて確実に抑圧することができる。
因に、周波数位置(fx=0、fy=1)、(fx=1、fy=1)、(fx=2、fy=1)のキヤリア成分はトラツプ直線TRY(1)によって抑圧され、周波数位置(fx=1、fy=0)、(fx=1、fy=1)、(fx=1、fy=2)のキヤリア成分はトラツプ直線TRX(1)によつて抑圧され、周波数位置(fx=2、fy=0)のキヤリア成分はトラツプ直線L(2)及びR(2)によつて抑圧され、周波数位置(fx=0、fy=2)のキヤリア成分はトラツプ直線R(-2)及びL(2)によつて抑圧される。
かくして第1図の光学的ローパスフイルタ10によれば、第7図に示すように、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を有効に除去し得る光学的ローパスフイルタ特性をもつた固体撮像装置を実現し得る。
(G2)第2実施例
この場合、第8図について上述したような3チツプ1/2画素ずらしの固体撮像素子に代えてHD(high defintion)用撮像カメラの撮像チツプとして、第9図に示すような空間周波数スペクトラムをもつような1枚の固体撮像チツプ板を用いる。
固体撮像チツプ板は第10図に示すように、1つの画素にイエロフイルタYL、シアンフイルタCY、グリーンフイルタG、ホワイトフイルタWでなる画素フイルタFILTを設けた画素を1枚のチツプ上に配列し、第1図について上述した光学的ローパスフイルタ10によつて得られる16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4(第2図)を受けるようにする。
このようにすれば、第9図に示すように、空間周波数スペクトラムのうち、周波数位置(fx=0、fy=1)のキヤリア成分がトラツプ直線R(-2)及びL(2)によつて抑圧され、周波数位置(fx=1、fy=0)のキヤリア成分がトラツプ直線L(2)及びR(2)によつて抑圧され、周波数位置(fx=1/2、fy=0)、(fx=1/2、fy=1/2)、(fx=1/2、fy=1)のキヤリア成分がトラツプ直線TRX(1/2)によつて抑圧され、周波数位置(fx=0、fy=1/2)、(fx=1/2、fy=1/2)、(fx=1、fy=1/2)がトラツプ直線TRY(1)によつて抑圧される。
なおこの実施例の場合トラツプ直線TRY(1)は、これが周波数位置(fx=0、fy=1/2)を通るようにすると、V方向の変調度が落ち過ぎる結果になるおそれがあるので、実際上当該周波数位置(fx=0、fy=1/2)より少しfy軸に沿つて高い位置に発生させるようになされている。
第9図に示すような空間周波数スペクトラムを呈する固体撮像チツプにおいても、ベースバンド成分を除く他の有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧することができる。
(G3)第3実施例
第11図は第3実施例を示すもので、この場合固体撮像チツプは第12図に示すように、3枚の固体撮像チツプ板(3原色用の)を有し、当該3枚の固体撮像チツプ板を各画素G、B、Rが互いにずれないように重ね合わせた構成を有する。
この場合各固体撮像チツプ板のH方向のピツチ間隔Px及びV方向のピツチ間隔Pyはほぼ等しい値に選定され、光学的ローパスフイルタとして第1図について上述した光学的ローパスフイルタ10の場合と同様に第1、第2、第3、第4の水晶板の分離方向が決められている。
しかし第1、第2、第3、第4の水晶板の厚さは、移動距離P21、P22、P23、P24が次式




で表されるように選定され、これにより空間周波数スペクトラムに対して第11図に示すようなトラツプ直線が形成される。
この場合周波数位置(fx=0、fy=1)及び(fx=1、fy=2)を通るように正の勾配を有するトラツプ直線R1(-1)が発生すると共に、これと平行に周波数位置(fx=1、fy=0)及び(fx=2、fy=1)を通るトラツプ直線R1(1)が形成される。
これと共に周波数位置(fx=0、fy=1)及び(fx=1、fy=0)を通る負の勾配のトラツプ直線L1(1)が形成されると共に、これとほぼ平行に周波数位置(fx=2、fy=1)及び(fx=1、fy=2)を通るトラツプ直線L1(3)が形成される。
これに加えて周波数位置(fx=0、fy=1)を通つて周波数軸fxと平行なトラツプ直線TRY(1)と、周波数位置(fx=2、fy=0)を通つて周波数軸fyと平行なトラツプ直線TRX(2)とが形成される。
かくして周波数位置(fx=0、fy=1)の有害なキヤリア成分はトラツプ直線R1(-1)、L1(1)及びTRY(1)によつて抑圧され、周波数位置(fx=1、fy=0)、(fx=1、fy=1)(fx=1、fy=2)のキヤリア成分はそれぞれトラツプ直線R1(1)及びL1(1)、TRY1(1)、R1(-1)及びL1(3)によつて抑圧され、周波数位置(fx=2、fy=0)、(fx=2、fy=1)、(fx=2、fy=2)のキヤリア成分はそれぞれトラツプ直線TRX(2)、(R1(1)、L1(3)、TRX(2)及びTRY(1))、TRX(2)によつて抑圧される。
かくして第11図及び第12図の構成によれば、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧してなる固体撮像装置を得ることができる。
(G4)第4実施例
第13図は第4実施例における光学的ローパスフイルタを示し、H方向に対して+45゜の角度位置に主断面14を有する第1の水晶板21と、V方向に主断面21Aを有する第2の水晶板22と、H方向に対して-45゜の主断面23Aを有する第3の水晶板23と、水平方向に主断面24Aを有する第4の水晶板24とを有する。
第14図に示すように、第1の水晶板21は、入射光を常光線o1と、+45゜の方向に次式

で表される分離距離P11だけ分離された異常光線e1とに分離して第2の水晶板22に射出する。
第2の水晶板22はこの2本の入射光についてそれぞれ常光線o2と、V方向に次式

で表される分離距離P12だけ分離された異常光線e2とを第3の水晶板23に入射する。
第3の水晶板23は4本の入射光についてそれぞれ常光線o3と、-45゜の方向に次式

で表される分離距離P13だけ分離された異常光線e3とを第4の水晶板24に射出する。
第4の水晶板24Aは入射する8本の入射光それぞれについて、常光線o4と、H方向に次式

のように表される分離距離P14だけ分離される異常光線e4とを16本の分離光束として固体撮像チツプに射出する。
このようにして固体撮像チツプに射出される16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4の光学的ローパスフイルタ特性は、分離距離P11〜P14((5)式〜(8)式)によつてH方向及びV方向に分離される距離が(1)式〜(4)式と共に第5図の第1実施例の場合の分離距離P1〜P4と同様の数値に選定されているので、第3図(A)、(B)、(C)について上述した光学的ローパスフイルタ部10A、10B、10Cによつて得ることができる周波数特性を合成したような特性をもつ。
因に第13図の光学的ローパスフイルタ20は、常光線に対してH方向にPx/2だけ異常光線を分離したと同様の周波数特性として例えば光束o1o2e3o4及びo1o2e3e4間、o1o2o3o4及びo1o2o3e4間、e1o2e3o4及びe1o2e3e4間、e1o2o3o4及びe1o2o3e4間、o1e2e3o4及びo1e2e3e4間、o1e2o3o4及びo1e2o3e4間、e1e2e3o4及びe1e2e3e4間、e1e2o3o4及びe1e2o3e4間の関係において光学的ローパスフイルタ部10Aと等価な周波数特性を呈する。
また光束o1o2o3o4及びo1e2o3o4間、e1o2o3o4及びe1e2o3o4間、o1o2o3e4及びo1e2o3e4間、e1o2e3o4及びe1e2e3o4間、e1o2o3e4及びe1e2o3e4間、e1o2e3e4及びe1e2e3e4間の関係について、光学的ローパスフイルタ部10Bと等価な周波数特性を呈する。
さらに分離光束o1o2o3o4、e1o2o3o4、e1o2e3o4及びo1o2e3o4間、o1o2o3e4、e1o2o3e4、e1o2e3e4及びo1o2e3e4間、o1e2o3o4、e1e2o3o4、e1e2e3o4及びo1e2e3o4間、o1e2o3e4、e1e2o3e4、e1e2e3e4及びo1e2e3e4間の関係について光学的ローパスフイルタ部10Cと等価な周波数特性を呈する。
その結果第12図の16本の分離光線o1o2o3o4〜e1e2e3e4は光学的ローパスフイルタ部10A、10B、10Cを合成することにより、第4図〜第6図について上述したと同様の空間周波数トラップ特性及び周波数特性をもつことになる。
その結果第13図及び第14図の構成の光学的ローパスフイルタ20を用いれば、第7図について上述したと全く同様にして周波数位置(fx=0、fy=1)、(fx=0、fy=2)、(fx=1、fy=0)、(fx=1、fy=1)、(fx=1、fy=2)、(fx=2、fy=0)、(fx=2、fy=1)における有害なキヤリア成分をベースバンド成分に損失を生じさせないようにしながら有効に除去してなる固体撮像装置を実現し得る。
(G5)第5実施例
第15図は第5実施例を示すもので、この場合の固体撮像装置は5枚の結晶板、すなわち第1、第2、第3、第4、第5の結晶板31、32、33、34、35を有すると共に、固体撮像チツプとして第12図について上述したと同様にしてHDテレビジヨン方式の画素配列を有する3枚の3原色チツプを各画素が重なり合うように配設した構成のものを用いる。
光学的ローパスフイルタ30の第1の結晶板31は入射光を常光線o1と、V方向に次式

で表される分離距離P31だけ分離した異常光線e1とに分離して第2の結晶板32に射出する。
第2の結晶板32は2本の入射光についてそれぞれ常光線o2と、H方向に対して+45゜の方向に次式

で表される分離距離P32だけ分離した異常光線o2とを第3の結晶板33に送出する。
第3の結晶板33は4本の入射光についてそれぞれ常光線o3とH方向に次式

のように表される分離距離P33だけ分離された異常光線e3とを第4の結晶板34に射出する。
第4の結晶板34は8本の入射光線についてそれぞれ常光線o4と、H方向に対して-45゜の方向に次式

のように表される分離距離P34だけ分離された異常光線e4とを第5の結晶板35に射出する。
第5の結晶板35は16本の入射光に対してそれぞれ常光線o5と、V方向に次式

のように表される分離距離P35だけ分離された異常光線e5とを固体撮像チツプに射出する。
かくして固体撮像チツプには第16図に示すように、32本の分離光束o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5が入射される。
このようにしてピツチPx及びPy間隔で配列されている画像に対して、第16図に示すような位置関係に32本の分離光束が分離されて入射されることにより、当該分離光束と画素のピツチPx、Pyとの関係に基づいて生ずるローパスフイルタ周波数特性が形成されることにより、結局第17図に示すように、第3実施例(第11図)について上述したトラツプ直線に対してさらに新たに、周波数位置(fx=0、fy=2)を通り周波数軸fxにほぼ平行なトラツプ直線TRY(2)を重ね合わせたようなトラツプ特性を生じさせることができる。
因に、周波数位置(fx=0、fy=2)を通り周波数軸fxとほぼ平行に延長するトラツプ直線TRY(2)によつて周波数位置(fx=0、fy=2)、(fx=1、fy=2)(fx=2、fy=2)の有害なキヤリア成分を実用上十分に抑圧することができる。
かくして第15図〜第17図の構成によれば、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を有効に除去し得る固体撮像装置を実現し得る。
(G6)他の実施例
(1)上述の実施例においては、水晶板の複屈折を利用して分離光束を得るようにしたが、当該複屈折板は水晶板に限らず、その他の材料、構成のものを適用し得る。
(2)光学的ローパスフイルタの水晶板の積層順序は第1図、第13図、第15図の順序に限らず、要は複数の複屈折板による分離方向が順次45゜ずつ変化して行くようにすればよい。
H発明の効果
上述のように本発明によれば、特定の厚さに選定した複数の複屈折板を組み合わせることによつて固体撮像チツプ上の所定位置に分離光束を分離させるように入射することにより、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上充分に抑圧した撮像出力を得ることができる固体撮像装置を容易に実現し得る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による固体撮像装置において用いる光学的ローパスフイルタを示す略線図、第2図は固体撮像チツプに対する分離光束の分離位置を示す略線図、第3図は第2図に含まれる光学的ローパスフイルタ部を示す略線図、第4図は空間周波数トラツプ特性を示す特性曲線図、第5図及び第6図は第4図のH方向及びV方向のローパスフイルタ周波数特性を示す特性曲線図、第7図はトラツプ直線によつて抑圧できるキヤリア成分を示す特性曲線図、第8図は固体撮像チツプの画素の配列を示す略線図、第9図は他の固体撮像チツプを用いた第2実施例における空間周波数スペクトラムに対するトラツプ特性を示す特性曲線図、第10図は第9図の場合の固体撮像チツプに用いられる画素フイルタの構成を示す略線図、第11図は第3実施例における空間周波数スペクトラムに対するトラツプ特性を示す特性曲線図、第12図は第11図の場合の固体撮像チツプ上の画素配列を示す略線図、第13図は第4実施例において用いられる光学的ローパスフイルタを示す略線図、第14図はその分離光束の固体撮像チツプ上の位置関係を示す略線図、第15図は第5実施例において用いられる光学的ローパスフイルタの構成を示す略線図、第16図はその固体撮像チツプ上の分離光束の位置関係を示す略線図、第17図は空間周波数スペクトラムに対するトラツプ特性を示す特性曲線図、第18図及び第19図は従来の固体撮像装置において用いられている固体撮像チツプの画素配列及びトラツプ特性を示す略線図及び特性曲線図、第20図及び第21図はその問題点の説明に供する略線図及び特性曲線図である。
10、20、30……光学的ローパスフイルタ、11〜14、21〜24、31〜35……水晶板、11A〜14A、21A〜24A、31A〜35A……主断面、o1o2o3o4〜e1e2e3e4、o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5……分離光束。
 
訂正の要旨 特許請求の範囲の減縮及び不明りような記載の釈明を目的として、次に描ける訂正事項aないしdとする訂正を認める。
訂正事項a
請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「と共に、
上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板について、上記固体撮像チツプの上記水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向のピツチをPyとしたとき、

となり、又は、

となるように、上記第1、第2、第3及び第4の複屈折板の厚さを選定した」
を挿入する。
訂正事項b
請求項2において、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「と共に、
上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板について、上記固定撮像チツプの上記水平走査方向の画素ピツチをPx、上記垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、

となるように、上記第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板の厚さを選定した」
を挿入する。
訂正事項c
明細書の「E問題点を解決するための手段」の欄を、不明りような記載の釈明を目的として、次に示すように訂正する。
「E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため第1の発明においては、入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して+45゜の方向に常光線o1及び異常光線e1に分離する第1の複屈折板11、21と、入射光を水平走査方向と同一方向に常光線o2及び異常光線e2に分離する第2の複屈折板12、24と、入射光を水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線o3及び異常光線e3に分離する第3の複屈折板13、23と、入射光を水平走査方向に対して垂直方向に常光線o4及び異常光線e4に分離する第4の複屈折板14、22とを有する光学的ローパスフイルタ10、20とを具え、撮像入射光を第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11、12、13及び14)、(21、22、23及び34)を所定の順序で通過させることにより光学的ローパスフイルタ10、20から16本の分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4を得、当該分離光束o1o2o3o4〜e1e2e3e4を固体撮像チツプに入射すると共に、第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11、12、13及び14)、(21、22、23及び24)について、固体撮像チツプの水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、第1の複屈折板11、21による分離

4による分離距離がPy/2となるように、第1、第2、第3及び第4の複屈折板(11、12、13及び14)、(21、22、23及び24)の厚さを選定した。
また第2の発明においては、入射光を固体撮像チツプの水平走査方向に対して垂直方向に常光線o1及び異常光線e1に分離する第1の複屈折板31と、入射光を水平方向に対して+45゜の方向に常光線o2及び異常光線e2に分離する第2の複屈折板32と、入射光を水平走査方向と同一方向に常光線o3及び異常光線e3に分離する第3の複屈折板33と、入射光を水平走査方向に対して-45゜の方向に常光線o4及び異常光線e4に分離する第4の複屈折板34と、入射光を水平走査方向に対して垂直方向に常光線o5及び異常光線e5に分離する第5の複屈折板35とを有する光学的ローパスフイルタ30を具え、撮像入射光第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35を所定の順序で通過させることにより光学的ローパスフイルタ31から32本のo1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5を得、当該分離光束o1o2o3o4o5〜e1e2e3e4e5を固体撮像チツプに入射すると共に、第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35について、固定撮像チツプの水平走査方向の画素ピツチをPx、垂直方向の画素ピツチをPyとしたとき、第1の複屈折板31による分離距離がPy/2、第


第5の複屈折板35による分離距離がPy/4となるように、第1、第2、第3、第4及び第5の複屈折板31、32、33、34及び35の厚さを選定した。」
訂正事項d
明細書の「H発明の効果」の欄を、不明りような記載の釈明を目的として、次に示すように訂正する。
「H発明の効果
上述のように本発明によれば、特定の厚さに特定した複数の複屈折板を組み合わせることによつて固体撮像チツプ上の所定位置に分離光束を分離させるように入射することにより、ベースバンド成分以外の有害なキヤリア成分を実用上充分に抑圧した撮像出力を得ることができる固体撮像装置を容易に実現し得る。」
異議決定日 2000-06-27 
出願番号 特願平1-72828
審決分類 P 1 651・ 161- YA (H04N)
P 1 651・ 121- YA (H04N)
P 1 651・ 113- YA (H04N)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 宣博  
特許庁審判長 谷川 洋
特許庁審判官 橋本 恵一
小池 正彦
登録日 1998-07-24 
登録番号 特許第2805631号(P2805631)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 固体撮像装置  
代理人 田辺 恵基  
代理人 田辺 恵基  

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