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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1031730
異議申立番号 異議1999-72882  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-28 
確定日 2000-10-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2856045号「セラミック基板の製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2856045号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 (I)手続きの経緯
本件特許第2856045号は、平成5年9月27日に特許出願され、平成10年11月27日に設定登録され、平成11年2月10日に特許公報に掲載されたところ、平成11年7月28日に竹宮茂文(以下、申立人という。)から特許異議の申立がなされ、その後の取消理由通知に対し、その指定期間内である平成12年4月17日付けで訂正請求がなされたものである。
(II)訂正請求について
II-1.訂正事項
(1)特許請求の範囲の記載を、明りょうでない記載の釈明および特許請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。」に訂正する。
(2)特許明細書の段落番号【0006】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明によるセラミック基板の製造方法は、以下のようにしたものである。即ち、表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とする。」に訂正する。
(3)特許明細書の段落番号【0033】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「また本発明のように第1のグリーンシート1の表面に切込溝11を形成した後に、その表面に第2のグリーンシート2を積層して加圧密着させ、上記切込溝11内に第2のグリーンシート2の一部を入り込ませたことにより、その切込溝11が開放されている場合よりも前記面方向の収縮に対する抑制力が更に増大されて収縮量およびバラツキが低減されるためと考えられる。」に訂正する。
II-2.訂正の適否
II-2-1.訂正の目的・新規事項の有無・拡張変更の存否
訂正事項(1)は、特許明細書の請求項1に記載された「切込溝を形成し、」を、特許明細書の段落番号【0012】乃至【0014】及び図1の工程説明図の記載に基づいて、「切込溝を形成した後に、」と訂正し、かつ、「第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層して加圧密着させ、その積層体を」を、特許明細書の段落番号【0016】及び図1(d)の記載に基づいて、「第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を」と訂正したものであるところ、前者が明りょうでない記載を釈明するものであり、後者が特許請求の範囲を減縮したものであること、両者が特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは、ともに、明らかである。
訂正事項(2)、(3)は、訂正事項(1)の訂正に整合させるべく明細書中の明りょうでない記載を釈明するものであり、特許明細書に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないことは明らかである。
II-2-2.独立特許要件の存否
II-2-2-1.訂正後の本件発明
訂正後の本件発明は、上記訂正後の請求項1に記載された次のとおりのものである。
『【請求項1】表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。』
II-2-2-2.取消理由の概要
平成12年1月28日付けの取消理由は、
訂正前の請求項1に係る発明は、引用例1[特開平2-66988号公報、甲第2号証]、引用例2[特開平1-289222号公報、参考資料2]および引用例3[特開平5-102666号公報、甲第1号証]に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきものである、
というにある。
II-2-2-3.引用例の記載内容
引用例1及び2には、それぞれ、大形多数個取りセラミック基板に係る発明、及び、複数のチップ抵抗器を同時に製造する方法に係る発明が記載され(特許請求の範囲参照)、従来技術として、集積回路やチップ抵抗器などの印刷用セラミック基板の製造において、従来より、多数個取りのためにグリーンシートに分割用溝を付与することが行われていたこと、および、その際には、各分割部に対する焼成時の収縮率の不均一により、多数の印刷スクリーンや印刷版を用意しなければならない等の不具合が発生することが記載されている(引用例1の第1頁右下欄1〜20行及び第2図、引用例2の第1頁右下欄6行〜第2頁左下欄15行参照)。
引用例3には、セラミック配線基板の製法において、焼成時の基板の収縮誤差に伴い配線のための印刷スクリーン版を多数用意しなければならないという不経済を解消するために、基板形成用のグリーンシートを焼結する際に、該グリーンシートの両面もしくは片面に、焼成時に焼結しないグリーンシートを熱圧着しておく方法が有効であることが記載されている(特許請求の範囲、第4頁第5欄19〜44行、第5頁第7欄3〜17行参照)。
II-2-2-4.対比
本件発明は、「第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させる」という構成を採用することにより、切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部が進入しない場合に比して、面方向の収縮に対する抑制力を更に増大し収縮量及びバラツキを低減させるという明細書に記載された効果を奏するものであるところ、引用例1〜3には、前記II-2-2-3の内容が記載され、第2のセラミックグリーンシートを切込構を形成した第1のセラミックグリーンシートの両面に積層することまでは示唆されていると解されるものの、第1のセラミックグリーンシートに形成した上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部が進入する程度に両セラミックグリーンシートを加圧密着させること、すなわち、本件発明の上記構成までを示唆する記載はなく、本件発明の上記効果を示唆する記載もない。
してみれば、本件発明は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
したがって、本件発明は、上記取消理由により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるとすることはできない。
また、他に、本件発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
II-2-3.訂正に関するむすび
上記の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するものであるから、上記訂正は適法なものと認める。
(III)特許異議申立について
III-1.本件発明
本件発明は、上記訂正により訂正された明細書および図面の記載からみて、前記II-2-2-1に記載したとおりのものである。
III-2.特許異議申立の理由
申立人は、甲第1号証、甲第2号証及び下記の参考資料1〜3を提示し、
訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証と甲第2号証に記載された発明、及び参考資料1〜3にも記載され本件発明の出願前に周知である技術(スナップライン用の切込構をセラミック基板に形成すること)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきものである、
旨を主張する。
参考資料1:特公平2-4150号公報
参考資料2:特開平1-289222号公報
参考資料3:特開平2-17613号公報
III-3.特許異議申立理由の検討
本件発明が、甲第1号証、甲第2号証および参考資料2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは、上記II-2-2-4に記載したとおりである。
そして、上記II-2-2-4においては、スナップライン用の切込構をセラミック基板に形成する技術が参考資料2に記載され従来より知られた技術であるとしたうえで検討している。
してみると、申立人の主張は、上記II-2-2-4において検討した内容に係るものであり、同所に記載したとおりの理由で採用できない。
(IV)むすび
以上のとおりであるから、申立人の主張する理由および証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セラミック基板の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込溝内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばハイブリッドICやマルチチップモジュール等に用いるセラミック基板の製造方法に関する。更に詳しくは、表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、上記のようなセラミック基板を製造する場合、その製造効率を高めるために、比較的大きな面積のセラミック基板の表面にスナップラインと呼ばれる切込溝を形成し、その切込溝に沿って分割することによって所定の大きさのセラミック基板を多数個得る、いわゆる多数個取りの手法が採用されている。
【0003】
上記のような多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たっては、従来一般に製造すべきセラミック基板の素材となるセラミックグリーンシートの表面に、予めカッター刃や金型等で格子状その他所望形状の切込溝を形成し、それを焼成することによって表面に切込溝を有するセラミック基板を作製する。その基板を上記切込溝に沿って分割することによって所定大きさのセラミック基板が多数個得られるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のような切込溝を形成したセラミックグリーンシートを、そのまま焼成すると、その焼成時に往々にしてセラミックグリーンシートが不均一に収縮し、隣り合う切込溝の間隔がずれて寸法精度にバラツキを生じ、所定寸法のセラミック基板が得られず、歩留りが低下する等の不具合があった。
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、焼成時の不均一な収縮を抑制して寸法精度のよいセラミック基板を得ることのできる製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明によるセラミック基板の製造方法は、以下のようにしたものである。
即ち、表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込溝内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とする。
【0007】
【作用】
上記のように製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成し、その第1のセラミックグリーンシートの両側に、それよりも焼結温度の高い第2のセラミックグリーンシートを積層した状態、すなわち2枚の第2のセラミックグリーンシート間に第1のセラミックグリーンシートを挟んだ状態で加圧密着させて焼成することにより、その焼成時に第1のセラミックグリーンシートが第2のセラミックグリーンシートに拘束されて前記従来のように不均一に収縮するのが防止され、隣り合う切込溝の間隔にバラツキが生じることなく寸法精度のよいセラミック基板を得ることが可能となる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明によるセラミック基板の製造方法を、図1に示す工程説明図に基づいて順に具体的に説明する。
先ず、図1の(a)に示すようにセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシート1を用意する。
その第1のセラミックグリーンシート(以下、第1のグリーンシートという)1は、例えばセラミック粉末にバインダーや可塑剤および溶剤を加えて、ボールミルやアトラクター等で混合してスラリーとし、そのスラリーをドクターブレード法等の通常の方法によりシート状に形成すればよい。
【0009】
なお上記のようにシート状に形成したものを複数枚積層し、それを加圧密着させたものを第1のグリーンシートとして用いてもよい。その場合、上記の加圧密着させる手段は通常の方法でよく、例えば50〜300kgf/cm2、温度60〜90℃でホットプレスすればよい。
また第1のグリーンシート1の厚さは特に制限はないが、30〜200μm程度が好適である。
【0010】
前記のセラミック粉末としては、従来のセラミック基板に用いられる通常の原料を使用できる。例えばアルミノ硼珪酸ガラス、軟化点600〜800℃の非晶質ガラス、結晶化温度600〜1000℃の結晶化ガラス等が使用できる。又これらにアルミナ、ジルコン、ムライト、コージェライト、アノーサイト、シリカ等のセラミックフィラーを添加したものでもよい。
【0011】
また前記のバインダーとしては、例えばポリビニルブチラール、メタアクリルポリマー、アクリルポリマー等を用い、可塑剤としては例えばフタル酸の誘導体等を用いればよい。さらに溶剤としては例えばアルコール類、ケトン類、塩素系有機溶剤等通常のものを使用すればよい。
【0012】
上記のようにして作成した第1のグリーンシート1を所定の大きさに切断し、必要に応じてスクリーン印刷等で導体ペーストを塗布する。多層基板とするときは、スルーホールにペーストを充填し、さらに配線を印刷する。
そして、図1の(b)に示すように上記第1のグリーンシート1の少なくとも一方の表面、すなわち片面もしくは両面に切込溝11を形成するもので、その形成手段は従来の通常の方法でよく、例えばカッター刃をグリーンシートの表面に押し当てたり、回転刃で切り込む方法等で形成すればよい。
【0013】
上記切込溝11の断面形状は、図の場合はV字状に形成したが、U字状もしくはスリット状、その他任意であり、少なくとも焼結後にハンドリングする際に不用意に割れが生じない形状を選べばよい。
また、上記切込溝11の深さは、例えば第1のグリーンシート1の厚さ(前記のように積層するものにあっては全体厚さ)の1/20〜8/20程度とすればよい。
【0014】
次に、図1の(c)に示すように上記第1のグリーンシート1の両面に、第2のセラミックグリーンシート(以下、第2のグリーンシートという)2を積層する。
その第2のグリーンシート2は、上記第1のグリーンシート1と同様の要領で作製すればよく、その厚さは第1のグリーンシート1の場合と同様に特に制限はないが、30〜200μm程度が好適である。
【0015】
なお第2のグリーンシート2に用いるセラミック粉末は、通常のセラミック粉末を使用できるが、上記第1のグリーンシート1より焼結温度の高いものでなければならない。例えば第1のグリーンシート1として焼結温度が1100℃以下のものを用いる場合には、第2のグリーンシート2としては、例えばアルミナ、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライト、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を使用することができる。なお、これらの粉末の粒度が粗すぎると、セラミック基板の表面粗さが粗くなるため、平均粒径0.5〜4μm程度が好適である。
【0016】
次に、上記のように第1のグリーンシート1の両面に第2のグリーンシート2を積層したものを両側から加圧密着させる。その加圧密着させる手段は通常の方法でよく、それによって図1の(d)に示すように第1のグリーンシート1に形成した切込溝11内に第2のグリーンシート2の一部が進入する。
【0017】
次いで、上記の積層体を、例えば同図(e)に示すようにトレーT等に載せて焼成するもので、その焼成方法は通常の方法でよい。ただし、焼成温度は第1のグリーンシート1のみが焼結し、第2のグリーンシートが焼結しない温度、すなわち第2のグリーンシート2の焼結温度より低くかつ第1のグリーンシート1の焼結温度より高い温度で焼成しなければならない。
また上記の積層体を載せるトレーTは、例えば通常のアルミナ板を使用すればよいが、通気性のよい気孔率の高いアルミナ板を使用すれば、隣り合う切込溝の寸法精度が更に良くなり好適である。
【0018】
上記のようにして焼成した後に、未焼結の第2のグリーンシート2をブラシ等で除去すれば、同図(f)に示すように表面に切込溝11を有する焼結したセラミック基板10が作製される。その作製された基板表面の切込溝11はバラツキが少なく、その切込溝11に沿って分割すれば、寸法精度のよい所定大きさのセラミック基板が得られるものである。
【0019】
なお、上記実施例は第1のグリーンシート1の片面に切込溝11を形成した後に、その両面に第2のグリーンシート2を積層したが、図2の(a)に示すように切込溝11を形成しない側の面に、予め第2のグリーンシート2を積層してから、他方の面に切込溝11を形成し、その表面に同図(b)のように別の第2のグリーンシート2を積層して加圧密着させるようにしてもよい。
【0020】
また第1のグリーンシートを複数枚積層して1枚のセラミック基板を作製する場合には、それらを積層してから切込溝を形成し、その両面に第2のグリーンシートを積層してもよいが、例えば図3に示すように複数枚の第1のグリーンシート1を積層する前に切込溝11を形成してから、それら複数枚の第1のグリーンシート1および第2のグリーンシート2を積層するようにしてもよい。
【0021】
さらに図4に示すように1つの基板を作製するための第1のグリーンシート1を複数枚設け、その隣り合う第1のグリーンシート1・1間に第2のグリーンシート2を介在させて積層すると共に、その積層体の両側に第2のグリーンシート2を積層し、それらを加圧密着させて焼成することによって、複数枚のセラミック基板を同時に作製することもできる。
【0022】
また上記各実施例は、いずれも製造すべきセラミック基板の片側にのみ切込溝を形成したが、両側に設けてもよい。
【0023】
〔実験例1〕
PbOを30.7重量%、SiO2を51.7重量%、Al2O3を8.4重量%、B2O3を7.3重量%、CaOを1.9重量%混合した平均粒径2.2μmのガラス粉末と、平均粒径1.7μmのアルミナ粉末を等重量比率で混合した。その混合粉末100重量部に、ポリビニルブチラール9重量部、フタル酸ジイソブチル7重量部、イソプロピルアルコール40重量部、およびトリクロロエタン20重量部を加え、ボールミルで24時間混合してスラリーとした。
【0024】
このスラリーをドクターブレード法により延ばして厚さ131μmのセラミックグリーンシートを作製し、これを5枚積層して圧力150kgf/cm2、温度85℃で加圧密着させ、寸法80mm角の第1のグリーンシート1を得た。なお上記第1のグリーンシート1の焼結温度は720℃であった。
【0025】
一方、上記アルミナ粉末の代わりに平均粒径1.3μmの酸化ジルコニウム粉末を使用した以外は上記第1のグリーンシート1と同材質とし、積層することなく上記と同様の要領で厚さ145μmの第2のグリーンシート2を作製した。なお上記第2のグリーンシート2の焼結温度は1600℃であった。
【0026】
上記第1のグリーンシート1の片面に、カッターを押し当てて深さ200μmの断面V字状の切込溝11を、シート全面に格子状に形成した。なお、隣り合う切込溝11・11間の間隔は20mmとし、その寸法精度は±10μm以内であった。
【0027】
次に、上記第1のグリーンシート1の両面に、第2のグリーンシート2を1枚ずつ重ね圧力150kgf/cm2、温度85℃で加圧密着させて積層体を得た。その積層体を平面方向における単位長さ当たりの反り量が0.05%以下の平坦度を有する気孔率70%のアルミナ板よりなるトレーT上に置き、温度520℃で3時間加熱したのち温度900℃で1時間加熱することによって、第1のグリーンシート1のみを焼結させた。次いで、上記積層体の表面をナイロン製のブラシで擦ることにより、未焼成の第2のグリーンシート2を除去して表面に切込溝11を有するセラミック基板を作製した。
【0028】
その結果、上記セラミック基板の隣り合う切込溝11・11間の間隔のバラツキは、±0.05%以内であり、極めて寸法精度のよいセラミック基板が得られた。
【0029】
〔実験例2〕
上記実験例1においてカッターにより切込溝を形成する代わりに、回転するダイアモンドソーにより第1のグリーンシートの片面に深さ50μmの断面U字状の切込溝をシート全面に格子状に形成した。隣り合う切込溝の間隔は上記と同様に20mmとし、その寸法精度は±10μm以内であった。
それ以外は上記実験例1と同じ条件で表面に切込溝11を有するセラミック基板を作製した。その結果、上記実験例1と同様の結果が得られた。
【0030】
〔比較例1〕
上記各実験例における第2のグリーンシート2を使用しなかった以外は、上記と同じ条件で上記実験例1および実験例2と同様の2種類のセラミック基板を作製した。その各セラミック基板の隣り合う切込溝11・11間の間隔のバラツキは、いずれも±0.5%程度あり、上記実験例の場合に比べて寸法精度がかなり低下することがわかった。
【0031】
〔比較例2〕
前記各実験例において第1のグリーンシートに第2のグリーンシートを積層する前に第1のグリーンシートに切込溝11を形成する代わりに、積層した後に、その一方の表面に第2のグリーンシートを貫通させて第1のグリーンシートに切込溝11を形成した以外は、上記と同じ条件で上記実験例1および実験例2と同様の2種類のセラミック基板を作製した。
その結果、各セラミック基板の隣り合う切込溝間の間隔のバラツキは、いずれも±1%程度あり、上記比較例1の場合によりも更に寸法精度が低下することがわかった。
【0032】
以上の結果から明らかなように本発明に基づく上記実験例によれば、隣り合う切込溝11・11間の間隔のバラツキの少ない極めて寸法精度のよいセラミック基板を作製できるもので、その理由としては、先ず第1のグリーンシート1の両面に第2のグリーンシート2を積層して焼成するようにしたことによって、第1のグリーンシート1が、その両面に積層した第2のグリーンシート2に拘束されて、焼成時に厚さ方向には収縮するが、面方向の収縮は抑制されて収縮率自体および収縮率のバラツキが少なくなるためと思われる。
【0033】
また本発明のように第1のグリーンシート1の表面に切込溝11を形成した後に、その表面に第2のグリーンシート2を積層して加圧密着させ、上記切込溝11内に第2のグリーンシート2の一部を入り込ませたことにより、その切込溝11が開放されている場合よりも前記面方向の収縮に対する抑制力が更に増大されて収縮量およびバラツキが低減されるためと考えられる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるセラミック基板の製造方法によれば、隣り合う切込溝11・11間の間隔のバラツキの少ない極めて寸法精度のよいセラミック基板を作製できるもので、歩留が向上し生産効率を大幅に増大させることができる等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるセラミック基板の製造方法の工程説明図。
【図2】
製造プロセスの変更例を示す工程説明図。
【図3】
第1のセラミックグリーンシートを複数枚積層する場合の工程例の説明図。
【図4】
複数枚のセラミック基板を同時に製造する場合の程説明図。
【符号の説明】
1 第1のセラミックグリーンシート
2 第2のセラミックグリーンシート
10 セラミック基板
11 切込溝
T トレー
 
訂正の要旨 訂正事項
(1)特許請求の範囲の記載を、明りょうでない記載の釈明および特許請求の範囲の減縮を目的として、「【請求項1】表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とするセラミック基板の製造方法。」に訂正する。
(2)特許明細書の段落番号【0006】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために本発明によるセラミック基板の製造方法は、以下のようにしたものである。即ち、表面に多数個取り用の切込溝を有するセラミック基板を製造するに当たり、製造すべきセラミック基板の素材となる第1のセラミックグリーンシートの少なくとも一方の表面に切込溝を形成した後に、その第1のセラミックグリーンシートより高い焼結温度を有する第2のセラミックグリーンシートを上記第1のセラミックグリーンシートの両面に積層すると共に加圧密着させて上記切込構内に第2のセラミックグリーンシートの一部を進入させ、その積層体を上記第2のセラミックグリーンシートの焼結温度より低くかつ上記第1のセラミックグリーンシートの焼結温度より高い温度で焼成することによって上記第1のセラミックグリーンシートのみを焼結させ、次いで未焼結の第2のセラミックグリーンシートを除去して、少なくとも一方の表面に切込溝を有するセラミック基板を得ることを特徴とする。」に訂正する。
(3)特許明細書の段落番号【0033】の記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「また本発明のように第1のグリーンシート1の表面に切込溝11を形成した後に、その表面に第2のグリーンシート2を積層して加圧密着させ、上記切込溝11内に第2のグリーンシート2の一部を入り込ませたことにより、その切込溝11が開放されている場合よりも前記面方向の収縮に対する抑制力が更に増大されて収縮量およびバラツキが低減されるためと考えられる。」に訂正する。
異議決定日 2000-09-25 
出願番号 特願平5-262984
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 酒井 正己
特許庁審判官 中西 一友
雨宮 弘治
登録日 1998-11-27 
登録番号 特許第2856045号(P2856045)
権利者 住友金属鉱山株式会社
発明の名称 セラミック基板の製造方法  
代理人 菅 直人  
代理人 高橋 隆二  
代理人 高橋 隆二  
代理人 元井 成幸  
代理人 菅 直人  
代理人 元井 成幸  

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