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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
管理番号 1031750
異議申立番号 異議1998-72652  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-05-21 
確定日 2000-10-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2683402号「路面の舗装方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2683402号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕手続の経緯
本件特許第2683402号発明は、平成1年1月24日に出願され、平成9年8月8日に特許権の設定登録がなされ、その後、住友ゴム工業株式会社及び日本エヌエスシー株式会社より請求項1に係る発明について特許異議の申立がなされ、当審において取消理由通知をなしたところ、その指定期間内の平成11年8月3日に訂正請求がなされ、その後、訂正拒絶理由通知がなされ、平成12年7月11日に訂正請求に対する手続補正がなされたものである。

〔2〕訂正請求及び訂正請求に対する補正について
1.訂正請求に対する補正について
補正の内容は、訂正請求書の訂正事項Cを削除するというものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法120条の4第3項で準用する同法131条2項の規定に適合するので、この補正を採用する。
2.訂正請求について
(1)訂正請求の内容
上記補正の採用により、特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載「コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、極性溶媒および減粘剤からなる揺変性ウレタンの0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法。」を、
「コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒、および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法。」に訂正する。
訂正事項b
明細書3頁15行〜4頁5行(本件特許公報3欄17〜26行)の記載を、「すなわち、本発明は、コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒、および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法である。」に訂正する。

(2)訂正の適否
(2-1)訂正の目的等について
上記訂正について検討すると、訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1に記載された、「200μm以下の粒径を有するシリカ粉末」と「極性溶媒」との重量比を限定し、また、「揺変性ウレタンの」を「揺変性ウレタンを」に正すものであって、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものであり、訂正事項bは、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために行う訂正であって、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、これらの訂正は、願書に添付した明細書の7頁1行〜10行(本件特許公報4欄26〜33行)の記載「例えば商品名エアロジル200または380(…)の200μm以下好ましくは100μm以下の粒径を有するシリカ等の1〜7重量部、…;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の極性溶剤の0.5〜6重量部、……等の組成物として使用することが好ましい。」及び同8頁17行〜9頁10行(本件特許公報5欄7〜18行)の記載「実施例1 ……ついで、同一の主剤と硬化剤からなる組成物にエアロジル、ジメチルホルムアミドおよびトルエンをそれぞれ2.5重量部、1.25重量部、および20重量部となるように混合して得た揺変性ポリウレタンを……吹付けた」に基づくものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

(2-2)独立特許要件について
ア.訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(上記「(1)訂正請求の内容」の訂正事項a参照。)
イ.刊行物の記載事項
当審で通知した取消理由に引用した刊行物1〜3の記載事項は、以下のとおりである。
刊行物1(特公昭56-40205号公報、異義申立人住友ゴム工業株式会社及び同日本エヌエスシー株式会社提出の甲第1号証)には、3欄9行〜4欄5行、4欄25行〜5欄7行及び6欄7〜13行の記載からみて、「コンクリート上に、ウレタンプレポリマーと硬化剤よりなる10mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤、7〜40mμの直径を有する二酸化珪素粉末、希釈剤からなる揺変性賦与剤を添加して変性した多成分型の硬化性ウレタン樹脂組成物を1〜1.5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したグランドあるいはコートの表面の舗装方法」が記載されているものと認める。
刊行物2(特公昭53-6475号公報、異義申立人住友ゴム工業株式会社及び同日本エヌエスシー株式会社提出の甲第2号証)には、特許請求の範囲、2欄13〜23行、2欄31行〜3欄6行、4欄11〜21行及び5欄30行〜6欄33行の記載からみて、「コンクリートの上にプライマーを塗布したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤からなるウレタン層を形成させ、更に、トリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、粒子径30mμ以下の超微粒子状シリカ、タルク、トルエン、及び酢酸エチルからなるウレタンを吹き付け塗装して凹凸面を形成する、球技場等のポリウレタン弾性舗装を行う方法」、「エロジール15部、メチルエチルケトン150部を含有するウレタンを吹き付け塗装した実施例1」、「エロジール10部、酢酸エチル70部を含有するウレタンを吹き付け塗装した実施例2」及び「エロジール15部、メチルエチルケトンを、A成分として75部、B成分として75部を含有するウレタンを吹き付け塗装した実施例4」が記載されているものと認める。
刊行物3(特開昭56-146503号公報、異義申立人日本エヌエスシー株式会社提出の甲第3号証)には、特許請求の範囲及び2頁右下欄9行〜3頁15行の記載並びに第1図からみて、「モルタル上にウレタン系プライマーを塗布し、更に、下塗り用ウレタン樹脂層、上塗り用ウレタン樹脂層等を形成する競技場等の弾性舗装床の施工法」が記載されているものと認める。
また、異義申立人住友ゴム工業株式会社が提出した甲第3号証である、特開昭60-33911号公報(以下、「刊行物4」という。)には、2頁左下欄5〜14行及び3頁左上欄16行〜右上欄1行の記載からみて、「弾性舗装方法において、コンクリートやアスファルトコンクリートなどの床面の上に、湿気硬化型ウレタン樹脂をプライマーとして塗装し、床面の接着強度を強化すること」が記載されているものと認める。
同じく甲第4号証である、特開昭63-122806号公報(以下、「刊行物5」という。)には、3頁右上欄19行〜左下欄3行及び3頁右下欄15〜18行の記載からみて、「高弾性舗装方法に使用する揺変性ポリウレタンの溶剤として、トルエン、キシレン、メチルエチルケトンなどを用いること」が記載されているものと認める。
さらに、異義申立人日本エヌエスシー株式会社が提出した甲第4号証である、特開昭61-31503号公報(以下、「刊行物6」という。)には、特許請求の範囲及び5頁右下欄1〜11行の記載からみて、「ウレタントラックの舗装材のポリウレタン層に、エチレン酢酸ビニル等の粒状ゴム発泡体を使用すること」が記載されているものと認める。
ウ.対比・判断
訂正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「二酸化珪素粉末」、「揺変性賦与剤を添加して変性した多成分型の硬化性ウレタン樹脂組成物」及び「グランドあるいはコートの表面の舗装方法」は、それぞれ訂正発明の「シリカ粉末」、「揺変性ウレタン」及び「弾性路面の舗装方法」に相当し、訂正発明の「極性溶媒および減粘剤」は、ウレタン樹脂組成物の希釈剤であるから、両者は、「コンクリート上に、ウレタンプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、希釈剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装した弾性路面の舗装方法」である点で一致するものの、以下の点で相違する。
相違点1
訂正発明は、コンクリート上にウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのに対し、刊行物1記載の発明は、そのような構成を備えていない点。
相違点2
ウレタン層を形成するウレタンプレポリマーが、訂正発明では、トリレンジイソシアナートプレポリマーであるのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように限定されていない点。
相違点3
希釈剤が、訂正発明では、極性溶媒および減粘剤に限定されているのに対し、刊行物1記載の発明では、そのような限定がされていない点。
相違点4
上記相違点3に関連して、訂正発明は、1〜7重量部のシリカ粉末に対し0.5〜6重量部の極性溶媒を使用するするのに対し、刊行物1記載の発明ではそのような限定がされていない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について
刊行物1記載の発明と同様に、ウレタン樹脂層を形成する弾性舗装床の施工法において、コンクリートと成分が類似するモルタルの上にウレタン系プライマーを塗装したのちに、ウレタン樹脂層を形成することが刊行物3に記載されており、刊行物1記載の発明と刊行物3記載の発明は共に、ウレタン樹脂を使用する弾性舗装の施工に関するものであるから、刊行物1記載の発明に上記刊行物3記載の技術事項を適用し訂正発明のようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
相違点2について
トリレンジイソシアナートプレポリマーは、ウレタンプレポリマーとして普通に使用されているものであり、相違点2の訂正発明の構成とすることは、当業者が設計上適宜なし得たことである。
相違点3及び4について
刊行物2には、球技場等のポリウレタン弾性舗装を行う方法において、吹き付け塗装して凹凸面を形成するのに使用する、超微粒子状シリカを含有するウレタンの希釈剤として、極性溶剤である酢酸エチルと、非極性溶剤であるトルエンを使用することが記載されており、トルエンは、訂正発明における減粘剤として例示されているものであるから、相違点3における訂正発明の構成は、刊行物2に記載されている。
そこで、刊行物2に記載されている上記超微粒子状シリカを含有するウレタンにおける超微粒子状シリカに対する極性溶剤の使用量をみると、実施例1では、超微粒子状シリカであるエロジール15部に対して極性溶剤であるメチルエチルケトンが150部であり、実施例2では、同じくエロジール10部に対して極性溶剤である酢酸エチルが70部であり、実施例4では、同じくエロジール15部に対してメチルエチルケトンが合計150部である。このように、刊行物2記載の発明における超微粒子状シリカ(訂正発明の「シリカ粉末」に相当する。)に対する極性溶剤(訂正発明の「極性溶媒」に相当する。)の使用量は、訂正発明におけるシリカ粉末1〜7重量部に対して極性溶媒0.5〜6重量部であるのとは相違し、超微粒子状シリカに対する極性溶剤の使用割合は7倍〜10倍の量であり、訂正発明の最大6倍を越えている。
以上のように、刊行物2には、相違点4における訂正発明の構成が記載されていないし、示唆もされていない。また、刊行物3〜6にも、この構成が記載されていないし、示唆もされていない。
そして、訂正発明におけるこの構成に技術的意義が認められる。
したがって、訂正発明は、刊行物1〜6記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に訂正発明が特許を受けることができないとする理由も発見できないから、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(2-3)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項a及びbは、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則6条1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法120条の4第2項ただし書1〜3号のいずれかに掲げる事項を目的とし、同条3項で準用する126条2〜4項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。
〔3〕特許異議の申立てについて
1.異議申立ての理由の概要
異義申立人住友ゴム工業株式会社は、甲第1号証〜甲第4号証を提出して、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。
異義申立人日本エヌエスシー株式会社は、甲第1号証〜甲第4号証を提出して、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない旨、さらに、エチレン・酢酸ビニルの粒状ゴム発泡体をウレタン層に混入することは、甲第4号証に記載されているから、補正により請求項1にこの点を組み込んでも、特許性は肯定されるものではない旨主張している。
2.本件請求項1に係る発明
本件請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認める。(〔2〕2.(1)の訂正事項a参照。)
3.特許異議の申立ての理由についての判断
上記〔2〕2.の「(2)独立特許要件について」で述べたのと同様に、、本件請求項1に係る発明は、異義申立人住友ゴム工業株式会社提出の甲第1号証(刊行物1)、甲第2号証(刊行物2)、甲第3号証(刊行物4)及び甲第4号証(刊行物5)記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないし、また、異義申立人日本エヌエスシー株式会社提出の甲第1号証(刊行物1)、甲第2号証(刊行物2)、甲第3号証(刊行物3)及び甲第4号証(刊行物6)記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
路面の舗装方法
(57)【特許請求の範囲】
請求項1.コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒、および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は路面の舗装方法に関し、詳しくは各種の運動場の歩道、特に陸上競技場、ジョギングコース等に適した高弾性で耐久性に優れ、かつ経済的な路面の舗装方法に関するものである。
[従来の技術]
従来、コンクリート、アスファルトコンクリート等の基板上に、各種の合成樹脂で舗装した弾性路面が、特に陸上競技場、テニスコート、ゴルフ場、体育館床等の運動施設に使用されている。
合成樹脂によるこれらの舗装路面の仕上げには、各種使用目的に応じたノンスリップの仕上げ方法が採用されている。一般に陸上競技場の表層材として要求される必要条件は、高弾性、耐久性、ノンスリップ性、走行時の横ぶれ防止性、維持管理の容易さなどである。
このような条件を満たすために、陸上競技場、ジョギングコース等はポリウレタンを粉砕したチップを表層材塗布時に散布し、ポリウレタンの硬化後表層材に付着しない余剰のチップを回収してノンスリップ仕上げする方法が採用されている。しかしながら、この方法では残ったチップは取れ易く、また走行時にチップがぐらつくなどの理由により疾走記録が出にくいなどの欠点がある。ポリウレタンチップまたは1〜5mm径程度の粗大骨材をあらかじめ配合して吹付ける方法は、すべてのチップまたは骨材が固定されると言う利点はあるが、同様にチップまたは骨材が脱落し、走行時における上記した欠点は同様に解決されない。
[発明が解決しようとする課題と課題を解決するための手段]
本発明者らは上記した路面舗装の実情に鑑み、特に高弾性でかつ耐久性に優れた路面の舗装方法について鋭意検討した結果、特定厚みを有するウレタン層を形成せしめたのち、特定された無機粉末粒子を含む揺変性ウレタン層を吹付け塗装することによって解決し得ることを見出して本発明に到達した。
すなわち、本発明は、コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒、および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法である。
本発明の舗装方法が適用される下地としては、コンクリートおよびアスファルトコンクリートを例示したが、性状的にこれと類似のものであればどのような下地であっても適用し得ることは言う迄もない。
しかしながら、下地がコンクリート類似物である場合と、アスファルトコンクリート類似物である場合によって、一般にアンダーコートの手段が異なり、コンクリートである場合にはウレタンプライマーが、アスファルトコンクリートである場合にはセメントモルタル混和用ラテックスが用いられ、通常0.1〜0.5Kg/m2、好ましくは0.2〜0.3Kg/cm2の量的範囲でアンダーコートされる。
ウレタンプライマーとしては、好ましくは1液型湿気硬化ウレタン系プライマーが使用され、例えば三井東圧化学(株)製、商品名サンPC-F、等が例示され、例えば固形分濃度45%の液状物として市販されている。また、セメントモルタル混和用ラテックスとしては、例えば三井東圧化学(株)製、商品名ストラクトポンドー2031等が例示され、例えば樹脂固形分濃度45〜47%の合成ゴムラテックスをベースとした乳白色エマルジョンとして市販されており、場合によりセメント、硅砂等を混合して用いることも可能である。
本発明においては、トリレンジイソシアナートプレポリマー(以下、TDIプレポリマーと略称する)からなる主剤と硬化剤との混合物によって、上記したアンダーコート上に5〜30mm好ましくは8〜24mmの厚みにウレタン層が形成される。このウレタン層における主剤は、ポリプロピレングリコールとトリレンジイソシアナートとの反応によって得られるTDIプレポリマーである。また硬化剤は、通常用いられるポリアミン;ポリプロピレングリコール;炭酸カルシウム、シリカなどのフィラー;ベンガラ等の顔料;反応触媒等の混合物が用いられる。
これらの主剤と硬化剤との使用割合は、通常、重量で1:1の量比を中心に適宜変更される。このトリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤より形成されるウレタン層には、ウレタン層の好ましい性質を変えない範囲で他の合成樹脂、例えばアクリル酸エステル共重合体、スチレンブタジエンゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリエポキシサイド樹脂等の公知の合成樹脂を混合してあるいはこれらの樹脂との複層として用いることもできる。
このような1つの好ましい態様として、エチレン・酢酸ビニル発泡体、例えば1.2mm径までの、0.2g/ml程度の発泡体を重量として5〜15%となる様に均一に混入して6〜22mmの厚みのウレタン層を形成せしめることもできる。
本発明に使用される揺変性ウレタンは、通常、次のような組成を有する。揺変性ウレタン層を形成する主剤と硬化剤は上記したウレタン層を形成する主剤と硬化剤とが共通的に使用される。しかしながら、揺変性を与えるために、例えば商品名エアロジル200または380(日本アエロジル(株)社製)の200μm以下好ましくは100μm以下の粒径を有するシリカ等の1〜7重量部、好ましくは1〜4重量部;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド等の極性溶剤の0.5〜6重量部、好ましくは0.5〜2重量部;トルエン、キシレン等の減粘剤の10〜35重量部、好ましくは10〜30重量部等の組成物として使用することが好ましい。
上記した揺変性ウレタン組成物は、通常採用される吹付仕上げの方法によって、1〜2mmの厚み、好ましくは1mmの厚みに吹付け塗装される。この際、ウレタン層を形成させる際、例えば前記したエチレン・酢酸ビニル発泡体を混入したウレタン層を形成させた場合には、エチレン・酢酸ビニル発泡体を含まないウレタン層を更に1〜5mm、好ましくは1〜2mmの範囲で形成せしめることも好ましい方法として挙げることができる。
上記したプライマー層の形成、ウレタン層の形成および揺変性ウレタン層の形成には、施工時の気温等の環境等によっても異なるが、適宜の硬化、養生時間の経過後に行なうことが好ましく、特に揺変性ウレタン層の形成を最適化することによって、例えば0.5〜3mm程度の凹凸模様を形成させることができる。
上記した本発明の舗装方法によれば、従来の陸上競技場等に見られたチップの脱落や走行時の横ぶれ現象が無くなり、しかも無駄なチップを散布する必要が無く、経済的な弾性舗装路面が得られる。また、本発明の舗装方法は、高弾性、耐久性およびノンスリップ性が要求されるテニスコート、体育館床、ゴルフ場の歩道、およびジョギングコース等にも使用できる。
以下本発明の方法を実施例により説明する。実施例中の部は重量部を表わす。
実施例1
第1図に示すように、コンクリート基板1上に、1液湿気硬化型ウレタンプライマー(固形分45%)を1m2当り0.3Kg塗布してウレタンプライマー層2を形成せしめたのち、TDIプレポリマーよりなる主剤(NCO含有量3.0%)100重量部、硬化剤(PPG、アミン併用系、炭酸カルシウム、ベンガラ含有)100重量部とを混合し、12mm厚みに塗布した。ついで同一の主剤と硬化剤からなる組成物にエアロジル、ジメチルホルムアミドおよびトルエンをそれぞれ2.5重量部、1.25重量部、および20重量部となるように混合して得た揺変性ポリウレタンをリシンガンにて吹付仕上げ層4を1mm厚みに吹付けたところ厚さ13mmの表面が凹凸状の弾性舗装路面が得られた。この場合の凹凸状を形成する平均的溝深さは1〜2mmであった。
このようにして舗装した路面の全力疾走、強歩等の試走評価を求めたところ、横ぶれ現象等の不良現象が認められず、好評であった。
実施例2
第2図に示すようにアスファルトコンクリート基盤1′上にMBRラテックスとセメントの混合物を1m2当り、0.7Kg塗布しセメントモルタル混和用ラテックス層2′を形成せしめたのち、24時間乾燥後、実施例1に記載の主剤100重量部と硬化剤100重量部に対し発泡EVA樹脂(0.2g/ml)のチップを15重量部混入し、混合したものを、15mm厚みに塗布しウレタン層3′を形成させた。ついで、前記の主剤100重量部と硬化剤100重量部とを混合したものを2mm塗布しウレタン層3を形成させた。次いで実施例1に記載の揺変性ポリウレタンをリシンガンにて吹付仕上げ層4を1mm厚みになるように吹付けたところ厚さ18mmの表面が凹凸状の弾性舗装路面が得られた。
この様にして得られた舗装路面も実施例1と同等以上の評価結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明における舗装方法により舗装された路面の断面図の1例であり、第2図は他の1例である。
図において、
1はコンクリート基盤
1′はアスファルトコンクリート基盤
2,2′はウレタンプライマー層など
3,3′はウレタン層など
4は揺変性ウレタンによる吹付仕上層
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
特許第2683402号の明細書を、以下のとおり訂正する。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載「コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、極性溶媒および減粘剤からなる揺変性ウレタンの0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法。」を、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的として、「コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法。」に訂正する。
訂正事項b
明細書3頁15行〜4頁5行(本件特許公報3欄17〜26行)の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、「すなわち、本発明は、コンクリートまたはアスファルトコンクリート上に、ウレタンプライマーまたはセメントモルタル混和用ラテックスを塗装したのち、トリレンジイソシアナートプレポリマーと硬化剤よりなる5〜30mmのウレタン層を形成させ、更にトリレンジイソシアナートプレポリマー、硬化剤、1〜7重量部の200μm以下の粒径を有するシリカ粉末、0.5〜6重量部の極性溶媒、および減粘剤からなる揺変性ウレタンを0.2〜5mmの厚みを有する凹凸面となるように吹付塗装したことを特徴とする弾性路面の舗装方法である。」に訂正する。
異議決定日 2000-09-12 
出願番号 特願平1-13193
審決分類 P 1 651・ 121- YA (E01C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 公子
斎藤 利久
登録日 1997-08-08 
登録番号 特許第2683402号(P2683402)
権利者 三井化学株式会社 日本体育施設株式会社
発明の名称 路面の舗装方法  
代理人 若林 忠  
代理人 若林 忠  
代理人 亀井 弘勝  
代理人 若林 忠  
代理人 川崎 実夫  
代理人 西藤 征彦  
代理人 金田 暢之  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 石橋 政幸  
代理人 伊藤 克博  
代理人 若林 忠  
代理人 金田 暢之  
代理人 石橋 政幸  
代理人 金田 暢之  
代理人 伊藤 克博  
代理人 石橋 政幸  
代理人 伊藤 克博  

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