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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F28F
管理番号 1031792
異議申立番号 異議1999-74641  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-06 
確定日 2000-10-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2912826号「内面溝付伝熱管」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2912826号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2912826号の請求項1に係る発明についての出願は、平成6年8月4日に特許出願され、平成11年4月9日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人古河電気工業株式会社、及び、株式会社神戸製鋼所より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月28日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は以下のa〜eのとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=4〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。」
を、
「【請求項1】 管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。」と訂正し、

b.明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の記載
「上記の目的を達成するための本発明による内面溝付伝熱管は、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=4〜10に形成されることを構成上の特徴とする。」
を、
「上記の目的を達成するための本発明による内面溝付伝熱管は、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを構成上の特徴とする。」と訂正し、

c.段落【0012】の記載
「本発明のさらに他の形状的特徴は、図2における溝の傾斜部6と溝底部5との間に形成される円弧状部7を特定範囲の曲率半径とすることにある。円弧状部7を設けることにより、フィンの頂角を小さくしてもフィン部断面積が減少せずフィン効率も低下しないが、曲率半径(R)が大きくなり過ぎると、溝断面積が減少して冷媒液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。本発明においては、溝深さ(H)との比でH/R=4〜10、さらに好ましくはH/R=5〜10となるような曲率半径を有する円弧状部を設けるのが好ましい。」
を、
「本発明のさらに他の形状的特徴は、図2における溝の傾斜部6と溝底部5との間に形成される円弧状部7を特定範囲の曲率半径とすることにある。円弧状部7を設けることにより、フィンの頂角を小さくしてもフィン部断面積が減少せずフィン効率も低下しないが、曲率半径(R)が大きくなり過ぎると、溝断面積が減少して冷媒液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。本発明においては、溝深さ(H)との比でH/R=5〜10となるような曲率半径を有する円弧状部を設けるのが好ましい。」と訂正し、

d.段落【0014】の記載
「本発明においては、H/D=0.04〜0.05、S/H=0.2〜0.4となるよう溝深さ(フィン高さ)を大きくし、フィン頂角を10〜30°とし、溝傾斜部と溝底部の間に、H/R=4〜10を満足する曲率半径Rを有する円弧状部を形成することにより、メニスカス液膜の形成が促進されて管内熱伝達率が向上するとともに、成形加工上の制約を受けることなしに精度の優れた内面溝付伝熱管を得ることが可能となる。」
を、
「本発明においては、H/D=0.04〜0.05、S/H=0.2〜0.4となるよう溝深さ(フィン高さ)を大きくし、フィン頂角を10〜30°とし、溝傾斜部と溝底部の間に、H/R=5〜10を満足する曲率半径Rを有する円弧状部を形成することにより、メニスカス液膜の形成が促進されて管内熱伝達率が向上するとともに、成形加工上の制約を受けることなしに精度の優れた内面溝付伝熱管を得ることが可能となる。」と訂正し、

e.段落【0025】の記載
「図5によれば、フィン高さが高くなると熱伝達率が大きくなり、H/Diの値が0.04〜0.05の範囲で最大に達する。フィン頂角と熱伝達率との関係では、図6に示すように、頂角10〜25°をピークとし、頂角30°を越えて増加すると熱伝達性能は低下する。溝断面積と熱伝達率の関係を示す図7においては、S/Hが0.2〜0.4、とくに0.3を越え0.4未満の0.35近傍に熱伝達率のピークが存在する。また、溝傾斜部と溝底部との間に形成される円弧状部の曲率半径(R)については、図8に示すように、H/Rが4〜10の範囲、とくに5〜10の範囲で最大の伝熱性能が得られる。」
を、
「図5によれば、フィン高さが高くなると熱伝達率が大きくなり、H/Diの値が0.04〜0.05の範囲で最大に達する。フィン頂角と熱伝達率との関係では、図6に示すように、頂角10〜25°をピークとし、頂角30°を越えて増加すると熱伝達性能は低下する。溝断面積と熱伝達率の関係を示す図7においては、S/Hが0.2〜0.4、とくに0.3を越え0.4未満の0.35近傍に熱伝達率のピークが存在する。また、溝傾斜部と溝底部との間に形成される円弧状部の曲率半径(R)については、図8に示すように、H/Rが5〜10の範囲で最大の伝熱性能が得られる。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、円弧状部の曲率半径と溝深さとの比H/Rを4〜10から5〜10減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
また、上記訂正事項b〜eは上記訂正事項aの訂正に伴って明瞭でなくなった明細書の発明の詳細な説明の欄を明瞭にした訂正であって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記a〜eの訂正は、願書に最初に添付した明細書または図面に記載された範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

(3)独立特許要件について
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は次のとおりのものである。
「管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。」

これに対して、当審が平成12年6月19日付けで通知した取消理由で引用した伸銅技術研究会誌第29号(1990年)第65〜70頁、平成2年9月10日発行(特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第1号証、以下、「第1引用例」という。)には、管内面に多数のら旋状の台形溝を有する伝熱管の断面形状が記載されており(第66頁図1,図2)、表2にはNo.21の伝熱管として、山形突状部の頂角が28°、溝深さが0.14mm、管内径が3.01mm、溝数が30であるものが記載されており、この伝熱管は溝深さ(H)と管内径(Di)との比H/Diが0.047,溝断面積Sが0.041mm2 、溝断面積(S)と溝深さ(H)との比S/Hが0.3と算出される。また、図2にはNo.13として、台形溝の傾斜部と溝底間に円弧状部を設けた伝熱管が記載されている。

また、住友軽金属技報 第35巻第1号、第2号、平成6年6月30日発行〔平成6年7月27日国立国会図書館受入れ〕(特許異議申立人古河電気工業株式会社の提出した甲第1号証、以下、「第2引用例」という。)には、管内面に多数のら旋状の台形溝を有する伝熱管の断面形状が記載されており(第18頁図1,図2)、「伝熱性能向上を目指し、内表面積及び溝部における冷媒液収容量を増加するために、フィン頂角を小さくし溝の底辺を長くする、あるいはフィンを高くする改良がなされてきた。」(第18頁右欄4〜7行)と記載されており、また、表2(第20頁)には、SAタイプの伝熱管として、外径が7.00mm、底肉厚が0.25mm、フィン高さが0.24mm、フィン頂角が30°、条数が50、液溜面積が3.23mm2 であるものが記載されており、この伝熱管は溝深さ(H)と管内径(Di)との比H/Diが0.04、各溝の断面積(S)と溝深さ(H)との比S/Hが0.27と算出される。

また、特開平5-141890号公報(特許異議申立人古河電気工業株式会社の提出した甲第2号証、以下、「第3引用例」という。)には、「管内面に連続かつ螺旋状に溝を持ち、各溝は山頂曲線部とこれに滑らかにつながる斜面直線部を有し、該斜面直線部と溝底直線部が1.5≦h/R≦4(h:溝深さ)の関係を満たす曲率半径Rの曲線で滑らかに連続しており、内面溝付伝熱管の最小半径Diと溝深さhが0.03≦h/Di≦0.04の関係を満たし、フィン部管軸直角断面で両側の該斜面直線部のなす角αが35°≦α≦50°の範囲であることを特徴とする内面溝付伝熱管。」(請求項1)、「本発明者は、これらの問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、スリムなフィン形状にした場合でも、溝底部とフィン部斜面直線部との間に適当な曲率を設けることで、変形時のメタルフローを改善し、更には溝底部における液膜厚を小さくして伝熱性能を高めることができることを見い出し、ここに本発明を完成したものである。」(第2頁右欄段落【0009】)、及び、「h/R:溝深さhと曲線の曲率半径Rとの比、h/Rが1.5未満においては、曲率Rが大きく溝部断面積が減少し、また伝熱管重量が大きくなる。一方、4を超えると溝部断面形状が台形となって曲率の効果〔溝成形性向上及び形状安定性)が十分に得られない。」(第3頁右欄段落【0018】)と記載されている。即ち、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、スリムなフィン形状にした場合でも溝成型時のメタルフローを改善すべく、溝の傾斜部と溝底間に円弧状部を設け、円弧状部の曲率半径と溝深さの比h/R(本件発明のH/Rに相当する)を1.5〜4とすることが記載されている。

本件発明と前記第1〜3引用例に記載されたものを対比すると、第1引用例には、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角28°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.047、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.3に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に円弧状部が設けられる内面溝付伝熱管について記載されているが、円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることについての記載はない。
第2引用例には、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.27に形成された内面溝付伝熱管について記載されているが、溝の傾斜部と溝底間に円弧状部を設けることについての記載はない。
第3引用例には、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角35〜50°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.03〜0.04に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=1.5〜4に形成される内面溝付伝熱管について記載されているが、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることについての記載はない。

してみると、第1〜3引用例のいずれにも、本件発明の構成要件である、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成される構成としたことは記載されておらず、かかる事項を示唆する記載もない。
そして、本件発明は、かかる事項を構成要件としたことにより、単管での管内熱伝達率が、従来のものに比べて、蒸発で9〜18%、凝縮で3〜13%向上し、成形加工性にも優れた内面溝付伝熱管が提供されるという、本件明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
したがって、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立についての判断
(1)本件発明
本件発明は上記2.で認定したとおり平成12年8月28日付けで提出された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)申立の理由の概要
特許異議申立人古河電気工業株式会社は、証拠として、
甲第1号証(住友軽金属技報 第35巻第1号、第2号、平成6年6月30日発行〔平成6年7月27日国立国会図書館受入れ〕)、
甲第2号証(特開平5-141890号公報)、及び、
甲第3号証(特開平2-230092号公報)を提出し、本件発明は、上記甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
また、特許異議申立人株式会社神戸製鋼所は、証拠として、
甲第1号証(伸銅技術研究会誌第29号(1990年)第65〜70頁、平成2年9月10日発行)
甲第2号証(特開平2-97898号公報)を提出し、本件発明は、上記甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。

(3)特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明
a.特許異議申立人古河電気工業株式会社が提出した甲第1号証(住友軽金属技報 第35巻第1号、第2号)及び、甲第2号証(特開平5-141890号公報)には、上記2.(3)に記したような伝熱管がそれぞれ記載されている。

b.特許異議申立人古河電気工業株式会社が提出した甲第3号証(特開平2-230092号公報)には、「(1)管内壁面に多数の溝を設け、これら溝の間に隆起部を連続または不連続に形成した伝熱管において、それぞれの隆起部をその先端に向かうほど対向する側面の互いになす角度を小さくした2以上の部分隆起部で形成したことを特徴とする伝熱管。
(2)最先端の部分隆起部を除いた隆起部の高さhと全隆起部の高さHとの比h/Hが1/2以下である請求項(1)記載の伝熱管。
(3)最先端の部分隆起部の頂角が40°以下である請求項(1)または(2)記載の伝熱管。」(特許請求の範囲)、「第1図,第2図に示すように外径L=9.53mm,溝(1)の底からの肉厚T=0.30mm,溝(1)の数即ち隆起部(2)の数45,隆起部(2)の全高さH=0.25mmで、さらにこの隆起部(2)を先端側の頂角α=45°の第1部分隆起部(3)と裾側の対向する側面のなす角度β=70°で高さh==0.10mmの第2部分隆起部(4)とから形成した形状の内面螺旋溝付銅管(5)を従来の製造方法である第9図に示す転造加工により製造した。」(公報第2頁左下欄14行〜同頁右下欄2行)、及び、「また第2図に示す本発明伝熱管において、隆起部(2)の全高さHと裾側の第2部分隆起部(4)の高さhとの比h/Hを種々変化させてこれら伝熱管の伝熱性能として管内の蒸発熱伝達率を測定し、従来伝熱管の蒸発熱伝達率に対する比の値を計算してその結果を第3図に示した。なお凝縮熱伝達率についてもほぼ同等の結果が得られた。
第3図によればh/Hが0.5より大きくなると、従来伝熱管に対する熱伝達率が顕著に低下することになるのでh/H≦0.5が望ましい。また本実施例では第1図のように隆起部(2)が対向する側面のなす角度(α,β)の異なる2種類の部分隆起部(3)(4)から構成される伝熱管を用いたが、第4図に示すように対向する側面のなす角度がα,βおよびγの3種類の部分隆起部(3)(4)(6)またはそれ以上の部分隆起部より構成される伝熱管であっても本発明の作用効果としては同等である。」(公報第3頁左上欄4行〜同頁右上欄2行)ことが図面とともに記載されている。

c.特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第1号証(伸銅技術研究会誌第29号(1990年)第65〜70頁)には、上記2.(3)に記したような伝熱管が記載されている。

d.特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第2号証(特開平2-97898号公報)には、「冷媒質量速度400kg/m2s以下で使用される内面溝加工を施した伝熱管において、溝の断面が台形状であり、かつ管軸に対する溝角度(Q)が0〜8°の範囲にあることを特徴とする内面溝付伝熱管」(特許請求の範囲1)、「本発明における断面が台形状の溝は第2図と同一形状に形成するが、この場合、溝底のコーナー部分に若干の円み(R:0.03mm程度)を形成すると平均液膜を薄くし、また冷媒の剪断力を小さくするために有効に機能する。」(公報第2頁右上欄5行〜9行)ことが図面とともに記載され、表2((公報第3頁左上欄))にはNo.1〜3の伝熱管として最大内径D1 =3.40mm、条数J0 =29、溝深さh(本件発明のHに相当)=0.09mm、溝部総断面積Ds=0.74mm2 のものが記載されており、これらの伝熱管は溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.0279、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が満深さ(H)との比でS/H=0.28と算出され、且つ溝の傾斜部と溝底間に上記のごとく曲率半径R=0.03mmの円弧状部が設けられるとすれば、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=3と算出される。

(4)対比・判断
本件請求項1に係る発明と特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明とを対比すると、特許異議申立人古河電気工業株式会社が提出した甲第1号証、項第2号証、及び特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第1号証については、上記2.(3)で述べたとおりである。
特許異議申立人古河電気工業株式会社が提出した甲第3号証には、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角40°以下の山形突条部が形成され、且つそれぞれの山形突条部をその先端に向かうほど対向する側面の互いになす角度を小さくした2以上の部分隆起部で形成した内面溝付伝熱管について記載されているが、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/Hをどのような値とするかについて、及び、溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることについての記載はない。
甲第3号証について、異議申立人は、「上記第2部分隆起部4は、実質上、本特許で規定する円弧状部とほぼ同等の形状になり、本特許における円弧状部の曲率半径Rは、第2部分隆起部4の高さhにほぼ等しいものと考えられる。」(異議申立書第7頁11〜13行)とし、「上記第3図において、h/H=0.1,0.2,0.5は、それぞれ本特許の円弧状部におけるH/R=10,5,2に対応しており、本特許におけるH/Rの範囲(10〜4)は、同号証の第3頁左上欄12〜14行目(朱記部)に好ましいとして記載されている範囲(h/H≦0.5[H/R≧2])内に含まれていて、公知である。」と主張しているが、本特許における円弧状部の曲率半径Rは、第2部分隆起部4の高さhにほぼ等しいものと考えられるとする主張は根拠のないものであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

特許異議申立人株式会社神戸製鋼所の提出した甲第2号証には、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.0279、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.28に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=3に形成される内面溝付伝熱管について記載されているが、山形突条部の頂角をどの程度とするかについての記載はなく、また、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることについての記載はない。

してみると、特許異議申立人が提出した甲各号証のいずれにも、本件発明の構成要件である、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成される構成としたことは記載されておらず、かかる事項を示唆する記載もない。
そして、本件発明は、かかる事項を構成要件としたことにより、本件明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。
よって、本件発明は、特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記の通り決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内面溝付伝熱管
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内面溝付管、詳しくは空調機、冷凍機などの熱交換器のうち、管内流体が相変化を行う熱交換器に装着するのに適した内面溝付伝熱管の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
内面溝付伝熱管は、図1および図2に示すように、銅管などの金属管2の内面に、断面が三角形状や台形状の連続ら旋溝3(ら旋角α)を設けたものである。断面台形状のら旋溝を形成した内面溝付伝熱管が現在広く使用されているが、この伝熱管1の管内熱伝達率の向上については、特公平4-21117号公報に記載されているように、溝間に形成される山形突起部(フィン)4の高さ(H)が高く、フィン4の頂角(γ)が小さい方が良好である。
【0003】
内面溝付伝熱管の製造は、例えば、銅管を所定寸法に抽伸加工した後、管内部に溝付けプラグを挿入し、管外に配設された転造ロールやボールを管の周りに回転させ、管を溝付けプラグに向けて圧縮し、管を縮径するとともに管内面に内面溝を形成することにより行われる。このような内面溝の成形加工において、溝間のフィン4の高さを高く、その頂角(γ)を小さくしていくと、フィン部に材料が充▲填▼され難くなり、またフィン部に割れが発生したり、溝付けプラグの溝が狭く且つ深くなるため、溝付きプラグが破損するなどの問題も生じ易く、加工性が低下する。
【0004】
このため、量産可能な内面溝付伝熱管の形状は、フィン4の高さが、フィン高さ(H)と管内径(Di)の比としてH/Di≦0.04、管軸直角断面での溝部断面積(S)とフィン高さ(H)との比として、0.2≦S/H≦0.4、フィン頂角(γ)が管軸直角断面でγ≧40°が限界であり、現状ではこの範囲の内面溝付伝熱管が量産、使用されている。図2において、Doは管外径、TFは底肉厚である。
【0005】
フィン4の高さ(H)を高く、フィン頂角(γ)を小さくし、スリムなフィン形状とした場合でも、成形加工時のメタルフローを改善し満足すべき材料充▲填▼を達成するために、図2に示すように、溝底部5とフィン部傾斜直線部6との間に円弧状部7を設け、円弧状部7の曲率半径Rを1.5≦H/R≦4(H:フィン高さ=溝深さ)の関係を満足する値とすることも提案されている。(特開平5-141890号公報)
【0006】
しかしながら、この内面溝付伝熱管においても、フィンの高さは、フィン高さ(H)と管内径(Di)の比としてH/Di≦0.04、フィン頂角(γ)は、管軸直角断面で35°≦γ≦50°であり、形状的に従来のものと大きく変わっておらず、顕著な伝熱性能の改善効果は得られない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、断面が台形状の連続ら旋溝を有する内面溝付伝熱管における上記従来の問題点を解消するために、溝部、溝間の形成されるフィン部の形状寸法、成形加工性および伝熱性能の相互関係について種々の面から検討を重ねた結果としてなされたものであり、その目的は、成形加工性を低下させずに、さらにスリムなフィン形状とすることができ、伝熱性能に優れた内面溝付伝熱管を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による内面溝付伝熱管は、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突起部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さ(H)との比でH/R=5〜10に形成されることを構成上の特徴とする。
【0009】
内面溝付伝熱管の管内に冷媒液が流れると、図3に示すように、冷媒液8の液面は、溝3内において冷媒液8の凝集力およびフィンの側面と冷媒液間に働く力により水平ではなく湾曲した状態となる。このとき形成されるメニスカス液膜9は、他の部分に比べ液膜厚さが薄くなり良好な熱伝達が可能となる。このメニスカス液膜の形成のし易さが管内熱伝達率の向上に寄与する。
【0010】
本発明の内面溝付伝熱管においては、台形溝間に形成される山形突起部(フィン)の頂角(γ)を10〜30°、さらに好ましくは10〜25°と従来より小さく形成する。フィン頂角を小さくするとメニスカス液膜は形成し易くなり、また液膜全体に薄くなって、凝縮、蒸発ともに熱伝達率が向上するが、フィン頂角が小さ過ぎると、メニスカス液膜は形成されてもフィン部の断面積が減少してフィン効率が低下し伝熱性能をわるくする。本発明においては下限を10°とするのが好ましい。フィン頂角が大きくなり過ぎると、冷媒液の液膜が厚くなって熱抵抗が増加する傾向があるので、本発明においては30°を上限とするのが望ましく、25°以下とするのがさらに望ましい。
【0011】
本発明においては、溝深さ(H)を従来より深く、すなわちフィン高さを従来より高く形成する。溝深さ(H)を深くし、フィン高さを大きくすると、溝の断面積(S)が大きくなって伝熱に関与する面積が増え、メニスカス液膜も形成し易くなるが、フィンが高過ぎると、冷媒液の液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。また、フィンの先端部には液膜が形成されず、伝熱に寄与しない乾いている部分が多くなる。フィン高さが小さいとメニスカス液膜が形成し難くなる。本発明の内面溝付伝熱管において最も効率的な伝熱性能を達成するためには、台形溝の溝深さ(山形突起部高さ=フィン高さ)(H)を、溝深さ(H)と管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)と溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4となるよう形成するのが好ましい。
【0012】
本発明の内面溝付伝熱管のさらに他の形状的特徴は、図2における溝の斜面部6と溝底部5との間に形成される円弧状部7を特定範囲の曲率半径とすることにある。円弧状部7を設けることにより、フィンの頂角を小さくしてもフィン部断面積が減少せずフィン効率も低下しないが、曲率半径(R)が大きくなり過ぎると、溝断面積が減少して冷媒液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。本発明においては、溝深さ(H)との比でH/R=5〜10となるような曲率半径を有する円弧状部を設けるのが好ましい。
【0013】
本発明は、とくに小径例えば外径3〜8mmの内面溝付伝熱管に適用した場合に最も効果的な性能を達成することができる。内面溝のねじれ角αは10〜30°の範囲のものが有効である。このような内面溝付伝熱管の製造方法としては、素材となる銅管が大径、例えば9.5mm程度の段階で溝付け加工した後、製品寸法まで空引き抽伸する方式を採用するのが好ましい。この加工方式と、特定の曲率半径を有する円弧状部を設けるという本発明の形状的特徴との組合わせによって、フィン割れなどの内面欠陥を生じることなくフィン部に材料が充▲填▼され、寸法精度の良好な内面溝付管を製造することができる。
【0014】
【作用】
本発明においては、H/D=0.04〜0.05、S/H=0.2〜0.4となるよう溝深さ(フィン高さ)を大きくし、フィン頂角を10〜30°とし、溝傾斜部と溝底部の間に、H/R=5〜10を満足する曲率半径Rを有する円弧状部を形成することにより、メニスカス液膜の形成が促進されて管内熱伝達率が向上するとともに、成形加工上の制約を受けることなしに精度の優れた内面溝付伝熱管を得ることが可能となる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
実施例1
表1、表2に示す諸元の銅製内面溝付伝熱管を製作し、成形加工性、伝熱性能を調査した。成形加工性は、フィン充▲填▼率、フィン割れなどの内面欠陥の発生、溝付き工具の破損などの観点から総合判断したが、いずれの試験材においても、従来のもの(試験材J)と比べて、同等の優れた成形加工性を示した。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】
試験材のうち、A、B、C、Gおよび従来材のJについて、伝熱性能の測定を行った。伝熱性能の測定方法は、図4に示す装置を使用して行った。試験部は長さ4cmの水冷向流二重管式熱交換器を用い、供試管が二重管の中央部に位置するようセットした。外管の内径は16.00mmで、供試管内にはフロン(R-22)を、環状部には水を向流させて熱交換を行わせた。試験条件を表3に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
測定結果の整理方法は、まず水側より交換熱量Q(Kcal/h)を下記(1)式により測定した。
Q=GW・CP・│tw1-tw2│ ……(1)
(1)式においてGWは水の流量(kg/h)、CPは水の比熱(kcal/kg℃)、tw1は水入口温度(℃)、tw2は水出口温度(℃)である。
【0021】
つぎに下記(2)式により熱通過率K(kcal/m2h℃)を求めた。
K=Q/(Ao・Δtm) ……(2)
(2)式においてAoは供試管外表面積(m2)、Δtmは対数平均温度差(℃)である。
【0022】
対数平均温度差は下記(3)式で表される。

なお、(3)式においてtr1は冷媒の入側圧力基準飽和蒸気温度(凝縮温度)(℃)、tr2は冷媒の出側圧力基準飽和蒸気温度(蒸発温度)(℃)である。
【0023】
つぎに、管外熱伝達率αokcal/m2h℃)を下記(4)式によって計算し、管内熱伝達率αi(kcal/m2h℃)を下記(5)式により算出した。
αo=0.023・(λw/De)・Re0.8・Pr1/3 ……(4)
αi=1/(1/K-1/αo) ……(5)
(4)式においてλwは水の熱伝導率(kcal/mh℃)、Deは環状部の水力相当直径(m)で、外管の内径から内管(供試管)の外径を引いたものとして求められ、Reは水側のレイノルズ数、Prは水側のプラントル数である。
【0024】
試験材A、B、CおよびGの蒸発(EVA)及び凝縮(COND)における管内熱伝達率を、従来材Jの管内熱伝達率を1として相対比で求め、管内熱伝達率と、H/Di、フィン頂角γ、S/H、およびH/Rとの関係をそれぞれ図5、図6、図7、および図8に示した。なお、これらの結果は冷媒質量速度250kg/m2s(流量約30kg/h)の場合の測定結果に基づくものである。
【0025】
図5によれば、フィン高さが高くなると熱伝達率が大きくなり、H/Diの値が0.04〜0.05の範囲で最大に達する。フィン頂角と熱伝達率との関係では、図6に示すように、頂角10〜25°をピークとし、頂角30°を越えて増加すると熱伝達性能は低下する。溝断面積と熱伝達率の関係を示す図7においては、S/Hが0.2〜0.4、とくに0.3を越え0.4未満の0.35近傍に熱伝達率のピークが存在する。また、溝傾斜部と溝底部との間に形成される円弧状部の曲率半径(R)については、図8に示すように、H/Rが5〜10の範囲で最大の伝熱性能が得られる。
【0026】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば、単管での管内熱伝達率が、従来のものに比べて、蒸発で9〜18%、凝縮で3〜13%向上し、成形加工性にも優れた内面溝付伝熱管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
内面溝付伝熱管の一部縦断面図である。
【図2】
図1のA-Aに沿う断面の一部拡大図である。
【図3】
内面溝付伝熱管の内面溝部における冷媒液膜の形成状況を示す一部断面図である。
【図4】
内面溝付伝熱管の伝熱性能試験装置を示す概略図である。
【図5】
H/Diと熱伝達率との関係を示すグラフである。
【図6】
フィン頂角(γ)と熱伝達率との関係を示すグラフである。
【図7】
S/Hと熱伝達率との関係を示すグラフである。
【図8】
H/Rと熱伝達率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内面溝付伝熱管
2 金属管
3 溝
4 山形突条部(フィン)
5 溝底部
6 溝傾斜部(フィン傾斜部)
7 円弧状部
8 液膜
9 メニスカス液膜
α ら旋角
Do 管外径
Di 管内径
H 溝深さ(フィン高さ)
S 溝断面積
γ フィン頂角
TF 底肉厚
 
訂正の要旨 (3)訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載
「【請求項1】 管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=4〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを特徴とする内面溝付伝熱管。」と訂正する。
また、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るために、
本件特許の出願時の明細書第3頁第3行〜第9行(【0008】段落)
「上記の目的を達成するための本発明による内面溝付伝熱管は、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=4〜10に形成されることを構成上の特徴とする。」
を、
「上記の目的を達成するための本発明による内面溝付伝熱管は、管内面にら旋状の台形溝を有する伝熱管において、管軸直角断面で台形溝間に頂角10〜30°の山形突条部が形成され、溝深さ(H)が管内径(Di)との比でH/Di=0.04〜0.05、管軸直角断面での各溝の断面積(S)が溝深さ(H)との比でS/H=0.2〜0.4に形成され、且つ溝の傾斜部と溝底間に曲率半径Rの円弧状部が設けられ、該円弧状部が溝深さとの比でH/R=5〜10に形成されることを構成上の特徴とする。」
と訂正し、
本件特許の出願時の明細書第4頁第10行〜第16行(【0012】段落)
「本発明のさらに他の形状的特徴は、図2における溝の傾斜部6と溝底部7との間に形成される円弧状部7を特定範囲の曲率半径とすることにある。円弧状部7を設けることにより、フィンの頂角を小さくしてもフィン部断面積が減少せずフィン効率も低下しないが、曲率半径(R)が大きくなり過ぎると、溝断面積が減少して冷媒液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。本発明においては、溝深さ(H)との比でH/R=4〜10、さらに好ましくはH/R=5〜10となるような曲率半径を有する円弧状部を設けるのが好ましい。」
を、
「本発明のさらに他の形状的特徴は、図2における溝の傾斜部6と溝底部5との間に形成される円弧状部7を特定範囲の曲率半径とすることにある。円弧状部7を設けることにより、フィンの頂角を小さくしてもフィン部断面積が減少せずフィン効率も低下しないが、曲率半径(R)が大きくなり過ぎると、溝断面積が減少して冷媒液膜が厚くなり熱抵抗が増加する。本発明においては、溝深さ(H)との比でH/R=5〜10となるような曲率半径を有する円弧状部を設けるのが好ましい。」
と訂正し、
本件特許の出願時の明細書第4頁第28行〜第5頁第4行(【0014】段落)
「本発明においては、H/D=0.04〜0.05、S/H=0.2〜0.4となるよう溝深さ(フィン高さ)を大きくし、フィン頂角を10〜30°とし、溝傾斜部と溝底部の間に、H/R=4〜10を満足する曲率半径Rを有する円弧状部を形成することにより、メニスカス液膜の形成が促進されて管内熱伝達率が向上するとともに、成形加工上の制約を受けることなしに精度の優れた内面溝付伝熱管を得ることが可能となる。」
を、
「本発明においては、H/D=0.04〜0.05、S/H=0.2〜0.4となるよう溝深さ(フィン高さ)を大きくし、フィン頂角を10〜30°とし、溝傾斜部と溝底部の間に、H/R=5〜10を満足する曲率半径Rを有する円弧状部を形成することにより、メニスカス液膜の形成が促進されて管内熱伝達率が向上するとともに、成形加工上の制約を受けることなしに精度の優れた内面溝付伝熱管を得ることが可能となる。」
と訂正し、
本件特許の出願時の明細書第9頁第21行〜第28行(【0025】段落)
「図5によれば、フィン高さが高くなると熱伝達率が大きくなり、H/Diの値が0.04〜0.05の範囲で最大に達する。フィン頂角と熱伝達率との関係では、図6に示すように、頂角10〜25°をピークとし、頂角30°を越えて増加すると熱伝達性能は低下する。溝断面積と熱伝達率の関係を示す図7においては、S/Hが0.2〜0.4、とくに0.3を越え0.4未満の0.35近傍に熱伝達率のピークが存在する。また、溝傾斜部と溝底部との間に形成される円弧状部の曲率半径(R)については、図8に示すように、H/Rが4〜10の範囲、とくに5〜10の範囲で最大の伝熱性能が得られる。」
を、
「図5によれば、フィン高さが高くなると熱伝達率が大きくなり、H/Diの値が0.04〜0.05の範囲で最大に達すもフィン頂角と熱伝達率との関係では、図6に示すように、頂角10〜25°をピークとし、頂角30°を越えて増加すると熱伝達性能は低下する。溝断面積と熱伝達率の関係を示す図7においては、S/Hが0.2〜0.4、とくに0.3を越え0.4未満の0.35近傍に熱伝達率のピークが存在する。また、溝傾斜部と溝底部との間に形成される円弧状部の曲率半径(R)については、図8に示すように、H/Rが5〜10の範囲で最大の伝熱性能が得られる。」
と訂正する。
異議決定日 2000-09-22 
出願番号 特願平6-202728
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F28F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 原 慧
冨岡 和人
登録日 1999-04-09 
登録番号 特許第2912826号(P2912826)
権利者 住友軽金属工業株式会社
発明の名称 内面溝付伝熱管  
代理人 赤塚 賢次  
代理人 福田 保夫  
代理人 赤塚 賢次  
代理人 福田 保夫  
代理人 藤巻 正憲  

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