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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1031970
異議申立番号 異議1999-74014  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-04-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-25 
確定日 2000-11-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2886957号「自動焦点合せ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2886957号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2886957号は、平成2年9月6日に特許出願され、平成11年2月12日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人株式会社ニコンから特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年4月3日に意見書が提出され、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年8月28日に訂正請求(後日取り下げ)がなされ、再々度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年10月27日に訂正請求がなされたものである。
1.1 異議申立ての概要
異議申立人株式会社ニコンは、甲第1号証(SemiconducutorWorld 1984.5/P.59〜P.64)、甲第2号証(米国特許第4504144号明細書)、甲第3号証(特開昭58-122541号公報)、甲第4号証(特開昭60-130742号公報)及び甲第5号証(特開昭61-34941号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1及び甲第2号証に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。
1.2 異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第1〜甲第5号証の記載内容
1.2.1 甲第1号証の記載内容
甲第1号証の第62頁右欄最終行〜第63頁左欄第12行には「ダイバイダイでのスループットを向上させるための諸要素は、(1)ショット間移動・停止時間、(2)オートフォーカス時間、(3)オートアライメント計測・演算・判断時間、(4)オートアライメント駆動時間、(5)対物レンズミラー逃げ時間、(6)露光時間などである。(なお、甲第1号証の原文では、(1)〜(6)は丸数字の1ないし6で記載されている。)
オートフォーカスは、ショット間の移動中に行ないアライメント中に確認するので、実質的にダイバイダイで、1ショットに要する時間は、ステップ移動時間とアライメント時間(含む対物ミラー逃げ)と露光時間の合計である。信号出力が安定して得られる場合は、約1秒である。このほかにウエーハ交換時間と、プリアライメント時間が必要で、4インチウエーハ32ショットの場合、平均スループットは50枚以上になる。」と記載されている。
1.2.2 甲第2号証の記載内容
甲第2号証の第1欄第24行〜第45行には「このようなシステムにおいて、マスクを通過し、そしてウエハ上に光源を走査することによって、ウエハ全体がほぼ同時に露光される。このようなシステムで、これが同じくフォーカスと解像度に影響を与えるので、ウエハが規定された面から傾いていないことが重要である。しかしながら、このようなシステムにおいてウエハはほぼ全体が一度に露光されるので、ウエハ全体の傾きは、一度だけ、すなわちそれぞれの露光の前に、修正される。ステップアンドリピート投影システムでは、そのケースではない。このようなシステムでは、そのサブフィールドの露光の前に、それぞれのウエハのサブフィールドのために、フォーカスと傾きを修正することが実行可能である。本発明はこのようなシステムに関連している。
本発明の簡単な要約
本発明は、各々のサブフィールドの露光中及び露光の前に、ステップアンドリピート或いは類似のシステムで、連続的且つ自動的に焦点合わせとウエハの傾きの修正を行う装置に関するものである。」と記載され、第2欄第39行〜第68行には「値θxとθyは、サブフィールド11aのX軸とY軸に関する傾き誤差の程度を表す。この傾きは、ウエハ11あるいはウエハを載置するテーブルの予め決定された焦点面からの変位の程度である。焦点面からサブフィールド11aが変位された距離は、可変的なfによって表される距離である。3つのエラー信号θx,θy,fの代表な信号が利用可能であると仮定すれば、これらは、サーボモーターZ1,Z2,Z3の3つのコマンドに変換されるだろう。これらの量のための代数式は以下で与えられる。
Z1=(X-alx)θy+(Y-aly)θx+f (1)
Z2=(X-a2x)θy+(Y-a2y)θx+f (2)
Z3=(X-a3x)θy+(Y-a3y)θx+f (3)
(なお、甲第2号証の原文においては、Z1、Z2及びZ3にはアッパーラインが付されている。)
この式はそれぞれのサブフィールドによって変化する変数X,Yの代表的な量を含む。更に定数 alx、a2x、a3x、aly、a2yとa3yは同じく上記の式の一部を形成する。図2は、それぞれのサブフィールドに関する上記代数式の機能的な解決を提供しているシステムを図示する。
そうするにあたって、露光システムが、それぞれのサブフィールドを走査し、予定されたステッピング計画に従って、サブフィールドからサブフィールドヘステッピングする時に、それぞれのサブフィールドについての傾きとフォーカスの連続的な修正をサーボモ-タZ1、Z2とZ3に対応するアクチュエ-タに与えるように、適切な入力をサーボモ-タZ1、Z2とZ3に与えることを、図2の回路は示す」と記載され、第3欄第60行〜第5欄第8行には「本発明のスルーザレンズ光学検出システム35は、サブフィールドの周辺近傍の異なる3ヶ所においてフォーカスを測ることによってエラー信号θx、θyとfを得るように機能する。図3に示されるように、エリアa,bとcはその場所を描写している。場所a,bにおいてのフォーカスエラー信号間の相違は、X軸に関する傾きの測定値であり、θxエラー信号を供給する。場所b,cにおいてのフォーカスエラー信号間の相運は、Y軸に関する傾きの測定値であり、θyエラー信号を供給する。場所a,b,cにおいてのフオーカスエラ-の和は、サブフィールド11aのフォーカスエラーの計測値であり、フォーカスエラー信号fを供給する。
図4は、必要とされるエラー信号θx、θyとfを供給するために、場所a,b,cから得られるフォーカスエラー信号を処理するための論理回路を示す。その論理回路は、エラー信号θxを供給するために、フォーカスエラー信号aとbの相違をとるサブトラクタ36と、エラー信号θxを供給するために、フォーカスエラー信号bとcの相違をとるサブトラクタ37とを含み、そして、フォーカスエラー信号を供給するために、フォーカスエラー信号a,b,cを加える加算回路38を含む。
図5は、フォーカスエラー信号a,b,cを得ることに対して不可欠なコンポーネントを示す。それはレチクルあるいはマスク41と、レチクルあるいはマスク41上の像をウエハ11上に、或いはウエハ11内の選択されたサブフィールド11a上により正確に焦点合わせする投影光学系42との間の光路内に配置されたビームスプリッタ40を含む。
レチクル41上で、それらは、選択されたサブフィールド11a上の場所a,b,cと一致する場所において、交互に透過と不透過のラインから成るパターンが支配的になるように配置される。第2ビームスプリッタ43は、このシステムの焦点面近傍に配置されている。
フォーカス検出器場所のそれぞれのために、それらは1対の線形アレイ検出器である。線形アレイ検出器は光の強度を代表する出力電圧信号を供給する。そして線形アレイ検出器は,よく知られているデバイスであり、そしてサニ-ベール(Sunnyvale)、Calf.のReitcon社によって作り出されて、そして売られたタイプものである。
他の検出器45が焦点面の僅か前に配置されている間、各々のペアのうちの1つの検出器45は、焦点面の僅か前に配置される。サブフィールドの上にその対応物のちょうど場所を考えると、エラーフォーカス信号は、光がレチクル41を通って投影され、レチクル上の不透明と透明なラインパターンをサブフィールド11a上の場所に一致するように、イメージングされた時、供給される。このパターンは、ビームスプリッタ40とウエハから、ビームスプリッタ43に反射される。ビームスプリッタ43は、再び分割し、検出器44、45に送る。
1つの検出器がちょうど焦点面の後ろに置かれる、そして他がちょうど焦点面の前に置かれるので、検出器からのアウトプットはサブフィールド11a上の場所のフォーカスエラー信号として機能する。
例えば、レチクル41からのラインパターンがウエハに対するフォーカスにある時、検出器44と45のイメージは、わずかに両方とも等しく且つ反対の方向に焦点位置からずれており、各々の出力信号は等しく且つ反対となる。
しかしながら、ウエハがフォーカス位置からずれた時、1つの検出器からの出力は、他の検出器のそれが減少する間に、増加する。それで、システムはフォーカスエラーの大きさと方向の明確な指示を供給する。類似の方法でフォーカスエラー信号bとcが供給される。
3つのフォーカスエラー信号a,bとcは、サブフィールドのフォーカスと傾きを修正するために図2の回路で使われるエラー信号θx、θy、は、図3を参照して上述したように処理される。加算回路30、31と32からの出力は、サーボモーターZ1、Z2とZ3のそれぞれに入力するように供給される。これらは式1、2、と3のZ1、Z2とZ3によって表される量である。横線は、それらの関連づけられたサーボモーターからZ量を区別するためにだけ使われる。
加算回路30、31と32からの出力は、エラー信号θa,θyとfがサーボモーターZ1、Z2とZ3を動かす。そしてサーボモーターZ1、Z2とZ3は、ウエハサフフィールド各々に関するウエハ11のフォーカスと傾きが零になるまで調整する。露光の後に、ステップアンドリピートシステムで、同じプロセスは次のサブフィールドのために繰り返される。」と記載されている。
1.2.3 甲第3号証の記載内容
甲第3号証の第1図及び第2頁左上欄第6行〜第14行には「図において、ウエハ1およびマスク2は、それぞれ両者のパターン合せを行なうために、テーブル3と4に搭載保持されており、さらにこのテーブル3と4は、エアベアリングガイド(図示省略)を介して左右に動作可能なように石定盤5上に搭載された走行テーブル6上に搭載されている(駆動部は図示省略)。投影光学系7,アライメント光学系8,ウエハ表面位置決め部9も石定盤5上に搭載されている。」と記載され、第3頁左上欄第16行〜右下欄第2行には「第3図において、ウエハ表面位置決め機構を説明する。図において、21は、ウエハ1の表面の複数個所の高さを非接触で計測する非接触変位計であって、第4図にも示すように、ガイドバー23に対し、直動のローラガイド24を介して取り付けられており、駆動部25によって第4図に示す範囲26を往復走査するようになっている。13は搭載台であって、ウエハ1を空間16に与えられる真空圧によって吸着固定し、周辺3ヶ所を支持する3ケの積層型電歪素子20(2ヶ所のみ図示)を介して、テーブル3上に設置されている。この積層型電歪素子20と、非接触変位計21とは、A/D変換器28,コンピュータ29,D/A変換器30,および電歪素子ドライバ31とから成る搭載台制御回路によって連係され、非接触変位計21の出力値に基いて積層型電歪素子20を駆動し、搭載台13の平行度を調整する。また走行テーブル6は、第4図に示すように、エアーパッド27によってガイドされ、非接触変位計21の移動方向26にクロスするように(第4図紙面と垂直方向)移動する。このようにクロスする二つの動作によって、第5図に示すようにウエハ1の全面における変位を計測するようになっている。第6図はアライメント光学系を示したものであって、アライメント光学系8は、ハーフミラー12,対物レンズ11,ミラー35,リレーレンズ36,およびリニアイメージセンサ33より構成され、ウエハの近似平面32上の像が、リニアイメージセンサ33上に結像されるようにこれらの構成要素は、組まれている。なお平面34は投影光学系7により、マスクパターンが結像する平面である。以上のように構成した本実施例の作用を以下説明する。先ずウエハ表面位置決め部9において、第3図に示すように、非接触変位21からの出力を、A/D変換器28で処理した後、コンピュータ29に取り込み、ウエハ1の複数個所における高さを求める。このデータを基に、最小自乗法によってウエハ表面の近似平面32を求め、これとあらかじめ求めておいたマスクパターン結像平面との差を計算し、これらを一致させるような各積層電歪素子20の駆動量を算出する。以上をコンピュータ29で処理し、D/A変換器30を介した後、電歪素子ドライバ31に入力し、各積層電歪素子20を駆動し、ウエハ1の表面と、あらかじめ求めておいたマスクパターン結像平面とを一致させる。」と記載され、第4頁左上欄第19行〜右上欄第4行には「また、ウエハ表面の計測は、ウエハ表面の複数個所を測定できればよいのであるから、本実施例のように1ケの素子で走査計測するものに限定されるものではなく、第8図に示すように複数個の素子を取り付け、固定した構造であってもよい。」と記載されている。
1.2.4 甲第4号証の記載内容
甲第4号証の第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第3行には「ウエハホルダー8はそのウエハ9を真空吸着するとともに、2次元移動ステージ(以下単にステージとする)7上に回転可能及び上下動可能に設けられている。」と記載され、第6頁右下欄第13行〜第19行には「また、ステージ7上のウエハホルダー8は回転駆動手段(以下、θ-ACTと呼ぶ)105によってステージ7に対して回転すると共に、上下動手段(以下Z-ACTと呼ぶ)106によってステージ7の移動平面と垂直な方向(上下方向)に移動する。」と記載され、第7頁左上欄第13行〜右上欄第8行には「焦点検出手段(以下、AFDと呼ぶ)108はウェハ9と投影レンズ6の間隔、又は基準マーク板FMと投影レンズ6の間隔を検出して、投影レンズ6の焦点ずれ、すなわち投影レンズ6の結像面とウェハ9の表面(又は基準マーク板FMの表面)との光軸方向のずれを検出するものである。このAFD108としては、ウェハ9の表面に斜めに光束を照射し、そこからの反射光がどの方向に生じるかを検出する方法によるもの、又はウェハ9にエアに吹きつけてそのエアの背圧の変化から検出する方法によるもの等が利用できる。そして検出された焦点ずれの量に応じてZ-ACT106を駆動することによってレチクルRのパターン像がウェハ9上に合焦状態で投影される。尚、このZ-ACT106とAFD108とによって自動焦点調整手段が構成される。」と記載され、第15頁左上欄第14行〜第18行には「また、上記各実施例ではステージ7の位置決め後、露光前に自動焦点調整を行うものとしたが、ステージ7が移動している間に同時に行なってもよく、さらに露光中に自動焦点調整を行なうようにしてもよい。」と記載されている。
1.2.5 甲第5号証の記載内容
甲第5号証の第2頁右下欄第7行〜第12行には「第2図はウエハW上に投影されたアパーチャAPを描いており、この様にウエハにはアパーチャAPで画定されたマスクの部分像が形成されるので、実際にはマスクMとウエハWを一体に、白抜き矢印方向に走査してマスクの全体像をウエハ上に転写する。」と記載され、第3頁右上欄第18行〜左下欄第6行には「第5図に示す様に4つの受光面を独立検知できる受光素子上に点パターンの像が形成される様にし、
出力=(出力(1)+出力(2))-(出力(3)+出力(4))
の様な演算を行えば、出力零で合焦、出力の(+)と(-)で非合焦とその方向を識別することができる。(なお、甲第5号証の原文では、(1)〜(4)は、丸数字の1〜4で記載されている。)
なお、受光素子として二次元固体撮像素子を使用し、水平方向と垂直方向の積算出力を比較するなど検知手段は変形が可能である。」と記載され、第3頁右下欄第9行〜第14行には「またWSはウエハ・ステージで、ウエハWを吸着するチャックCを具え、チャックCは圧電素子積層の様な上下微調整器Aに支持される。CUは制御ユニットで、受光素子Dの出力に応答して上下微調整器Aを駆動し、チャックCを上下方向に移動する。」と記載され、第4頁右上欄第19行〜左下欄第18行には「第8図は他の実施例を説明するための図で、マスクの部分像を投影するアパーチャAPの手前数mmの所に検出点P1,P2,P3を設定する。この様にするとアパーチャがウエハW上を相対的に走査していく時、ウエハ上の各部位が露光される直前にピントずれを検知できる。アパーチャAPの中心と検知点までの距離及び走査速度は既知であるから、ウエハが丁度露光位置に来た時、ピントずれを補正することができる。…以上の構成によりウエハの走査中、連続的もしくは間欠的にピント調整をすることによりウエハ全体にピントの合った焼付けが実現できる。」と記載されている。
2.訂正の適否について
本件訂正請求は、本件特許第2886957号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。
2.1 訂正事項
訂正事項a
特許明細書の請求項1の「完了する段階とを有する」を「完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書第4ページ第14行乃至同第5ページ第12行の「この目的をための本発明の自動焦点合せ方法は完了する段階とを有する」を、「この目的をための本発明の自動焦点合せ方法は、複数の被露光領域を有する平板上物体を移動して、順次、前記複数の被露光領域を投影光学系の露光位置に位置付け、露光する投影露光装置に用いられる自動焦点合せ方法において、
第1の被露光領域を前記露光位置に位置付け露光する段階と、前記第1の被露光領域を露光後、第2の被露光領域を前記露光位置に位置付けるために前記平板状物体を移動させる間に、前記投影光学系の焦平面に対する前記平板状物体の姿勢を検出し、検出結果に基づいた前記平板状物体の姿勢の調整を完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」と訂正する。
訂正事項c
特許明細書第24ページ2乃至6行の「上記各実施例では、ウエハー2の表面の面位置及び傾きを検出し、補正しているが、本発明は、ウエハー2の表面の面位置を検出し、補正するだけの装置や、逆にウエハー2の表面の傾きを検出し、補正するだけの装置にも、当然適用される。」を削除する。
2.2 訂正後の請求項1
「複数の被露光領域を有する平板上物体を移動して、順次、前記複数の被露光領域を投影光学系の露光位置に位置付け、露光する投影露光装置に用いられる自動焦点合せ方法において、
第1の被露光領域を前記露光位置に位置付け露光する段階と、
前記第1の被露光領域を露光後、第2の被露光領域を前記露光位置に位置付けるために前記平板状物体を移動させる間に、前記投影光学系の焦平面に対する前記平板状物体の姿勢を検出し、検出結果に基づいた前記平板状物体の姿勢の調整を完了する段階と
を有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行することを特徴とする自動焦点位置合せ方法。」
3. 訂正の適否
3.1 目的該当性等について
上記訂正事項aについては、特許明細書の請求項1の、「完了する段階とを有する」を、下位概念である「完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。
また、上記訂正事項aは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
上記訂正事項bについては、上記訂正事項aに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたる。
また、上記訂正事項bは、出願当初の明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
上記訂正事項cについては、特許明細書の請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたる。
また、上記訂正事項cは、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
3.2 独立特許要件について
異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第1〜甲第5号証には、訂正後の本件請求項1に係る発明の特徴である、「姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」の構成(以下、「本件請求項1に係る発明の特徴的構成」という。)の記載又は当該構成の示唆がなく、さらに、訂正後の本件請求項1に係る発明が、上記本件請求項1に係る発明の特徴的構成を有することにより、「従来に比べ、短時間で合焦動作を行うことができ、ステッパーのスループットを向上させることができる」(特許明細書「[発明の概要]の項)という効果を有する。
そうすると、訂正後の本件請求項1に係る発明は、甲第3号証〜甲第5号証に記載された発明を参照しても、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたとすることができない。
また、平成12年10月17日付け取消理由通知で指摘した請求項1の記載不備は、平成12年10月27日付け訂正請求書において解消した。
3.3 訂正の適否の判断
上記訂正事項a、b及びcは、上記3.1及び3.2のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書、同条第2項及び同条第3項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。
4.特許異議申立てについての判断
4.1 本件請求項1に係る発明
上記2.2に記載のとおり。
4.2 異議申立ての理由の概要
上記1.1に記載のとおり。
4.2.1 本件請求項1に係る発明と甲各号証との対比、判断
独立特許要件を判断した上記3.2のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたとすることができない。
5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
従って、本件請求項1に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動焦点合せ装置
(57)【特許請求の範囲】
(1)複数の被露光領域を有する平板上物体を移動して、順次、前記複数の被露光領域を投影光学系の露光位置に位置付け、露光する投影露光装置に用いられる自動焦点合せ方法において、
第1の被露光領域を前記露光位置に位置付け露光する段階と、
前記第1の被露光領域を露光後、第2の被露光領域を前記露光位置に位置付けるために前記平板状物体を移動させる間に、前記投影光学系の焦平面に対する前記平板状物体の姿勢を検出し、検出結果に基づいた前記平板状物体の姿勢の調整を完了する段階と
を有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行することを特徴とする自動焦点位置合せ方法。
【発明の詳細な説明】
〔技術分野〕
本発明は自動焦点合せ方法に関し、特に、半導体デバイス製造用の縮小投影露光装置(ステツパー)において、ウエハーステージ上に戴置された半導体ウエハーの各被露光領域を、縮小投影レンズ系の焦平面に合焦せしめる為に使用される自動焦点合せ方法に関する。
〔従来技術〕
現在、超LSIの高集積化に応じて回路パターンの微細化が進んでおり、これに伴なってステツパーの縮小投影レンズ系は、より高NA化されて、回路パターンの転写工程におけるレンズ系の許容深度は狭くなっている。又、縮小投影レンズ系により露光するべき被露光領域の大きさも大型化される傾向にある。
この様な事情を鑑みると、大型化された被露光領域全体に亘って良好な回路パターンの転写を可能にする為には、縮小投影レンズ系の許容深度内に、確実に、ウエハーの被露光領域(シヨツト)全体を位置付ける必要がある。
これを達成する為には、ウエハー表面の、縮小投影レンズ系の焦平面、即ちレチクルの回路パターン像がフオーカスする平面に対する位置と傾きを高精度に検出し、ウエハー表面の位置や傾きを調整してやることが重要である。
ステツパーにおけるウエハー表面の位置の検出方法としては、エアマイクロセンサを用いてウエハー表面の複数箇所の面位置を検出した結果に基づいてウエハー表面の位置を求める方法、或いは、ウエハー表面に光束を斜め入射させ、ウエハー表面からの反射光の反射点の位置ずれをセンサ上への反射光の位置ずれとして検出する検出光学系を用いて、ウエハー表面の位置を検出する方法が知られている。
従来のステツパーは、ウエハーステージの変位量をレーザ干渉計により測定しながら、ウエハーステージをサーボ駆動により目標位置まで移動させることにより、ウエハー上の被露光領域を投影レンズ系の真下に送り込み、ウエハーステージ停止後、前述のような方法で被露光領域表面の面位置を検出し、被露光領域表面の位置を調整している。即ち、ウエハーステージの駆動-停止-面位置の検出-面位置の調整といった動作を順次行なっており、投影レンズ系の焦平面に被露光領域を合焦させるまでに費やす時間が比較的長く、装置のスループツトを落とす要因となっていた。
〔発明の概要〕
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は短時間で合焦動作を行なうことが可能な自動焦点合せ方法を提供することにある。
この目的をための本発明の自動焦点合せ方法は、複数の被露光領域を有する平板上物体を移動して、順次、前記複数の被露光領域を投影光学系の露光位置に位置付け、露光する投影露光装置に用いられる自動焦点合せ方法において、
第1の被露光領域を前記露光位置に位置付け露光する段階と、前記第1の被露光領域を露光後、第2の被露光領域を前記露光位置に位置付けるために前記平板状物体を移動させる間に、前記投影光学系の焦平面に対する前記平板状物体の姿勢を検出し、検出結果に基づいた前記平板状物体の姿勢の調整を完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行することを特徴とする。それにより、従来に比べ、短時間で合焦動作を行うことができ、ステツパーのスループツトを向上させることが可能となる。
本発明において、検出器による検出に基づいて平板状物体の所定面を投影光学系の焦平面に合焦させる為には、周知の様々な方法が適用される。例えば、ステージを投影光学系の光軸方向に動かして所定面の面位置や傾きを調整する方法、投影光学系を光軸方向に動かしたり、投影光学系の焦点距離を変えたりして、焦平面の位置を調整する方法、などである。また、投影光学系の焦点距離(屈折力)を変える時には、投影用の光の波長を変更したり、投影光学系を構成するレンズ要素を光軸方向に動かしたり、投影光学系を構成する一対のレンズ要素間に空気室を設けて、この室の圧力を調整したりすれば良い。
また、本発明における検出器には、前述のエアーセンサー、光学式センサーが使用できることはもちろんのこと、静電容量センサーや、他の形態の光学式センサー等、周知の各種センサーが使用される。尚、平板状物体の所定面の傾きを検出する為には、前述のエアーセンサーや光学式センサーを複数個用いて、所定面上の相異なる点に関する高さ(面位置)を測定したり、所定面上に平行光を照射し、所定面で反射した平行光を集光し、集光された光の光検出器への入射位置を測定したりする。
本発明の幾つかの特徴と具体的な構成は、以下に示す実施例により明らかにされる。
〔実施例〕
第1図は本発明の自動焦点合せ装置を備えた縮小投影露光装置の部分的概略図である。
第1図において、1は縮小投影レンズ系であり、その光軸は図中AXで示されている。縮小投影レンズ系1は不図示のレチクルの回路パターンを1/5に縮小して投影し、その焦平面に回路パターン像を形成する。又、光軸AXは図中のZ軸方向と平行な関係にある。2は表面にレジストが塗布されたウエハーであり、先の露光工程で互いに同じパターンが形成された、多数個の被露光領域(シヨツト)が配列してある。3はウエハー2を戴置するステージで、ウエハー2はウエハーステージ3に吸着され固定される。ウエハーステージ3はx軸方向に動くXステージと、y軸方向に動くYステージと、Z軸方向及びx、y、z軸方向に平行な軸のまわりに回転するZステージで構成されている。又、x、y、z軸は互いに直交する様に設定してある。従って、ウエハーステージ3を駆動することにより、ウエハー2の表面の位置を縮小投影レンズ系1の光軸AX方向及び光軸AXに直交する平面に沿った方向に調整でき、更に焦平面即ち回路パターン像に対する傾きも調整できる。
第1図における符番4〜11は、ウエハー2の表面位置及び傾きを検出する為に設けた検出光学系の各要素を示している。4は発光ダイオード、半導体レーザなどの高輝度光源、5は照明用レンズである。光源4から射出した光は照明用レンズによって平行な光束となり、複数個のピンホールが形成されたマスク6を照明する。マスク6の各ピンホールを通過した複数個の光束は、結像レンズ7を経て折り曲げミラー8に入射し、折り曲げミラー8で方向を変えられた後、ウエハー2の表面に入射する。ここで結像レンズ7と折り曲げミラー8はウエハー2上にピンホールの像を形成している。複数個の光束は、第2図に示す様にウエハー2の被露光領域100の中央部を含む5箇所(21〜25)を照射し、各々の箇所で反射される。即ち、本実施例ではマスク6にピンホールを5個形成し、被露光領域100内で、その中央部を含む5箇所の測定点の位置を測定する。
ウエハー2の各測定点で反射した光束は、折り曲げミラー9により方向を変えられた後、検出レンズ10を介して2次元位置検出素子11上に入射する。ここで、検出レンズ10は結像レンズ7、折り曲げミラー8、ウエハー2、折り曲げミラー9と協力して、マスク6のピンホールの像を2次元位置検出素子11上に形成している。従って、マスク6とウエハー2と2次元位置検出素子11は互いに光学的に共役な位置にある。
2次元位置検出素子11はCCDなどから成り、複数個の光束の素子11の受光面への入射位置を各々独立に検知することが可能である。ウエハー2の縮小投影レンズ系1の光軸AX方向の位置の変化は、2次元位置検出素子11上の複数の光束の入射位置のズレとして検出できる為、ウエハー2上の被露光領域100内の5つの測定点41〜45における、ウエハー表面の光軸AX方向の位置が、2次元位置検出素子11からの出力信号に基づいて検出できる。又、この2次元位置検出素子11からの出力信号は信号線を介して制御装置13へ入力される。
ウエハーステージ3のx軸及びy軸方向の変位は基準ミラー15とレーザ干渉計14を用いて周知の方法により測定され、ウエハーステージ3の変位量を示す信号がレーザ干渉計14から信号線を介して制御装置13へ入力される。又、ウエハーステージ3の移動はステージ駆動装置12により制御され、ステージ駆動装置12は、信号線を介して制御装置13からの指令信号を受け、この信号に応答してウエハーステージ3をサーボ駆動する。
ステージ駆動装置12は第1駆動手段と第2駆動手段を有し、第1駆動手段によりウエハー2の光軸AXと直交する面内における位置(x、y)と回転(θ)とを調整し、第2駆動手段によりウエハー2の光軸AX方向の位置(z)と傾き(φx,y)とを調整する。
制御装置13は、2次元位置検出素子11からの出力信号(面位置データ)を後述する方法で処理し、ウエハー2の表面の位置を検出する。そして、この検出結果に基づいて所定の指令信号をステージ駆動装置12に入力する。この指令信号に応答して、ステージ駆動装置12の第2駆動手段が差動し、第2駆動手段がウエハー2の光軸AX方向の位置と傾きを調整する。
最初に、第2図に示す様に被露光領域100内に5つの測定点21〜25を設定する。測定点21は被露光領域100のほぼ中央部にあり、面位置検出時には光軸AXと交わる。又、残りの測定点22〜25は被露光領域100の周辺部にあり、測定点21がx-y座標上の点(x、y)にあるとすると、各測定点22〜25の位置は各々(x+Δx、y+Δy)、(x-Δx、y+Δy)、(x-Δx、y-Δy)、(x+Δx、y-Δy)なる点にあることになる。又、被露光領域100は第3図に示す様にウエハー2上にx軸及びy軸に沿って規則正しく並べられている。
次に、ウエハーステージ3を目標位置まで移動させて、ウエハー2上の被露光領域(シヨツト)100をレチクルパターンに位置合わせした時、被露光領域100の各測定点21〜25上にマスク6の各ピンホールの像が投射されるように、第1図の検出光学系(4〜11)のセツテイングを行なう。この時、被露光領域100は縮小投影レンズ系1の真下(露光位置)に位置付けられており、測定点21は光軸AXと交差する。
本実施例では、ウエハー2上の第1被露光領域100aが縮小投影レンズ系1の真下にくるようにウエハーステージ3を動かし、レチクルパターンに対して第1被露光領域100aを位置合わせする。位置合わせ終了前、ウエハーステージ3の移動中に検出光学系(4〜11)により第1被露光領域100aの5つの測定点(21〜25)の面位置検出を行ない、2次元位置検出素子11からの出力信号に基づいて制御装置13内で各測定点の面位置データを形成する。
制御装置13は、この5個の面位置データZi(i=1〜5)に基づいて第1被露光領域100aの最少自乗平面(の位置)を求め、この最小自乗平面とレチクルパターン像との光軸AX方向の間隔及びウエハー2の傾き方向と傾き量を算出する。尚、最少自乗平面の位置zは

を満たすものである。
制御装置13はこの算出結果に応じた指令信号をステージ駆動装置12へ入力し、ステージ駆動装置によりウエハーステージ2上のウエハー2の光軸AX方向の位置と傾きが調整(補正)される。これによって、ステージ移動中に、ウエハー2の表面即ち第1被露光領域100aを縮小投影レンズ系1の最良結像面(焦平面)に位置付ける。その後、ウエハーステージ3の目標位置への移動が完了する。
そして、この面位置の調整終了後、第1被露光領域100aを露光して回路パターン像の転写を行なう。
第1被露光領域100aに対する露光が終了したら、ウエハー2上の第2被露光領域100bが縮小投影レンズ系1の真下(露光位置)にくるようにウエハーステージ3を駆動し、上記同様、ステージ移動中における面位置検出と面位置調整、ステージ移動完了後の露光動作を実行する。
第4図は、第1被露光領域100a露光終了後、第2被露光領域100bが縮小投影レンズ系1の真下(露光位置)へくるようにウエハーステージ3を駆動した時の5つの測定点21〜25に対応する5本の光ビームによる2次元位置検出素子11からの各出力信号の一例を示している。
時刻T0でウエハーステージ3が移動を開始し、その時の各測定点21〜25の測定値はZi0(i=1〜5)である。検出光学系(4〜11)は、5本の光ビームで第1被露光領域100aから第2被露光領域100bの間のウエハー2の面形状を常に測定する。今、時刻T1でウエハー2上の第2被露光領域100bが縮小投影レンズ系1の真下の位置(光軸AXと領域100bの中心が一致する位置)から約5μm手前に位置し、時刻T2で第2被露光領域100bが縮小投影レンズ系1の真下へ位置し、ウエハーステージ3の移動が完了する。尚、図中の時刻TSで、真下の位置から100μm手前に領域100bが位置している。時刻T1で5本の光ビームにより照射される5つの測定点は、目標位置(領域100b上の測定点21〜25)から約5μm手前に位置するが、その各点に関する測定値Zi1(i=1〜5)が、ウエハーステージ3の移動が完了した時の測定点21〜25に関する測定値Zi2(i=1〜5)に収束していく様子が解る。T1の位置が5μm位に相当する場合、測定値Zi1は測定値Zi2とほぼ同等値であり、測定値としては有効である。
本発明は、第4図に示されるような、ウエハーステージ3の移動が完了するまでの動作中における姿勢の連続性に着目したものであり、動いている時のウエハーステージ3の姿勢が目標位置に到達する直前では、静止状態の姿勢とほぼ等しくなっている事を利用し、ウエハーステージ3の移動中に面位置の測定を行なうものである。
従って、本実施例では、検出光学系(4〜11)による被露光領域100に関する測定を、ウエハーステージ3の移動中であって、ウエハーステージ3が目標位置より所定距離(5μm)だけ離れた位置を通過する時刻T1に行ない、この時刻T1における測定で検出された5つの測定点の測定値Zi1(i=1〜5)に基づいて、投影レンズ系1の焦平面に対する被露光領域100の最小自乗平面の位置と傾き方向及び傾き量を決定している。従って、従来のウエハーステージ3の移動が完了した時刻T2において測定を行なっていた装置に比べ、(T2-T1)秒だけ時間が短縮される。
また、被露光領域100の面位置及び傾きの調整をウエハーステージ3の移動中に開始し、ウエハーステージ3の移動完了時点では、調整が終了するようにしている。本実施例では、以上のような合焦動作を行なうことで、装置のスループツトを大幅に向上させた。
第1図に示す装置を用いて合焦動作を行なう時の他の実施例を、第5図及び第6図のフローチャート図を用いて各々説明する。尚、以下に示す実施例を行なう為には、上記実施例に対して、制御装置14に設定するプログラムを変更するだけでいい。
最初に第5図のフローチャート図に示される手順を説明する。
ステツプ501で、ウエハー2がウエハーステージ3上に搬入され、ウエハー2がウエハーステージ3のZステージのチヤツクに固定される。ステツプ502で、ウエハーステージ3の駆動が始まり、ウエハー2上の第1被露光領域が縮小投影レンズ系1の真下(露光位置)にくるようにウエハーステージ3が目標位置に向かって移動せしめられる。ステツプ502′で、ウエハーステージ3は、目標位置から予め決めた距離100μm手前にある所定位置(第4図の時刻TSの位置)を通過する。尚、ウエハーステージ3の位置はレーザ干渉計14の出力により検出される。この時、ステツプ503に示す通り、検出光学系(4〜11)によって、5つの測定点の面位置の測定を行ない、得られた測定値Zi0(i=1〜5)を制御装置13のメモリーに格納する。また、ステツプ504に示す通り、制御装置13は、そのカウンターの値をj=1とし、これに応答して、ステツプ505で、検出光学系(4〜11)によって、移動中のウエハー2上の、時刻TS+Δtの時の、5つの測定点の面位置の測定を行ない、得られた測定値Zi1(i=1〜5)を制御装置13のメモリーに格納する。
そして、ステツプ506で、今回の測定値Zi1(i=1〜5)と前回の測定値Zi0(i=1〜5)の差、Δ1=Z11-Z10、Δ2=Z21-Z20、Δ3=Z31-Z30、Δ4=Z41-Z40、Δ5=Z51-Z50が、いずれも、予め決めた値ε以下であるか否か、判別する。この5つの測定点に関する測定時間の差Δi(i=1〜5)が全てε以下となる場合には、今回の測定値Zi1(i=1〜5)を有効測定値として定め、ステツプ508に移る。一方、この5つの測定点に関する測定値間の差Δi(i=1〜5)の少なくとも1つがεを越える場合には、ステツプ507に移り、制御装置13のカウンターをj=2にし、ステツプ505の測定を再度実行する。そして、Δi(i=:1〜5)が全てε以下となるまで、ステツプ505〜507が繰り返される。
ステツプ508では、有効測定値Zij(i=1〜5)を使用して、最小自乗平面を計算する。そして、この最小自乗平面と投影レンズ系1の焦平面との間隔及び第1被露光領域の傾き方向と傾き量が検出され、制御装置13は、この間隔及び傾き方向、傾き量に応じた指令信号を、ステージ駆動装置12に入力する。ステツプ509で、ステージ駆動装置12によりZステージを駆動し、ウエハー2の光軸AX方向に関する位置と焦平面に対する傾きが補正される。
その後、ステツプ511で、ウエハーステージ3が目標位置まで達し、ウエハーステージ3の移動が完了する。この時、制御装置13は、レーザ干渉計14の出力に基づいて、ウエハーステージ3が目標位置に達したことを検知し、その後ステツプ511で示す露光が開始されるように、露光装置を制御する。ステツプ511では、ウエハー2上の第1被露光領域が回路パターン像で露光され、この領域のレジストに回路パターンが転写せしめられる。
次に、ステツプ512で、ウエハー2上の全ての被露光領域に対して露光が行なわれたか否かが判別され、もし露光が終了していればステツプ513へ移り、ウエハーが搬出される。一方、ステツプ512で、未露光の被露光領域があると判断されると、ステツプ502へ移り、例えば、第2被露光領域を縮小投影レンズ系1の真下(露光位置)へ送り込む為にウエハーステージ3が駆動される。こうして、ウエハー上の各被露光領域が全て露光されるまで、ステツプ501〜512が繰り返される。
次に、第6図のフローチャート図に示される手順を説明する。
本実施例では、ウエハーステージ3が目標位置に達した時点におけるウエハー2上の被露光領域の各測定点の面位置をステージ移動中での測定により得られた測定値を使用して予測する手法を示す。
第6図において、ステツプ601、602は、第5図のステツプ501、502と同じであり、ステツプ610〜614は、第5図のステツプ509〜513と同じであるので、これらのステツプに関する説明は省略し、ステツプ602′〜ステツプ609に関して以下に説明する。
第6図において、ステツプ602′の所定位置▲1▼は、ウエハー2の面精度やウエハーステージ3の移動中の姿勢変化等の挙動等から、その位置から目標位置までステージが移動する間、検出光学系(4〜11)により順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれると予測される位置に設定され、ステツプ606の所定位置▲2▼は、ステツプ611で示すウエハーステージ3の移動完了前にステツプ608で最小自乗平面を計算し、ステツプ610で合焦動作を完了できるような位置に設定される。
さて、ステツプ602′でウエハーステージ3が所定位置▲1▼を通過する時、ステツプ603で検出光学系(4〜11)により5つの測定点の面位置の測定を行ない、得られた測定値Zi0(i=1〜5)を、制御装置13のメモリーに格納する。また同時に制御装置13は、レーザ干渉計14の出力に基づいてウエハーステージ3の位置を検出し、そのデータをメモリーに格納する。
次に、ステツプ604で制御装置13は、そのカウンターをj=1にし、これに応答して、ステツプ602′の時刻からΔt秒たった所定の位置で、ステツプ605に示すように、検出光学系(4〜11)により5つの測定点の面位置の測定を行ない、得られた測定値Zij(i=1〜5)を制御装置13のメモリーに格納すると同時に、この時のウエハーステージ3の位置を検出し、そのデータもメモリーに格納する。
ステツプ606では、ウエハーステージ3が所定位置▲2▼を通過したか否かを、レーザ干渉計14の出力に基づいて判別し、もし、まだ通過していなければ、ステツプ607に移り、カウンターをi=2し、再度ステツプ605の測定を行なう。このようにして、所定位置▲1▼から所定位置▲2▼までウエハーステージ3が移動する間に、検出光学系(4〜11)により、N回の面位置及びステージ位置測定を行ない、N組の測定値Zij(i:1〜5)を得る。そして、ステツプ606で、ウエハーステージ3が所定位置▲2▼を通過したことが検出されると、ステツプ608で、メモリーに格納されているN組の測定値Zi0〜Zij(i=1〜5、j=N-1)とN個の位置データを使用し、横軸にステージの位置座標、縦軸に面位置の測定値の座標を取り、N個の位置データとN組の測定値とをプロツトして描かれる直線(1次関数)や曲線(2次関数)から、目標位置における面位置の測定値Zi(i=1〜5)を、外挿によって求めるのと等価な数値計算を行ない、ステージ移動完了時の測定値Zi(i=1〜5)を予測する。その後、ステツプ609で、これらの値Zi(i=1〜5)に基づいて、ウエハー2の被露光領域の最小自乗平面を計算する。
以上説明した第5図で示す手順、第6図で示す手順において、ステツプ509、ステツプ610を実行する為にステージ駆動装置12に対して指令信号を入力するか否かを、例えば、第4図で示す時刻T1、即ち目標位置の手前5μmの位置で検出光学系(4〜11)により得られる5つの測定値に基づいて判断するようにすれば、ウエハーステージ3の移動完了直前で、被露光領域の面位置に大きな変化が生じた場合に、対処が可能となる。具体的には、5つの測定値が示す面位置が、先のステツプで決定された最小自乗平面から殆どずれていない時には、ステージ駆動装置12に先のステツプに基づいた指令信号を入力し、5つの測定値が示す面位置が先のステツプで決定された最小自乗平面から許容できない程度ずれている時には、この5つの測定値により計算された最小自乗平面と投影レンズ系1の焦平面の間隔及び被露光領域の傾き方向と傾き量に応じた指令信号を、ステージ駆動装置12に入力する。
また、上記各実施例において、露光を行なうまで、検出光学系(4〜11)を常に駆動しておき、露光の対象となっている被露光領域の面位置をモニターし続けておくのが好ましい。
また、ウエハー2の表面の面位置や傾きを検出する検出器は、第1図に示す検出光学系(4〜11)以外の周知の検出器を使用することもできる。更に、ウエハー2の表面を投影レンズ系の焦平面に焦点させる機構も、ウエハーステージ3のZステージを動かす以外に、投影レンズ系1の焦点距離を変えたり、投影レンズ系1と不図示のレチクルとを光軸AX方向に上下動させたりする機構も採り得る。
以上説明した各実施例では、本発明を縮小投影露光装置に適用しているが、本発明は、第1図に示した装置以外のタイプの露光装置、例えば投影ミラー系によりパターン像を投影する装置や、レンズ及びミラーで構成した投影光学系によりパターン像を投影する装置等に適用できる。また、本発明は、光学式の露光装置以外の、例えば電子ビームと電子レンズとを使用して、回路パターンを描画したり或いは回路パターンを投影したりする電子ビーム露光装置や、X線露光装置にも適用できる。
また、本発明は、露光装置以外の自動焦点合わせが要求される光学機器に適用されうる。
〔発明の効果〕
以上、本発明によれば、ウエハー等の平板状物体を戴置するステージの移動中に、平板状物体の表面の位置検出や傾き検出を行い、その検出結果に基づいた平板状物体の表面の位置や傾きの調整を完了するので、合焦動作が短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明を適用した縮小投影露光装置の一例を示す部分的概略図、
第2図は被露光領域中に設定した各測定点の配置を示す説明図、
第3図はウエハー上の被露光領域(シヨツト)の配列状態を示す平面図、
第4図はウエハーステージ移動中の各測定点の測定値の一例を示すグラフ図、
第5図は第1図の装置による合焦動作の一例を示すフローチャート図、
第6図は第1図の装置による合焦動作の他の例を示すフローチャート図である。
1…縮小投影レンズ系
2…ウエハー
3…ウエハーステージ
4…高輝度光源
5…照明用レンズ
6…ピンホールをもつマスク
7…結像レンズ
8、9…折り曲げミラー
10…検出レンズ
11…2次元位置検出素子
12…ステージ駆動装置
13…制御装置
14…レーザ干渉計
21〜25…測定点
100…被露光領域(シヨツト)
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項及びcは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項a
特許明細書の請求項1の「完了する段階とを有する」を「完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書第4ページ第14行乃至同第5ページ第12行の「この目的をための本発明の自動焦点合せ方法は完了する段階とを有する」を、「この目的をための本発明の自動焦点合せ方法は、複数の被露光領域を有する平板上物体を移動して、順次、前記複数の被露光領域を投影光学系の露光位置に位置付け、露光する投影露光装置に用いられる自動焦点合せ方法において、
第1の被露光領域を前記露光位置に位置付け露光する段階と、前記第1の被露光領域を露光後、第2の被露光領域を前記露光位置に位置付けるために前記平板状物体を移動させる間に、前記投影光学系の焦平面に対する前記平板状物体の姿勢を検出し、検出結果に基づいた前記平板状物体の姿勢の調整を完了する段階とを有し、前記姿勢の調整を前記平板状物体を移動させる間に完了させるべく、目標位置に達する直前であって静止状態の姿勢とほぼ等しくなる時点、ないしその位置から目標位置までの移動の間前記検出の結果順次得られる測定値間にほぼ線型性が保たれる位置を通過する時点から前記姿勢検出を実行する」と訂正する。
訂正事項c
特許 明細書第24ページ2乃至6行の「上記各実施例では、ウエハー2の表面の面位置及び傾きを検出し、補正しているが、本発明は、ウエハー2の表面の面位置を検出し、補正するだけの装置や、逆にウエハー2の表面の傾きを検出し、補正するだけの装置にも、当然適用される。」を削除する。
異議決定日 2000-10-31 
出願番号 特願平2-237900
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國島 明弘  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 辻 徹二
森 正幸
登録日 1999-02-12 
登録番号 特許第2886957号(P2886957)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 自動焦点合せ装置  
代理人 内尾 裕一  
代理人 内尾 裕一  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 西山 恵三  
代理人 西山 恵三  

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