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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B32B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B32B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B32B
管理番号 1032171
異議申立番号 異議2000-72697  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-04-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-11 
確定日 2001-01-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2997251号「印刷用シート」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2997251号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1、本件発明
本件特許第2997251号の発明(平成10年10月2日出願、平成11年10月29日設定登録。)は、その特許請求の範囲請求項1〜6に記載された下記のとおりのものと認める。
【請求項1】 基材、該基材の片面または両面に設けられた接着剤からなるアンダー層、およひ該アンダー層の上に設けられたウレタン樹脂もしくはポリエステル樹脂の単独物または混合物からなるトップ層よりなることを特徴とする印刷用シート。
【請求項2】 該基材が.天然繊維または合成繊維の単独物または交織もしくは混紡からなる織物、あるいは天然繊維または合成繊維からなる不織布である請求項1記載の印刷用シート。
【請求項3】 該ウレタン樹脂がポリエステル系、ポリエーテル系またはポリカーボネート系の単独物または混合物である請求項1または2記載の印刷用シート。
【請求項4】 100%モジュラスがl0〜90kg/cm2であって、軟化点が100〜180℃であるウレタン樹脂でトップ層が形成された請求項1または2記載の印刷用シート。
【請求項5】 ショアー反撥硬度が20〜80であって、軟化点が100〜170℃であるポリエステル樹脂でトップ層が形成された請求項1または2記載の印刷用シート。
【請求項6】 トップ層の厚みが3〜30μであって、その表面平滑度が500秒以上である請求項1ないし5いずれか1に記載の印刷用シート。
(以下、【請求項1】の発明を「本件発明1」といい、【請求項2】以下の発明を順次「本件発明2」などという)

2、特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 杉浦正和(以下、申立人という)は、証拠として甲第1〜12号証を提出し、概略次のような主張をしている。
本件発明1、2、5及び6は、甲第1号証に記載された発明であり、本件発明1〜4及び6は、甲第2号証に記載された発明であり、本件発明1〜3及び6は、甲第3号証に記載された発明であるから、本件発明1〜6に係る特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであり(主張1)、本件発明1〜6は、甲第1〜11号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり(主張2)、また、甲第12号証の記載事項からみて本件明細書の記載には不備があり、本件発明4及び5は、特許法第36条の規定に違反して特許されたものであって(主張3)、本件各発明に係る特許は取り消されるべきものである。

3、申立人が提出した甲号証の記載事項
甲第1号証:特開平4-67087号公報
「(1)基材の表面にホットメルト接着剤層を介して160℃.15分間の熱処理における縦方向の熱収縮率が6%以下の耐熱性フィルムが設けられ、基材の裏面には粘着剤層を介して剥離紙が設けられていることを特徴とするラミネ-トラベル。
(2)裏面に接着剤層を介して剥離紙を設けた基材の表面に、ホットメルト接着剤層を設けた160℃.15分間の熱処理における縦方向の熱収納率が6%以下の耐熱性フィルムを前記ホットメルト接着剤層と基材表面とが接するように積層し、熱接着させることを特徴とするラミネートラベルの製造方法。
(3)耐熱性フィルムがポリエチレンテレフタレ-トよりなるフィルムである請求項(1)のラミネートラべル。
(4)ホットメルト接着剤層の成分組成がエチレン:酢酸ビニル=100:1〜100:50(モル比)のエチレン酢酸ビニル共重合体と粘着樹脂との混合物である請求(l)のラミネートラベル。」(特許請求の範囲)
「前記のようにして得たラミネートフィルムのホットメルト接着剤層と、表面に印刷層を設け、裏面に粘着剤を介して剥離紙を設けた二軸延伸PETフィルムあるいはミラーコート紙の表面とを重ね合わせ、熱ロール式ラミネーターを使用して熱接着した。」(第4頁左下欄16行〜右下欄1行:アの記載という)
「前記のようにして得たラミネートフィルムの接着剤層と、表面に印刷層を設け、裏面に粘着剤を介して剥離紙を設けた二軸延伸PETフィルムあるいはミラーコート紙の表面とを重ね合わせ、実施例1と同様にして熱接着した。」(第4頁右下欄19行〜第5頁左上欄3行:イの記載という)
甲第2号証:特開昭56-63079号公報
「(1)基材表面に順次厚み10〜200μのポリウレタン接着層、厚み20〜1OOμのポリウレタンが皮膜層が積層されてなる合成皮革であって、
マル1 ポリウレタン接着層は100%モジュラスが5〜100kg/cm2のポリウレタンで形成され、
マル2 ポリウレタン被膜層は100%モジュラスが20〜200%のポリカーボネートポリエステル系ポリウレタンで形成され
ていることを特徴とする耐加水分解性、耐光性に優れた合成皮革。」(特許請求の範囲【請求項1】)
甲第3号証:特開昭61-222740号公報
「1.ウレタン製フィルム;布帛;及び該ウレタン製フィルムを該布帛に貼合せるために、該ウレタン製フィルムと該布帛との間に配置された接着剤を含んでなることを特徴とする貼合せ材。」(特許請求の範囲【請求項1】)
「本発明の好ましい実施態様の貼合せ材料は、それ自体として、衣服に、特に1983年10月11日に発行された米国特許第4,408,356号明細書に開示されているような雨着に利用することができる。この貼合せ材料を含む雨着は、この貼合せ材料が衣類の内側から水蒸気を透過させることができるので、特に着ごこちがよい。 更に、この貼合せ材料の軽くて、音を立てず、特にカサカサという音がない特性はこの貼合せ材料自体をゴルフ用レインスーツのような防水性スポーツウエアに適合させる。
上記した本発明の好ましい実施態様の貼合せ材料の追加の多くの用途は、それの防水性及びその他の魅力的な特性のゆえに、想像できるであろう。」(第4頁左上欄下から2行〜右上欄12行:ウの記載という)
甲第4号証:特開平4-112037号公報
「1.不織布の少なくとも一方の面に、低温架橋剤を用いて架橋した樹脂層を含んでなるインキ定着層を設けたことを特徴とする印刷用不織布。(中略)
5.インキ定着層が、低温架橋剤を用いて架橋した樹脂層と該樹脂層に積層された、アクリル系樹脂層、ゴム系樹脂層及びポリエステル系樹脂層から選ばれるトップ層からなる請求項1記載の印刷用不織布。」(特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項5】)
「インキ定着層の形成方法としては、インキ定着層形成用樹脂組成物を、リバースコーターやエアーナイフコーター等を使用して常法により塗布、乾燥、架橋、あるいは必要に応じて加熱等すればよい。」(第5頁左上欄6〜10行)
甲第5号証:特開平7-40514号公報
「【請求項1】熱可塑性樹脂不織布の片面に、ポリエステル系樹脂を主成分とする塗工液を塗工、乾燥して、印字層を設けたことを特徴とする被塗工不繊布。
【請求項2】塗工液が飽和ポリエステル樹脂を主成分とするものである請求項1に記載の被塗工不織布。」(特許請求の範囲)
甲第6号証:特開平5-188862号公報
「【請求項1】ポリエステル繊維織物から成る基布の熱転写される面に、ウレタン樹脂が1〜20重量%コーティングされ,油性インクリボンによる熱転写印字性,洗濯変褪色堅牢度及びドライクリーニング変褪色堅牢度がいずれも4級以上であることを特徴とするプリントネーム用ラベル。」(特許請求の範囲)
甲第7号証:特開平6-313274号公報
「【請求項1】予め片面に接着層が形成されたポリエステル繊維基材に100%モジュラスが80〜200Kg/cm2である熱可塑性ポリウレタン樹脂を極性有機溶剤液で溶解して当該接着層に重ね塗布し、次いで温水中でゲル化させてから水洗.乾燥することにより、表面剥離強度と接着強度にすぐれた微多孔で厚みが30〜70μmの皮膜を形成することを特徴とする印刷用基布の製造方法。
【請求項2】請求項1の接着層が熱可塑性ポリウレタン樹脂からなりポリイソシアネート架橋剤を0.3〜2重量%含有せしめて極性有機溶剤液で溶解して塗布し、次いで温水中でゲル化させてから、水洗、乾燥することにより形成される厚みが5〜15μmの微多孔質皮膜であることを特徴とする微多孔質皮膜を有する印刷用基布の製造方法。
【請求項3】請求項1の接着強度が300〜400g/cmであることを特徴とする印刷用基布の製造方法。」(特許請求の範囲)
甲第8号証:特開平4-12838号公報
「(1)少なくとも経糸に多角形異型断面糸を使用した織布の少なくとも一方の面を加熱押圧して面修正したのち、該面に、樹脂層を表面粗さの偏差値が0.5μm以下となるように積層してなる印別用シート状物。」(特許請求の範囲)
「このように印刷の欠けを多発させないような被印刷面の平滑性に優れた樹脂の積層状態を得るコーティング手段としては、直接コーティング法、トランスファーコーティング法または押し出しコーティング法などが挙げられるが、直接コーティング法による場合は、被印刷物が硬い風合いのものしか得られないことが多いという理由でトランスファーコーティング法または押し出しコーティング法によることが最も好ましい。」(第3頁左下欄15行〜右下欄3行)
甲第9号証:染色工業 1987年 11月 Vol.35、 No.11、 第523〜533頁
「ポリウレタン<繊維加工用>の化学」と題する報文
コーティング剤に適したポリウレタンの種類とそれらの特性などが記載されている。
甲第10号証:高分子データハンドブック[応用編]高分子学会編 培風館 昭和61年1月30日 発行 第85〜88頁
熱可塑性ポリウレタンの一般的性質(100%モジュラス、流動開始点など)の記載が認められる。
甲第11号証:飽和ポリエステル樹脂 東洋紡-バイロン 商品技術説明書(S 62. 8 修正) 東洋紡績株式会社
バイロン(線状飽和ポリエステル)の一般的性質(硬度、軟化点など)の記載認められる。
甲第12号証:実用プラスチック用語辞典 第三版 (株)プラスチック・エージ 1989年9月10日改訂第3版発行 第463頁
軟化点測定方法として毛細管法、ビカット軟化温度、クラッシュバーグ柔軟温度及び環球法がある旨の記載が認められる。

4、判断
(1)主張1に関して
(本件発明1に対して)
本件発明1(前者)と、甲第1号証の発明(後者)を対比すると、前者は、基材の表面に、アンダー(接着剤)層とトップ層が設けられた3層構成の、または、基材の表裏に、アンダー層とトップ層が設けられた5層構成の、印刷用シートであって、トップ層の上に印刷層が形成されるものであるのに対して、後者は、基材の表面に、ホットメルト接着剤層と耐熱性フィルムが設けられ、基材の裏面に、粘着剤層と剥離紙が設けられた5層構成のラミネートラベルであって、基材の表面にはすでに所望の印刷がなされている(上記ア及びイの記載参照)ものである。
したがって、前者は基材の裏面には、粘着剤層と剥離紙が設けられていない点で、また、基材の表面に印刷層を有していない点で、後者とは、発明の構成を異にしており、両者は同一のものであるとはいえない。
申立人は、「本件特許請求項1において、印刷用シートの基材を形成する材料には全く制限がないから、この基材は、本件特許請求項2に記載されている織物及び不織布に限定されているわけではなく、その他のシート材料(例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属ホイルなどのシート状材料、その他の非シート状成形材料)を広く包含するものと解される。また、基材の形状、寸法、重量、光透明性、着色の有無などについても全く制限がない。」(申立書第12頁9〜14行)とした上で、後者における「基材、接着剤層及び剥離紙」は前者における「基材」に相当するものである旨の主張(同16頁3〜6行)をしている。
しかしながら、前者は、その基材の裏面にはなにも設けられていないか、または、表面と同じアンダー(接着剤)層とトップ層が設けられているものであることは、請求項1の記載から見て明らかであって、前者の基材が「基材、接着剤層及び剥離紙」からなるものまで包含しているとはいえないから、上記申立人の主張は採用できない。
本件発明1(前者)と甲第2号証の発明(後者)を対比すると、前者は印刷用シートに係る発明であるのに対して、後者は合成皮革に係る発明であって、両者は発明の対象物たる物そのものが相違しているから、両者は同一の発明であるとはいえない。
本件発明1(前者)と甲第3号証の発明(後者)を対比すると、前者は印刷用シートに係る発明であるのに対して、後者は特許請求の範囲にはその用途は規定されていない「貼合せ材料」に係る発明であるが、その発明の詳細な説明の項の記載によれば、その用途は、ほぼ雨着のような衣服に限られるものであって(上記ウの記載参照)、この「貼合せ材料」の用途として、印刷用シートが含まれるとはいえない。
したがって、両者は発明の対象物たる物そのものが相違しているから、両者は同一の発明であるとはいえない。
申立人は、本件発明1と甲第1号証〜甲第3号証との対比において、「本件特許発明の名称は印刷用シートである。「印刷用シート」とは、本件特許発明の積層シートの用途を特定乃至例示したものであって、「印刷用」の文言が、本件特許発明のシートの構成そのものを示すものではなく、その構成からその構成を有効に利用するために必然的に導き出される用途を示す事項である。本件特許発明の印刷用シートが、印刷用に適合するのは、印刷表面、すなわちフィルムトップ層に依存することは明白である。本件特許請求項1によれば、フィルムトップ層は要件(C)及び(D)により規定されるものであるから、トップ層が、アンダー層上に設けられ、かつウレタン樹脂もしくはポリエステル樹脂の単独物または混合物からなり(要件(C))、さらに、このトップ層が、予め形成しておいたフィルムを前記アンダー層を貼り付けたもの(要件(D))であれば、このトップ層は印刷用表面を形成し、得られる積層シートは印刷用シートとして好適なものとなるものと認められる。
このことは、本件特許明細書に、その実施例1〜7によって作製された印刷用シートについて、それを印刷試験に供しておらず、従って、その印刷適性が確認されていないことからも明白である。つまり、要件(A),(B),(C),(D)を満たしている限り、その積層シートが、印刷適性を有していることには疑問の余地がなく、それは印刷用シートと称することができるのであるということになる。
本件特許請求項1において、印刷用シートの寸法、目付、及び形状などについて一切規定がないから、本件特許発明の「印刷用シート」とは、結局要件(A),(B),(C),(D)を具有し、その結果その属性として印刷し得るという特性を有するシートであればよいということになる。」(申立書第13頁10行〜14頁2行)と主張する。
しかしながら、前者における「印刷用」の文言は、積層シートの用途を例示したものではなく、発明の要件の一部を構成する文言であることは明らかであって、前者が印刷用ではない積層シートまで含むものであるとはいえないから、申立人のこの主張は採用することができない。
よって、本件発明1は、甲第1号証、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
(本件発明2〜6に対して)
本件発明2〜6は、本件発明1の構成に対して、さらに限定を付加した構成をもつものであるから、本件発明1に対してと同様の理由により、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明であるとはいえない。
(2)主張2に関して
(本件発明1に対して)
申立人は、本件発明1(前者)は、甲第1号証記載の発明と甲第4、5、8及び11号証記載の発明から、また、甲第2及び3号証記載の発明と甲第6〜10号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているので検討する。
本件発明1(前者)と、甲第1〜3号証の発明(後者)を対比すると、両者は予め形成されたフィルムを貼着してトップ層を形成するという点において一致しているものの、前者が「印刷用シート」であるのに対して、後者は「印刷用シート」ではない点で相違している。
すなわち、後者において、甲第1号証の発明はすでに印刷されている「ラミネ-トラベル」(上記ア及びイの記載参照)であり、甲第2号証の発明は「合成皮革」の発明であり、甲第3号証の発明は上記したとおり「衣料に用いる貼合せ材料」であって、それらは、表面に印刷を行うための印刷用シートとはまったく別のものであると認められる。
甲第4〜8号証記載の各発明は、前者と同じ「印刷用シート」に関する発明であると認められるけれど、前者のトップ層に相当する層は、すべて塗布(塗工;コーティング)によって形成されたものであって、前者における「トップ層は予め形成しておいたフィルムをアンダー層(接着剤からなる)に貼り付けたもの」という要件(以下、この要件を「本件接着剤を用いたフィルム貼り付け要件」という)を備えたものではない。
また、甲第9号証〜甲第11号証には、ポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂の特性などが記載されているだけで、「本件接着剤を用いたフィルム貼り付け要件」については記載されていない。
確かに、甲第1〜3号証記載の発明は、表面に予め形成されたフィルムを貼着してなるものではあるが、これらの発明はすべて上記のとおり「印刷用シート」とは技術分野を異にする発明であって、これらの発明における予め形成されたフィルムを用いて表面層を形成するという技術を、甲第4〜8号証記載の各発明における表面層の形成に適用することの合理的な根拠はみられない。
すなわち、甲第1〜3号証記載の発明と甲第4〜8号証記載の発明とを組み合わせるための動機はなんら存在しない。
本件発明1は、本件接着剤を用いたフィルム貼り付け要件をも具備する請求項1記載のとおりの要件を備えたことにより、本件特許明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。
したがって、本件発明1は、甲第1〜11号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
よって、本件発明1は、甲第1〜11号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(本件発明2〜6に対して)
本件発明2〜6は、本件発明1の構成に対して、さらに限定を付加した構成をもつものであるから、本件発明1に対してと同様の理由により、甲第1号証〜甲第11号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3)主張3に関して
本件特許明細書の記載不備として申立人が指摘している点は、概略、「本件請求項4及び5には、それぞれトップ層形成用ウレタン樹脂及びポリエステル樹脂の軟化点が特定数値範囲に規定されているけれども、この軟化点の測定方法について特許請求の範囲にも発明の詳細な説明にも全く記載がない。」というものである。
しかしながら、本件特許明細書の段落【0017】の後段には、「本明細書中では、軟化点とは微量融点測定器で測定し、自重で変形する温度をいう。」と記載されているように、本件特許明細書の発明の詳細な説明にはトップ層形成用ウレタン樹脂及びポリエステル樹脂の軟化点の測定方法について記載されており、この記載内容は甲第12号証の記載内容とは、必ずしも一致しているものではないけれども、当業者であればこの明細書の記載から軟化点の測定は可能であるといえる。
したがって、本件特許明細書には申立人が主張するような記載不備はない。

5、むすび
上記のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-12 
出願番号 特願平10-281028
審決分類 P 1 651・ 536- Y (B32B)
P 1 651・ 537- Y (B32B)
P 1 651・ 113- Y (B32B)
P 1 651・ 121- Y (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 喜納 稔
寺本 光生
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2997251号(P2997251)
権利者 ダイニック株式会社
発明の名称 印刷用シート  

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