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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01D |
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管理番号 | 1032249 |
異議申立番号 | 異議2000-73671 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-12-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-09-27 |
確定日 | 2001-01-31 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3027088号「消泡剤組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3027088号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.経緯・本件特許発明 特許第3027088号(平成6年6月6日出願、平成12年1月28日設定登録)の請求項1に係る発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「(イ)本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン 100重量部と微粉末シリカ 0.1〜20重量部とよりなるオイルコンパウンド 0.1〜40重量%、(ロ)1種または2種以上のポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル 1〜60重量%、(ハ)1種または2種以上のポリオキシアルキレン重合体 0〜55重量%、(ニ)長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩またはキサンタンガム 0.01〜2重量%、(ホ)水 残部、とから本質的になることを特徴とする消泡剤組成物。」 2.申立ての理由の概要 申立人・ダウコーニングアジア株式会社は、甲第1号証(特開昭56-129013号公報)、甲第2号証(特開昭60-262827号公報)、甲第3号証(特開昭62-100554号公報)、甲第4号証(特開昭58-24309号公報)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、と主張している。 3.判断 甲第1号証には、「(イ)特定の平均組成式・・・で示されるオキシアルキレン基含有オルガノポリシロキサン 100重量部、(ロ)特定の平均組成式・・・で示されるオルガノポリシロキサン 1〜200重量部、および(ハ)シリカ系充てん剤 0.01〜60重量部からなる消泡剤組成物の発明に関して記載されており(特許請求の範囲)、 「本発明において使用される(ロ)成分は上記した平均組成式(II)で示されるものであって、このものは消泡効果を示すメチル基と処理対象物中に含まれる有機質物に対して親和性を示す比較的炭素原子数の多い一価炭化水素基とを同時に有することが必要とされる。」(第3頁下右欄6〜11行)、「(ハ)成分としてのシリカ充てん剤としては、従来シリコーンゴム組成物などに配合されている湿式シリカおよび乾式シリカのいずれも使用することができ、具体的にはAerosil(デグツサ社製)・・・などの商品名で知られているものをあげることができる。」(第4頁下左欄6〜16行)、「本発明に係る消泡剤組成物は上記した(イ)〜(ハ)成分の所定量をコロイドミルなどの混合機を用いて均一に混合することにより得られるが、これには必要に応じて通常の乳化剤、例えばポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルあるいはPPGで代表されるポリオキシアルキレングリコールおよびそのアルキルエーテルなどを本発明の目的を損わない範囲で使用することは何ら差支えない。本発明に係る消泡剤組成物は、常温および高温領域において従来のジメチルポリシロキサンと親水性ポリシロキサンとの混合系からなる自己乳化型消泡剤と同等ないしはそれ以上の消泡効果を示し、しかもすぐれた消泡持続効果を有する。また、従来の自己乳化型消泡剤は、これをラテックス、塗料などの含水系に添加した場合、得られる塗膜などにフィッシュアイ、クレタリングなどのはじき現象が多量にみられたのに対し、本発明の組成物はそのような現象を発生することが全くないという顕著な効果をもっている。」(第4頁下右欄5行〜第5頁上左欄8行)が記載され、実施例1には、オキシアルキレン基含有オルガノポリシロキサン100部、メチルオクチルポリシロキサン50部、Nipsil VN3(商品名、日本シリカ社製微粉末シリカ)2.5部の消泡剤組成物が示されている。 そこで、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載の「(ロ)のオルガノポリシロキサン」および「(ハ)シリカ系充てん剤」は、それぞれ、本件請求項1における「本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン」、「微粉末シリカ」に相当するものであり、甲第1号証記載の上記(ロ)成分および(ハ)成分は、本件請求項1の「オイルコンパウンド」に相当する。また、甲第1号証記載の(イ)オキシアルキレン基含有オルガノポリシロキサンは、本件請求項1における「1種または2種以上のポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル」に相当するし、甲第1号証の消泡剤組成物には、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の乳化剤を使用し得ることが記載されており(第4頁下右欄5行〜15行)、これらは本件請求項1における(ハ)1種または2種以上のポリオキシアルキレン重合体に相当するものである。結局、両者は、(イ)本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン100重量部と微粉末シリカ0.1〜20重量部とよりなるオイルコンパウンド、(ロ)1種または2種以上のポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、(ハ)1種または2種以上のポリオキシアルキレン重合体とを含む消泡剤組成物」である点で一致するが、本件請求項1に係る発明では、「(ニ)長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩またはキサンタンガム 0.01〜2重量%、(ホ)水 残部」を含むことを特定しているのに対して、甲第1号証には、これらの特定した事項について記載されていない点で相違している。 そこで上記相違点について検討すると、従来から需要家の手間を省くために予め水で希釈したタイプの消泡剤も上市されていたが、長期間保存していると2層分離、シリカ沈降などの現象が生じ、この希釈品を大量に長期間保存するためには安定化剤としてポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどの界面活性剤、澱粉、天然セルロース、グアガムなどの保護コロイド剤、アルギン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダなどの糊料が使用されたが必ずしも十分ではなかったところ、本件請求項1に係る発明は、上記「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」または「キサンタンガム」を選択配合することによって、予め水で希釈したタイプの消泡剤の上記長期間保存安定性を改善しようとするものであり、その効果は、本件特許明細書の実施例および比較例の記載からみて、従来使用されていたポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸等の保護コロイド剤、合成糊料を使用した場合と比較して優れているといえるものである。 甲第1号証には、「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」または「キサンタンガム」を配合することすることが記載されていないばかりでなく、前記消泡剤組成物を予め水で希釈したタイプとして利用することも示されておらず、予め水で希釈したタイプの消泡剤の上記長期間保存安定性を改善しようとする課題は示されていない。 甲第2号証には、「イ)ジメチルポリシロキサンと微粉末シリカとからなるシリコーンオイルコンパウンド 100重量部、ロ)a)一般式・・・で示され、エステル化率が50%以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル 10〜70重量%、b)炭素数12〜18の脂肪酸のモノグリセリンエステル 10〜70重量%、c)炭素数12〜18の脂肪酸のソルビタンエステル 10〜70重量%からなる乳化剤 1〜80重量部とを配合し、水中で乳化してなることを特徴とするシリコーンエマルジョン。」の発明に関して記載され(特許請求の範囲)、「本発明はシリコーンエマルジョン、特には保存安定性、水分散性および希釈安定性にすぐれた、食品消泡剤としても使用することのできる衛生的に無害なシリコーンエマルジョンに関するものである。」(第2頁上左欄16行〜上右欄2行)、「なお、この乳化に当ってエマルジョンの安定性向上を目的として澱粉、多糖類、ショ糖類、天然セルロース、シクロデキストリン、グアガム、ローカストビーガムなどの保護コロイド剤、繊維素グルコール酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ショ糖脂肪酸エステル、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロースなどの合成糊料を添加することは任意とされる。」(第5頁下左欄3〜11行)と記載されている。 つまり、甲第2号証には、予め水で希釈したタイプの消泡剤組成物とするに当たり、シリコーンオイルコンパウンドに乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸のモノグリセリンエステル、脂肪酸のソルビタンエステルの乳化剤混合物を配合して長期間安定性を改善し、さらにエマルジョンの安定性向上のために保護コロイド剤、合成糊料を添加し得ることが示されているに止まり、上記相違点に係る「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」または「キサンタンガム」を配合することは示されていない。 甲第3号証には、「(A)ポリジメチルシロキサンおよび微粉末シリカからなる混合物:100重量部、(B)(1)式・・・で実質的に示されるポリグリセリン脂肪酸エステル:10〜70重量%、(2)ソルビタン脂肪酸エステル:10〜70重量%、(3)蔗糖脂肪酸エステル:0〜50重量%および(4)グリセリン脂肪酸エステル:0〜50重量% からなる乳化剤混合物:1〜50重量部、ならびに(C)水:30〜600重量部からなることを特徴とするシリコーンエマルジョン組成物。」の発明に関して記載され(特許請求の範囲)、「本発明は、水に対する分散性、希釈安定性、保存安定性および加熱安定性に優れ、かつ衛生上無害なシリコーンエマルジョン組成物に関する。また、本発明は優れた消泡能を有し、特に食品に添加しうる安定なシリコーンエマルジョン組成物に関する。」(第2頁上左欄4〜9行)、「本発明の組成物には、(A)〜(C)成分以外にも、安定性をより高める目的で、天然糊料または合成糊料を添加することもできる。天然糊料としては、例えば、ローカストビーンガム、グアガム、澱粉類、タマリンド種子多糖類およびカラゲーナンなどを挙げることができる。合成糊料としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、繊維素グルコール酸ナトリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムおよびメチルセルロースを挙げることができる。」(第5頁上右欄下2行〜下左欄9行)と記載されている。 つまり、甲第3号証には、甲第2号証と同様に、予め水で希釈したタイプの消泡剤組成物とするに際して、シリコーンオイルコンパウンドに乳化剤を配合して長期間安定性を改善すること、さらに保護コロイド剤、合成糊料を添加し得ることが示されているに止まり、保護コロイド剤、合成糊料として「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」または「キサンタンガム」を選択配合することを示唆する記載はない 甲第4号証には、「炭化水素油、分散剤、シリコーン油および水と、ビスアマイドおよび/または疎水性シリカとを主体とする水性消泡剤において、該消泡剤を構成する水中に無機または有機の氷点降下剤を含有せしめることを特徴とする、低温流動性の良好なる消泡剤組成物。」の発明に関して記載され(特許請求の範囲)、「本発明は、改良された水性消泡剤に関し、さらに詳しくは、当該消泡剤中の水に氷点降下剤を含有せしめて成る、パルプ製造時に発生する泡の防止および抑制に特に適した、低温流動性の改良された消泡剤組成物に関するものである。」(第1頁下左欄下5〜下2行)、「本発明の水性消泡剤の主成分は前述の如くであるが、場合によっては、さらに消泡剤の油膜強度向上剤として、メタクリル酸もしくはアクリル酸の長鎖アルキルエステルの重合体または酢酸ビニルとマレイン酸もしくはフマル酸の長鎖アルキルエステルとの共重合体などの如き油溶性のポリマーを、・・・添加することができる。」(第3頁下右欄3〜9行)と記載されている。 しかしながら、甲第4号証に示された上記メタクリル酸もしくはアクリル酸の長鎖アルキルエステルの重合体は、油膜強度向上剤としての「油溶性のポリマー」であり、親油性の長鎖アルキル基を有するものの、親水性としてのカルボン酸塩の基をも有するものであるとは解せないものであって、本件請求項1に記載の「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」に相当するものではないし、また、甲第4号証には、水性消泡剤組成物の長期間安定性を改善するために保護コロイド剤、合成糊料等を添加することは記載されていない。 してみると、甲第1〜4号証は、上記相違点に係る「長鎖アルキル基含有ポリ(メタ)アクリル酸塩」または「キサンタンガム」を消泡剤に配合することを示唆していないというべきであるから、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜4号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-01-12 |
出願番号 | 特願平6-123641 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B01D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 豊永 茂弘 |
特許庁審判長 |
加藤 孔一 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 野田 直人 |
登録日 | 2000-01-28 |
登録番号 | 特許第3027088号(P3027088) |
権利者 | 信越化学工業株式会社 |
発明の名称 | 消泡剤組成物 |
代理人 | 大井 正彦 |