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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B01D |
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管理番号 | 1032273 |
異議申立番号 | 異議2000-70188 |
総通号数 | 17 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-06-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-01-19 |
確定日 | 2000-10-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2920589号「除湿乾燥装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2920589号の特許を取り消す。 |
理由 |
1手続の経緯 特許第2920589号の請求項1に係る発明についての出願は、平成5年12月14日に特許出願され、平成11年4月30日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対して、特許異議申立人井宮経夫より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、それに対して意見書が提出されたものである。 2本件発明 本件の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、本件発明という)。 「【請求項1】ブロアーから送風されてくる空気の除湿を行う除湿ユニットと、乾燥対象材料を収容する乾燥用ホッパーと、この乾燥用ホッパー内に前記除湿ユニットで除湿された乾燥空気を導入させるための除湿空気供給経路と、前記乾燥用ホッパー内に導入されて乾燥対象材料の乾燥処理に使用された使用済空気を前記ブロアーへ還元させる使用済空気の帰還経路とを備えた除湿乾燥装置において、前記除湿ユニットは、シリカゲルや合成ゼオライト等の吸着剤をハニカム状に成形し、吸着、再生、冷却ゾーンを形成した円筒状の除湿ローターをモータ等によって回転自在としたものであり、上記除湿空気供給経路には前記乾燥用ホッパーに供給される乾燥空気を加熱するためのヒーターを設け、前記ブロアーから除湿ユニットへ除湿対象となる空気を導く空気供給経路には、ブロアーから送風される空気の一部を前記除湿空気供給経路へバイパスさせるためのバイパス配管部が分岐して設けられ、しかもこのバイパス配管部と前記空気供給経路との両者のうち少なくとも何れか一方には、前記除湿空気供給経路側へバイパスされる空気量と除湿ユニットへ導入される空気量との割合を増減変更して、乾燥対象材料の乾燥度を制御するための流量制御弁が設けられていることを特徴とする除湿乾燥装置。」 3引用刊行物 先の取消理由通知において引用された実願昭63-63824号(実開平1-167318号)のマイクロフィルム(以下、刊行物1という)には、気体の回転式連続除湿装置に関し次の事項が記載されている。 (a)「ヒータなどで直接加熱した外気を、樹脂材料を貯留したホッパー内に送り込んで乾燥する従来の乾燥方法は、季節により外気に含まれる水分が変化するなどして安定した乾燥条件が得られなかった。このため、今日では、ホッパー内を循環させた空気を、加熱と同時に除湿させて乾燥を行うことが広く行われているが、本出願人は、このような事情に鑑みて、処理ガスを除湿しながら連続使用の出来る回転式除湿装置を先に提案した。第5図は、この提案に係る除湿装置100Aを樹脂材料の乾燥に使用した場合の基本原理を説明するもので、吸湿材となるモレキュラーシーブスとセラミック繊維をハニカム状に形成して吸着体100を形成し、この吸着体100を円筒状ハウジング(不図示)内に回転可能に収容し、その円筒状ハウジングの両端に一対の蓋部を設け、双方の蓋部に区分壁を設けて(不図示)、再生,冷却,除湿の各ゾ-ン104〜106を区分形成する様造体を構成し、この吸着体100を、その一部が順次、再生ソ-ン,冷却ゾーン,除湿ソ-ンを通過する方向に緩やかな速度で連続回転させながら、再生ゾーン104では、吸気フィルター132を介してブロアー131によって取り入れ、更にヒータ133で加熱された外気を通過させることによって吸着体100を加熱再生し、冷却ゾーン105では、冷却器136で冷却されたエアーを、乾燥ブロアー137を駆動して導入することによって冷却を行い、除湿ゾ-ン106では、乾燥ホッパー120で乾燥処理を終了したエアーが2方向切り換え弁134,循環フィルター135,冷却器136を更に介しブロアー137によって導入されて除湿されるようになっており、除湿ゾーン106で除湿されたエアーは、ヒータ110で加熱された後、乾燥ホッパー120内の材料を乾燥させ、その乾燥処理が終了すると再び、2方向切り換え弁134,循環フィルター135を介して冷却器136で冷却され、更にブロアー137の駆動により除湿ゾーン106に供給され、以後同様な原理で連続して除湿されるようになっている。なお、2方向切り換え弁134は乾燥ホッパー120内の材料を成形機ホッパー140に供給するときに、切り換えられて処理ガスの循環路を遮断するものである。」(第2頁第13行〜第4頁第15行) (b)第5図には、吸着体100が円筒状であることや、除湿ゾーン106からヒータ110を通って乾燥ホッパー120へつながる経路や、乾燥ホッパーから2方向切り換え弁134、循環フィルター135、冷却器136を通り乾燥ブロアー137へつながる経路や、乾燥ブロアー137から吸着体100へつながる経路が図示されている。 同じく「『ハニカムローター型ダイキン乾式除湿機ハニードライ 技術資料HD-2j』ダイキン工業株式会社化工機部 表紙、目次、第1、4、45頁、裏表紙」(以下、引用例2という)には、ハニカムローター型乾式除湿機に関し次の事項が記載されている。 (c)「ハニードライは、・・・ハニカム構造の除湿ローターを用いた高性能の乾式除湿機です。」(第1頁) (d)第1頁図面には、水分を含んだ多湿空気がフィルター、除湿ローターの吸湿ゾーン、処理ファンを通過し乾燥空気になり、再生用空気がフィルター、加熱器、除湿ローターの再生ゾーン、再生用ファンを通過し、水分を含んだ空気(室外に排出)になることが図示されている。 (e)「4-1除湿ローター ハニカム構造の円筒体で、・・・セラミック繊維ペーパーにシリカゲルを化学合成結合させたシリカゲルローターの2種類を品揃えしています。」(第4頁) (f)「(5)乾燥に使用する場合 右図のように恒率乾燥域は外気を一過式に、減率乾燥域は閉回路でハニードライで減湿乾燥できるようにしてください。ただし,低温乾燥で蒸発水分量が少ない時は,右下図のように循環風にバイパスを作り,ハニードライで除湿してください。」(第45頁) (g)第45頁右図には、ハニードライ、弁(1)、熱媒を通す加熱装置、流動乾燥機、ファン、弁(2)とからなる閉回路と、ファン、弁(3)、熱媒を通す加熱装置、流動乾燥機からなるバイパス回路とが図示されている。 (h)第45頁右下図には、乾燥室、ハニードライ、循環ファンとからなる閉回路が図示され、さらに、乾燥室とハニードライの間とハニードライと循環ファンの間を接続した回路が図示されている。 (i)裏表紙には、「化工Mar’93HD-2j(001)DA」の記載がある。 4対比・判断 上記(a)、(b)の記載から、刊行物1には「エアーが乾燥ブロアーによって導入されて除湿される回転式除湿装置と、材料を収容する乾燥ホッパーと、吸着体の除湿ゾーンからヒータを通って乾燥ホッパーへつながる経路と、乾燥ホッパーから2方向切り換え弁、循環フィルター、冷却器を通り乾燥ブロアーへつながる経路と、乾燥ブロアーから吸着体へつながる経路とを備えた除湿装置において、前記回転式除湿装置はモレキュラーシーブスとセラミック繊維をハニカム状に形成し、再生、冷却、除湿ゾーンを構成した円筒状の吸着体を穏やかな速度で連続回転可能としたものである除湿装置」という発明が記載されていると云える(以下、刊行物1発明という)。 本件発明と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「回転式除湿装置」、「吸着体の除湿ゾーンからヒータを通って乾燥ホッパーへつながる経路」、「乾燥ホッパーから2方向切り換え弁、循環フィルター、冷却器を通り乾燥ブロアーへつながる経路」、「モレキュラーシーブス」、「除湿ゾーン」、「吸着体」、「乾燥ブロアーから吸着体へつながる経路」は、それぞれ本件発明の「除湿ユニット」、「乾燥用ホッパー内に除湿ユニットで除湿された乾燥空気を導入させるための除湿空気供給経路」、「乾燥用ホッパー内に導入されて乾燥対象材料の乾燥処理に使用された使用済空気をブロアーへ還元させる使用済空気の帰還経路」、「合成ゼオライト」、「吸着ゾーン」、「除湿ローター」、「ブロアーから除湿ユニットへ除湿対象となる空気を導く空気供給経路」に相当し、加えて刊行物1発明の吸着体を連続回転可能としているのはモータであるのも明らかであるから、 両者は「 ブロアーから送風されてくる空気の除湿を行う除湿ユニットと、乾燥対象材料を収容する乾燥用ホッパーと、この乾燥用ホッパー内に前記除湿ユニットで除湿された乾燥空気を導入させるための除湿空気供給経路と、前記乾燥用ホッパー内に導入されて乾燥対象材料の乾燥処理に使用された使用済空気を前記ブロアーへ還元させる使用済空気の帰還経路とを備えた除湿乾燥装置において、前記除湿ユニットは、合成ゼオライト等の吸着剤をハニカム状に成形し、吸着、再生、冷却ゾーンを形成した円筒状の除湿ローターをモータ等によって回転自在としたものであり、上記除湿空気供給経路には前記乾燥用ホッパーに供給される乾燥空気を加熱するためのヒーターを設けてなり、かつブロアーから除湿ユニットへ除湿対象となる空気を導く空気供給経路を備えてなる除湿乾燥装置。」で一致し、 ただ、(1)本件発明は、「ブロアーから除湿ユニットへ除湿対象となる空気を導く空気供給経路には、ブロアーから送風される空気の一部を除湿空気供給経路へバイパスさせるためのバイパス配管部が分岐して設けられている」のに対して、刊行物1発明は、この構成を有しない点、(2)本件発明は「バイパス配管部と空気供給経路との両者のうち少なくとも何れか一方には、除湿空気供給経路側へバイパスされる空気量と除湿ユニットへ導入される空気量との割合を増減変更して、乾燥対象材料の乾燥度を制御するための流量制御弁が設けられている」のに対して、刊行物1発明は、この構成を有しない点で一応相違している。 そこで、相違点(1)について検討する。 まず、上記で引用した引用例2の証拠力について言及すると、この証拠は、上記(i)の「Mar’93」の記載等からみて、1993年3月に顧客用に発行された技術資料であるから、本件出願前に頒布された刊行物であることは明らかである(以下、刊行物2という)。 そして、この刊行物2の特に(f)の「蒸発水分量が少ない時は、右下図のように循環風にバイパスを作り、」の記載に徴すれば、刊行物2には、乾燥対象材料の蒸発水分量の多少に対応する為、バイパス回路を設け、あまり乾燥させなくてよい場合には循環風にバイパスを作ることが記載されていると云えるから、上記刊行物2の第45頁右図の装置には、「回転自在の円筒状の除湿ローターを使用する閉回路の除湿乾燥装置において、乾燥対象材料の乾燥度に応じて、バイパス配管部を設けて空気の一部をバイパスさせることができる除湿乾燥装置」が記載されていると云える。 また、一般に、乾燥対象材料の用途に応じて乾燥度を調節することも除湿乾燥装置の当然の目的であり、しかもこの為の手段として乾燥対象材料の乾燥度に応じてバイパス配管部を設けることが上記刊行物2によって公知であれば、刊行物1発明にこの公知のバイパス配管部を設けること、つまりブロアーから除湿ユニットへ除湿対象となる空気を導く空気供給経路に、ブロアーから送風される空気の一部を除湿空気供給経路へバイパスさせるためのバイパス配管部を分岐して設けることは当業者が容易に想到し得ることである。 次に相違点(2)について検討する。 乾燥対象材料の乾燥度はどの程度の量の空気をバイパスさせるかで左右されることは自明の事項であり、また上記刊行物2の第45頁右図の装置でもバイパス配管部と除湿ユニットへの空気供給経路に弁(上記(g)では、弁(3)と弁(2)と呼称)が付設され空気の一部が分岐されることを勘案すれば、その分岐量を乾燥度との関係で加減することは当業者が容易に想到しうることであるから、これを達成する為に流量制御弁を設けることは回路設計上格別の技術的創作力を要することとは云えない。。 してみると、上記相違点(1)(2)は、いずれも格別なものではなく、また、上記相違点(1)(2)を総合的に検討しても、これらによって奏される効果も当業者が容易に予測できる範囲内のものと云える。 したがって、本件発明は、刊行物1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5むすび 以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件請求項1に係る発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、平成6年改正法附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-08-30 |
出願番号 | 特願平5-313295 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(B01D)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中野 孝一 |
特許庁審判長 |
沼沢 幸雄 |
特許庁審判官 |
野田 直人 山田 充 |
登録日 | 1999-04-30 |
登録番号 | 特許第2920589号(P2920589) |
権利者 | 株式会社松井製作所 |
発明の名称 | 除湿乾燥装置 |
代理人 | 中井 宏行 |
代理人 | 山本 拓也 |