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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A41B
管理番号 1032287
異議申立番号 異議1999-74404  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-11-30 
確定日 2000-12-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2896429号「使い捨ておむつ」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2896429号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明

特許第2896429号の請求項1〜10に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成4年10月27日を国際出願日として特許出願され、平成11年3月12日にその特許権の設定の登録がなされたもので、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】縁を有するウエスト開口部と一対の足開口部と、液体透過性の表面シートと、液体非透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に挟まれた吸収芯と、を備えた、はかせるタイプの使い捨ておむつであって、
前記おむつは、着用者に面する面と、衣服に面する面と、前記おむつを二分する縦方向の中心線と、を有し、前記おむつは、股領域、前ウエスト領域、及び後ウエスト領域に分けられ、前記前ウエスト領域及び前記後ウエスト領域は前記縦方向中心線に沿って前記股領域から互いに反対方向に延びている、はかせるタイプの使い捨ておむつにおいて、
前記おむつは、さらに、汚れたおむつを留めるために前記衣服に面する面に配置された処分を容易にする手段を備え、前記処分を容易にする手段は、重ね合わせられた複数の部分からなる処分用テープを有し、前記処分用テープは、前記複数の部分が重ね合わせられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延びておらず、一方、前記複数の部分が広げられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延び得る、はかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項2】前記処分を容易にする手段は、前記衣服に面する面の前記後ウエスト領域に配置されている、請求項1記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項3】前記処分用テープはその長手方向が前記縦方向中心線に整合されている、請求項1又は請求項2に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項4】前記処分用テープは接着用テープである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項5】前記処分用テープは機械的テープである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項6】前記処分用テープは長手方向に折り曲げられている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項7】前記複数の部分はそれぞれ別個のテープ部材から構成されており、これらのテープ部材を直列につなぎ合わせて前記処分用テープが形成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項8】前記処分用テープは、第1セクション、第2セクション及び第3セクションから成り全体としてZ字状を成している、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項9】前記第1セクションは、前記衣服に面する面に取り付けられている、請求項8記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項10】前記処分用テープは前記第2セクションと前記第3セクションとの間に挟まれた剥離手段をさらに有する、請求項8又は請求項9に記載の使い捨ておむつ。」

(2)特許異議申立ての理由の概要

(2-1)特許異議申立人田中正子は、甲第1号証(実開平4-117618号公報)、甲第2号証(特開昭61-207605号公報)、甲第3号証(米国特許第4869724号明細書)、甲第4号証(米国特許第4177812号明細書)を提示し、本件発明は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、取り消されるべきものであると主張している。

(2-2)特許異議申立人土山健二は、甲第1号証(特開平3-176051号公報)、甲第2号証(実願昭56-115802号(実開昭58-22908号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(特開平2-4372号公報)、甲第4号証の1(西独国特許公開第4033850号明細書)及び甲第4号証の2(特開平5-117607号公報、甲第4号証の1の対応日本出願の公開公報)を提示し、本件発明は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、取り消されるべきものであると主張している。

(2-3)特許異議申立人小須田千代子は、甲第1号証(特開平3-176052号公報)、甲第2号証(実願昭56-115802号(実開昭58-22908号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(特開平2-4372号公報)、甲第4号証(欧州特許公開第482383号明細書及びその対応日本出願の公開公報である特開平5-117607号公報)、甲第5号証(特開昭50-109039号公報)、甲第6号証(特開昭50-109041号公報)、甲第7号証(特開平2-5946号公報)を提示し、本件発明は甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、取り消されるべきものであると主張している。

(2-4)特許異議申立人氏原さちは、甲第1号証(特表平8-507699号公報)、甲第2号証(特開平3-176051号公報)、甲第3号証(おむつを二分する縦方向の中心線の説明図)を提示し、特許権者が行った平成9年11月5日付け補正書による補正、及びその補正を含む平成10年10月19日付け補正書による補正は、本件特許の出願当初及びその日本語翻訳文の明細書の要旨を変更するものであるから、その特許出願は、その補正について手続補正書を提出した時にしたものと見なされるものであり、本件発明は甲第1号証〜甲第2号証に記載された発明であるか、あるいは、甲第1号証〜甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、取り消されるべきものであると主張している。

(3)特許異議申立人田中正子の異議申立てについて

(3-1)甲号各証に記載された発明

(3-1-1)甲第1号証(実開平4-117618号公報)
甲第1号証は、「少なくとも腹側と背側のシート部材からなり、該両シート部材を互いに接合することにより腰周り両側に接合線が形成してある使い捨てのブリーフ型着用物品において、前記接合線の外側に前記各シート部材の自由端部が適宜の幅を有して位置し、該自由端部の少なくとも一部には粘着剤塗布部が設けてあることを特徴とする前記ブリーフ型着用物品」(請求項1)に係る考案が記載されている。その図1(A)、(B)には、ブリーフ型着用物品の全体の形状が示され、この図を見ると、この着用物品1の背側シート4の両側部分には、丸めた着用物品1を留めておくために使用する粘着剤12を塗布した部分、例えば摘持部11が設けられていることがわかる。図2には、着用物品1が接合線5で腹側シート部材3と背側シート部材4とに剥がされることと、丸められて摘持部11で留められていることが示されている。

(3-1-2)甲第2号証(特開昭61-207605号公報)
甲第2号証には、「液体浸透性の内部の身体側ライナと、前板及び後板を画成する液体不浸透性の外部カバーと、これらライナとカバーとの間に配置された吸収性の芯材とを具備する形式の使い捨てパンツにおいて、一対の脚部開口と腰部開口とを有する立体的なパンツを形成するように上記の前板及び後板の側縁部分の一部を互いに接合する側部シームと、一方の脚部開口のまわりに延びる第1の伸縮手段、他方の脚部開口の周りに延びる第2の伸縮手段及び腰部開口のまわりに延びる第3の伸縮手段とを具備し、更に、上記外部カバーは、液体不浸透性のプラスチック材料の内層と、不織ファイバ材料の外層とで構成され、上記内層は吸収性の芯材に面し、上記外層はパンツの外面を構成することを特徴とする使い捨てパンツ」(特許請求の範囲第1項)に係る発明が記載されており、第1図及び第2図には、使い捨てパンツの全体の形状が示され、パンツに関して「このパンツ10は、前板11と、後板12とを備え、これらは、シーム13に沿って接合され、一対の脚部開口14及び腰部開口15を有する側部の閉じた立体的な衣類を形成する。第3図を説明すれば、パンツ10は、水分を通す身体側のライナ16と、水分を通さない外部カバー17と、これらライナとカバーとの間に配置された吸収性の芯材18とを含んでいる。」(公報5頁右上欄9〜16行)、「パンツ10は、適当な形状に切断された素材から迅速に製造することができる。第5図に適当な素材50が示されている。……素材50はその中央の横方向領域に沿って折り曲げられ、第3図に示すようにパンツの前部及び後部の側縁が接合されて、完成したパンツ10となる。」(公報8頁左下欄13行〜9頁左上欄6行)、側部シームに関して「側部シーム13として特に有用な構造は、手で剥離できるシームもしくは手で引き剥ぐシームである。……このような引き剥ぎシームが非常に便利で且つ好ましい理由は、子供からパンツを脱がせるために親が手で側部シームを引き剥がすことができるからであり、これは、パンツがかなり汚れていて通常の脱がせ方では不潔となるような時に特に有用である。」(公報8頁左上欄4行〜右上欄2行)という記載がある。

(3-1-3)甲第3号証(米国特許第4869724号明細書)
甲第3号証には、廃棄処理に便利な粘着テープ製の処理手段を有する使い捨ておむつの発明が記載されており、「実施例である図8のおむつは、おむつの本体22に位置する粘着性テープタプ116からなる処理手段868を有するもので、次のように説明されている。粘着性テープタブ116には周知のものを使うことができる。その一例は、米国特許第3,848,594号に開示されている。……粘着性テープタプ114は、おむつの本体22のどこにあってもよいのだが、処理手段868を提供するためには、第1端部48に設けられていることが好ましく、また、おむつの端縁42に隣接していることが好ましく、端縁42の幅方向中央に設けられていることがもっとも好ましい。そうすることで、汚れたおむつが畳まれたり、丸められたりしたときに、使用者は粘着性テーフタブ114を剥離用ライナから剥がし、丸めたおむつを確実に閉じておくために、テープタプ114の粘着剤を、好ましくはバックシート30または本体22のその他の部位に留めることができる。」(第14欄67行〜第15欄17行)、「実施例である図9には、2つの粘着性テープタブ118と120とからなる処理手段968が示されており、次のように説明されている。粘着性テープタブ118と120とは、本体22のどこにでも、例えば各端縁42に隣接して設けられるのだが、おむつの各側縁に隣接して設けられることが好ましく、第1端部48に設けられることがより好ましく、テーフタブ60に隣接して設けられることが最も好ましい。」(第15欄18〜27行)、「図3には、テープタプ360に設けられた粘着性接合手段110からなる処理手段368が示されている。この処理手段368は、好ましくは粘着性接合手段110の上に位置する剥離用ライナー112を含むもので、図3では、手段110とライナー112とが折り重ねられた状態にある。」(第14欄19〜28行)という記載がある。

(3-1-4)甲第4号証(米国特許第4177812号明細書)
甲第4号証には、使い捨ておむつ等の衣類に使用する感圧性粘着テープでできた閉じる手段(closure)の発明が記載されており、「図3に例示された閉じる手段の使用方法は図8〜10に示されており、次のように説明されている。この閉じる手段では、その右端部が衣類のへり15bに接着され、閉じる手段の残りの部分は使用されるまで折り畳まれている。準備段階であるこの位置にあるときには、閉じる手段の畳まれた端部が衣類のへり15bの端部から少しはみ出している。」(第4欄22〜30行)、「このような閉じる手段と対比して、図11には閉じる手段のもう一つの例が示され、次のように説明されている。前に説明したように、場合によっては、閉じる手段であるタブを衣類のへりからはみ出させないことが望ましい。図11に断面で示されたこの発明の実施例は、この目的を達成するために都合のよい手段を備えている。基本的な点で、この実施例は図8の例によく似ているのだが、異なるのは……全体としてZ字形の断面形状を有している点である。」(第4欄45〜53行)という記載がある。

(3-2)対比・判断

本件請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)と甲第1号証に記載された発明(以下、引用発明1という。)を比較すると、引用発明1のブリーフ型着用物品は着用する前にそのブリーフ型形状ができているものであるから、本件発明1のはかせるタイプのものであり、そして、いずれも使い捨てのものであるが、引用発明1の着用物品は、廃棄時に股の部分を腰の線に向って丸め、それを丸めた方向と直交する方向に摘持部で留めるものであるのに対し、本件発明1のものは、処分用テープがウエスト部を越えて広げられるものであり、丸めた方向と留める方向が一致するものである点で相違しており、甲第1号証にはその方向に留める点について他に示唆するような記載はない。
その相違点について、甲第2号証〜甲第4号証を検討してみると、甲第2号証に記載された使い捨てパンツは、はかせるタイプのものであるが、処分を容易にする手段について記載、示唆はない。甲第3号証記載の使い捨ておむつは、着用時に両サイドを留める展開型のものであって、はかせるタイプのものではなく、さらに、処分時に留める方向は甲第1号証のものと同様、丸めた方向と直交するタイプのものである。甲第4号証に記載の発明は、処分時に留めるためのテープの構造に関するもので、処分時の留める方向について示唆するものではない。
そして、本件発明は、処分用テープをおむつを丸めた方向と同じ方向で留められるように配置したことにより、処分時に容易に留めることを可能にするという効果を奏するものである。
よって、本件発明1は引用発明1に甲第2号証〜甲第4号証記載の発明を合わせて考慮しても当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件請求項2〜10に係る発明は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。
(4)特許異議申立人土山健二の異議申立てについて

(4-1)甲号各証に記載された発明

(4-1-1)甲第1号証(特開平3-176051号公報)
甲第1号証には、「着用者の肌に接する透水性のトップシートと、該トップシートの反対側に位置する不透水性のバックシートと、該両シート間に介在する吸水性のコアとからなるパンツ本体の前身頃の両側部の一部と後身頃の両側部の一部とをそれぞれ接着した接合線を左右に有して、上方に開口部と下方左右にそれぞれ脚穴部とを形成して、一体化したパンツ式紙おむつにおいて、前記開口部の付近に設けられた横方向の腰回り弾性体と、股間部の両側にそれぞれ設けられた縦方向の脚穴周り弾性体とを有し、かつ、右側の前記接合線と左側の前記接合性(接合線の誤記)がともに斜めになっていて、前記パンツ本体の横中心部の幅より前記開口部の幅が小さくなっていることを特徴とする紙おむつ」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載されており、その実施例として第12図〜第15図が示され、その説明として、「第12図ないし第15図は本発明の第4実施例を示している。……前記接合テープ31、32が粘着用テープであり、そして、右側接合テープ31は開口部7より下位の右側部5の付近の後身頃3に一端を固着(端部固着部33参照)して他端を右側離型紙35に剥離可能に取り付けられており、左側接合テープ32は開口部7より下位の左側部6の付近の後身頃3に一端を固着(端部固着部34参照)して他端を左側離型紙36に剥離可能に取り付けられている。第12図に示すおむつにおいては、使用後の廃棄に際しては、まず、第13図に示すように、接合テープ31、32の他端をそれぞれ離型紙35、36から剥離する。つぎに、第14図に示すように、股間部から上方へと横長円筒状に巻き込む。さらに、その両側部を中央に向けて折り曲げ、第15図に示すように、これが再び広ろがらないように、該両面テープ31、32の他端をはりつける。第15図に示すようにすることにより、紙おむつ全体が1つのブロックのようになってコンパクトにまとまり、また悪臭の発生しにくいものとなるので、このようにしてから循環する。」(公報4頁左下欄19行〜5頁左上欄9行)という記載がある。

(4-1-2)甲第2号証(実願昭56-115802号(実開昭58-22908号)のマイクロフィルム)
甲第2号証には、「少なくとも、透水性表面シートと非透水性裏面シートとの間にこれらよりも小形の吸収体を介在させ、該吸収体の縦方向及び横方向両端部から延出して相会する前記表裏両面シートの縦方向及び横方向両端部を接合して成る使い捨ておむつにおいて、前記表面シートに接着テープ片を取付けてあることを特徴とする前記おむつ」(実用新案登録請求の範囲第1項)に係る考案が記載してあり、第1図〜第3図にその考案の平面図、断面図が示され、その説明として「第1図に示すおむつ1においては、第1図とそのX1-X1線断面図として示す第2図から明らかの如く、背側部3の腰囲り部4の中央部の裏面シート8に好ましくは疎水性の接着剤層11を有する接着テープ片12の一端部を固定し、その自由端部を腰囲り部4から外方向へ突出させ、その自由端部の接着剤層11に離型テープ片13を仮着してある。……接着テープ片12は、これを使用しない場合には、その自由端部を適宜折曲しておいてもよい。」(明細書4頁12行〜5頁10行)、

(4-1-3)甲第3号証(特開平2-4372号公報)
甲第3号証には、使い捨て手段が吸収性物品を簡便に廃棄する形状に固定するために本体部分上に配置されている機械的ファスナーシステムを有する使い捨て吸収性製品の発明が記載されており、第8図、第9図にその平面図が示され、その説明として「第8図に図示のさらに他の実施態様においては、使い捨て手段868は本体部分22上に配置された接着剤テープタブ116を含む。……接着剤テープタブ115はオシメ20の本体部分22上の任意の箇所に配置する事ができるが、好ましくは第1末端区域48上に、オシメ20の末端線42に隣接して、最も好ましくは末端線42に沿って横方向にセンタリングして配置され、使い捨て手段868を成す。従って、オシメ20が汚れて折り畳まれまたは巻き上げられた後に、ユーザが接着剤テープタブ116をそのリリースライナーから離脱させ、その接着剤を本体部分22のバックシート30または本体部分22に対して固着させて、巻き上げられたオシメ20を閉鎖状態に固定する。」等の記載がある(公報12頁右上欄13行〜右下欄5行)。

(4-1-4)甲第4号証の1(西独国特許公開第4033850号明細書)及び甲第4号証の2(特開平5-117607号公報、甲第4号証の1の対応日本出願の公開公報)
甲第4号証の2は甲第4号証の1の対応日本出願の公開公報であり、ロール状にエンドレスに巻かれた複合積層接着テープ及びその積層接着テープロールの製造方法に係る発明が記載されており、図1にジグザグ折りの積層接着テープの断面図が示され、図2に巻いた積層接着テープを使用するために、使い捨ておむつに締結のため広げた状態での図1に示した接着テープの断面図が示されている。

(4-2)対比・判断

本件請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)と甲第1号証に記載された発明(以下、引用発明1という。)を比較すると、引用発明1はパンツ式のものであるから、いずれも、使い捨てのはかせるタイプのおむつであるが、引用発明1のパンツ式紙おむつは、処分用テープに当るものが両サイドについており、廃棄時に股の部分を腰の線に向って丸め、それを丸めた方向と直交する方向に摘持部で留めるものであるのに対し、本件発明1のものは、処分用テープがウエスト部を越えて広げられるものであり、丸めた方向と留める方向が一致するものである点で相違しており、甲第1号証にはその方向に留める点について他に示唆するような記載はない。
その相違点について、甲第2号証〜甲第4号証を検討してみると、甲第2号証の使い捨て紙おむつは着用時に両サイドを留める展開式のものであり、はかせるタイプのものではなく、また、処分用のテープ片は本件発明のように留めるときにウエスト部を越えるものとは認められない。甲第3号証記載の使い捨ておむつも、展開型のものであって、はかせるタイプのものではなく、さらに、第7図のものは、処分時に留める方向は甲第1号証のものと同様、丸めた方向と直交するタイプのものである。第8図には、ウエストの線の中央部に位置するテープタブが図示されており、このテープタブは丸めた方向と同じ方向に留めることができるものであるが、処分時以前からウエストの縁を越えたものである。甲第4号証に記載の発明は、処分時に留めるためのテープの構造に関するもので、処分時の留める方向について示唆するものではない。
そして、本件発明は、処分用テープをおむつを丸めた方向と同じ方向で留められるように配置し、おむつ使用時にはウエストの縁を越えないようにして、おむつ使用時に使用感を落とさず、処分時に容易に留めることを可能にするという効果を奏するものである。
よって、本件発明1は引用発明1に甲第2号証〜甲第4号証記載の発明を合わせて考慮しても当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件請求項2〜10に係る発明は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(5)特許異議申立人小須田千代子の異議申立てについて

(5-1)甲号各証に記載された発明

(5-1-1)甲第1号証(特開平3-176052号公報)
甲第1号証には、「着用者の肌に接する透水性のトップシートと、該トップシートの反対側に位置する不透水性のバックシートと、該両シート間に介在する吸水性のコアとからなるパンツ本体の前身頃の両側部と後身頃の両側部とをそれぞれ接着して、上方に腰周り用の開口部と下方左右にそれぞれ脚穴部とを形成して、一体化したパンツ式紙おむつにおいて、前記前身頃の縦中心線より適当に遠ざけた個所から、各別にそれぞれの側端部に向けて斜めに設けられた脚穴形成用のスリットを備えていることを特徴とする使い捨ておむつ」(特許請求の範囲第1項)の発明が記載されており、その実施例として第14図〜第17図が示され、その説明として、「第14図ないし第17図は本発明の第4実施例を示している。……第14図の31は右側接合テープ、32は左側接合テープ、33は該右側接合テープ31の端部固着部、34は該左側接合テープ32の端部固着部、35は右側離型紙、36は左側離型紙である。すなわち、この第4実施例では、前記接合テープ31、32が粘着用テープであり、そして、右側接合テープ31は開口部7より下位に右側部5の付近の後身頃3に一端を固着(端部固着部33参照)して他端を右側離型紙35に剥離可能に取り付けられており、左側接合テープ32は開口部7より下位の左側部6の付近の後身頃3に一端を固着(端部固着部34参照)して他端を左側離型紙36に剥離可能に取り付けられている。第14図に示すおむつにおいては、使用後の廃棄に際しては、まず、第15図に示すように、接合テープ31、32の他端をそれぞれ離型紙35、36から剥離する。つぎに、第16図に示すように、股間部4から上方へと横長円筒状に巻き込む。さらに、その両側部を中央に向けて折り曲げ、第17図に示すように、これが再び広ろがらないように、該両面テープ31、32の他端をはりつける。第17図に示すようにすることにより、該おむつ全体が1つのブロックのようになってコンパクトにまとまり、また悪臭の発生しにくいものとなるので、このようにしてから廃棄する。……接合テープにベルクロ式テープを採用してもよい。」(公報4頁左上欄3行〜右上欄18行)という記載がある。

(5-1-2)甲第2号証(実願昭56-115802号(実開昭58-22908号)のマイクロフィルム)
甲第2号証の記載事項については(4-1-2)参照。

(5-1-3)甲第3号証(特開平2-4372号公報)
甲第3号証の記載事項については(4-1-3)参照。

(5-1-4)甲第4号証(欧州特許公開第482383号明細書及びその対応日本出願の公開公報である特開平5-117607号公報)
甲第4号証の記載事項については(4-1-4)参照。

(5-1-5)甲第5号証(特開昭50-109039号公報)
甲第5号証には、「片面全体に感圧接着剤を施したテープ片と、該テープ片の長手方向の中央に着脱可能に固着したユニットから成り、該ユニットはテープ片の接着面の反対側に上記接着剤に対し親和性を制限された面を露出し、上記テープ片の1端を上記ユニットの上記の露出した面の上に折り返して該面と接触させ、上記ユニットはそれぞれ上記接着剤に対し親和性を制限された面を互に外側にして重ねた外側及び内側の2層の帯材から成り、上記外側の層は内側の層の両端より長手方向に突出したタブを有し、該タブは上記テープ片の接着面に固着されているおむつ留具」(特許請求の範囲)の発明が記載されており、第1図、第2図に複合積層接着テープからなる留め具が示され、その留め具によりおむつを留めた状態が第3図〜第5図にあり、第3図におむつを幼児に取りつけている留具の斜視図、第5図に留具で巻いた形状に保持されたおむつの斜視図が示されている。

(5-1-6)甲第6号証(特開昭50-109041号公報)
甲第6号証には、「吸収性の本体とプラスチックの裏布とを有する使い棄ておむつに用いる為の留具に於て、隣接する第1、第2及び第3の脚を有するZ字形に折りたゝまれたテープ片を含み、該テープ片は表の面と裏の面とを有し、第1及び第3の脚の各々の表の面に接着剤が塗布され、上記第2の脚の表の面は接着剤が塗布されて居らず、上記第1脚の表の面は上記プラスチック裏布と接触し、上記第3脚は表の面が上記第2脚の表の面と接触しそれにより上記第2及び第3の脚から成るサブユニットを形成し、該サブユニットは上記第1脚の裏面に剥離可能に固着している、おむつの留具」(特許請求の範囲)の発明が記載されており、第1図〜第5図に複合積層接着テープからなる留め具と、該留め具により使い捨ておむつを留めた状態を説明する図が示されている。

(5-1-7)甲第7号証(特開平2-5946号公報)
甲第7号証には、第1図〜第3図に、互いに引き剥がし可能にループ体に係合することができるフック体を有し、常時は折り畳まれており、使用時に展開しておむつ上のループ体と係合させることによっておむつを使用者に装着固定することができるタイプの機械的テープが示されている。

(5-2)対比・判断

本件請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)と甲第1号証に記載された発明(以下、引用発明1という。)を比較すると、引用発明1はパンツ式のものであるから、いずれも、使い捨てのはかせるタイプのおむつであるが、引用発明1のパンツ式紙おむつは、処分用テープに当るものが両サイドについており、廃棄時に股の部分を腰の線に向って丸め、それを丸めた方向と直交する方向に摘持部で留めるものであるのに対し、本件発明1のものは、処分用テープがウエスト部を越えて広げられるものであり、丸めた方向と留める方向が一致するものである点で相違しており、甲第1号証にはその方向に留める点について他に示唆するような記載はない。
その相違点について、甲第2号証〜甲第7号証を検討してみると、甲第2号証の使い捨て紙おむつは着用時に両サイドを留める展開式のものであり、はかせるタイプのものではなく、また、処分用のテープ片は本件発明のように留めるときにウエスト部を越えるものとは認められない。甲第3号証記載の使い捨ておむつも、展開型のものであって、はかせるタイプのものではなく、さらに、第7図のものは、処分時に留める方向は甲第1号証のものと同様、丸めた方向と直交するタイプのものである。第8図には、ウエストの線の中央部に位置するテープタブが図示されており、このテープタブは丸めた方向と同じ方向に留めることができるものであるが、処分時以前からウエストの縁を越えたものである。甲第4号証、甲第6号証に記載の発明は、処分時に留めるためのテープの構造に関するもので、処分時の留める方向について示唆するものではない。甲第5号証は展開式のものであり、着用時に使用する両サイドのテープを処分時に再度使用するもので、処分時に留める方向は甲第1号証のものと同様、丸めた方向と直交するタイプのものである。甲第7号証も展開式のものであり、また、処分時のテープを留める方向について示唆するものではない。
そして、本件発明は、処分用テープをおむつを丸めた方向と同じ方向で留められるように配置し、おむつ使用時にはウエストの縁を越えないようにして、おむつ使用時に使用感を落とさず、処分時に容易に留めることを可能にするという効果を奏するものである。
よって、本件発明1は引用発明1に甲第2号証〜甲第7号証記載の発明を合わせて考慮しても当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、本件請求項2〜10に係る発明は、本件発明1をさらに限定したものであるから、上記本件発明1について述べた理由と同様の理由により、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(6)特許異議申立人氏原さちの異議申立てについて

(6-1)甲号各証に記載された発明

(6-1-1)甲第1号証(特表平8-507699号公報)は、本件特許の公表公報である。

(6-1-2)甲第2号証(特開平3-176051号公報)
甲第2号証の記載事項については(5-1-1)参照。

(6-1-3)甲第3号証は、甲第2号証の第1図に示されたパンツ式おむつを二分する縦方向の中心線を説明する図である。

(6-2)対比・判断

まず、特許権者が行った平成9年11月5日付け補正書による補正が要旨変更に当るかどうかについて検討する。
平成9年11月5日付け補正書による補正は、発明の名称を「使い捨ておむつ」とする補正の他に、明細書の
(ア)特許請求の範囲の請求項1において、
「ウエスト開口部および足開口部を有する、はかせるタイプの使い捨ておむつであって、平らな状態において、液体透過性の表面シートと、液体非透過性の裏面シートと、該表面シートと該裏面シートとの間にはさまれた、一対の側縁を有する吸収芯とからなる吸収性を有する胴体であって、該胴体は一対の側辺、前縁、後縁および胴体を二分する縦方向の中心線を有し、かつ、該胴体は股領域、前記前縁を有する前ウエスト領域および前記後縁を有する後ウエスト領域に分けられ、ここで前ウエスト領域と後ウエスト領域は前記縦方向中心線に沿って股領域から互いに反対方向に延びているものである、吸収性胴体と、前記胴体の着用者に向いた面のそれぞれの半分に取り付けられた、少なくとも一つの伸縮性のあるパネルであって、それぞれの該伸縮性パネルは、ウエスト開口部縁とその反対側に足開口部縁とを有し、それぞれの該伸縮性パネルの前記ウエスト開口部縁は少なくとも胴体の前記縦方向中心線に達しており、かつ、それぞれの伸縮性パネルは取り付け線にそって胴体に取り付けられるものであって、該取り付け線は、胴体の前記前ウエスト領域にある前記縦方向中心線の近傍にある点と胴体のそれぞれの前記側辺上に点とを結ぶ前取り付け線、および、胴体の前記後ウエスト領域にある前記縦方向中心線の近傍にある点と胴体のそれぞれの前記側辺上の点とを結ぶ後取り付け線とからなるものである、伸縮性パネルと、そして前記伸縮性パネルの前記足開口部全体を形成しているものである、使い捨ておむつ。」とあるのを、
「縁を有するウエスト開口部と、一対の足開口部と、液体透過性の表面シートと、液体非透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に挟まれた吸収芯と、を備えた、はかせるタイプの使い捨ておむつであって、前記おむつは、着用者に面する面と、衣服に面する面と、前記おむつを二分する縦方向の中心線と、を有し、前記おむつは、股領域、前ウエスト領域、及び後ウエスト領域に分けられ、前記前ウエスト領域及び前記後ウエスト領域は前記縦方向中心線に沿って前記股領域から互いに反対方向に延びている、はかせるタイプの使い捨ておむつにおいて、前記おむつは、さらに、汚れたおむつを留めるために前記衣服に面する面に配置された処分を容易にする手段を備え、前記処分を容易にする手段は、重ね合わせられた複数の部分からなる処分用テープを有し、前記処分用テープは、前記複数の部分が重ね合わせられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延びておらず、一方、前記複数の部分が広げられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延び得る、はかせるタイプの使い捨ておむつ。」に補正し、
(イ)請求項2〜15を、
「【請求項2】前記処分を容易にする手段は、前記衣服に面する面の前記後ウエスト領域に配置されている、請求項1記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項3】前記処分用テープはその長手方向が前記縦方向中心線に整合されている、請求項1又は請求項2に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項4】前記処分用テープは接着用テープである、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項5】前記処分用テープは機械的テープである、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項6】前記処分用テープは長手方向に折り曲げられている、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項7】前記複数の部分はそれぞれ別個のテープ部材から構成されており、これらのテープ部材を直列につなぎ合わせて前記処分用テープが形成されている、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項8】前記処分用テープは、第1セクション、第2セクション及び第3セクションから成り全体としてZ字状を成している、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項9】前記第1セクションは、前記衣服に面する面に取り付けられている、請求項8記載のはかせるタイプの使い捨ておむつ。
【請求項10】前記処分用テープは前記第2セクションと前記第3セクションとの間に挟まれた剥離手段をさらに有する、請求項8又は請求項9に記載の使い捨ておむつ。」と補正し、
(ウ)発明の詳細な説明中(明細書3頁16行〜9頁11行、公表公報4欄33行〜5欄31行)、「そこで、本発明の目的は、ウエストおよび足の開口部がよりぴったりとする、ウエスト開口部全体が伸縮自在の使い捨てのおむつを提供することである。……含んでなる方法を提供する。」を
「そこで、本発明の目的は、使用後において容易に処分することができるはかせるタイプの使い捨てのおむつを提供することである。……剥離手段をさらに有する。」と補正し(この補正項目は、特許請求の範囲の補正に対応した発明の詳細な説明の補正である。)、
(エ)発明の詳細な説明中の2個所の誤記の訂正を行うための補正を行なうものである。

なお、平成10年10月19日付け補正書による補正は、平成9年11月5日付け補正書による補正中、特許請求の範囲の請求項5において引用する項のうち請求項4を削除する単なる誤記の訂正である。

訂正(ア)について、
補正後の「縁を有するウエスト開口部と、一対の足開口部と、液体透過性の表面シートと、液体非透過性の裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に挟まれた吸収芯と、を備えた、はかせるタイプの使い捨ておむつであって」は、当初明細書の請求項1の「ウエスト開口部および足開口部を有する、はかせるタイプの使い捨ておむつであって、平らな状態において、液体透過性の表面シートと、液体非透過性の裏面シートと、該表面シートと該裏面シートとの間にはさまれた、一対の側縁を有する吸収芯とからなる吸収性を有する胴体であって」に対応するものであり、当初明細書の使い捨ておむつが胴体と伸縮性パネル、足開口部からなるものであるから、胴体の持っていた構成をおむつの持っている構成要素として表現したもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「前記おむつは、着用者に面する面と、衣服に面する面と、前記おむつを二分する縦方向の中心線と、を有し」は、当初明細書の請求項1の「該胴体は一対の側辺、前縁、後縁および胴体を二分する縦方向の中心線を有し」に対応するものであり、当初明細書において胴体の持っていた構成をおむつの持っている構成要素として表現したもので、新たな技術的事項を追加するものではない。このなかで、「二分する縦方向の中心線」については明細書13頁19〜21行に「図2Bに示すように、胴体20は、胴体を二分する、好ましくは対称的に二分する縦方向の中心線A-Aを有する。」とあって、胴体を対称的に二分する仮想的な線であるから、すなわち胴体部分が中心線に対して対称な形状を有していることを表現しているものであり、平面で表現したときはA-Aを結ぶ直線となり、パンツの形状(立体図)のときは略U字形の曲線であることが理解できる。その内容は、補正後も変更されているものではない。
「前記おむつは、股領域、前ウエスト領域、及び後ウエスト領域に分けられ」は、当初明細書の請求項1の「かつ、該胴体は股領域、前記前縁を有する前ウエスト領域および前記後縁を有する後ウエスト領域に分けられ」に対応するものであり、当初明細書において胴体の持っていた構成をおむつの持っている構成要素として表現したもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「前記前ウエスト領域及び前記後ウエスト領域は前記縦方向中心線に沿って前記股領域から互いに反対方向に延びている」は、当初明細書の請求項1の「ここで前ウエスト領域と後ウエスト領域は前記縦方向中心線に沿って股領域から互いに反対方向に延びているものである」に対応するものであり、当初明細書において胴体の持っていた構成をおむつの持っている構成要素として表現したもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「前記おむつは、さらに、汚れたおむつを留めるために前記衣服に面する面に配置された処分を容易にする手段を備え」は、当初明細書の「図8Aに示されるように、好ましいはかせるタイプのおむつは、着用者から汚れたおむつをはずして捨てる前にこのおむつを留めるための、処分を容易にする手段70も含むことができる。」(47頁8〜11行)、「この処分方法を容易にするために、処分を容易にする手段70は、縦に向けて、ウエストの後ろの領域9における胴体20の着衣に面する面に取り付けるのが好ましい。」(48頁1〜4行)という記載及び第8A図〜第8B図に基づくもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「前記処分を容易にする手段は、重ね合わせられた複数の部分からなる処分用テープを有し」は、当初明細書の「処分を容易にする手段70としては、従来からのいかなる接着テープ、または機械的なテープタブをも用いることができるが、好ましい手段は、図8Cに示されるような、三つの部分がZ字状に折り曲げられている接着テープタブである。」(48頁5〜9行)という記載及び第8C図に基づくもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「前記処分用テープは、前記複数の部分が重ね合わせられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延びておらず」は、当初明細書の第8A図に基づくもので、新たな技術的事項を追加するものではない。
「一方、前記複数の部分が広げられた状態においては前記ウエスト開口部の前記縁を越えて延び得る」は、当初明細書の第8B図に基づくもので、新たな技術的事項を追加するものではない。

訂正(イ)について、
請求項2の「前記処分を容易にする手段は、前記衣服に面する面の前記後ウエスト領域に配置されている」は、当初明細書の「この処分方法を容易にするために、処分を容易にする手段70は、縦に向けて、ウエストの後ろの領域9における胴体20の着衣に面する面に取り付けるのが好ましい。」(48頁1〜4行)という記載に基づくものであり、
請求項3の「前記処分用テープはその長手方向が前記縦方向中心線に整合されている」は前記48頁1〜4行の記載と、第8A図の記載に基づくものであり、
請求項4の「前記処分用テープは接着用テープである」、請求項5の「前記処分用テープは機械的テープである」、請求項6の「前記処分用テープは長手方向に折り曲げられている」は、いずれも、「処分を容易にする手段70としては、従来からのいかなる接着テープ、または機械的なテープタブをも用いることができるが、好ましい手段は、図8Cに示されるような、三つの部分がZ字状に折り曲げられている接着テープタブである。」(48頁5〜9行)という記載に基づくものであり、
請求項7の「前記複数の部分はそれぞれ別個のテープ部材から構成されており、これらのテープ部材を直列につなぎ合わせて前記処分用テープが形成されている」、請求項8の「前記処分用テープは、第1セクション、第2セクション及び第3セクションから成り全体としてZ字状を成している」、請求項9の「前記第1セクションは、前記衣服に面する面に取り付けられている」、請求項10の「前記処分用テープは前記第2セクションと前記第3セクションとの間に挟まれた剥離手段をさらに有する」は、「接着テープタブ70は、第一セクション71、……第二セクション72を、接着力のより低い塗膜81により、別に第一セクション71に取り付ける。」(48頁9行〜49頁6行)という記載に基づくもので、いずれも新たな技術的事項を追加するものではない。

また、訂正(ウ)は、特許請求の範囲の補正に伴って、発明の詳細な説明の記載を整合させるものであり、訂正(ア)、訂正(イ)で述べた理由と同じ理由によりいずれも新たな技術的事項を追加するものではない。訂正(エ)は、単なる誤記の訂正であり、新たな技術的事項を追加するものではない。

以上、補正後の構成要件はすべて当初明細書及び図面に記載された技術的事項の範囲内のものであり、この補正により明細書の要旨を変更するものとは認められない。
よって、本件発明の出願日を手続補正書が提出された平成9年11月5日、あるいは平成10年10月19日とみなすことはできない。

甲第1号証は、頒布日(公表日)が平成8年8月20日であり(対応する国際公開は平成6年5月11日)、本件特許発明の出願日より後に頒布されたものである。甲第2号証は本件特許発明の出願前に頒布されたものであるので、本件請求項1〜10に係る発明と甲第2号証に記載された発明を比較する。 この甲第2号証は、異議申立人土山健二の提出した甲第1号証と同じものであり、その記載内容、対比・判断については、(4-1-1)、(4-2)で述べたとおりであるから、本件発明は甲第2号証に記載された発明であるとすることはできず、また甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。

(7)むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立人が申立てた理由及びその証拠方法によって本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-08 
出願番号 特願平6-510872
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A41B)
P 1 651・ 121- Y (A41B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新海 岳  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 大久保 元浩
深津 弘
登録日 1999-03-12 
登録番号 特許第2896429号(P2896429)
権利者 ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 永井 浩之  
代理人 名塚 聡  
代理人 岡田 淳平  

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