• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1032303
異議申立番号 異議1997-74825  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-02-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-10-14 
確定日 2000-12-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第2600450号「半導体封止用エポキシ組成物」の請求項に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2600450号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2600450号は、平成2年6月18日に出願され、平成9年1月29日に設定の登録がなされたものであって、その後に特許異議の申立てがあり、それに基づく特許取消の理由通知に対し、意見書が提出されたものである。
2.本件発明
本件の請求項に係わる発明は、特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、溶融シリカ(C)、ハイドロタルサイト系化合物(D)、臭素化合物(E)およびアンチモン化合物(F)からなる樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が下記式(I)

(ただしR1 〜R8 は水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。)
で表される骨格を有するエポキシ樹脂(a)を必須成分として含有し、前記溶融シリカの割合が79〜90重量%であり、ハイドロタルサイト系化合物(D)の割合が全体の0.01〜10重量%である半導体封止用エポキシ組成物。
【請求項2】溶融シリカ(C)が平均粒径10μm以下の破砕溶融シリカ99〜50重量%と平均粒径40μm以下の球状溶融シリカ1〜50重量%からなる請求項(1)に記載の半導体封止用エポキシ組成物。
【請求項3】請求項1または2記載の半導体封止用エポキシ樹脂で封止された半導体装置。」
(なお、特許明細書における、請求項1の「半導体不使用エポキシ組成物」は特許明細書全体の記載からして「半導体封止用エポキシ組成物」の誤記と認められ、請求項2の「請求項(11)に記載」は明らかに「請求項(1)に記載」の誤記と認められるから、上記のとおり認定した。)
3.引用刊行物の記載事項
本件発明に対して平成11年7月29日付けで通知された特許取消理由における引用刊行物である、本件の出願前国内において頒布された特開平2-99551号公報(特許異議申立てにおける甲第1号証:以下、「引用例1」という。)には、[イ]「(1)エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、ポリスチレン系ブロック共重合体(C)および平均粒径20μm以下の溶融シリカ(D)70〜85重量%からなるエポキシ系樹脂組成物であって、前記溶融シリカ(D)が平均粒径12μm以下の破砕溶融シリカ(D′)40重量%以上と平均粒径40μm以下の球状溶融シリカ(D″)60重量%以下からなるエポキシ系樹脂組成物。
(2)エポキシ樹脂(A)が下記式(I)

(ただしR1 〜R8 は水素原子、C1 〜C4 の低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。)で表わされる骨格を有するエポキシ樹脂(A′)を必須成分として含有する請求項1記載のエポキシ系樹脂組成物。」(特許請求の範囲)、[ロ]「本発明の目的は、高温の半田付け工程で生じるクラックの問題を解消し、リードフレームとの接着性が高く信頼性の高いエポキシ系樹脂組成物を提供することにあり、表面実装ができる樹脂封止半導体装置を可能にすることにある。」(第3頁左上欄)、[ハ]「本発明のエポキシ系樹脂組成物には・・・ハロゲン化合物・・・などの難燃剤、三酸化アンチモンなどの難燃助剤・・・を任意に添加することができる。」(第6頁左上欄〜右上欄)、[ニ]「信頼性:前記の半田耐熱性試験を行なった44pinQFPを用い、121℃、100%RHで加湿処理し、ピン不良発生率50%になる時間を求めた。」(第6頁左下欄)と記載されている。
また、同引用刊行物である、本件の出願前国内において頒布された特開平1-206656号公報(特許異議申立てにおける甲第2号証:以下、「引用例2」という。)には、[ホ]「下記の(A)〜(F)成分を含有するエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。 (A)エポキシ樹脂。 (B)フェノール樹脂。 (C)臭素化エポキシ樹脂。 (D)・・・酸化アンチモン粉末。 (E)・・・溶融シリカ粉末。 (F)・・・ハイドロタルサイト類化合物。」(特許請求の範囲)、[ヘ」「この発明は・・・高温雰囲気中に長時間放置しても優れた信頼性を保持し・・・半導体装置の提供をその目的とする。」(第2頁左下欄)、[ト]「エポキシ樹脂組成物のA成分となるエポキシ樹脂は、特に制限するものではなく、・・・従来より用いられている各種のエポキシ樹脂をあげられる。・・・上記B成分のフェノール樹脂は、上記エポキシ樹脂の硬化剤として作用するものであり」(第3頁左上欄〜右上欄)と記載されている。
4.対比と判断
上記した引用刊行物1の記載事項の[イ]からみて、引用例1には、「式(I)で表される骨格を有するエポキシ樹脂、硬化剤、溶融シリカ70〜85重量%からなるエポキシ組成物」の発明が記載され、当組成物には、同記載事項の[ハ]からみて、ハロゲン化合物とアンチモン化合物も添加され(ハロゲン化合物として表1(第6頁)などに臭素化合物が例示されている。)、同記載事項の[ロ]からみて、当組成物は半導体封止用のものであるので、本件請求項1に係わる発明(以下、「本件発明1」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比すると、両発明は、「エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、溶融シリカ(C)、臭素化合物(E)およびアンチモン化合物(F)からなる樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が下記式(I)

(ただしR1 〜R8 は水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。)
で表される骨格を有するエポキシ樹脂(a)を必須成分として含有し、前記溶融シリカの割合が80〜85重量%である半導体封止用エポキシ組成物。」の発明として一致し、本件発明1がハイドロタルサイト系化合物(D)を含有し、その割合が全体の0.01〜10重量%であるのに対して、
引用発明1にはハイドロタルサイト系化合物が含有されない点において、両発明は相違している。
なお、記載事項の[イ]からみて、引用発明1はポリスチレン系ブロック共重合体をも必須成分とするものであるが、本件発明1も、特許明細書第19頁(特許公報第9欄11〜18行)に記載のとおり、当共重合体の使用を排除するものではなく任意に添加使用するものであって、この点においては両発明は相違しない。
当相違点を検討すると、上記した引用刊行物2の記載事項の[ホ]および[ト]からみて、引用例2には、「エポキシ樹脂、硬化剤、溶融シリカ、ハイドロタルサイト系化合物、臭素化合物およびアンチモン化合物からなる樹脂組成物である、半導体封止用エポキシ組成物。」の発明が記載され(これを以下、「引用発明2」という。)、この発明は半導体エポキシ組成物においてハイドロタルサイト系化合物を使用するものであり、全体に対する該化合物の使用割合は実施例の第2表(第6頁)から計算すると、0.42〜5.0重量%である。なお、充填剤のシリカや難燃剤が配合された半導体封止用エポキシ組成物においてハイドロタルサイト系化合物を使用することは、特許異議申立てにおいて提示された甲第3〜4号証にも記載され、周知技術というべきものである。
そして、引用発明1と引用発明2は、組成成分がほぼ一致する半導体封止用エポキシ組成物であり、記載事項の[ニ]および[ヘ]からみて、共に、半導体封止組成物として高温雰囲気中においても優れた信頼性を実現することを発明の課題としているから、当業者が引用発明1と引用発明2とを結びつけることを阻害する要因はなく、また、引用発明2におけるハイドロタルサイト系化合物の、組成物全体に対する使用割合も本件発明1におけるものと重複するものである。
さらに、引用発明1は、記載事項の[ロ]および[ニ]からみて、半田耐熱性および高温信頼性に優れ、引用発明2は、記載事項の[ヘ]からみて、高温信頼性に優れ、共に難燃剤による難燃性をも示す発明であって、一方、本件特許明細書の表3に要約された本件発明1の奏する効果も、難燃性の向上と共に、エポキシ樹脂や溶融シリカあるいはハイドロタルサイト系化合物などの各成分により半田耐熱性が向上し、高温寿命が向上するものであり、これらは各引用発明が示す効果と同等のものにすぎず、各成分による格別の相乗的効果も特に認められない。
結局、以上のことからして、本件発明1は、引用発明1および引用発明2を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるをえない。
次に、本件請求項2に係わる発明(以下、「本件発明2」という。)は、本件発明1の半導体封止用エポキシ組成物を主要な構成とし、溶融シリカの粒径を特定しただけのものであり、また、当粒径の特定は上記の記載事項の[イ]のとおり、引用発明1における当粒径の特定と重複するものであるから、本件発明1における上述の理由と同じ理由により、本件発明2も引用発明1および引用発明2を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるをえない。
また、本件請求項3に係わる発明も、本件発明1および2に係わる半導体封止用エポキシ組成物を主要な構成とし、その組成物で封止された半導体装置としただけのものであるから、本件発明1における上述の理由と同じ理由により、引用発明1および引用発明2を組み合わせて当業者が容易に発明をすることができたものであるといわざるをえない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号の規定に該当するので、同法第114条第2項の規定により本件特許は取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
平成12年10月12日
審判長 特許庁審判官 吉村 康男
特許庁審判官 柿崎 良男
特許庁審判官 小島 隆
 
異議決定日 2000-10-17 
出願番号 特願平2-159234
審決分類 P 1 651・ 121- Z (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 柿崎 良男
小島 隆
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2600450号(P2600450)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 半導体封止用エポキシ組成物  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ