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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B24B
管理番号 1032368
判定請求番号 判定2000-60110  
総通号数 17 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1994-10-25 
種別 判定 
判定請求日 2000-07-31 
確定日 2001-02-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第2600048号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「カッター」は、特許第2600048号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、被請求人が製造及び使用するカッター(以下、「イ号カッター」という。)が、特許第2600048号発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許に係る発明
本件特許に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項及び第2項に記載されたとおりのものであって、その請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明(以下それぞれ、「本件特許発明」及び「本件従属発明」という。)を構成要件に分説すると、次のとおりである。
本件特許発明;
A.切削面を外側にして回転軸方向に配される2枚の円板状サンディングディスクの間に、その外周面が切削面を成す円板状のワイヤーブラシ、ダイヤモンドグレード、金属板、布板又は砥石で構成される支持板を挟み込み、
B.前記一方のサンディングディスクの中心部に突出するテーパ型リーマ又はドリルを取り付け、
C.該テーパ型リーマ又はドリルと前記サンディングディスク及び支持板を回転軸方向に組み付けて構成されることを特徴とするカッター。

本件従属発明;
D.回転軸方向に貫通する切粉逃がし用の孔を前記サンディングディスクと支持板に形成したことを特徴とする
請求項1記載のカッター

3.イ号カッター
甲第3号証として提示されたカッター目録(三)によれば、イ号カッターは、次のa〜cのとおり分説できる。
a.回転軸方向に配される2枚の円板状サンディングディスク1、2の間に、厚さ2.8mm程度の円板状の金属板3で構成される支持板を挟み込み
b.前記一方のサンディングディスクの中心部に突出するテーパ型リーマ4を取り付け、
c.テーパ型リーマと前記サンディングディスク及び支持板を回転軸方向に組み付けて構成されるカッター。

4.イ号カッターが本件特許発明の技術的範囲に属するか否かについて
本件特許発明の構成要件とイ号カッターとを対比すると、イ号カッターの構成b及びcが本件特許発明の構成要件B及びCを充足することは明らかである。
そこで、イ号カッターが本件特許発明の構成要件Aを充足するか否かを検討する。
イ号カッターの構成aは、回転方向に配される2枚のサンディングディスクが、円板状の金属板からなるディスク支持体を挟み込んでいる点で本件特許発明の構成を具備するが、ディスク支持板が厚さ2.8mm程度の金属板で構成されており、このディスク支持板の外周面が「切削面」をなすか否かが明らかではない。
(1)本件特許発明の構成要件Aの「切削面」とは、切削加工を成す機能を備えた面と解することができる。
「切削加工」の一般的な技術用語の意味についてみると、精機学会編「新訂 精密工作便覧」(昭和45年6月10日新訂8版発行)コロナ社P.23には、「切削加工法には、狭義に解釈した場合と広義に解釈した場合とで、2とおりの意味がある。狭義に解釈した場合には、バイト・フライス・ドリル・ブローチなどの切削工具を用い、切りくずを出しながら加工する方法をいう。広義に解釈した場合には塑性加工法などと異なり、加工材に 対し機械的な力を作用させてこれを局部的に破砕し、切りくず(一般的には破砕片)を出しながら加工物を希望の形状・寸法・仕上げ面あらさに加工する加工方法の総称である。この広義の切削加工方法の中には、切削工具を用いる加工法(狭義の切削加工法)のほか、研削砥石・ダイヤモンド砥石・スティック砥石・研磨布紙などの研削工具を用いる研削加工、ホーニング、超仕上、砥粒をはじめとして種々の粒子を用いるラッピング・バフ加工・バレル加工・噴射加工・超音波加工などの加工法がすべて含まれる。」と記載さ
れている。
そして、本件特許の明細書の【実施例】の欄には、「前記支持板4は砥石、金属板、布等で構成される」(段落【0016】2〜3行目)と記載され、支持板は砥石で構成されることも含むから、本件特許で用いられる「切削」とは、前記切削加工の定義のうち、広義の切削加工の意義で用いられていることは明らかである。
また、切削加工とは、工具によって加工材に対し機械的な力を作用させて破砕しながら加工するものであるから、その加工材の材質、加工の態様等、加工対象に応じて工具も異なってくる。本件特許の明細書の発明の詳細な説明の【発明が解決しようとする課題】の欄には、「ところで、図13に示すように、一般に枝管116は本管115に対して所定角度θ(<90°)だけ傾斜して設けられているため、該枝管116の本管115への開口部の形状は真円ではなく、図15に示すような楕円となる。このため、前記ホルソー型のカッター101又はテーパ型のカッター201で管ライニング材117に孔をあけると、図15に示すように、真円の孔117aしかあけることができず、孔117aの周辺に三日月状のバリ117b(図15に斜線にて示す部分)が残ってしまうという問題がある。そして、この場合、孔あけセンターの位置(つまり、カッター101,201の中心位置)を正確に決めなければ、バリ117bが大きくなってしまう。」(段落【0003】)と記載され、同じく【作用】の欄には、「本発明に係るカッターを用いて例えば孔あけ作業を行なう場合、先ず、テーパ型リーマ又はドリルによって被加工物に孔をあければ、その後の上下方向の切削はサンディングディスクの上下面で可能となり、前後左右方向(横方向)の切削は支持板の外周面で行なうことができるため、非円形の孔も容易、且つ、正確にあけることができる。」(段落【0011】)と記載され、同じく【実施例】の管ライニング材17の切除作業の手順の説明においては、「次に、ロボット20を移動させてカッター1を図7に示すように左方へ移動させた後、油圧シリンダー22を駆動してカッター1を下方へ移動させると、今度は下側のサンディングディスク3の研削面である下面で管ライニング材17が切削され、図8に示すように、管ライニング材17にはより大きな孔17bが形成される。尚、カッター1による管ライニング材17の切削によって発生する切粉は、カッター1に貫設された前記孔12を通って排出されるため、切粉これがカッター1の切削能力を低下させることがない。(段落【0029】)及び「以上のカッター1の上下動による切削動作を繰り返せば、管ライニング材17は上下のサンディングディスク2,3によって交互に切削されていくが、最後に残ったバリは、図9に示すように、カッター1の支持板4の外周面によって切除される。」(段落【0030】)と記載されていることからすれば、本件特許発明の支持板外周の切削面は、カッターの上下動作の繰り返しによって切り残された管ライニング材のバリの端面に当接されて、これに押し付けるようにカッターを移動させてそのバリを切除するものと認められる。
そうすると、本件特許発明の「切削面」とは、「管ライニング材の端面に対して機械的な力を作用させてこれを局部的に破砕し、切りくずを出しながらバリを切除するような機能を奏する面」と解するのが相当である。

(2)また、「切削面」とは、「切削加工を成す機能を奏する面」と解することに文言上不都合はなく、また前記のとおり「切削加工」とは普通一般に使用する技術用語であって、また、そのように解釈したとき、明細書の記載に矛盾するところは生じない。また、特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0016】の「尚、支持板4が金属板や布板で構成される場合には、その外周面に研磨剤が接着される」の記載も、実施例の欄に記載されたものであって、また、その表現ぶりからみても、「その外周面が切削面を成す金属板又は布板」を定義付ける表現ということはできない。
そうすると、「外周面が切削面を成す」とは、発明の詳細な説明の記載を参酌しなければならないとしても、実施例に限定しなければならないというほどには、その構成が明りょうではないとはいえず、また、発明の詳細な説明において、特に普通に用いられる以外の定義付けがされているものでもないから、被請求人の主張するごとく、支持板4が金属板で構成されるとき、「切削面」を、「その外周面に研磨剤を接着させたもの」と限定的に解すべき根拠はない。

(3)なお、「切削」の語は、上記技術用語としての定義の他、一般的な用語法として、「切り削る」という意味もあるが、発明は、技術に関するものであるから、特段の事情のない限り、その発明の属する技術分野の用語として解釈すべきである。
また、「切削工具」は、「切れ刃」を備えていなければならないともいえるが、切りくずの生成機構は、被削材が金属である場合についても、「流れ形」、「せん断形」、「むしり形」、「亀裂形」が存在し(前掲「新訂 精密工作便覧」P.24-25参照)、脆性材料である石材、ガラス等を切削する場合には、金属とは異なる切りくず生成機構がある。そして、金属を被削材とする切削工具についても、正のすくい角のものばかりでなく、負のすくい角のものも使用されることに鑑みれば、イ号カッターの凸面形状をなす金属板3の外周面が稜線状の切れ刃を持たないという理由のみで、切削工具とはなり得ないということはできない。

(4)そこで、イ号カッターにおける金属板3の外周面が「管ライニング材の端面に対して機械的な力を作用させてこれを局部的に破砕し、切りくずを出しながらバリを切除するような機能を奏する」か否かについて検討する。
イ号カッターの支持板である円板状の金属板を電動サンダーに取り付け、約9500rpmの回転数で回転させ、管ライニング材の端面に押し付けた検甲第1号証及びイ号カッターの支持板である円板状の金属板を電動サンダーに取り付け約1500rpmの回転数で回転させ、管ライニング材の端面に押し付けた検乙第1号証によれば、いずれも、粉状又は、微細な粒状の屑が発生した。また、イ号カッターの「サンディングディスクを取り付けた支持板(検乙第3号証)」を電動サンダーに取り付けて管ライニング材の表面にサンディングディスクを押し付けて加工した場合には、非常に大きな切りくずが大量に発生した。
以上の検証の結果からすると、イ号カッターの円板状の金属板の外周は、円板状サンディングディスクで挟み込まない状態で、これを回転させて管ライニング材に押し付けたとき、微細ながらも屑が発生したことからみて、切削作用を行なっているとみることもできるが、サンディングディスクと比べ、その切削作用ははるかに小さなものと認められる。

(5)ところで、イ号カッターの円板状の金属板3と、これを挟み込むサンディングディスクとの関係についてみると、乙第3号証より、サンディングディスクの外周は、円板状の金属板3の外周より僅かに大きく、サンディングディスクの周縁は、円板状の金属板3の外周面より1mm程度外側に位置すると認められる。このような状態で、イ号カッターをモーターの出力軸に取り付け、回転させながら管ライニング材の端面に押し付けたときには、先ずサンディングディスクの外縁が管ライニング材を切削除去することになるので、円板状の金属板3の外周は、管ライニング材の切削に何ら寄与することはない。
なぜならば、モーターの出力軸が管ライニング材の表面に対して垂直とならず、僅かでも傾いていれば、サンディングディスクの外縁は、管ライニング材端面の厚さ方向のほぼ全面に摺接することとなるので、円板状金属板の外周面が管ライニング材に接触する余地はほとんどない。そして、イ号カッターによる管ライニング材の切削の態様からすると、モーターの出力軸を管ライニング材の表面に対して正確に垂直となるようモーターを位置づけることは著しく困難である。
そうすると、イ号カッターの支持板の外周面は、その使用に際して「管ライニング材の端面に対して機械的な力をさせようさせてこれを局部的に破砕し、切りくずを出しながらバリを切除する」機能を奏さないから、イ号カッターの支持板の外周面は、本件特許発明の「切削面」に相当するということはできず、イ号カッターの構成aは、本件特許発明の構成Aを充足しない。
そうすると、本件特許発明の構成要件Aの「その外周面が切削面を成す金属板」は、その外周面に砥粒を接着したものに限定して解釈されるものではないが、上記のとおり、イ号カッターの支持板の外周面が「切削面」ということはできないから、イ号カッターが本件特許発明の構成要件Aを充足するということはできない。

(6)なお、本件特許発明は、物の発明であるが、物の発明は、物質特許を除き用途を有するものである。そして、イ号物件をその用途に用いたときに、特許発明の効果を達成することができないときは、イ号物件は、特許発明と技術的思想を異にし、技術的範囲に属さないとすべきである。本件特許発明の作用効果は、その発明の詳細な説明の記載からみて、特許請求の範囲に記載された構成のカッターを、管ライニングの加工に特定の態様で使用したときに初めて生ずる作用効果である。
そして、段落【0009】「本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、前後左右及び上下方向に切削が可能であって、所要の切断、孔あけ作業等を容易、且つ、正確に行なうことができるとともに、部品交換も容易で経済的なカッターを提供することにある。」、段落【0030】「以上のカッター1の上下動による切削動作を繰り返せば、管ライニング材17は上下のサンディングディスク2,3によって交互に切削されていくが、最後に残ったバリは、図9に示すように、カッター1の支持板4の外周面によって切除される。」及び段落【0031】「即ち、図9に示すように、カッター1の支持板4の外周面を管ライニング材17の切断面(孔17cの内周面)に当接させてこれを横方向(前後左右方向)に移動させれば、管ライニング材17のバリは支持板4の外周面によって切削され、」の記載からすれば、カッター1の支持板4の外周面が管ライニング材17のバリを切削すること、即ち、支持板4の外周面が管ライニング材の「切削面」として機能することにより、本件特許発明の効果を達成することができるものと認められる。
そうすると、イ号カッターの円板状の金属板3の外周面が、サンディングディスクを取り付けないときには切削面として機能するとしても、支持板の外周面が管ライニング材の切削面として機能しないイ号カッターが、本件特許発明の技術的事項に属するとすることはできない。

5.イ号カッターが本件従属発明の技術的範囲に属するか否かについて
本件従属発明は、本件特許発明の構成を全て備えた上で、さらに構成要件Dを備えたものであるから、イ号カッターが本件従属発明の構成要件Dを充足するとしても、イ号カッターが構成要件Aを充足しない以上、イ号カッターは、本件従属発明の技術的範囲には属さない。

6.まとめ
以上によれば、イ号カッターは、本件特許発明の構成要件Aを充足しないから、本件特許発明の技術的範囲に属さない。
また、イ号カッターは、本件従属発明の技術的範囲にも属さない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2001-01-24 
出願番号 特願平5-31545
審決分類 P 1 2・ 1- ZB (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 洋西川 恵雄  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 宮崎 侑久
鈴木 孝幸
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2600048号(P2600048)
発明の名称 カッター  
代理人 羽鳥 亘  
代理人 山下 亮一  
代理人 山下 亮一  
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