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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1033683
審判番号 審判1999-6957  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-08-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-30 
確定日 2001-02-09 
事件の表示 平成 1年特許願第326069号「通信装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 8月15日出願公開、特開平 3-187660]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成元年12月18日の出願であって、その特許請求の範囲に係る発明(以下、本願発明という。)は、平成年11月4日30付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「受信した信号から相手先のID番号を検出する検出手段と、検出したID番号を記憶する履歴記憶手段と、着信拒否すべきID番号を格納する拒否番号記憶手段と、前記着信拒否すべきID番号を前記履歴記憶手段から選択して前記拒否番号記憶手段に格納する拒否番号入力手段と、前記検出手段が検出したID番号と前記拒否番号記憶手段に記憶されたID番号とが一致する場合に、相手先との接続を切断する制御手段と、を具備することを特徴とする通信装置。」
2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-67857号公報(昭和63年3月26日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、「データ受信を拒否する相手電話番号を記憶する記憶手段と、上記記憶手段に記憶された相手電話番号と着信のあった相手電話番号を比較する比較手段と、上記比較手段が上記記憶手段に記憶された相手電話番号と上記着信のあった相手番号が一致していると判別した場合、データ受信を拒否する・・・データ通信装置」(特許請求の範囲)が記載されている。さらに具体的には、発明の詳細な説明に、受信されるデータ種類を「ファクシミリ」を対象としたものとし、記憶手段として「拒否電話番号記憶回路22」とした実施例が記載されていて、「オペレーション部20から入力された・・・ファクシミリ受信を拒否する電話番号を拒否電話番号記憶回路22に登録する」(第3頁左上欄第7〜10行)と、また、制御装置26が、「ステップ38においては、相手の電話番号を例えばTS1信号により判断・・・相手の電話番号が拒否電話番号記憶回路22に登録されているかを判断・・・登録されているとき時は・・・ファクシミリ受信を拒否する・・・例えば相手ファクシミリ装置から送出されるNSS/TS1/DCS信号に対してDCN信号の送出を行う」(第3頁右上欄第15行〜同頁左下欄第6行及び第2図)と記載されている。
また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-135048号公報(昭和63年6月7日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、「通信相手局番号、ユーザ略称などの識別情報を記憶する手段を有し、この記憶手段に格納された情報に基づき通信回線を介して行う所定の通信処理を制御する通信装置において、通信手順により得た前記相手局の識別情報を前記記憶手段に記憶する・・・通信装置」(特許請求の範囲請求項1)が記載されている。そして、この記憶手段について、「この一時的な領域357は、数局の相手局のユーザ略称および電話番号を格納するだけの容量が確保されている」(第3頁右上欄第13〜16行)と記載されている。また、「通信手順により得」る点について、「TSI(受信局の場合)ないしCSI(送信局の場合)信号を受信・・・ステップS5ではTSIないしCSI信号内の電話番号を制御用のRAM領域33に格納・・・次に・・・一時記憶領域357に・・・ステップS3,S5で記憶したユーザ略称及び電話番号を格納する」(第4頁左上欄第7〜18行)各ステップを、CPU11が、行う旨記載されている。また、「領域357内に一時的に記憶された相手局の情報を、正規のワンタッチキー(A〜H)のいずれかに設定する。すなわち、第3図の領域357から領域351,352へデータを移す処理を行わせるようにしてもよい。この場合には、一時記憶領域から正規の記憶領域へのデータの移動を指定する入力手段を設ければよい。」(第4頁左下欄第4〜11行)とも記載されている。
3.対比
そこで、本願発明と引用文献1記載の発明(以下、「引用発明」という。)を対比検討してみる。
引用文献1記載の「受信」は「着信」とほぼ同様の意味で用いられており、「電話番号」は一種の「ID番号」である。また、引用文献1記載の「データ受信を拒否する相手電話番号を記憶する記憶手段」は本願発明における「拒否番号記憶手段」に、また「オペレーション部20」は本願発明の「拒否番号入力手段」相当し、引用文献1記載の「制御部」は、着信のあった相手電話番号の検出と記憶手段に記憶された相手電話番号と着信のあった相手電話番号を比較し、記憶手段に記憶された相手電話番号と着信のあった相手番号の一致していると判別した場合、データ受信を拒否しているから、本願発明における「検出手段」及び「制御手段」を含んでおり、実質的に、「検出手段」及び「制御手段」が示されているということができる。また、ファクシミリ受信を拒否することの具体的記載である「DCN信号」は、相手先との接続を切断する命令である。
したがって、両者は、
「受信した信号から相手先のID番号を検出する検出手段と、着信拒否すべきID番号を拒否番号記憶手段に格納する拒否番号入力手段と、検出手段が検出したID番号と前記拒否番号記憶手段に記憶されたID番号とが一致する場合に、相手先との接続を切断する制御手段と、を具備することを特徴とする通信装置」である点で一致し、次の2点で相違する。
(1)本願発明の構成要素である「検出したID番号を記憶する履歴記憶手段」が、引例発明中にない点で、相違する。
(2)着信拒否すべきID番号を、「拒否番号入力手段」によって、「履歴記憶手段から選択して拒否番号記憶手段に格納する」点が、引例発明中にない点で、相違する。
4.当審の判断
そこで、この相違点について検討する。
相違点(1)について
引用文献2記載の「通信相手局番号・・・の識別情報」は一種の「ID番号」であり、この「識別情報」が受信信号から得られたことは明らかであり(特許請求の範囲請求項1及び第4頁左上欄第7〜18行についての摘記事項参照)、「記憶手段」、取り分けその一部である「一時記憶領域357」は、本願発明における「履歴記憶手段」とほぼ同様の機能を有しているから、引用文献2には、ファクシミリ装置などの通信装置において、「受信した信号から相手先のID番号を検出し、検出したID番号を記憶する履歴記憶手段を設け、この履歴記憶手段に格納された情報に基づき通信回線を介して行う所定の通信処理を制御すること」が記載されている。
ところで、引用発明も引用文献2記載の技術も、相手先のID番号を記憶手段に記憶して通信処理に利用するという点で技術的に共通することは明らかであり、また両者とも、ファクシミリ等の通信装置分野に属しているものであるから、引例発明に、引用文献2記載の「受信した信号から相手先のID番号を検出し、検出したID番号を記憶する履歴記憶手段」を付加し、この記憶手段に格納された情報に基づき通信回線を介して行う所定の通信処理を制御して、使い勝手をよくしようとするのは、技術的にみて、至極当然なことにすぎない。
相違点(2)について
着信拒否が、引用文献2記載の「所定の通信処理を制御する」ことに属すのは自明であり、また、引用文献2記載の記載のおいて、「所定の通信処理を制御する」ことに、着信拒否を含みえないという格別の理由が存在するわけでもないから、受信した信号から相手先のID番号を検出する検出し、検出したID番号を記憶する履歴記憶手段を設け、この記憶手段に格納された情報を着信拒否に利用しようとすることも当然のことである。そして、引用文献2には、履歴記憶手段である一時記憶領域から正規の記憶領域へデータの移動処理をすること、及び、その場合、データの移動を指定する入力手段を用いることも、記載されている(第3頁右上欄第13〜16行及び第4頁左下欄第4〜11行についての摘記事項参照)から、引用発明中の拒否番号入力手段に、引用文献2に記載された「データの移動を指定する」機能を持たせて、着信拒否すべきID番号を「履歴記憶手段から拒否番号記憶手段に格納する」こともまた当然の設計的事項でしかない。さらに、「選択して」拒否番号記憶手段に格納することも、引用文献2に明示さていないものの、受信ID番号の全てを拒否番号とするわけではないし、ID番号の登録を選択的に行うことも周知である(必要ならば、例えば、特開平1-188151号公報第2頁右下欄第4〜8行等を参照されたい。)から、この点も、着信拒否すべきID番号を履歴記憶手段から拒否番号記憶手段に格納するために設けられなければならない当然の技術的手段といえるものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲に係る発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-09-04 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-31 
出願番号 特願平1-326069
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長島 孝志  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 山本 春樹
大塚 良平
発明の名称 通信装置  
代理人 鷲田 公一  

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