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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62J
管理番号 1034500
審判番号 不服2000-10278  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-02-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-06 
確定日 2001-03-08 
事件の表示 平成 2年特許願第135473号「ベルト変速機の冷却装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 2月 3日出願公開、特開平 4- 31190]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年5月28日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成10年11月27日付け及び平成12年8月7日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下「本願発明」という。)。
「エンジンとスイングアームを兼ねる伝導ケースとを一体化してエンジンユニットを構成し、上記伝導ケースの後部に後輪を軸支し、上記伝導ケース内にVベルト変速機およびミッション装置を収容して前記エンジンの駆動力を後輪に伝達する一方、シート下方にフレームカバーで覆われた収納ボックスを備えた車体に前記エンジンユニットがピボット廻りに上下方向スイング自在にサスペンションユニットにより支持され、上記エンジンユニットのVベルト変速機は、伝導ケース内に導入される外気で強制冷却されるスクータ型車両におけるVベルト変速機の冷却装置において、前記フレームカバーの後部下縁を後上りに形成して車両側面視で前記エンジンユニットの伝導ケースおよび後輪をフレームカバーの後部下縁から覗かせて車両後部を開放し、前記Vベルト変速機冷却用のクリーナボックスを前記エンジンユニット用のエアクリーナと別体構造としてクリーナボックス内をダスト室とクリーン室とに区画し、前記クリーナボックスを車体中心に対して車両幅方向外側寄りのフレームカバー内側の車体に設け、上記クリーナボックスのクリーン室と前記伝導ケースとを可撓性ホースで接続する一方、上記クリーナボックスの外気吸入口を、エンジンユニットから離れた上方位置であって、走行中の雨水や後輪が巻き上げる異物が浸入しにくい位置の前記クリーナボックスのダスト室側に形成したことを特徴とするスクータ型車両におけるVベルト変速機の冷却装置」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成1年9月12日に日本国内において頒布された特開平1-229170号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。
「シート8の下方部分は後カバー9で囲まれている。ここで、上記後部フレーム2cとシート8の間にはヘルメット10を収容できる程度の荷物収容室11が形成されている」(第2頁左下欄17行〜右下欄1行)
「車体フレーム2の後部フレーム2cの下方には、後輪とともに上下に揺動するユニットスイング式のエンジンユニット13が配設されている。該ユニット13は、水平に配置されたエンジン本体12と、これに一体的に接続された伝動ケース14とからなる。・・・また上記クランクケース12aの上面に一体形成された支持ブラケット12gが防振リンク12iを介して上記後部フレーム2cに軸支されている。
また、上記伝動ケース14は上記クランクケース12aと一体形成されたケース本体14aと、これに着脱自在に取り付けられたケース蓋体14bとからなり、両者で囲まれた空間がベルト室15となっている。そしてこの伝動ケース14は、後述のVベルト式無段変速機を収容するという構造上、上記エンジン本体12の車外側壁面12hより、外方に突出しており、平面から見ると、この外側壁面12hと、該伝動ケース14の前側壁面14cとでコーナ状の空間Aが形成されている。
上記ベルト室15の後端部には後プーリ軸16が回転自在に配設され、図示していないが該プーリ軸16は、これと同軸上に配設された後輪軸に最終減速歯車を介して連結されており、該後輪軸に後輪17が固定されている。また、上記後プーリ軸16に装着された従動プーリ18と、上記クランク軸12eに装着された駆動プーリ19との間には無端状のVベルト20が巻回されており、これによりVベルト式無段変速機21が構成されている。また、上記駆動プーリ19の外側プーリ半体19aの外面には、送風羽根19bがその全周に渡って所定ピッチで一体形成されている。」(第2頁右下欄5行〜第3頁左上欄20行)
「伝動ケース14の上面には、燃焼空気用エアクリーナ22が搭載されている。・・・伝動ケース14の前側壁面14cとエンジン本体12の外側壁面12hとで形成されたコーナ状空間Aには、冷却空気用エアクリーナ25が配設されている。このエアクリーナ25は樹脂製箱状で、前後に2分割された前部ケース26a,後部ケース26cからなるクリーナケース26内に、スポンジ状のフィルタ27を収容し、これの周縁を両ケース26a、26bの分割面で挟持して構成されている。上記前部ケース26aの前側には下方に開口する冷却空気吸引口26cが形成されており、後部ケース26bの後壁には供給口26dが形成されている。この供給口26dには樹脂製の導入ダクト28の前端部28aが嵌合装着されており、該前端部28aは伝動ケース14のケース蓋体14bに形成された導入口14d内にも嵌合装着されている。」(第3頁右上欄10行〜左下欄13行)
「ベルト室冷却空気用のエアクリーナ25を伝動ケース14とは別個に設けた」(第3頁右下欄9〜11行)

また、第3図 、第4図を参酌すれば、伝動ケース14はサスペンションユニットによって後部フレーム2cに支持され、後カバー9の後部下縁は、後上りに形成されるとともに、車両側面視での伝導ケース14および後輪を後カバー9の後部下縁から覗かせて車両後部を開放している。

したがって、上記各記載、及び第3図、第4図の記載から、引用刊行物1には、
「 エンジン本体12とスイングアームを兼ねる伝導ケース14とを一体化してエンジンユニット13を構成し、上記伝導ケース14の後部に後輪を軸支し、上記伝導ケース14内にVベルト式無段変速機21を収容して前記エンジン本体の駆動力を後輪に伝達する一方、シート下方に後カバー9で覆われた荷物収容室11を備えた車体に前記エンジンユニット13が上下方向スイング自在にサスペンションユニットにより支持され、上記エンジンユニット13のVベルト式無段変速機21は、伝導ケース14内に導入される外気で強制冷却されるスクータ型車両におけるVベルト式無段変速機の冷却装置において、前記後カバー9の後部下縁を後上りに形成して車両側面視で前記エンジンユニット13の伝導ケース14および後輪を後カバー9の後部下縁から覗かせて車両後部を開放し、前記Vベルト式無段変速機冷却用のクリーナケース26を前記エンジンユニット用のエアクリーナ22と別体構造としてクリーナケース26内を前部ケース26aと後部ケース26bとに区画し、前記クリーナケース26を車体中心に対して車両幅方向外側寄りの後カバー9内側に設け、上記クリーナケース26の後部ケース26bと前記伝導ケース14とを接続する一方、上記クリーナケース26の冷却空気吸引口26cを、クリーナケース26の前部ケース26a側に形成したスクータ型車両におけるVベルト式無段変速機の冷却装置 」の発明が記載されているものと認める。

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和63年6月13日に日本国内において頒布された特公昭63-29149号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。
「外気吸入孔7にはコネクチングパイプ22を介して外気吸入チューブ10aが接続され、この外気吸入チューブ10aの先端の外気吸入孔10は塵埃、泥水等が入りにくい車体カバー1´とシート4に囲まれた空間内に開口されている。なおこの外気吸入チューブ10aはあらかじめ車体に取付けられており、エンジン5搭載時コネクチングパイプ22にバンドで締付け連結する。」(第3頁左欄最下行〜右欄8行)

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である昭和59年5月4日に日本国内において頒布された特公昭59-77924号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
「17は変速機ケース9の直上にその長手方向に沿って配置したエアクリーナ室であり、その吐出口はゴム管18により、前記送風口15に連通している。」(第2頁左上欄10〜13行)

3.本願発明と引用刊行物1の発明との対比
本願発明と引用刊行物1の発明とを対比すれば、引用刊行物1の発明の「エンジン本体12」、「Vベルト式無段変速機21」、「後カバー9」、「荷物収容室11」、「クリーナケース26」、「前部ケース26a」、「後部ケース26b」、「冷却空気吸引口26c」は、それぞれ本願発明の「エンジン」、「Vベルト変速機」、「フレームカバー」、「収納ボックス」、「クリーナボックス」、「ダスト室」、「クリーン室」、「外気吸入口」に相当し、さらに、第1引用例のエンジンユニットは、後輪とともに上下に揺動するユニットスイング式であって、揺動の軸となるピボットを当然有するものであるから、本願発明は、引用刊行物1の発明と、
「 エンジンとスイングアームを兼ねる伝導ケースとを一体化してエンジンユニットを構成し、上記伝導ケースの後部に後輪を軸支し、上記伝導ケース内にVベルト変速機を収容して前記エンジンの駆動力を後輪に伝達する一方、シート下方にフレームカバーで覆われた収納ボックスを備えた車体に前記エンジンユニットがピボット廻りに上下方向スイング自在にサスペンションユニットにより支持され、上記エンジンユニットのVベルト変速機は、伝導ケース内に導入される外気で強制冷却されるスクータ型車両におけるVベルト変速機の冷却装置において、前記フレームカバーの後部下縁を後上りに形成して車両側面視で前記エンジンユニットの伝導ケースおよび後輪をフレームカバーの後部下縁から覗かせて車両後部を開放し、前記Vベルト変速機冷却用のクリーナボックスを前記エンジンユニット用のエアクリーナと別体構造としてクリーナボックス内をダスト室とクリーン室とに区画し、前記クリーナボックスを車体中心に対して車両幅方向外側寄りのフレームカバー内側に設け、上記クリーナボックスのクリーン室と前記伝導ケースとを接続する一方、上記クリーナボックスの外気吸入口を、クリーナボックスのダスト室側に形成したスクータ型車両におけるVベルト変速機の冷却装置 」
である点で一致し、以下の〈相違点〉で相違している。
〈相違点〉
(1)本願発明のクリーナボックスは車体に設けられ、その外気吸入口は、エンジンユニットから離れた上方位置であって、走行中の雨水や後輪が巻き上げる異物が浸入しいにくい位置に設けられているのに対し、引用刊行物1の発明のクリーナケースは、伝動ケースとは別個であるが、伝動ケースに取り付けられ、その外気吸入口は、伝動ケースの前側壁面とエンジン本体の外側壁面とで形成されたコーナ状空間に設けられている点。
(2)本願発明のクリーナボックスは、伝動ケースと可撓性ホースで連結されているのに対し、引用刊行物1の発明のクリーナケースは、伝動ケースと樹脂製の導入ダクトで連結されている点。
(3)本願発明の伝導ケースは、Vベルト変速機以外にミッション装置を収容しているのに対し、引用刊行物1の発明の伝動ケース14は、本願発明のミッション装置に相当する最終減速歯車を有してはいるものの、それが伝導ケース内に収容されているかどうか明かでない点。

4.相違点の検討
〈相違点〉(1)について
引用刊行物2には、クリーナ自体は有していないが、外気を吸入する部材を車体に取付け、その外気吸入口を、エンジンユニットから離れた上方位置であって、走行中の雨水や後輪が巻き上げる異物が浸入しいにくい位置に設ける発明が記載されている。してみれば、引用刊行物1の発明に引用刊行物2の発明を適用し、外気を吸入する部材であるクリーナを車体に取付け、その外気吸入口を、エンジンユニットから離れた上方位置であって、走行中の雨水や後輪が巻き上げる異物が浸入しいにくい位置に設けることは、当業者が容易になし得たものである。
〈相違点〉(2)について
引用刊行物3には、伝動ケースとエアクリーナを可撓性のゴム管で連結する発明が記載されている。そして、引用刊行物1の発明に引用刊行物3の発明を適用することに格別な困難性は認められないから、引用刊行物1の発明に引用刊行物3の発明を適用し、クリーナケースを伝動ケースと可撓性ホースで連結することは、当業者が容易になし得たものである。
〈相違点〉(3)について
伝導ケース内にミッション装置を収容することは、例えば第2引用例の第2図におけるミッションギヤ18の配置に見られるように従来周知の技術であるから、引用刊行物1の発明において、伝導ケース内にVベルト変速機とミッション装置を収容した点は、当業者が容易になし得たものである。
また、本願発明が奏する作用効果も、引用刊行物1〜3に記載された発明から予想される程度以上のものでもない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-27 
結審通知日 2001-01-09 
審決日 2001-01-23 
出願番号 特願平2-135473
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増岡 亘  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 大島 祥吾
ぬで島 慎二
発明の名称 ベルト変速機の冷却装置  
代理人 関口 俊三  
代理人 波多野 久  

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