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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B |
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管理番号 | 1034506 |
審判番号 | 審判1999-14214 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-01-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-09-03 |
確定日 | 2001-02-14 |
事件の表示 | 平成4年特許願第191723号「斜板型アキシャルピストンポンプ」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 1月21日出願公開、特開平6-10826]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年6月25日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「斜板型アキシャルピストンポンプのシリンンダーポートが吐出ポートから吸入ポートに切替わる間の分配弁に、上記シリンダーポート側に開口を有し且つシリンダー内の作動液体の出入りが自在な付加容積室に連通し上記シリンダーポートが上記吐出ポートから吸入ポートに切替わる際に上記シリンダーポートを上記付加容積室に連通させる補助ポートが形成され、上記付加容積室は、上記補助ポートを介して上記シリンダーポートにのみ連通し、同シリンダーポートが上記補助ポートに開口した際に上記シリンダー内の作動液体の自由な流入を許容することにより、上記シリンダーポートが上記吸入ポートに開口する時点で、上記シリンダー内の作動液体の圧力を吸入圧近くまで低下させるように構成されていることを特徴とする、斜板型アキシャルピストンポンプ。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭61-196874号(実開昭63-174578)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「本考案は斜板型式のアキシャルピストンポンプ・モーターに関する。」(第1頁18行〜19行) (2)「本考案においては、上述の構成により、シリンダー室からコンジットに流れる圧油はアキュムレーターに蓄えられ、シリンダー室の圧力が低くなると逆に戻される。これによりシリンダー室の負圧を防ぐことができる。」(第5頁13行〜17行) (3)「まず第1図において、バルブシート5のコンジット15には別置ポンプ16からの圧油回路17が接続されており、その回路17の圧力は減圧弁18で設定され、またアキュムレーター19が回路17についている。なお、第3図に示したシリンダー2室コンジット15につながっており、シリンダー2室の圧力が減圧弁18で設定された圧力よりも高いとき、シリンダー2室からコンジット15を通って流れた圧油はアキュムレーター19に蓄えられ、そしてシリンダー2室の圧力が規定圧以下になると、逆に補給しシリンダー2室の圧力が負圧になることを防ぐ。その間アキュムレーター19の圧力が規定圧以下になると減圧弁が開き補給する。以上の作動によりシリンダー2室の負圧を防ぐことができ、その特性は第2図に示すとおりとなる。」(第6頁3行〜20行) (4)「12・・・吸入ポート、13・・・吐出ポート、14・・・シリンダーポート」(第8頁10行〜11行) (5)「シリンダー室内の圧油の圧力は、シリンダ室がコンジット15と連通した時点から低下し、シリンダーポート14が吸入ポート12に開口する時点では、吸入圧近くの圧力となっている。」(第2図参照) 上記(1)〜(5)の記載及び第1〜2図の記載からみると、引用例には、 「斜板型アキシャルピストンポンプ・モータのシリンダーポート14が吐出ポート13から吸入ポート12に切替わる間のバルブシート5に、上記シリンダーポート14側に開口を有し且つシリンダー内の圧油の出入りが自在なアキュムレーター19に連通し上記シリンダーポート14が上記吐出ポート13から吸入ポート12に切替わる際に上記シリンダーポート14を上記アキュムレーター19に連通させるコンジット15が形成され、上記アキュムレーター19は、上記コンジット15を介して上記シリンダーポート14に連通するとともに、減圧弁18及び別置ポンプ16とも連通し、同シリンダーポート14が上記コンジット15に開口した際に上記シリンダー室内の圧油の自由な流入を許容することにより、上記シリンダーポート14が上記吸入ポート12に開口する時点で、上記シリンダー室内の圧油の圧力を吸入圧近くまで低下させるように構成されている、斜板型アキシャルピストンポンプ・モータ」が記載されているものと認められる。 3.対比 本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、後者の「斜板型アキシャルピストンポンプ・モータ」、「シリンダーポート14」、「吐出ポート13」、「吸入ポート12」、「バルブシート5」、「圧油」はそれぞれ、前者の「斜板型アキシャルピストンポンプ」、「シリンダーポート」、「吐出ポート」、「吸入ポート」、「分配弁」、「作動液体」に相当する。また、後者の「コンジット15」、「アキュムレーター19」はそれぞれ、それらの設置位置及び機能からみて、前者の「補助ポート」、「付加容積室」に相当するものと認められる。 してみれば、本願発明と引用例記載の発明とは、 「斜板型アキシャルピストンポンプのシリンンダーポートが吐出ポートから吸入ポートに切替わる間の分配弁に、上記シリンダーポート側に開口を有し且つシリンダー内の作動液体の出入りが自在な付加容積室に連通し上記シリンダーポートが上記吐出ポートから吸入ポートに切替わる際に上記シリンダーポートを上記付加容積室に連通させる補助ポートが形成され、上記付加容積室は、上記補助ポートを介して上記シリンダーポートに連通し、同シリンダーポートが上記補助ポートに開口した際に上記シリンダー内の作動液体の自由な流入を許容することにより、上記シリンダーポートが上記吸入ポートに開口する時点で、上記シリンダー内の作動液体の圧力を吸入圧近くまで低下させるように構成されている、斜板型アキシャルピストンポンプ」で一致し、以下の点で相違する。 〈相違点〉付加容積室の連通するのが、前者では、補助ポートを介するシリンダーポートのみであるのに対して、後者では、補助ポートを介するシリンダーポートと、減圧弁18及び別置ポンプ16とである点。 4.当審の判断 上記相違点について、以下検討する。 本願図面の【図1】(C)及び【0012】の記載をみると、本願発明では、シリンダーポートが吐出ポートから吸入ポートに切替わる際、シリンダー内の作動液体の圧力が負圧になることを阻止していない。 一方、引用例記載の発明においては、シリンダー内の作動液体の圧力が負圧となることを防止するために、そのような恐れが生じる場合に、減圧弁18及び別置ポンプ16を用いて、アキュムレータ19に蓄えた圧油を圧油回路17、コンジット15を経由してシリンダー内に補給するものである(上記摘記事項(3)参照)。 してみれば、引用例記載の発明において、本願発明のようにシリンダー内の作動流体の圧力が負圧となることをいとわない場合に、減圧弁18及び別置ポンプ16を不要とすることは、当業者が容易に想到し得る事項である。 そして、本願発明の作用効果は、引用例記載の発明から当業者が予測できる範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2000-11-21 |
結審通知日 | 2000-12-05 |
審決日 | 2000-12-20 |
出願番号 | 特願平4-191723 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正浩、中野 宏和 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 関谷 一夫 |
発明の名称 | 斜板型アキシャルピストンポンプ |
代理人 | 飯沼 義彦 |