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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G05F
管理番号 1034512
審判番号 審判1996-8432  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-06-03 
確定日 2001-02-19 
事件の表示 平成 3年特許願第 28209号「過電圧及び過熱防止電源回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 8月 6日出願公開、特開平 4-216112]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明の要旨
本願は、平成3年2月22日の出願(優先権主張日 1990年2月22日、及び1991年2月12日 大韓民国)であって、その発明要旨は、手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された通りのものと認められ、請求項1は次のとおりである。
「画像を表示するための平板素子に用いられる電源回路であって、
調整されていないDC電圧を入力して調整されたDC電圧を出力する電圧調整部と、
前記電圧調整部に結合され、前記調整されたDC電圧を入力してAC電圧に変換する交流電圧変換部と、
前記交流電圧変換部に結合され、前記交流電圧変換部からのAC出力電圧を整流するための電圧分割抵抗および前記電圧分割抵抗に結合された整流ダイオードと、サージ電圧を除去するために前記整流ダイオードに結合されるフィルタ用コンデンサーと並列に接続された放電抵抗とを含んで構成される整流部と、
前記整流部に結合され、前記整流された電圧が所定の電圧を越えているかをチェックするために、1つのツェナーダイオード、前記ツェナーダイオードと直列に接続された2個のバイアス抵抗を含んで構成される過電圧チェック部と、
前記交流電圧変換部に結合され、前記交流電圧変換部内の内部ショートにより温度が上昇されることを感知しうる過熱チェック部と、
前記交流電圧変換部の出力端子上の電圧を制御するために前記電圧調整部の調整端に結合され、前記過電圧チェック部または前記過熱チェック部の出力により制御されるスイッチング部とを含み、
前記交流電圧変換部の出力電圧が前記整流部、過電圧チェック部及びスイッチング部を通じて前記電圧調整部の調整端にフィードバックされ、前記交流電圧変換部内の温度上昇が前記過熱チェック部により感知され前記スイッチング部を通じて前記電圧調整部の調整端にフィードバックされるように構成されていることを特徴とする過電圧及び過熱防止電源回路。」

2.引用刊行物
これに対して、当審の拒絶の理由で引用した、実願昭63-25018号(実開平1-131291号)の願書に添付された明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、多出力電源回路に関して以下の事が記載されている。

第3図に、従来例に係るこの種の多出力スイッチング電源装置を示す。
図において、交流入力電圧1をダイオードブリッジDB1、コンデンサC、で整流平滑した直流電圧が、変換用トランスT1の1次巻線の一端に接続されている。同1次巻線の他端は、スイッチングトランジスタQ1を介して前記直流電圧源の他端に接続されている。そしてこのスイッチングトランジスタQ1を、後述する制御部2からの信号によりパルストランス T3を介して適宜なオン,オフデューテイで断続することにより、トランスT1の2次巻線に誘起電圧を発生させる。そしてこの誘起電圧を整流用ダイオードD2、フライホイル用ダイオードD3、平滑用チョークコイルL1、平滑用コンデンサC4で整流平滑することにより、出力(1)を得ている。
出力(1)の出力電圧、出力電流は、各々制御部2へ帰還される。制御部2は、誤差増幅器、発振回路、基準電圧発生回路、出力論理回路、出力回路等を備えており、出力(1)の出力を基準値と比較し、その差に応じて発振回路で決定される一定の周波数でオン、オフデューテイの異なるパルスを出力する。このパルスは制御部2内で増幅され、パルストランスT3を介し、スイッチングトランジスタQ1を駆動する。このような構成のため、出力(1)の出力電庄が人力電圧、負荷変動等の影響により低下しようとすると、制御部2よりオンデューテイの大なる駆動信号が発生され、この結果、スイッチングトランジスタQ1のオンデューテイも大となるので、出力(1)の電圧低下が防止される。また逆の場合も同様に、オンデューテイの小なる駆動信号が発生され、出力(1)の出力電圧は常に一定に保たれる。また、抵抗R4を介して出力(1)の出力電流も制御部2へ帰還される。この情報もまた、制御部2内で基準値と比較され、所定値(基準値)を越えた場合、定電流制御または負特性を有した制御へ移行するよう、制御部2より駆動パルスがスイッチングトランジスタQ1へ伝達される。徒つて、出力(1)が短絡等過電流状態となってもスイッチングトランジスタQ1の破損等の故障は発生しない。
出力(1)はまた、スイッチングトランジスタQ2、フライホイルダイオードD4、チョークコイルL2、平滑用コンデンサC6等よりなる降圧チョッパ回路へ接続され、出力(1)より低い出力(2)を発生する。このチヨツバ回路は、前記制御部2と同様な制御部3を有している。この出力(2)の出力電圧、出力電流の情報は、制御部3へ帰還され、出力(2)の出力電圧が常に一定となるよう、また過電流状態とならないよう、スイッチングトランジスタQ2のオン、オフデュテイを制御する。(第2頁10行〜第5頁1行)
この目的を達成するために本考案は、第1の直流出力に応じて、前記スイッチング素子のオン、オフデユーテイを制御する制御部と、第2の直流出力の異常状態信号をこの制御部に帰還する手段とを設けたことを特徴とする。
以下、本考案の実施例を図面に基づき説明する。
尚、従来例と同一箇所は同一符号とする。
第1図は本考案の一実施例に係る多出力電源装置の回路図であって、この実施例では、出力(2)の過電流を抵抗R7で検出し、この情報を抵抗R7に並列に接続されているフォトカプラ4により制御部2へ帰還している。
次にその動作を説明する。
正常時の動作は従来例と同じであるので、ここでは省略する。
出力(2)が短絡される等、異常状態が発生すると抵抗R7両端の電位差が増し、これが抵抗R7に並列に接続されている異常状態信号の帰還手段としてのフォトカプラ4の発光ダイオード4aのシュレツショルド電圧以上に達すると発光ダイオード4aが発光し、対向しているフオトトランジスタ4bが導通する。このフォトトランジスタ4bは変換用トランスT3の1次巻線のオン、オフデユーテイを制御する制御部2に、信号発生時スイッチングトランジスタQ1のオンデューテイを極少にする、または0にするよう接続されている。
従って、出力(2)で短絡等、異常が発生した場合、スイッチングトランジスタQ1のオンデユーテイが著しく制服されるかまたは0となるので、出力(1)の出力がほぼ0となり、出力(1)より人力されている出力(2)も制限され、結局出力(2)用スイッチングトランジスタQ2は保護される。(第7頁6行〜第8頁19行)

上記引用刊行物1第1図記載のものにおいて、「交流入力電圧1をダイオードブリッジDB1、コンデンサC、で整流平滑した直流電圧」は「調整されていないDC電圧」であり、出力(1)は前記整の流平滑した直流電圧を出力電圧が常に一定となるよう制御したものでるあるから、出力(1)は「調整されたDC電圧」であり、出力(1)を得る回路は「出力端子上の電圧を制御する電圧調整部」である。出力(2)は「調整されたDC電圧」出力(1)を入力とする第2の変換回路(Q2、制御部3)により変換された第2のDC出力である。また、抵抗R7及び発光ダイオード4aは、異常状態が発生し抵抗R7両端の電位差が増し、発光ダイオード4aのシュレツショルド電圧以上に達するとスイッチングトランジスタQ1のオンデューテイを極少にする、または0にするものであるから、これら構成は「過電圧チェック部」であり「調整されたDC電圧の出力端子上の電圧を制御するために前記電圧調整部の調整端に結合され、前記過電圧チェック部の出力により制御されるスイッチング部」である。結局引用刊行物1には以下のものが記載されていることとなる。
「多出力電源回路であって、
調整されていないDC電圧を入力して調整されたDC電圧を出力する電圧調整部と、
前記電圧調整部に結合され、前記調整されたDC電圧を入力して第2のDC出力に変換する第2の電圧変換部と
前記第2の電圧変換部の出力部に結合され、前記第2のDC出力の電圧が所定の電圧を越えているかをチェックするために、1つのバイアス抵抗と発光ダイオードを含んで構成される過電圧チェック部と、
前記調整されたDC電圧の変換部の出力端子上の電圧を制御するために前記電圧調整部の調整端に結合され、前記過電圧チェック部の出力により制御されるスイッチング部とを含み、
前記調整されたDC電圧の出力部の出力電圧が前記過電圧チェック部及びスイッチング部を通じて前記電圧調整部の調整端にフィードバックされるように構成されていることを特徴とする過電圧防止電源回路。」

同じく引用した特開平2-2471号公報(以下「引用刊行物2」と言う)には、「ICカードへ供給する電圧レベルが所定値を越えたことを検出して第1の異常検知信号を発生する第1の異常検出回路と、前記ICカードのICチップ付近の温度が所定値を超えたことを検出して第2の異常検知信号を発生する第2の異常検出回路と、前記第1の異常検出信号と前記第2の異常検出信号の少なくともいずれかの一方の信号に応じて前記ICカードへの電力の供給を遮断する電力遮断回路とを備えたことを特徴とするICカードシステム(特許請求の範囲請求項1)」が記載されいる。

3.対比・判断
本願請求項1記載のもの(以下「前者」と言う)と引用刊行物1に記載されたもの(以下「後者」と言う)を比較すると、両者は
「電源回路であって、
調整されていないDC電圧を入力して調整されたDC出力を出力する電圧調整部と、
前記電調整部に結合され、前記調整されたDC電圧を入力して第2の出力に変換する第2の電圧変換部と
前記電圧変換部の出力部に結合され、前記第2の出力が所定の電圧を越えているかをチェックするための過電圧チェック部と、
前記調整されたDC出力の変換部の出力端子上の電圧を制御するために前記電圧調整部の調整端に結合され、前記過電圧チェック部の出力により制御されるスイッチング部とを含み、
前記調整されたDC出力の出力部の出力電圧が前記過電圧チェック部及びスイッチング部を通じて前記電圧調整部の調整端にフィードバックされるように構成されていることを特徴とする過電圧防止電源回路。」である点で一致し以下の4点で相違するものと認められる。
相違点1.前者は「画像を表示するための平板素子に用いられる電源回路」であるのに対して、後者は使用例として複写機を挙げるのみである点。
相違点2.調整されたDC電圧を入力して第2の出力に変換する第2の電圧変換部は、前者では「調整されたDC電圧を入力してAC電圧に変換する交流電圧変換部」であるのに対して、後者では「調整されたDC電圧を入力して第2のDC出力に変換する第2の電圧変換部」である点。
相違点3.過電圧チェック部が、前者では「前記交流電圧変換部に結合され、前記交流電圧変換部からのAC出力電圧を整流するための電圧分割抵抗および前記電圧分割抵抗に結合された整流ダイオードと、サージ電圧を除去するために前記整流ダイオードに結合されるフィルタ用コンデンサーと並列に接続された放電抵抗とを含んで構成される整流部と前記整流部に結合され、前記整流された電圧が所定の電圧を越えているかをチェックするために、1つのツェナーダイオード、前記ツェナーダイオードと直列に接続された2個のバイアス抵抗を含んで構成」されるのに対して、後者では「調整されたDC電圧の出力部に、該電圧が所定の電圧を越えているかをチェックする1つのバイアス抵抗と発光ダイオード」で構成されている点。
相違点4.前者は「交流電圧変換部に結合され、前記交流電圧変換部内の内部ショートにより温度が上昇されることを感知しうる過熱チェック部」を有し、スイッチング部は「前記過電圧チェック部または前記過熱チェック部の出力により制御される」構成であるのに対して、後者には温度異常を検出する手段を有していない点。

上記各相違点を検討する。
相違点1に関して、引用刊行物1記載の過電流に対する保護技術は、駆動が直流駆動であるか交流駆動であるを問わず安定化された電源で駆動される装置一般に適用できることは明かである。本願において対象を画像を表示するための平板素子に用いる電源回路とした点に格別のものは認められない。
相違点2に関して、電源部の出力の形式は該出力をいかなる装置に供給するかにより決まるものである。前記相違点1で検討したように、装置を「画像を表示するための平板素子」とすれば出力は交流となり、第2の電圧変換部は、前者は「調整されたDC電圧を入力してAC電圧に変換する交流電圧変換部」となる。
相違点3に関して、前記相違点2で述べたように、第2の電圧変換部の出力を交流とすると、出力の過電圧を検出するためには交流出力を整流平滑しなければならないことは明かである。電圧がシュレツショルド電圧以上か否かの判別素子としてツェナーダイオードは周知であり、ツェナーダイオードの入力にいかなる大きさの被判別信号を与え、出力にいかなる大きさのバイアスを与えておくかは、ツェナーダイオードの特性、判別信号により駆動される回路の特性等により適宜決定すれば良いことである。本願において、判別回路を「交流電圧変換部からのAC出力電圧を整流するための電圧分割抵抗および前記電圧分割抵抗に結合された整流ダイオードと、サージ電圧を除去するために前記整流ダイオードに結合されるフィルタ用コンデンサーと並列に接続された放電抵抗とを含んで構成される整流部と前記整流部に結合され、前記整流された電圧が所定の電圧を越えているかをチェックするために、1つのツェナーダイオード、前記ツェナーダイオードと直列に接続された2個のバイアス抵抗を含」む構成とすることに格別の技術力を要するとは認められない。
相違点4に関して、引用刊行物2に示されるように、装置に供給される電流の異常を検出する手段に加え、該装置の温度の異常を検出する手段を設け、両手段からの出力により装置への給電を遮断することは既に知られた技術である。引用刊行物1に示される装置に供給される電流の異常を検出する手段を設け、該手段からの出力により電源と装置との間に設けられたスイッチを制御することすことにより装置への給電を遮断する構成に、温度の異常を検出する手段を設け、該手段の出力によってもスイッチを制御し装置への給電を遮断する構成とすることに格別の技術力を要するものとは認められない。なお、本願は過熱チック部を「交流電圧変換部に結合」し、「交流電圧変換部内の内部ショート」による発熱を検出するとしている。しかし、電源内の温度異常を検出し該電源を制御することは周知であり(例えば、特開平1-310415号報報参照)、本願において交流電圧変換部の温度を検出する構成とした点にも格別のものは認められない。まは、検出される温度上昇は「交流電圧変換部内の内部ショート」によるもののみではなく他の原因による温度上昇も検出され保護回路が働くものであるから、本件において発熱の原因を「交流電圧変換部内の内部ショート」とした点に技術的意義は認められない。

4.結び
以上のとおり、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、引用刊行物1及び2に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よつて、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-09-04 
結審通知日 2000-09-19 
審決日 2000-10-03 
出願番号 特願平3-28209
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G05F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔小川 謙  
特許庁審判長 祖父江 栄一
特許庁審判官 岩本 正義
川端 修
発明の名称 過電圧及び過熱防止電源回路  
代理人 八田 幹雄  

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