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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04B
管理番号 1034526
審判番号 審判1998-10723  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-06-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-07-16 
確定日 2001-03-15 
事件の表示 平成 2年特許願第302524号「油圧ポンプ制御回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 6月23日出願公開、特開平 4-175480]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年11月9日の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「(a)吐出容量を変化させることができる可変ポンプと、
(b)該可変ポンプからシリンダに油を供給するための可変ポンプ吐出回路と、
(c)該可変ポンプ吐出回路の上記シリンダ側に配設されたシリンダ方向切換弁と、
(d)吐出容量が一定の固定ポンプと、
(e)該固定ポンプからシリンダに油を供給するために配設され、上記可変ポンプ吐出回路に合流する固定ポンプ吐出回路と、
(f)該固定ポンプ吐出回路から分岐し、アンロード切換弁を介して油タンクに接続されたドレーン油路と、
(g)上記可変ポンプ吐出回路内の油圧を検出する圧力センサと、
(h)検出された油圧とシリンダの圧力設定とを比較する比較器と、
(i)該比較器による比較結果に基づいて上記可変ポンプ吐出回路内の油圧が設定値になったかどうかを判断する制御装置と、
(j)上記可変ポンプ吐出回路に接続されると共に、上記制御装置からの信号に基づいて上記アンロード切換弁にパイロット圧を送ってアンロード切換弁を開放するアンロード切換弁開放手段とを有する
ことを特徴とする油圧ポンプ制御回路。」

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成12年7月17日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願日前の昭和62年2月28日に頒布された、特開昭62-46617号公報(以下、「引用例1」という。)及び本願の出願日前の昭和58年11月17日に頒布された、実願昭57-70008号(実開昭58-172102号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3.引用例
そして、引用例1には、特に、第2頁右下欄第12行〜第3頁右下欄第1行「以下、本発明の実施例を、図面に基づいて説明すると、第1図において、11は型締シリンダであり、11Aは該型締シリンダに挿嵌されたラムである。該型締シリンダのa室に大容量ポンプ14と連通する管路15を接続し、該管路15に3位置4方向切換弁13と2位置4方向切換弁16を設ける。該3位置4方向切換弁13と2位置4方向切換弁16との間の管路には、該型締シリンダ11のa室からの油が大容量ポンプ14に逆流しないように逆止弁20を設ける。一方該3位置4方向切換弁13と逆止弁20との間の管路に側路19を設け、該側路19に小容量ポンプ18を連通させる。
かかる構成において、該3位置4方向切換弁13のソレノイドAを選択的に励磁し、該型締シリンダ11のa室と該3位置4方向切換弁とを連通させると、ポンプ14及び18の油が該型締シリンダ11のa室に供給され、同時に該型締シリンダ11のb室の油がタンク17に環流される。また3位置4方向切換弁13のソレノイドBを選択的に励磁すると、ポンプ14,18から室bに油が供給され、同時に室aから油がタンク17に環流される。さらに、該2位置切換弁のソレノイドCを消磁すると、大容量ポンプ14から吐出される油がタンク17に環流され、また逆に該ソレノイドCを励磁すると大容量ポンプ14の油が型締シリンダ11のa室に供給される。
ここまでは、上記従来例と同様であるが、本発明ではさらに上記3位置4方向切換弁13と型締シリンダ11のa室とを結ぶ管路には、同図に明示するように、側路21を設け、該側路21に圧力センサ23と電磁リリーフバルブ24とを直列に設ける。
第2図に示すように、電磁リリーフバルブ24は、定電流増幅器25を介して電圧調整器としての型締圧力設定器26に接続され、さらに型締圧力設定器26からの設定電圧は、演算器27に供給されるようになっている。他方該演算器27には、圧力センサ23からの電圧による信号も供給されるようになっており、さらに演算器27からの出力信号は、リレー駆動回路28を介してリレー29に供給されるようになっている。該リレー29は、第3図に示すように、3位置4方向切換弁13と2位置4方向切換弁16とを動作させる電気回路30に組み込まれ、3位置4方向切換弁13と並列に配設された2位置4方向切換弁16の励磁および消磁を司さどるようになっている。なお、同図において、31は、型締スイッチであって、上記電気回路30を開成または閉成するためのもの、またVは電源である。
第4図は、第2図のブロック線図を具体化した電気回路図であって、上記定電流増幅器25は、第1オペアンプ25Aとトランジスタ25Bとから構成され、また演算器27は第2オペアンプ27Aからなり、該アンプ27Aには、たとえばポテンショメータ24Aからなる圧力センサ23からの電圧信号Q1と、たとえばポテンショメータ26Aからなる型締圧力設定器26からの電圧信号Q2とが供給され、これらの信号電圧Q1,Q2がアンプ27A(演算器)によって加算されるようになっている。そして該信号Q1,Q2の和が零であるとき、演算器27から信号が出力され、リレー駆動回路28が動作する。同回路28としてはトランジスタ28Aが用いられる。そして同回路28が動作すると、リレー29は2位置4方向切換弁16を含む回路をオフとするため、切換弁16は消磁され、油圧ポンプ14からの油圧はカットされることになる。」、及び、第1〜4図の記載によれば、
「(a)小容量ポンプ18と、
(b)該小容量ポンプ18から型締シリンダ11に油を供給するための、側路19を含む管路と
(c)該側路19を含む管路の上記型締シリンダ11側に配設された3位置4方向切換弁13と、
(d)吐出容量が一定の大容量ポンプ14と、
(e)該大容量ポンプ14から型締シリンダ11に油を供給するために配設され、上記側路19を含む管路に合流する管路15と、
(f)大容量ポンプ14の吐出側から2位置4方向切換弁16を介してタンク17に接続されたドレーン油路と、
(g)3位置4方向切換弁13と型締シリンダ11とを連通する管路内の油圧を検出する圧力センサ23と、
(h)検出された油圧と型締シリンダ11の圧力設定とを比較する演算器27と、
(i)該演算器27による比較結果に基づいて上記3位置4方向切換弁13と型締シリンダ11とを連通する管路の油圧が設定値になったかどうかを判断する演算器27と、
(j)上記演算器27からの信号に基づいて前記大容量ポンプ14の吐出側の管路をドレーン油路に接続するように前記2位置4方向切換弁16を切換えるリレー駆動回路28及びリレー29とを有する油圧ポンプ制御回路。」
が、記載されているものと認められる。

また、引用例2には、特に、第5頁第1行〜第6頁第2行「本考案を第3図に示す一実施例によって説明する。
(1)は作動油の入っている油圧タンクであり、該油圧タンク(1)には駆動源(4)によって駆動される可変容量ポンプ(3)の介在する小容量回路ハ、ニ、および駆動源(10)によって駆動される定吐出ポンプ(9)の介在する大量回路イ、ロが連絡する。少量回路の可変容量ポンプ(3)の吸引側ハおよび大量回路の定吐出ポンプ(9)の吸引側イにはサクションフィルター(2),(8)が介在する。また小量回路の可変容量ポンプ(3)の吐出側ニには油の逆流を防ぐチェックバルブ(5)が介在し、大量回路の定吐出ポンプ(9)の吐出側ロには同様に油の逆流を防ぐチェックバルブ(12)が介在する。更に大量回路ロには油圧タンク(1)に連絡する還油回路ヘが連絡し、該還油回路ヘにはリリーフバルブ(11)が介在する。大量回路ロはホ点で少量回路ニと合一して機械要素Pに至るが大量回路ロには更に高圧スイッチ(14)および低圧スイッチ(15)からなる圧力検出手段が連絡し、高圧スイッチ(14)および低圧スイッチ(15)は夫々リリーフバルブ(11)のベント口を開閉する電磁切換弁(13)を制御する。」、第9頁第5〜15行「高圧状態であることをスイッチ(14)で検出し電磁切換弁(13)を停電させてリリーフバルブ(11)のベント口を開放し、かくして定吐出ポンプ(9)から吐出された油の全量が還油回路ヘを介して油圧タンク(1)に還流され、大量回路ロは、無負荷状態となる。そこで再び少量回路ニを介して可変定量ポンプ(3)から圧力に応じた油量が機械要素Pに供給される。高圧状態では上記のように大量回路ロが無負荷状態を維持するから油がリリーフバルブ(11)を通過する際の摩擦熱は殆ど発生せず油温の上昇が少なくなる。」、及び、第3、4図の記載によれば、
(イ)「2台のポンプの吐出側を合流させて油を供給するように構成する際に、ポンプ吐出回路内の油圧が設定値以上になった後も油を供給する方のポンプを可変容量ポンプ(3)とする技術」、
(ロ)「還油回路ヘを、定吐出ポンプ(9)吐出回路から分岐し、リリーフバルブ(11)を介して油圧タンク(1)に接続する技術」、及び、
(ハ)「高圧スイッチ(14)を、少量回路ニと連通する大量回路ロ内の油圧を検出するように設置する技術」が記載されているものと認められる。

4.対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載のものの、「型締シリンダ11」、「3位置4方向切換弁13」、「大容量ポンプ14」、及び、「管路15」は、それぞれ本願発明の、「シリンダ」、「シリンダ方向切換弁」、「固定ポンプ」、及び、「固定ポンプ吐出回路」に相当するとともに、引用例1記載のものの「演算器27」は、検出された油圧とシリンダの圧力設定とを比較し、ポンプ吐出回路内の油圧が設定値になったかどうかを判断しているので、本願発明の「比較器と制御装置」に相当する。また、引用例1記載のものの、「小容量ポンプ18」は、ポンプ吐出回路内の油圧が設定値以上になった後もシリンダに油を供給する、「第1のポンプ」である点で、本願発明の「可変ポンプ」と共通する。
従って、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
(a)第1のポンプと、
(b)該第1のポンプからシリンダに油を供給するための第1のポンプ吐出回路と、
(c)該第1のポンプ吐出回路の上記シリンダ側に配設されたシリンダ方向切換弁と、
(d)吐出容量が一定の固定ポンプと、
(e)該固定ポンプからシリンダに油を供給するために配設され、上記第1のポンプ吐出回路に合流する固定ポンプ吐出回路と、
(f)該固定ポンプ吐出回路から、油タンクに接続されたドレーン油路と、
(g)第1のポンプとシリンダとの間の管路の油圧を検出する圧力センサと、
(h)検出された油圧とシリンダの圧力設定とを比較する比較器と、
(i)該比較器による比較結果に基づいて油圧が設定値になったかどうかを判断する制御装置とを有する油圧ポンプ制御回路。

<相違点>
a.第1のポンプに関し、本願発明では、吐出容量を変化させることができる可変ポンプであるのに対し、引用例1記載の発明では、吐出容量が一定の固定ポンプである点。
b.ドレーン油路に関し、本願発明では、固定ポンプ吐出回路から分岐し、アンロード切換弁を介して油タンクに接続しているのに対し、引用例1記載の発明では、固定ポンプの吐出側から2位置4方向切換弁16を介してタンク17に接続している点。
c.圧力センサが検出する油圧に関し、本願発明では、可変ポンプ吐出回路内の油圧を検出するのに対し、引用例1記載の発明では、第1のポンプとシリンダとの間の管路のうち、シリンダ方向切換弁とシリンダとを連通する管路内の油圧を検出する点で相違する。
d.アンロードに関し、本願発明では、可変ポンプ吐出回路に接続されると共に、制御装置からの信号に基づいてアンロード切換弁にパイロット圧を送ってアンロード切換弁を開放するアンロード切換弁開放手段としているのに対し、引用例1記載の発明では、演算器27からの信号に基づいて固定ポンプの吐出側の管路をドレーン油路に接続するように前記2位置4方向切換弁16を切換えるリレー駆動回路28及びリレー29としている点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
<相違点aについて>
引用例2には、上記3(イ)で摘記したように、「2台のポンプの吐出側を合流させて油を供給するように構成する際に、ポンプ吐出回路内の油圧が設定値以上になった後も油を供給する方のポンプを可変容量ポンプとする技術」が、記載されており、また、引用例2記載のものの「可変容量ポンプ」は、その機能からみて、本願発明の「可変ポンプ」に相当するので、引用例2記載の、「2台のポンプの吐出側を合流させて油を供給するように構成する際に、ポンプ吐出回路内の油圧が設定値以上になった後も油を供給する方のポンプを可変ポンプとする技術」を引用例1記載の、第1のポンプとしての小容量ポンプ18に適用することは、当業者が容易に想到しうることであって、相違点aにおける本願発明に係る構成は、当業者が容易に想到しうる事項にすぎないものと認められる。

<相違点bについて>
引用例2には、上記3(ロ)で摘記したように「還油回路ヘを、定吐出ポンプ(9)吐出回路から分岐し、リリーフバルブ(11)を介して油圧タンク(1)に接続する技術」が、記載されており、また、引用例2記載のものの「定吐出ポンプ」、「リリーフバルブ」は、それらの機能からみて、それぞれ本願発明の「固定ポンプ」、「アンロード切換弁」に相当するので、引用例2記載の「ドレーン油路を、固定ポンプ吐出回路から分岐し、アンロード切換弁を介して油圧タンクに接続する技術」を引用例1記載の発明のドレーン油路に適用することは、当業者が容易に想到しうることであって、相違点bにおける本願発明に係る構成は、当業者が容易に想到しうる事項にすぎないものと認められる。

<相違点cについて>
引用例2には、上記3(ハ)で摘記したように「高圧スイッチ(14)を、少量回路ニと連通する大量回路ロ内の油圧を検出するように設置する技術」が記載されている。この高圧スイッチ(14)は、少量回路ニ内の圧力を直接検出するものではないものの、大量回路ロの圧力センサ設置部と、少量回路ニの大量回路ロとの合流点ホ近傍とは、絞りや弁のような圧力降下を生ずるような要素を介することなく直接的に連通されており、ほぼ等しい圧力になっていることは、当業者にとっては明かであり、高圧スイッチ(14)を少量回路ニの大量回路ロとの合流点ホ近傍の油圧を検出するように設置する技術も、引用例2に実質的に記載されているものと認められる。また、引用例2記載のものの「高圧スイッチ」、「少量回路ニ」及び「大量回路ロ」は、本願発明の「圧力センサ」、「可変容量ポンプの吐出回路」及び「固定ポンプ吐出回路」に相当するので、引用例2記載の「圧力センサを、可変容量ポンプの吐出回路の固定ポンプ吐出回路との合流点近傍の油圧を検出するように設置する技術」を引用例1記載の発明の圧力センサ23に適用することは、当業者が容易に想到しうることであって、相違点cにおける本願発明に係る構成は、当業者が容易に想到しうる事項にすぎないものと認められる。

<相違点dについて>
2台のポンプの吐出側を合流させて油を供給するように構成する際に、一方のポンプがアンロード状態になった後も油を供給する、他方のポンプの吐出回路に接続されると共に、制御装置からの信号に基づいてアンロード切換弁にパイロット圧を送ってアンロード切換弁を開放するアンロード切換弁開放手段を設けることは、周知(例えば、実願昭58-166059号(実開昭60-75701号)のマイクロフィルムの第5頁第1〜12行には、図面を参照し、「しかして、ブーム16が下方位置でバケット14が下方に位置している時、つまり土砂掘削状態の時にはスイッチ18がONしないからソレノイド12は励磁されずに切換弁11は連通位置1に保持されている。したがって、バケットシリンダ13に圧油を供給してバケット14を作動し、第1・第2ポンプ2,3の吐出路21,31の圧力(各操作弁入口圧力)が高くなってアンロード弁7がアンロード状態となって第2ポンプ3の吐出圧油がドレーンに流出してアンロード状態となり、原動機1の過負荷を防止できる。」と記載されている。)であり、この周知の技術を引用例1記載の発明のアンロードに適用することは、当業者が容易に想到しうることである。したがって、相違点dにおける本願発明に係る構成は、当業者が容易に想到しうる事項にすぎないものと認められる。

また、本願発明の構成によってもたらされる、(a)保圧行程への切換が正確かつ迅速に行える、(b)油の流出による騒音が小さくなり、エネルギーロスも小さくなるとともに、圧力制御を正確に行うことができる、(c)消費電力を少なくすることができる、という効果も、引用例1及び2記載のもの及び上記周知の技術から当業者が予測しうる程度のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明および上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-22 
結審通知日 2001-01-12 
審決日 2001-01-23 
出願番号 特願平2-302524
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩崎 晋  
特許庁審判長 藤田 豊比古
特許庁審判官 飯塚 直樹
清水 信行
発明の名称 油圧ポンプ制御回路  
代理人 羽片 和夫  

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