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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1034603
審判番号 審判1998-3254  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-03-03 
確定日 2001-03-19 
事件の表示 平成 5年特許願第 38270号「マイクロコンピュータ」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 9月 9日出願公開、特開平 6-250857]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯及び本願発明の要旨
本願は、平成5年2月26日の出願であって、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)の要旨は、平成12年11月17日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「分岐命令を含む複数のプログラムを数サイクル毎に一定時分割で切り換えながら並行処理する機能を備えたマイクロコンピュータにおいて、
前記複数のプログラムのうちの特定のプログラムとして、分岐命令を含まず全ての命令が1ワード固定長とされ、また固定ループ化されたプログラムを有し、さらに当該特定のプログラムが固定ループ動作によるタイマ機能を備えることを特徴とするマイクロコンピュータ」

2.周知技術及び引用例記載の発明
(1)一般にコンピュータの技術分野において、複数のプログラムを数サイクル毎に一定時分割で切り換えながら並行処理する機能を備えたマイクロコンピュータは、例えば、本件出願人が明細書の【従来の技術】欄において提示している特開昭59-191654号公報、また、原査定の理由に引用された特開昭54-138354号公報等に記載されているように周知である。なお、上記複数のプログラムに分岐命令が含まれているか否かについては、例えば上記文献には特に明記されていないが、技術常識を加味すれば当然分岐命令を含むものと認められる。
(2)また、当審の拒絶の理由において引用した、特開昭62-75733号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
(a) 「次に、上記のように構成されるマイクロコンピュータの動作を具体的な例にしたがって説明すると、まずプログラムは(1〜4)、(5〜8)、(9〜12)、(13〜16)の4つのグループに分け、この各グループをそれぞれサブプログラムA、B、C、Dと呼ぶことにする。そして、この各サブプログラム内の命令の実行順序は、プログラムカウンタ22の下位2ビットによって決定されるもので、例えば記憶要素21aに設定されるサブプログラムAにあっては、1→2→3→4のように先頭から順番に実行される。また、上記サブプログラムA〜Dの実行順序は、プログラムカウンタ22の上位4ビットのデコーダ24をプログラムすることによって決定されるようになる。例えば、プログラムカウンタ22の上位4ビットの計数値に対応して、A→B→A→C→A→D→A→B→A→Dの繰返しのようにサブプログラムの実行順序がデコーダ24に設定されるものである。この場合、上記サブプログラムAに対して、外部からのデータ取り込み処理しフラグを立てるプログラムを設定したとすると、上記プログラムの一周が40命令サイクルであるのに対して、データの取り込み処理はプログラムカウンタ22の下位2ビットに対応する4命令サイクル毎に実行され、高速のデータ取り込み処理が可能な状態となるものである。しかも、この命令サイクルは常に40命令サイクルに設定されるものであり、ジャンプ命令等が存在しないものであるため、タイマー動作が容易に実行できるようになる。そして、プログラムの暴走が発生する危険も効果的に抑制できるものである。」(第3頁左上欄第6行〜同頁右上欄第18行)
そして、上記記載の特に「しかも、この命令サイクルは常に40命令サイクルに設定されるものであり、ジャンプ命令等が存在しないものであるため、タイマー動作が容易に実行できるようになる。」との記載から、プログラム中にジャンプ命令等が存在しない、すなわち分岐命令が存在しないものとすることにより、該プログラムが常に固定命令数つまり一定時間で1周し、該プログラムを繰り返し実行することによりタイマー動作が可能となることが示唆されているものと認められる。
(3)また、当審の拒絶の理由において周知例として引用した、「金田悠紀夫著「マイクロプロセッサとRISC」(平3-5-25)、株式会社オーム社、p.94-101」の例えば第96頁第7行〜11行には「そこで限られたチップ中の素子を有効利用した新しいアーキテクチャを求め、次のような制約のもとに新しく設計された。(1)1サイクル命令の実現で、命令は通常のマシンのマイクロ命令程度の複雑さにし、マイクロプログラムを用いないで実現する。(2)全ての命令は同一サイズとする。」と記載され、また、同様に周知例として引用した「D.タバク著、大森健児訳「RISCシステム」(平3-11-1)、海文堂出版株式会社、p.9-13」の例えば第10頁第5行〜10行には「パイプライン処理を流れるように行うための必要条件をまとめると次のようになる。(a)すべての命令の長さが標準的で、固定されていること。すなわち、コンピュータのワード長およびデータバスの幅に命令長が等しいこと。(b)すべての命令の実行時間が標準的であること。とくに1CPUサイクルで実行されることが望ましい。」と記載されているように、すべての命令を1ワード固定長とすること自体は単なる周知技術である。

3.対比
本願発明と上記2.(1)で示した周知のマイクロコンピュータの発明とを比較すると、両者は、
分岐命令を含む複数のプログラムを数サイクル毎に一定時分割で切り換えながら並行処理する機能を備えたマイクロコンピュータ
である点で一致し、
本願発明が、
複数のプログラムのうちの特定のプログラムとして、分岐命令を含まず全ての命令が1ワード固定長とされ、また固定ループ化されたプログラムを有し、さらに当該特定のプログラムが固定ループ動作によるタイマ機能を備える
点において相違するものと認められる。

4.相違点についての判断
上記相違点について、上記引用例には上記2.(2)で示したように、分岐命令を含まないプログラムを繰り返し実行する(すなわち固定ループ化する)ことによりタイマ動作が可能となることが示されている。また、並行処理対象となる複数のプログラムは、そもそも分岐命令の有無にかかわらず実行可能であることは明らかであるから、本願発明の前記分岐命令を含まないプログラムを並行処理対象の複数のプログラムのうちの特定のプログラムとすること自体には、格別の技術的な阻害要因となるものは見当たらず、また、該プログラムと他のプログラムとの間の関係についても特に規定されているわけではないから、この点については複数のプログラムのうちの1つとして前記分岐命令を含まないプログラムを単に選択したという程度のものに過ぎない。
したがって、本願発明は、周知の並行処理する機能を有するマイクロコンピュータにおいて、処理対象とする複数のプログラムのうちの特定のプログラムとして、引用例記載のタイマ機能を備えた分岐命令を含まない固定ループ化されたプログラムを単に選択することにより、当業者が容易になし得たことであると言わざるを得ない。
なお、本願発明の前記全ての命令を1ワード固定長とする点は、上記2.(3)で示したように周知の技術であり、どのような命令セットを選択するかは当業者が適宜決定し得た事項であるから、この点は単なる設計的事項と判断される。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-19 
結審通知日 2001-01-05 
審決日 2001-01-16 
出願番号 特願平5-38270
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 光宏  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 金子 幸一
吉見 信明
発明の名称 マイクロコンピュータ  
代理人 碓氷 裕彦  

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