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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J
管理番号 1034639
審判番号 審判1999-17422  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-07-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-04 
確定日 2001-03-07 
事件の表示 平成 3年特許願第354459号「金属缶外面貼合せ用白色ポリエステルフイルム」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 7月 9日出願公開、特開平 5-170942]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 (1)手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年12月20日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下それぞれ「本発明1」及び「本発明2」という。)は、平成11年4月21日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】平均粒径が0.1〜1.5μmの範囲にある白色顔料を粒子個数として1×108個/mm3以上含有し、融点が210〜245℃の範囲にある共重合ポリエステルからなり、フイルムの厚み方向の結晶配向度が0.25〜0.55の範囲にあることを特徴とする金属缶外面貼合せ用二軸配向白色ポリエステルフイルム。
【請求項2】フイルムを金属板に貼合せた後、フイルムが容器の外面になるように容器に成形加工する請求項1記載の金属缶外面貼合せ用二軸配向白色ポリエステルフイルム。」
(2)引用例
これに対して、原審の拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布されたことの明らかな特開平2-305827号公報(以下「引用例1」という。)及び特開平3-86729号公報(以下「引用例2」という。)には、それぞれ次の記載が認められる。
1)引用例1
「平均粒径2.5μm以下の滑剤を含有し、融点が210〜245℃の共重合ポリエステルからなり、面配向係数が0.060〜0.110であることを特徴とする成形加工用ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲)
「無機系滑剤としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が例示でき、……できる。いずれも平均粒径2.5μm以下であることを要する。……。
共重合ポリエステル中の滑剤の量は、フイルム製造工程における巻取性によって決めるとよい。……。また意図的に滑剤の含量を調整することにより、フイルムを不透明化することもできる。例えば二酸化チタンを10〜15重量%添加することにより、白色のフイルムとすることができる。」(第2頁右上欄11行〜同左下欄9行)
「上記面配向係数を得るには、逐次二次延伸において縦延伸倍率を2.7〜3.5倍、横延伸倍率を3.0〜3.6倍、熱固定温度を180〜220℃として延伸熱処理するとよい。更に好ましく、かかる条件の中から面配向係数が0.060以上0.110以下になる条件をみつけて、二軸延伸、熱固定処理を行うとよい。」(第3頁左上欄7〜13行)
「本発明のポリエステルフイルムは耐ピンホール性、深絞り成形性、折曲げ加工性等に優れ、成形加工用特に単独、或は他の素材例えばプラスチック、金属板等と貼合せた後の容器等の深絞り成形用として優れたものである。」(第4頁右下欄5〜9行)
引用例1の実施例1には、イソフタル酸12モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(融点229℃)を用い、縦延伸温度、縦延伸倍率、横延伸温度、横延伸倍率及び熱固定温度をそれぞれ、80(℃)、3.2(倍)、110(℃)、3.35(倍)、215(℃)とすることが記載され、面配向係数が0.062であることが記載されている。また、実施例3は、同じくイソフタル酸12モル%共重合体ポリエチレンテレフタレートを使用し、滑剤として0.3μmの二酸化チタンを10%添加するもので、同じく上記の延伸条件及び熱固定温度として、それぞれ80(℃)、3.3(倍)、110(℃)、3.5(倍)、210(℃)とし、面配向係数が0.108であることが記載されている。
2)引用例2
「融点が210〜245℃の共重合ポリエステルからなり、面配向係数が0.10〜0.16、150℃での熱収縮率が10%以下、密度が1.385g/cm3未満であることを特徴とする成形加工用ポリエステルフイルム。」(特許請求の範囲)
「上述した面配向係数、熱収縮率(150℃)及び密度を満足するポリエステルフイルムを得るには、例えば逐次二軸延伸において、縦延伸倍率を2.5〜4.0倍の範囲から、横延伸倍率を2.7〜4.0倍の範囲から、熱固定温度を150〜220℃、好ましくは180〜200℃の範囲から選定し、これらを組合せることで行うとよい。」(第3頁右上欄14〜20行)
また、その実施例には縦延伸温度として90℃、横延伸温度として110℃とすることが記載されている。
(3)対比・判断
引用例1には、共重合ポリエステルに本発明1でいうところの白色顔料である二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを滑剤として添加すること、特に二酸化チタンについては、10〜15重量%添加して白色のフイルムとすることが記載され、その具体例である実施例3は平均粒径0.3μmの二酸化チタンを10%添加するものであるから、これらは本発明の「白色顔料を粒子個数として1×108個/mm3以上含有」に相当するものと認められるので、本発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、平均粒径が0.1〜1.5μmの範囲にある白色顔料を粒子個数として1×108個/mm3以上含有し、融点が210〜245℃の共重合ポリエステルからなる二軸配向白色ポリエステルフイルムである点で一致し、本発明1では、フイルムの厚み方向の結晶配向度が0.25〜0.55の範囲とするのに対し、引用例1では面配向係数が0.060〜0.110であるとしている点(以下「相違点1」という。)、及び本発明1では該フイルムを「金属缶外面貼合せ用」とするのに対し、引用例1では、「金属板等と貼合せた後の容器等の深絞り成形用」とする点(以下、「相違点2」という。)で相違するものと認められる。
上記相違点を検討するに、まず上記相違点2については、引用例1には「缶外面」との直截な記載はないとしても「金属板と貼合せた後、容器等の深絞り成形」を行う点では同じであり、この点は、当業者が適宜なし得ることに過ぎないものである。
次に、上記相違点1について検討する。
本発明1において、厚み方向の結晶配向度が0.25〜0.55の範囲とすることについて、明細書では、逐次二次延伸による方法が記載され、延伸条件(縦及び横延伸の温度・倍率)及び熱固定温度が設定されており、また、引用例1においても、同じ逐次二次延伸を使用し、延伸条件・熱固定温度を適宜設定して面配向係数の条件を満たすようにするとあり、厚み方向の結晶配向度も、面配向係数も逐次二次延伸における延伸条件及び熱固定温度を適宜設定することによって得られるものである点で一致している。
そこで、上記延伸条件及び熱固定温度について、さらに検討すると、縦延伸倍率及び横延伸倍率はほとんど同じ条件が設定され、熱固定温度においては引用例1では若干高い設定ではあるが、重なる範囲が存在している。また、延伸温度については、本発明1の実施例では縦延伸温度は80〜105℃、横延伸温度は100〜130℃がそれぞれ採用され、引用例1の実施例ではそれぞれ80℃と110℃が採用されている。すなわち、延伸条件においてはほぼ一致し、熱固定温度では、重なる範囲を有するものであることは明らかである。そして、引用例2においても、同じ融点範囲を有するポリエチレンテレフタレートが使用され、その延伸条件・熱固定温度は、本発明1におけるものと一致しており、本発明1の延伸条件・熱固定温度は特別なものとは認められない。
また、イソフタル酸12モル%共重合体ポリエチレンテレフタレートを使用する例について見てみると、本発明1の実施例2と実施例3では、延伸温度及び熱固定温度が同じであるにもかかわらず、実施例2より実施例3の方が延伸倍率が大きい(縦延伸3.0→3.4、横延伸3.0→3.5)ため、結晶配向度が0.32→0.54と高い値となっている。引用例1においても、実施例1と実施例3を比較すると、同様に延伸温度が同じで、熱固定温度が実施例3の方が低いにもかかわらず、実施例1より実施例3の方が延伸倍率が大きい(縦延伸3.2→3.3、横延伸3.35→3.5)ため面配向係数は0.062→0.108と高い値に変化している。その他の場合を検討しても同様であり、結晶配向度も面配向係数も延伸倍率を上げることによりそれらの値が上昇することは明らかである。
出願人は、当審における審尋に対する回答書において、高濃度の白色顔料による成形性に関する問題について、「本発明は、製造条件を特定範囲に規定することにより結晶配向度を低めに抑えるという手段で前記課題を解決するものである。」(平成12年10月16日付「回答書」第2頁最下行〜第3頁2行)としている。
そうであるならば、引用例1において、高濃度の白色顔料を添加することが記載され、また結晶配向度も面配向係数も同様の相関関係を有しているものであるから、結晶配向度を低めに抑えるためには、引用例1及び2に記載の面配向係数の数値が低くなるように設定すればよいということになり、そして、そのための延伸条件及び熱固定温度は、上記のとおり引用例1及び2に記載されているものとほぼ一致するものである。すなわち、一致する製造条件によって得られた共重合ポリエステルについて、引用例1及び2における面配向係数に代えて単に結晶配向度として表現したものに過ぎず、また、結晶配向度自体よく知られたものであるから、当業者であれば容易になし得たところと言うべきものである。
そして、引用例1も成形性改善のために面配向係数が設定されており、本発明1も同様に成形性の改善を目的とするものであるから、そのことによって格別顕著な作用効果を奏しているとも認められない。
よって、本発明1は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本発明2は、本発明1を引用し、「フイルムを金属板に貼合せた後、フイルムが容器の外面になるように容器に成形加工する」ものであるが、引用例1には、外面にすることの記載はないとしても、外面になるように貼合せることは当業者であれば容易に設定し得ることに過ぎないことであるから、上記本発明1における同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
したがって、本発明1及び2は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-19 
結審通知日 2001-01-05 
審決日 2001-01-16 
出願番号 特願平3-354459
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子三谷 祥子  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 佐野 整博
中島 次一
発明の名称 金属缶外面貼合せ用白色ポリエステルフイルム  
代理人 前田 純博  

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