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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09K
管理番号 1034783
審判番号 審判1997-7543  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-05-14 
確定日 2001-04-18 
事件の表示 昭和60年特許願第 13590号「強誘電性液晶組成物」拒絶査定に対する審判事件〔昭和61年 8月 5日出願公開、特開昭61-174294、平成 7年 3月 1日出願公告、特公平 7- 17904、特許請求の範囲に記載された発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 (1)手続の経緯
本願は、昭和60年1月29日の出願であって、平成7年3月1日に出願公告されたところ、特許異議の申立てがなされ、その特許異議の申立ては理由があるものと決定され、その特許異議決定の理由により拒絶査定されたものである。
(2)本願発明
本願発明の要旨は、出願公告後の平成8年3月11日、平成9年6月13日および平成12年3月28日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「1.コレステリック相、あるいはネマチック相に添加した場合において左らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種と、右らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種を含み(ただし下記の組成物1、組成物2および組成物3を除く)、かつ該光学活性化合物の強誘電性スメクチック相における自発分極は、スメクチック層垂線方向と、該層垂線方向からの分子のチルト方向とに対し、同一方向の極性を有し、自発分極の大きさが4.8nC/cm2 以上であり、強誘電性スメクチック相と等方相との間の温度域にコレステリック相を示し、該コレステリック相において、らせんピッチが4μm以上であることを特徴とする強誘電性液晶組成物。
組成物1
化合物C8 H17O-Ph-CO-O-Ph-Y1 (左らせん)と、
化合物C8 H17O-Ph-Ph-CO-Y1 (右らせん)とからなる組成物
組成物2
化合物C8 H17O-Ph-CO-O-Ph-Y1 (左らせん)と、
化合物C9 H19O-Ph-CO-O-Ph-Y1 (左らせん)と、
化合物C6 H13O-Ph-Ph-CO-O-Ph-Y1 (左らせん)と、
化合物C8 H17O-Ph-CO-O-Ph-CO-Y1 (右らせん)と、
化合物C8 H17O-Ph-Ph-CO-O-Ph-CO-Y1 (右らせん)とからなる組成物
組成物3
化合物R-(Ph)m -X-(Ph)n -Y1 (左らせん)または
化合物R-(Ph)m -X-(Ph)n -CO-Y2 (左らせん)と、
化合物R-(Ph)m -X-(Ph)n -Y2 (右らせん)または
化合物R-(Ph)m -X-(Ph)n -CO-Y1 (右らせん)とを含む組成物
ここで、
Y1 は-O-CH2 -C* H(CH3)-C2 H5 であり、
Y2 は-O-C* H(CH3)-C6H13であり、
Phはパラフェニレン基であり、
Xは-CO-O-、-CH=N-、-O-CO -、-N=CH-または単結合であり、
Rは炭素数1〜18のアルキル基またはアルコキシ基であり、
mは1または2であり、
nは1または2である。」
(3)原査定の理由
これに対し、原査定の拒絶の理由となった特許異議決定の理由の概要は、この出願の発明は、その出願前に頒布された刊行物である、特許異議申立人チッソ株式会社が提出した甲第2号証(Mol.Cryst.Liq.Cryst.[1984],Vol.110,pp.175-203;以下、「引用例」という。)に記載の発明および、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
(4)対比と判断
引用例には、[イ]「分子の不斉中心における立体配置はらせん相の全光学活性を決定し、絶対配置とらせんのねじれ方向とカイラル中心の位置に関して、コレステリック相における規則と同様な規則がスメクチック相においても成り立つ。」(189頁13〜21行)、[ロ]「自発分極の極性の方向は、混合物の総分極を最大にするために、混合物のすべての材料について同じでなければならない。かくして大きな自発分極となる。」(201頁2〜4行)、[ハ]「らせんのねじれ方向が同じ成分からなる混合物には、スメクチック相におけるらせんピッチを変えるため、また、ピッチを増大させるために、少なくとも一つのらせんのねじれ方向が反対の材料を加えることが必要である。」(201頁6〜8行)と記載されている。
上記記載の[ハ]の「らせんのねじれ方向が同じ成分からなる混合物には、少なくとも一つのらせんのねじれ方向が反対の材料を加えることが必要である。」とは、本願発明の「左らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種と、右らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種を含み」に相当すると認められ、また、このことは、[イ]の記載からコレステリック相とスメクチック相において成り立ち、本願発明の「スメクチック相において、コレステリック相に添加した場合に左右のらせんを生じる化合物」に相当すると認められ、[ロ]の「自発分極の極性の方向は同じでなければならない」とは、本願発明の「強誘電性スメチック相における自発分極は、スメチック層垂線方向と該層垂線方向からの分子のチルト方向とに対し、同一方向の極性を有し」に相当すると認められる。
したがって、本願発明と引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を対比すると、両発明は「コレステリック相に添加した場合において左らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種と、右らせんを生じる光学活性化合物の少なくとも1種を含み、かつ該光学活性化合物の強誘電性スメチック相における自発分極は、スメチック層垂線方向と該層垂線方向からの分子のチルト方向とに対し、同一方向の極性を有する強誘電性液晶組成物。」においては一致するものである。
しかし、本願発明が「自発分極の大きさが4.8nC/cm2 以上であり、強誘電性スメクチック相と等方相との間の温度域にコレステリック相を示し、該コレステリック相において、らせんピッチが4μm以上である」ことを構成要件とするのに対して、引用発明はこれらの要件を備えていない点において、両発明は相違している。
これらの相違点を検討すると、「強誘電性スメクチック相と等方相との間の温度域にコレステリック相を示す」ことは普通に知られていることではあるが、このことと、「自発分極の大きさが4.8nC/cm2 以上であり、該コレステリック相において、らせんピッチが4μm以上である」の規定とを組み合わせ、さらに上記の引用例の記載事項とを組み合わせて、本願発明の構成とする必然性は認め難く、また、本願発明は、左らせん化合物と右らせん化合物とを共存させ、長ピッチ化すると同時に自発分極の大きさに悪影響させないという、特別の課題を解決するために、これらの組み合わせを採用したものであり、さらに、本願発明は、上記の相違点を備える構成によって、自発分極を小さくすることなく、らせんピッチを長くすることを可能とし、その結果、低電圧駆動、高速応答あるいは均一な配向制御が実現でき、併せて、SmC*相のらせんピッチも同様に長くできメモリー性の向上が期待できるという、本願明細書に記載の 顕著な効果を奏するものである。
よって、本願発明が、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、本願を拒絶するべきであるとした原査定は、妥当ではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-03-22 
出願番号 特願昭60-13590
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 小島 隆
柿崎 良男
発明の名称 強誘電性液晶組成物  

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