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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1034874
審判番号 不服2000-13181  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-21 
確定日 2001-04-24 
事件の表示 平成 1年特許願第505554号「大型内蔵低周波スピーカ付テレビ受像機用ステレオ型オーディオ装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 1年11月16日国際公開、WO89/11198、平成 3年 7月25日国内公表、特表平 3-503349、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1989年5月9日(パリ条約による優先権主張1988年5月6日)の出願であって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成12年9月20日付けの手続補正書により補正された明細書の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】
ブラウン管と、大型内蔵低周波スピーカと、テレビ受像機の前面パネルに向けられたツィータとを備え、少なくとも一つの低周波再生用スピーカ(4)は、前記テレビ受像機のキャビネット内の後方部分に配列されて、箱体(6)に取り付けられており、前記箱体は、ブラウン管とキャビネットの側面とで形成される空間に適合するように、前記箱体の前方部分が水平断面においてその後方部分より幅が狭く、かつ、前記箱体の水平断面がその後方からその前方へ連続的に変化しており、前記テレビ受像機の前面パネルの片側に向けられた開□部を有することを特徴とする大型内蔵低周波スピーカ付テレビ受像機用ステレオ型オーディオ装置。
【請求項2】
箱体(6)に吸音材(14)が充填されていることを特徴とする請求項1に記載のオーディオ装置。
【請求項3】
前記箱体で占められていない前記キャビネットの後部カバー(9)と、このキャビネットの内周面とに、吸音材が裏打ちされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のオーディオ装置。

2.拒絶査定の概要
拒絶査定の理由は、上記手続補正前の明細書の請求項1ないし4に係る発明は実願昭61-182662号(実開昭63-183788号)(引用例2)の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一であるから、特許法29条の2の規定により特許を受けることができないというものであり、その備考欄には以下のように記載されている。

請求項1、2に記載の発明と引用例2に記載された装置を比較すると、低周波再生用スピーカが取り付けられる箱体が、本願発明のものは前方部分が後方部分より(水平断面で)幅が狭くなっている点で引用例2のものと一応相違する。
しかしながら、引用例2にも記載があるように、テレビ受像機においてスピーカ部分を目立たないように構成すること(スピーカを大きくする事なく構成すること)は当業者であれば常に考慮する事項であり、引用例2のスピーカが取り付けられる箱体の前方部の幅を狭くすることは当業者にとって必要に応じてなし得る単なる設計的事項に過ぎないと認められる。また、当該構成の変更に基づく格別の技術的効果も認められない。
さらに、スピーカを設ける箱体に吸音材を充填すること、内周面に吸音材を被 覆することは周知技術であり、請求項3、4の発明は当該周知技術を引用例2で示される装置に単に適用したに過ぎないものと認める。

3.先願明細書の記載事項
拒絶査定の理由において引用された実願昭61-182662号(実開昭63-183788号)の出願当初の明細書又は図面には以下の事項が記載されている。

マイクロフィルム第4頁ないし第6頁には、
「第1の実施例のスピーカシステムを第1図〜第4図によって説明する。この実施例のスピーカシステムはテレビ受像機のスピーカシステムに関するものであって、テレビ受像機はCRT10を備えており、このCRT10が第2図および第3図に示すように外筺11のほぼ中央部に配されている。そしてこのテレビ受像機はスピーカシステムを構成するための左右一対の高音用スピーカ13と、左右一対の低音用スピーカ14とを備えている。そして外筺11内の余った空間であってCRT10の両側の空間にはバスレフ型キャビネット15が配されており、このキャビネット15に上記低音用スピーカ14が取付けられている。キャビネット15のダクト16は前方へ延出されるとともに、ポート17が全面に解放されるようになっている。
このように本実施例に係るスピーカシステムは、筺体11内の空間を有効に利用してバスレフ型のキャビネット15を内蔵するようにし、そのダクト16のポート17をテレビ受像機の全面まで延長するようにしている。そして左右両側のキャビネット15にそれぞれ左右の低音用スピーカ14を取り付けるようにしている。したがって、筺体11の内部の余った空間を有効に利用してバスレフ型キャビネット15によって低音不足が解消されることになる。」
と記載されている。

そして、第1図ないし第3図には、水平断面において前方部分から後方部分にかけて同じ幅を有しているバスレフ型キャビネット15が図示されている。

4.請求項1に係る発明について
(1)対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「請求項1発明」という。)と先願の出願当初の明細書に記載された発明(以下、「先願発明」という。)は、
「ブラウン管と、大型内蔵低周波スピーカと、テレビ受像機の前面パネルに向けられたツィータとを備え、少なくとも一つの低周波再生用スピーカは、前記テレビ受像機のキャビネット内の後方部分に配列されて、箱体に取り付けられている大型内蔵低周波スピーカ付テレビ受像機用ステレオ型オーディオ装置。」
である点で一致しているが、
請求項1発明は、
「前記箱体は、ブラウン管とキャビネットの側面とで形成される空間に適合するように、前記箱体の前方部分が水平断面においてその後方部分より幅が狭く、かつ、前記箱体の水平断面がその後方からその前方へ連続的に変化しており、前記テレビ受像機の前面パネルの片側に向けられた開□部を有する」
のに対して、
先願発明は、
「2個の箱体(バスレフ型キャビネット15)が、外筺11内の余った空間であってCRT10の両側の空間にそれぞれ配置されており、各箱体は、それぞれ、水平断面において前方部分から後方部分にかけて同じ幅を有しており前記テレビ受像機の前面パネルの片側に向けられた開□部を有している」
点で相違している。

(2)判断
前置報告書(請求人には通知されていない。)に引用文献2として記載された実開昭60-19274号のマイクロフィルムには、「動電型スピーカの振動板全面部に先端開口部に進むにしたがって小径となる音響管を取り付け、そのスピーカと音響管をこの音響管開口部がテレビジョンセットの全面パネル部に露出するようにテレビジョンキャビネット内部に収納したもので、テレビジョンセットの前面で重低音の再生が可能なもの」(3頁ないし4頁、第2図、第3図参照)が記載されているが、この公知文献だけを根拠として、上記の相違点が課題解決のための具体化手段における微差(周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等であって、新たな効果を奏するものではないもの)であるとはいえない。また、他に上記相違点が課題解決のための具体化手段における微差であることを証明する証拠は発見できない。
したがって、請求項1発明は上記先願の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一ということはできない。

5.請求項2、3に係る発明について
請求項2、3に係る発明は、請求項1発明を引用した発明であるから、上記4と同様な理由により、上記先願の出願当初の明細書又は図面に記載された発明と同一ということはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、拒絶査定の理由によっては、請求項1ないし3に係る発明を拒絶することはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る発明を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-04-12 
出願番号 特願平1-505554
審決分類 P 1 8・ 161- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤内 光武山崎 達也  
特許庁審判長 井上 雅夫
特許庁審判官 橋本 恵一
小林 秀美
発明の名称 大型内蔵低周波スピーカ付テレビ受像機用ステレオ型オーディオ装置  
代理人 玉真 正美  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 橘谷 英俊  
代理人 前島 旭  

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