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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1035064 |
審判番号 | 不服2000-6264 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-02-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-04-27 |
確定日 | 2001-04-12 |
事件の表示 | 平成10年特許願第222128号「記録媒体」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 2月25日出願公開、特開2000- 57747]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成10年8月5日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年7月29日付け及び平成12年5月26日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という) 「【請求項1】 一または複数の記録媒体にそれぞれ記録された一連のオーディオ信号を一単位としてコンピュータに読み取らせ、前記コンピュータにデジタルオーディオレコーダを制御させることにより、それらの内の任意の一単位または複数単位を選択的に前記デジタルオーディオレコーダに装入された記録媒体に記録させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、 個々の記録媒体からそれらに記録されているオーディオ信号をデジタルデータとしてコンピュータに読み取らせるプログラムコードと、 読み取られたデジタルデータを圧縮符号化して前記記憶装置にコンピュータに書き込ませて記憶させるプログラムコードと、 前記記憶装置に記憶されたデータから任意の単位の選択をコンピュータに受け付けさせるプログラムコードと、 選択された単位のデータを記録媒体に記録されるべきオーディオ信号の単位とした仮想記録媒体をコンピュータに生成させるプログラムコードと、 前記仮想記録媒体を構成するオーディオ信号各単位の内容を示す内容情報としてテキストデータの入力をコンピュータに受け付けさせるプログラムコードと、 入力されたテキストデータに従って内容情報をコンピュータに作成させるプログラムコードと、 仮想記録媒体を構成する各単位のデータを前記記憶装置からコンピュータに読み出させるプログラムコードと、 前記記憶装置から読み出された圧縮符号化データをコンピュータに伸張復号させるプログラムコードと、 前記記憶装置から読み出されたデータをオーディオ信号としてコンピュータに記録媒体への記録を行なわせるプログラムコードと を含むプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 2.引用例 これに対して、前置審査における拒絶の理由に引用された「CD-R/RW焼き込みマル必テクニック、DOS/V(ドスブイ)マガジン1998年6月15日号、ソフトバンク株式会社、平成10年6月15日、第7巻第12号通巻113号、p.156〜171」(以下、「引用例」という)には、以下の記載がある。 (a)「今日では、CD-Rドライブと書き込みソフトがセットとして売られているので、付属の書き込みソフトを使用することになる。しかし、CD-Rドライブの機能や性能は、書き込みソフトによるところが大きいので、気になるようであれば変えてみるのもいい。「EASY CD CREATOR」や「B's Recorder GOLD」「WinCDR」などは、使いやすくて人気がある。」(第158頁記事本文左欄第18行〜中央欄第6行) (b)「ハードウエアについての要求も、ほかのリムーバルデバイスと比べ若干高くなる。(中略)とはいえ、現在ストレスなくWindows 95が動作しているPCならまず問題ない。」(第158頁記事本文中央欄8〜16行) (c)「パッケージ製品のEASY CD CREATORデラックス版は、音楽CD、ビデオCD、Photo CDなどの制作に特化したソフトウエアが追加されている。」(第158頁右欄のパッケージ写真のコメント) (d)「まず、[1.音楽ソースの選択]ボタンを押すと、使用可能なサウンド入力が一覧表示される。ここでは、CDからのサンプリングを選ぶ(画面2,3)。」(第168頁記事本文中央欄第10〜14行) (e)「画面2,3 [1.音楽ソースの選択]ボタンで、入力デバイスを選ぶ。CDをソースに指定した場合、トラック単位で吸い出すことができる。(第168頁下部『映像&HTML素材提供:「まにきゅあ団セピア3D/G+EX」』中の中央付近の記載。) (f)「・トラック 書き込みソフトを使ってCD-Rにデータを書き込む場合の最小単位。音楽CDの場合には1曲が1トラック、データCDでは1回の書き込み全体が1トラックとなる。」(第160頁コラム左欄第16〜19行)) (g)「[3.音楽録音先の選択]は、CD-Rへの書き込み方法を指示できる。そのままオンザフライで読み込みながら書き込むか、HDDにWAVファイルを作ってから書き込むかをここで指定する。HDDの空き容量があまりない場合を除いて、書き込み先はHDDに指定した方が無難だ。」(第168頁記事本文右欄第19行〜第169頁記事本文左欄第4行) (h)「CD-R作成を行うPCマシンパワーの低かったころには、一度CDのディスクイメージをHDD上に構成してからそれをCD-Rに書き込んでいた。(中略)もっとも、安全性を求めるのなら一度イメージを作った方が確実なのは現在でも変わらない。」(第160頁コラム右欄26〜37行) (i)「画面8 CDスピンドクターで作成したWAVファイルを、[音楽CDレイアウト]タブにドロップしてやればオーディオを配置できる。配置後でも曲順の変更は可能だ」(第169頁上部『映像&HTML素材提供:「まにきゅあ団セピア3D/G+EX」』中の上部中央付近の記載。) (j)「[データCDレイアウト][音楽CDレイアウト]の左下の部分に準備しておいた素材からそれぞれドラッグ&ドロップし、メニューからファイル[ファイル]-[CDレイアウトのプロパティ]を選択する。」(第169頁記事本文中央欄第11〜15行) (k)「[一般設定]タブのボリュームラベルは、アンダーバーを含む英数字8文字+3文字以内に設定しよう。CDタイトル、アーティスト名には漢字を使ってもかまわない(画面8,9)。 CD EXTRAでは、オーディオ部分の情報をデータ部分に格納できるようになっている。先ほど設定したCDタイトル、アーティスト名はここに格納される。このCD EXTRAのデータ部分には、このほかジャケットの画像、各トラックの曲名などを入れることが可能だ。」(第169頁記事本文中央欄第17〜27行) (l)「あとは普通にCDを焼く手順を追えば、すべてEASY CD CREATORが作成してくれる。」(第169頁記事本文右欄第7〜9行) これらの記載を総合すると、引用例には 「CDに記録された曲を一単位としてサンプリングし、レイアウトした曲を書き込みソフトがCD-Rドライブに装入されたCD-Rに記録させるPCで使用可能なパッケージソフトであって、 上記ソフトを用い、 CDに記録されている音楽データを曲単位でサンプリングし、 サンプリングした曲をWAVファイルにしてHDDに書き込み、 HDDに書き込まれたWAVファイルに対して、曲順の変更などのレイアウトをして、CDのディスクイメージをHDD上に構成し、 各トラックの曲名を入れ、 CDを焼く手順を追ってCD-Rに書き込む ことができる、PCで使用可能なパッケージソフト。」 が記載されている。(以下、「引用例記載の発明」という。) 3.対比 本願発明と引用例記載の発明とを比較する。 (1)引用例記載の発明の「CD」「曲」「PC」「CD-Rドライブ」「CD-R」「HDD」「曲名」が、本願発明の「一または複数の記録媒体」「一連のオーディオ信号」「コンピュータ」「デジタルオーディオレコーダ」「ディジタルオーディオレコーダに挿入された記録媒体」「記憶装置」「オーディオ信号各単位の内容を示す内容情報」に相当することは明かである。 (2)一般にパッケージソフトとは、コンピュータで読み取り可能なプログラム(ソフト)が記録された記録媒体の形で流通しているものを意味する。 よって、引用例記載の発明の「PCで使用可能なパッケージソフト」は、本願発明の「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」に相当する。 (3)引用例記載の発明の、ソフトを用いて処理が行われる構成は、前記処理をコンピュータに行わせるプログラムコードが前記ソフトに含まれていることを意味していると認められる。 (4)引用例記載の発明の、「CDに記録されている音楽データを曲単位でサンプリング」する構成は、CDに記録されている曲を、コンピュータで使用可能な信号、すなわちディジタルデータとしてコンピュータに読み取らせることを意味していると認められる。 よって、本願発明の「一または複数の記録媒体にそれぞれ記録された一連のオーディオ信号を一単位としてコンピュータに読み取らせ」及び「個々の記録媒体からそれらに記録されているオーディオ信号をデジタルデータとしてコンピュータに読み取らせる」に相当する。 (5)引用例記載の発明の、「HDDに書き込まれたWAVファイルに対して曲順の変更などのレイアウトをして、CDのディスクイメージをHDD上に構成」する構成は、コンピュータに、レイアウトのための曲の選択の受け付けや、前記選択にしたがったCDのディスクイメージ、すなわち仮想記録媒体を生成させることを意味していると認められる。 よって、本願発明の「前記記憶装置に記憶されたデータから任意の単位の選択をコンピュータに受け付けさせる」及び「選択された単位のデータを記録媒体に記録されるべきオーディオ信号の単位とした仮想記録媒体をコンピュータに生成させる」に相当する。 (6)引用例記載の発明の、「各トラックの曲名を入れ」る構成は、曲名をコンピュータで使用可能な、すなわち文字に対して一般的に用いられるテキストデータでの入力を受け付け、コンピュータに曲名情報として作成させることを意味していると認められる。 よって、本願発明の「前記仮想記録媒体を構成するオーディオ信号各単位の内容を示す内容情報としてテキストデータの入力をコンピュータに受け付けさせる」及び「入力されたテキストデータに従って内容情報をコンピュータに作成させる」に相当する。 (7)引用例記載の発明の、「CDを焼く手順を追ってCD-Rに書き込む」構成は、前記CDのディスクイメージに応じたデータを、CDプレーヤーで再生可能な信号、すなわちオーディオ信号でCD-Rに書き込む処理をコンピュータに行わせることを意味していると認められる。 よって、本願発明の「前記記憶装置から読み出されたデータをオーディオ信号としてコンピュータに記録媒体への記録を行なわせる」に相当する。 したがって、本願発明と引用例に記載された発明は、 「一または複数の記録媒体にそれぞれ記録された一連のオーディオ信号を一単位としてコンピュータに読み取らせ、前記コンピュータにデジタルオーディオレコーダを制御させることにより、それらの内の任意の一単位または複数単位を選択的に前記デジタルオーディオレコーダに装入された記録媒体に記録させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、 個々の記録媒体からそれらに記録されているオーディオ信号をデジタルデータとしてコンピュータに読み取らせるプログラムコードと、 読み取られたデジタルデータを記憶装置にコンピュータに書き込ませて記憶させるプログラムコードと、 前記記憶装置に記憶されたデータから任意の単位の選択をコンピュータに受け付けさせるプログラムコードと、 選択された単位のデータを記録媒体に記録されるべきオーディオ信号の単位とした仮想記録媒体をコンピュータに生成させるプログラムコードと、 前記仮想記録媒体を構成するオーディオ信号各単位の内容を示す内容情報としてテキストデータの入力をコンピュータに受け付けさせるプログラムコードと、 入力されたテキストデータに従って内容情報をコンピュータに作成させるプログラムコードと、 仮想記録媒体を構成する各単位のデータを前記記憶装置からコンピュータに読み出させるプログラムコードと、 前記記憶装置から読み出されたデータをオーディオ信号としてコンピュータに記録媒体への記録を行なわせるプログラムコードと を含むプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。」 で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1 読み取られたデジタルデータを記憶装置にコンピュータに書き込ませて記憶させるプログラムコードが、本願発明では「読み取られたデジタルデータを圧縮符号化して前記記憶装置にコンピュータに書き込ませて記憶させる」のに対して、引用例記載の発明では圧縮符号化していない点。 ・相違点2 本願発明が、「前記記憶装置から読み出された圧縮符号化データをコンピュータに伸張復号させるプログラムコード」を有しているのに対して、引用例記載の発明では圧縮符号化データを伸長復号させるプログラムコードを有していない点。 4.当審の判断 前記相違点について検討する。 ・相違点1に対して ディジタルオーディオデータを記憶装置に記憶する際に、記憶装置の容量を考慮して圧縮符号化することは周知な技術であり、引用例記載の発明の記憶装置にオーディオディジタルデータを記憶する際にも圧縮符号化する手法を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。 ・相違点2に対して 引用例記載の発明でも、記憶手段に記憶されたデータは、その後、圧縮されていないオーディオ信号で記録媒体に記録されるから、引用例記載の発明であっても、伸長復号させるプログラムコードを採用することは、圧縮符号化する手段の採用に伴って必然的に設けられる構成にすぎない。 5.むすび したがって、本願発明は引用例及び前記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-02-06 |
結審通知日 | 2001-02-13 |
審決日 | 2001-02-26 |
出願番号 | 特願平10-222128 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 昇、後藤 和茂 |
特許庁審判長 |
高瀬 博明 |
特許庁審判官 |
相馬 多美子 伊東 和重 |
発明の名称 | 記録媒体 |
代理人 | 芝野 正雅 |