• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1035253
審判番号 審判1997-21274  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-04-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-12-18 
確定日 2001-04-18 
事件の表示 平成 2年特許願第237869号「電子組版装置における文字領域決定方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 4月17日出願公開、特開平 4-116766]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成2年9月6日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成10年1月9日付の手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「電子組版装置を用いて文字組版を行う前に、その準備作業として文章を流し込むための文字領域を決定する方法であって、
(a)指定された文章を構成する文字群について、その文字サイズ、文字配列規則および版下原稿上の配置位置を含んだ情報を前記電子組版装置に入力する工程と、
(b)前記情報に従って、前記電子組版装置のディスプレイ画面に前記文字群をマトリクス状のダミー文字配列の形式で表示させる工程と、
(c)前記ディスプレイ上の前記ダミー文字配列を参照しつつ、あらかじめ指定されたレイアウト条件に合致し、かつ前記文字群を流し込むことが可能な文字領域を決定する工程と、を備え、
前記工程(c)が、
(c-1)ダミー文字配列内の各ダミー文字に対して所定の位置関係にある格子点の集合からなり、かつ前記ダミー文字配列を実質的に覆う格子点群を決定する工程と、
(c-2)文字領域を決定するためのカーソル位置を入力装置から入力する工程と、
(c-3)入力したカーソル位置と格子点群の位置を比較し、格子点群のうち最も近い格子点位置を特定する工程と、
(c-4)特定した格子点位置のみを許容させて前記ディスプレイ画面上にカーソルを表示させ、前記ディスプレイ画面上に表示させたカーソル位置に基づき文字領域を決定する工程と、
を有する、電子組版装置における文字領域決定方法。」

2.引用刊行物
これに対して、当審における拒絶理由通知で引用した特開昭62-125354号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が記載されている。
「第4図はレイアウト情報選択画面を説明する模式図であり、21はレイアウト情報選択画面で、選択項目、すなわち・・・印字領域情報23、文字サイズ情報24、組形式情報25、字詰情報26、段数情報27、字間情報28、行間情報29が表示された状態を示してある。このうち、・・・印字領域情報23は、入力手段12より後述する対角情報A,B及び対角情報C,Dが指定入力される。文字サイズ情報24は、例えば8〜10ポイント、その他を選択指定可能である。組形式情報25は、例えば縦組、横組が選択指定可能である。字詰め情報26は、例えば表示されたテンキー26aを選ぶことにより文字数が入力され、その結果が表示部26bに表示される。段数情報27は例えば1〜5段およびその他が選択可能である。字間情報28は、例えばベタ、その他を選択可能である。行間情報29は、例えば16,18,20ポイント及びその他が選択指定可能である。」(第2頁左上欄第10行-右上欄第10行)
「第5図(a)は第3図に示す表示手段13に形成表示される組版画像を説明する模式図であり、31は外枠で、入力される用紙サイズ情報22に応じて決定される。32は文字原稿領域で、入力される文字サイズ情報24、字詰情報26により決定される。
第5図(b)は・・・付している。
この図において、33は写真領域で、入力される印字領域情報23により決定される。写真領域33(一点鎖線で示す)は対角の2点A,B(対角情報)又は2点C,D(対角情報)をピックすることにより得られる。
第4図に示すレイアウト情報選択画面21を表示手段13に表示し、・・・次いで、文字サイズ情報24を、例えば8ポイントを選択する指令を入力手段12より入力する。この文字サイズ情報24はあらかじめ登録されており、それを選択すればよい。次いで、組形式情報25を、例えば縦組を選択する指令を入力手段12より入力する。次いで、字詰情報26を、例えば3文字と入力する。次いで、段数情報27、字間情報28、行間情報29を、例えば5段、ベタ、16ポイントと入力すると、第5図(a)に示す文字の組版を組版表示手段11aが表示手段13に文字原稿領域32を表示する。次いで、表示手段13に表示された文字の組版に差し込む写真領域33の対角情報A,Bおよび対角情報C,Dを文字サイズに応じて入力手段12よりそれぞれ入力すると、領域表示手段11bが第5図(b)に示す組合せ画像を表示手段13に形成表示させる。これにより、表示手段13上にはレイアウト情報および対角情報に応じた文字の組版と写真の組版とを同時に見ることができる。」(第2頁右上欄第15行-右下欄第16行)
「第5図(b)に示す組合せ画像を表示した段階で、第2図に示すように、写真を割り付ける対角情報5a,5bを入力すると、入力された対角情報5aがピックされるダミー文字(□で示す)領域の左上座標を真の対角座標とするように、すなわち、対角情報5aを修正対角情報6aに、対角情報5bを修正対角情報6bと修正する演算を行い、対角エリア7を表示させる。
これにより、文字原稿領域32の任意の位置に正確に写真領域33を割り付けることができる。」(第3頁左下欄第19行-右下欄第8行)
上記記載と第2図、第5図からみて、刊行物1には「文字サイズ情報24、組形式情報25、字詰情報26、段数情報27、字間情報28、行間情報29を含んだ情報に従って、企画編集システムの表示手段13にマトリクス状に配置したダミー文字を表示させる工程」が記載されている。
また、上記記載と第2図、第5図において、文字原稿領域32の任意の位置に写真領域を割り付けており、さらに、写真を割り付ける対角情報がダミー文字領域の左上座標を真の対角座標とするように、すなわち、対角情報5aを修正対角情報6aに、対角情報5bを修正対角情報6bと修正する演算を行い、対角エリアを表示させることからみて、刊行物1には、「対角情報5a,bを入力し、当該対角情報5a,bを修正対角情報6a,bに修正し、当該修正対角情報6a,bをダミー文字の座標の基準として、写真領域を割り付ける工程」が記載されている。

以上のことからみて、刊行物1には
「(a)文字サイズ情報24、組形式情報25、字詰情報26、段数情報27、字間情報28、行間情報29を含んだ情報を企画編集システムに入力する工程と、
(b)前記情報に従って、企画編集システムの表示手段13にマトリクス状に配置したダミー文字を表示させる工程と、
(c)対角情報5a,bを入力し、当該対角情報5a,bを修正対角情報6a,bに修正し、当該修正対角情報6a,bをダミー文字の座標の基準として、写真領域を割り付ける工程と、
を有する、企画編集システムにおける領域の決定方法」が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記刊行物1記載の発明(以下、「後者」という。)を比較する。
3-1.一致点
後者の「企画編集システム」、「文字サイズ情報24」、「組形式情報25、字詰情報26、段数情報27、字間情報28、行間情報29」、「ダミー文字」、「表示手段13」は、それぞれ前者の「電子組版装置」、「文字サイズ」、「文字配列規則」、「ダミー文字」、「ディスプレイ画面」に相当し、前者の工程(c)も後者の工程(c)も共に「入力した座標情報を、ダミー文字の座標を基準として修正して、領域を割り付ける工程」であるから、
両者は、
「(a)文字サイズ、文字配列規則を含んだ情報を電子組版装置に入力する工程と、
(b)前記情報に従って、前記電子組版装置のディスプレイ画面に文字群をマトリクス状のダミー文字配列の形式で表示させる工程と、
(c)入力した座標情報を、ダミー文字の座標を基準として修正して、領域を割り付ける工程
を備えた電子組版装置における領域決定方法。」で一致している。

3-2.相違点
両者は、以下の4点で相違している。

相違点1
前者が、「電子組版装置を用いて文字組版を行う前に、その準備作業として文章を流し込むための文字領域を決定する」構成を有しているのに対し、後者はそのような構成を備えていない点。

相違点2
文字サイズ等の情報を入力する工程が、前者では、「指定された文章を構成する文字群について」であるのに対し、後者は、不明な点。

相違点3
前者は、文字サイズ等とともに「版下原稿上の配置位置」を電子組版装置に入力する工程を有するのに対し、後者にはそのような構成がない点。

相違点4
前者は、入力した座標情報を、ダミー文字の座標を基準として修正して、割り付け決定される領域が、「文字領域」であって、その領域を決定する工程として、
「(c)前記ディスプレイ上の前記ダミー文字配列を参照しつつ、あらかじめ指定されたレイアウト条件に合致し、かつ前記文字群を流し込むことが可能な文字領域を決定する工程と、を備え、
前記工程(c)が、
(c-1)ダミー文字配列内の各ダミー文字に対して所定の位置関係にある格子点の集合からなり、かつ前記ダミー文字配列を実質的に覆う格子点群を決定する工程と、
(c-2)文字領域を決定するためのカーソル位置を入力装置から入力する工程と、
(c-3)入力したカーソル位置と格子点群の位置を比較し、格子点群のうち最も近い格子点位置を特定する工程と、
(c-4)特定した格子点位置のみを許容させて前記ディスプレイ画面上にカーソルを表示させ、前記ディスプレイ画面上に表示させたカーソル位置に基づき文字領域を決定する工程」を有するのに対し、
後者は、入力した座標情報を、ダミー文字の座標を基準として修正して、割り付け決定される領域が、「写真領域」であって、その領域を決定する工程として、前者の(c)(c-1)〜(c-4)の工程を有していない点。


3-3.判断
上記4つの相違点について検討する。

上記相違点1について
後者は、組版に関する技術であり、組版に際し、準備作業として文章を流し込むための文字領域を決定することは当業者に周知であるから、後者を、文字組版を行う前において、準備作業として文章を流し込むための文字領域の決定方法とすることに困難性は認められない。

上記相違点2について
後者が組版に関する技術であることからみて、文字サイズ等の情報が、文章を構成する文字群に対して入力されるものであることは当然であるから、前者の構成とすることは当業者が容易に推考できたものである。

上記相違点3について
組版において、版下原稿上の配置位置は当然考慮する事項であるから、「版下原稿上の配置位置」を文字サイズ等とともに入力することは、必然的に行わなければならない技術的事項にすぎない。

上記相違点4について
後者は組版に関する技術であり、その組版技術においては、写真領域とともに文字領域を割り付け決定することは本願出願前に周知の技術手段であるから、割り付け決定の対象として、当業者が後者の写真領域を、文字領域とすることに格別の困難性はなく、
そして、後者は、入力した座標情報を、ダミー文字の座標を基準として修正して写真領域を割り付けるのであるから、当業者が文字領域の割り付けをする際にダミー文字を参照すること、レイアウト条件に合致するようにすることは、当然行うことにすぎず、
また、座標を入力する際に、格子点を表示し、入力したカーソル位置に最も近い格子点でのみカーソルを表示させて領域を決定することは、本願出願前に周知の技術手段であるから(必要であれば特開昭64-66707号公報、特開昭62-98422号公報参照)、当該周知の技術手段を電子組版装置の文字領域を決定するために用いることは、当業者が容易になし得たことである。

そして、本願の請求項1に係る発明の効果は、上記刊行物1の記載及び周知技術から予測できる程度のものと認める。

4.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-01-19 
結審通知日 2001-02-02 
審決日 2001-02-19 
出願番号 特願平2-237869
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 謙成瀬 博之  
特許庁審判長 佐藤 荘助
特許庁審判官 久保田 健
鈴野 幹夫
発明の名称 電子組版装置における文字領域決定方法  
代理人 吉田 茂明  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ