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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29C
管理番号 1035314
審判番号 審判1999-16743  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-14 
確定日 2001-05-16 
事件の表示 平成7年特許願第836号「プラスチック材料の可塑化・計量方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 7月23日出願公開、特開平8-187754、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年1月6日の出願であって、平成11年6月10日付け拒絶理由通知に記載した理由により、平成11年9月1日付けで拒絶査定されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1〜4に係る発明は、特許法第17条の2第1項第1号の規定による平成11年8月16日付け手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】 スクリューを回転させることにより成形材料の可塑化・計量を行い、計量動作によって後退したスクリューを前進させることにより計量済みの成形材料をノズルから押し出すようにしたプラスチック材料の可塑化・計量方法であって、
上記計量中に、スクリューを回転させるとともにスクリューに背圧を作用させないで可塑化・後退させる動作と、スクリューを回転停止させるとともにスクリューに前進方向の所定の大きさの力を所定の間だけ作用させて計量中の成形材料をノズルから漏れ出さない範囲で強制的に圧縮する動作と、を行うようにし、
スクリューに与える背圧をほとんど0に維持し、所定のタイミングで計量動作を一旦中断し、スクリューを前進方向に所定の間だけ強制的に押すことにより、一時的に背圧を高くするようにし、成形材料中の長繊維を損傷するような力を受けている時間を短くし、且つ成形材料の計量密度を安定化することを特徴とするプラスチック材料の可塑化・計量方法。
【請求項2】 上記スクリューを前進方向に押すタイミング及び前進方向に押さないようにするタイミングは、あらかじめタイマに設定した時間に基づいて決定することを特徴とする請求項1記載のプラスチック材料の可塑化・計量方法。
【請求項3】 上記スクリューを前進方向に押すタイミング及び前進方向に押さないようにするタイミングは、あらかじめスクリュー位置センサに設定した検出ストローク量に基づいて決定することを特徴とする請求項1記載のプラスチック材料の可塑化・計量方法。
【請求項4】 上記計量動作中、スクリューの回転及び後退動作と、回転停止及び強制前進動作と、を繰り返し行うことを特徴とする請求項1、2、又は3記載のプラスチック材料の可塑化・計量方法。

(以下、上記請求項1〜4に係る発明を、順に、「本願発明1」、「本願発明2」等という。)

なお、特許法第17条の2第1項第3号の規定による(平成12年1月7日付け手続補正書(方式)によって補正された)平成11年11月10日付け手続補正は、本件審決と同日付けをもって、同法第159条第1項の規定で読み替え準用する同法第53条第1項の規定により、決定をもって却下された。

3.原査定における拒絶の理由
原審における拒絶の理由の趣旨は、本願発明1〜4は、特開平02-167718号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平01-218825号公報(以下、「刊行物2」という。)、及び、特開平06-198688号公報(以下、「刊行物3」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものである。

3.刊行物の記載
刊行物1には、次のとおり記載されている。
ア.「加熱シリンダと、該加熱シリンダ内で前後退可能に支持されるスクリュ又はプランジャと、該スクリュ又はプランジャを前後退させる手段とからなる射出成形機の可塑化制御方法において、計量開始から計量終了の間に、設定された時間だけスクリュを射出方向に前進させる操作を複数回断続的に行うことを特徴とする射出成形機の可塑化制御方法。」(特許請求の範囲、第1項)
イ.「本発明は、以上述べたような可塑化計量の際の問題点を解決して、成形材料内に含まれるエアを確実に脱気して樹脂密度を均一化するとともに、可塑化計量に要する時間を安定させ・・」(第3頁左上欄、2〜8行)
ウ.「・・上記射出用モータ41を回転させることによって、スクリュ32を回転させつつ前後に移動させることができる。」(第3頁左下欄12〜14行)
エ.第6頁「第2図」には、次のとおりのフロー図が記載されている。(なお、後記(1)等は、実際には丸数字である。また、記載事項は、略記してある。)
(1)「設定」(2)「計量開始」、(3)「スクリュ回転開始」、(4)「フリー背圧」、(5)「射出」、(6)「スクリュ位置 NO,YES」、(7)「射出」、(8)「射出停止」、(9)「n回目? NO,YES」、(10)「計量設定値Sに後退するまで回転」、(11)「サックバック」、及び、「終了」。
また、第4頁左上欄2行〜左下欄15行には、上記各ステップについて記載されており、特に、「微少サイクル時間T1’だけ射出を行う回数がn回になっていない場合、計量設定値Sに後退するまでスクリュ32を回転させ、その後ステップ(7)及び(8)を繰り返す。」(第4頁右上欄15〜18行、なお、前記(7)及び(8)は、実際には丸数字である。)と記載されている。

刊行物2及び3には、概略、長繊維含有成形材料を射出成形する際に、実質上、背圧を0とする旨が、記載されている。

4.当審の判断
本願発明1と刊行物1記載の発明とを対比するに、両者とも、一応、プラスチック材料の射出成形の際の可塑化・計量方法に係る発明である点で同様のものと解されるが、刊行物1には、本願発明1の構成要件である(1)「上記計量中に、スクリューを回転させるとともにスクリューに背圧を作用させないで可塑化・後退させる動作と、スクリューを回転停止させるとともにスクリューに前進方向の所定の大きさの力を所定の間だけ作用させて計量中の成形材料をノズルから漏れ出さない範囲で強制的に圧縮する動作」、特に、「スクリューを回転停止させるとともにスクリューに前進方向の所定の大きさの力を所定の間だけ作用させて」との点、及び、(2)長繊維含有成形材料を用いる点が、記載されておらず、また、示唆もない点で、本願発明1と刊行物1記載の発明とは相違している。
上記(1)の「スクリューに背圧を作用させない」点、及び、相違点(2)に係る構成については、刊行物2及び3記載の発明により示唆されるものと、認められる。
しかし、上記相違点(1)について、刊行物1には、上記ウ.及び、エ.のとおり、むしろ、可塑化計量工程においてスクリュを回転停止させないことが、具体的に開示されていることは明らかである。
そして、上記相違点(1)に係る要件の点において、本願発明1は本件明細書記載のとおりの「成形材料中のガラス繊維の損傷を防止する」等の作用・効果を奏するものと認められる。
したがって、原査定における拒絶の理由において、「引用文献1には、計量時のスクリュー前進の際に回転を行っているとの記載はなく、示唆もないから、引用文献1に記載された発明は、計量時にスクリューを前進させる際にスクリューを回転させないことを排除するものではない。」との判断は、妥当なものとはいえない。
よって、本願発明1が刊行物1〜3記載の発明に基いて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。
また、本願発明2〜4は、本願発明1を引用していることから、同様に、刊行物1〜3記載の発明に基いて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。

5.まとめ
以上のとおり、本願発明1〜4は、刊行物1〜3記載の発明に基いて当業者が容易に発明し得たものとすることができないから、本願発明2〜4が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原審の判断は妥当なものではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-04-25 
出願番号 特願平7-836
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B29C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野村 康秀中村 浩  
特許庁審判長 藤井 彰
特許庁審判官 喜納 稔
石井 克彦
発明の名称 プラスチック材料の可塑化・計量方法  
代理人 石戸 久子  
代理人 石戸 久子  

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