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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) E06C
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) E06C
管理番号 1035327
審判番号 審判1999-35083  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-12-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-24 
確定日 2001-04-23 
事件の表示 上記当事者間の特許第2108956号発明「梯子」の請求項1に係る特許の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2108956号発明の請求項1に係る特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 (一)手続きの経緯
出願:平成5年6月2日(特願平5ー157911号)
特許公告日:平成8年1月31日(特公平8-9938号)
特許登録日:平成8年11月21日(特許第2108956号)請求項1
無効審判請求日:平成11年2月24日
答弁書:平成11年11月26日
訂正請求:平成11年11月26日
弁駁書:平成12年8月14日
上申書:平成12年8月21日
書面審理通知:平成12年9月13日
訂正拒絶理由:平成12年10月11日
意見書:12年12月26日
(二)請求人の主張・提出した証拠方法
請求人は、平成11年2月24日付け無効審判請求書において、「特許第2108956号の請求項1に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めている。
無効理由としては、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであると主張している。
そして、平成11年2月24日付け無効審判請求書と同時に次の証拠方法を提出している。
甲第1号証:WO91/15651(PCT/GB91/00565)1991年10月17日出願(優先権主張1990年12月4日GB)。
さらに、平成12年8月14日付け弁駁書と同時に次の証拠方法を提出している。
参考資料1:昭和3年実用新案出願公告第13235号公報。
さらに、平成12年8月21日付け上申書と同時に次の証拠方法を提出している。
参考資料2:「機械の素・改題縮刷版 メカニズムの事典」1983年5月10日第1版第1刷理工学社発行。
(三)被請求人の主張
被請求人は、平成11年11月26日付け答弁書において、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。
(四)訂正請求について
A.訂正の適否(独立特許要件につて)
1.訂正後発明
訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「間隔を隔ててほぼ平行に配置され内部が中空の1対の支柱部と、これら支柱部の上端部間にこれらに対してほぼ直角に配置された横桟部とを有するユニットを、n(nは2以上の正の整数)ユニット設け、m(2≦m≦n)番目とm-1番目のユニットの横桟部が互いに接触した状態から離れた状態に移動可能にm番目のユニットの支柱部をm-1番目のユニットの支柱部にその長さ方向に進退可能に挿入し、
m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触した状態においてm-1番目のユニットの横桟部よりも下方に位置するm番目のユニットの支柱部に係合孔を形成し、
m-1番目のユニットの横桟部には、上記支柱部に向かって進退可能に配置され、m番目のユニットの上記係合孔に係合可能な係合手段と、該係合手段を上記支柱部方向に付勢する付勢手段と、上記係合手段の進退方向を跨ぐ軸回りに中途を回転自在に支持され、一端部が上記係合手段と接触し、m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触している状態において、他端部が上記横桟部内に位置し、m-1番目のユニットの係合手段がm番目のユニットの係合孔に係合している状態において、上記他端部が上記横桟部の下方に突出している解除手段とを、設け、 上記係合手段は、円柱状の胴部と、この胴部の上記支柱部と反対側の端部に上記胴部と連ねて形成された上記胴部よりも小さい頸部と、この頸部に連ねて形成された頭部とを、有し、 上記解除手段の一端部は、上記頸部に位置し、上記頭部に接触し、上記解除手段の上記軸回りの回転に従って上記係合手段を直線状に進退させるように湾曲させられている梯子。」(以下、「訂正後発明」という。)
2.引用文献
これに対して、当審が通知した訂正拒絶理由に引用した国際公開公報、WO91/15651(PCT/GB91/00565)1991年10月17日出願(優先権主張1990年12月4日GB)(以下、「引用例」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(1)「発明の目的
「本発明は、梯子をその基部上で立てかけた状態でも、梯子を折り畳む場合に容易に解除可能である、伸張状態に梯子を係止するための自動ラッチング機構を有する進退自在に折り畳み可能である梯子を提供しようとするものである。」(翻訳書第3頁。)
(2)「第1図は、2つの枠部とその枠部間に伸長する階段部11とを有するアルミニウム製梯子を示す。枠部は、伸縮自在に折り畳めるセクション10で形成され、階段部11はそれぞれ2つのセクション10に固定される。セクションは、円形管状であり、内外面に段部が形成されることで、引き抜かれ分離されることが防止されており、段部が当接するまで互いに軸方向のみに移動可能である。段部は、セクションの下端の大径部と上端の小径部とで形成される。これら部分の長さは、梯子が伸ばされた際に、セクション筒の最小のオーバーラップを呈し、梯子に曲げ抵抗性を持たせる意味で、5cmから10cmのオーバーラップである事が望ましい。内外面に段部を形成する代わりに、伸縮自在に折り畳み可能であるセクションを円錐形テーパー状チューブで形成する事も可能である。第2図に示されるように、階段部が互いによりかかるまで梯子は折り畳み可能である。梯子を折り畳み状態に維持するため、ロッド14が階段部に形成された孔に挿通され、ピン15がロッド14の一端に挿入されることで階段部から脱落する事が防止されている。」(翻訳書第5頁。)
(3)「第4図のラッチ機構は、梯子を伸張したとき自動的に効果を生じ、下から順に折り畳んで自動的に解除される同様の方法で設計されたものである。本例では、階段部にピン24により枢着されたベルクランク解除レバー23が、枠部を伸張位置にロックするために、セクション10の孔部19と階段部11の孔部20とを挿通するピン21に枢着される短長アームを有する。ベルクランクレバー23は、レバー23と進退可能なピン21との間で作用するスプリング22により、図面において反時計方向に附勢される。ベルクランクレバー23の突出アームを上げることで、最下端の階段部は、フリーとされ、各々の階段部がその上の階段部に至ることで、ベルクランクレバー23を図面において時計方向に回転させ、ピン21を孔部19、20から係合解除する。本発明による梯子を組み立てるには、最下端のセクションの組から始め、階段部11をその上端部に、ベースプレート16をその下端部に固定する。それから、次に小径のセクション10を最下端セクションに下から挿入し、それに階段部を取り付ける。それから、個々のセクション10の突出部に一の階段部を同時に組み付けていくことで、梯子を完全な長さまで組み上げる。」(翻訳書第7頁。)
前記(1)〜(3)の記載事項と図面の記載からみて、引用例には、間隔を隔ててほぼ平行に配置された円形管状の一対のセクション10と、このセクションの上端部間にこれらに対してほぼ直角に配置された階段部11とを有するユニットを複数組設け、上下に隣接するユニットの階段部が互いによりかかった状態において、上下に隣接するユニットの内の上に位置するユニットの階段部よりも下方に位置するユニットのセクションに孔部19を形成し、上下に隣接するユニットの内の上に位置するユニットの階段部
には、上記セクションに向かって進退可能に配置され、上下に隣接するユニットの内の下に位置するユニットの孔部19に係合可能な直線状のピン21と、該ピン21をセクション方向に附勢するスプリング22と、上記ピン21の進退方向を跨ぐ軸回りに回転自在に軸支され、一端部が、ピンに枢着され、上下に隣接するユニットの階段部が互いによりかかった状態において、他端部が階段部内に位置し、上下に隣接するユニットの内の上のユニットのピン21が、下のユニットの孔部19に係合している状態において、上記他端部が上記階段部の下方に突出しているベルクランクレバーとを設け、上記ベルクランクレバーの短長アームをピン21の一端に枢着し、上記ベルクランクレバーの軸回りの回転に従って上記ピンを進退させるようにした梯子が記載されている。
また、当審が通知した訂正拒絶理由に周知例として引用した昭和3年実用新案出願公告第13235号公報(以下、「周知例」という。)には、例えば、次のような記載がある。
(4)「本案ハ曲柄軸ニヨリ往復動セラル、動杆(1)ノ先端ニ両側ニ發條(2)(3)ヲ介シテ揺動片(4)ヲ緩挿シ前記動杆ノ往復動ニヨリ軸(5)ヲ軸トシテ左右ニ揺動シ得サシム」公報第1頁。
前記(4)の記載事項と図面の記載からみて、周知例には、直線状に往復動する動杆(1)の小径部に、軸(5)に軸支された揺動片(4)の一端部を湾曲し、その湾曲部を動杆の小径部に位置させ、その湾曲部を動杆の小径部の両側の大径フランジ部に接触させ、上記揺動片の上記軸(5)回りの回転に従って上記動杆(1)を直線状に往復動させるようにした構成が記載されている。
3.対比
訂正後発明と引用例記載の発明を対比する。
引用例記載の発明における、「円形管状」、「セクション」、「階段部」、「ユニットを複数組設け」、「上下に隣接するユニット」、「階段部が互いによりかかった状態」、「孔部」、「ピン」、「スプリング」及び「ベルクランクレバー」は、訂正後発明における、「内部が中空」、「支柱部」、「横桟部」、「ユニットを、nユニット設け」、「m番目とm-1番目のユニット」、「横桟部が接触した状態」、「係合孔」、「係合手段」、「付勢手段」及び「解除手段」にそれぞれ対応するものであり、引用例記載の発明における、「ピン」は、直線状のピンであって、かつ、孔部19,20に係合したり、係合解除される動きをするものであり、ほぼ直線状に進退するものであるといえるから、訂正後発明と引用例記載の発明は、次の一致点において、両者の構成は一致し、次の相違点において、両者の構成は相違する。
一致点:間隔を隔ててほぼ平行に配置され内部が中空の1対の支柱部と、これら支柱部の上端部間にこれらに対してほぼ直角に配置された横桟部とを有するユニットを、n(nは2以上の正の整数)ユニット設け、m(2≦m≦n)番目とm-1番目のユニットの横桟部が互いに接触した状態から離れた状態に移動可能にm番目のユニットの支柱部をm-1番目のユニットの支柱部にその長さ方向に進退可能に挿入し、m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触した状態においてm-1番目のユニットの横桟部よりも下方に位置するm番目のユニットの支柱部に係合孔を形成し、m-1番目のユニットの横桟部には、上記支柱部に向かって進退可能に配置され、m番目のユニットの上記係合孔に係合可能な係合手段と、該係合手段を上記支柱部方向に付勢する付勢手段と、上記係合手段の進退方向を跨ぐ軸回りに中途を回転自在に支持され、一端部が上記係合手段と係合し、m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触している状態において、他端部が上記横桟部内に位置し、m-1番目のユニットの係合手段がm番目のユニットの係合孔に係合している状態において、上記他端部が上記横桟部の下方に突出している解除手段とを、設け、上記解除手段の上記軸回りの回転に従って上記係合手段を直線状に進退させるようにした梯子。
相違点:訂正後発明においては、係合手段は、円柱状の胴部と、この胴部の上記支柱部と反対側の端部に上記胴部と連ねて形成された上記胴部よりも小さい頸部と、この頸部に連ねて形成された頭部とを、有し、上記解除手段の一端部は、上記頸部に位置し、上記頭部に接触し、上記解除手段の上記軸回りの回転に従って上記係合手段を直線状に進退させるように湾曲させられているとしたのに対して、引用例記載の発明においては、係合手段は直線状のピンであり、解除手段の一端部は、係合手段の一端部に枢着され、解除手段の軸回りの回転に従って上記係合手段をほぼ直線状に進退させるようにした点。
4.判断
上記相違点につて検討する。
周知例における、「動杆」は、直線状に往復動する部材として訂正後発明における、「係合手段」に対応するものであり、周知例における「揺動片」は、動杆の往復動方向を跨ぐ軸回りに中途を回転自在に支持され、揺動片の一端部を湾曲部とし、揺動片の湾曲部を動杆の小径部に位置させ、その湾曲部を動杆の大径部と接触させ、揺動片の軸回りの回転に従って動杆を直線上状往復動させるという機能において訂正後発明における、「解除手段」に対応するものであるから、前記相違点にあげた訂正後発明の係合手段と解除手段の機構的構成は周知の事項といえるものである。
そして、直線状に進退する係合手段と、係合手段の進退方向を跨ぐ軸回りに中途を回転自在に支持され、係合手段と一部が接触する解除手段を設け、解除手段の軸回りの回転に従って係合手段を直線状に進退させることにより施錠・解錠することは、訂正後発明と同一技術分野に属する錠の技術分野において周知の事項(例、実公昭48-799号公報、実公昭41-20475号公報等)であるから、引用例記載の発明と前記2つの周知の事項に基づいて、前記相違点にあげた訂正後発明の構成のようにすることは、当業者が容易になしえる程度のものである。
したがって、訂正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第134条第5項で準用する平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正請求は認めることができない。
(五)無効理由についての検討
1.本件特許発明
本件特許の請求項1に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「間隔を隔ててほぼ平行に配置され内部が中空の1対の支柱部と、これら支柱部の上端部間にこれらに対してほぼ直角に配置された横桟部とを有するユニットを、n(nは2以上の正の整数)ユニット設け、m(2≦m≦n)番目とm-1番目のユニットの横桟部が互いに接触した状態から離れた状態に移動可能にm番目のユニットの支柱部をm-1番目のユニットの支柱部にその長さ方向に進退可能に挿入し、
m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触した状態においてm-1番目のユニットの横桟部よりも下方に位置するm番目のユニットの支柱部に係合孔を形成し、
m-1番目のユニットの横桟部には、上記支柱部に向かって進退可能に配置され、m番目のユニットの上記係合孔に係合可能な係合手段と、該係合手段を上記支柱部方向に付勢する付勢手段と、上記係合手段の進退方向を跨ぐ軸回りに中途を回転自在に支持され、一端部が上記係合手段又は付勢手段と接触し、m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触している状態において、他端部が上記横桟部内に位置し、m-1番目のユニットの係合手段がm番目のユニットの係合孔に係合している状態において、上記他端部が上記横桟部の下方に突出している解除手段とを、設けてなる梯子。」
2.請求人の提出した証拠方法
甲第1号証:WO91/15651(PCT/GB91/00565)1991年10月17日出願(優先権主張1990年12月4日GB)(以下、「引用例」という。)には、前記訂正の適否(独立特許要件について)の項で引用例として示したとおりのものが記載されている。
3.対比・判断
本件請求項1に係る発明と引用例記載の発明を対比する。
引用例記載の発明における、「円形管状」、「セクション」、「階段部」、「ユニットを複数組設け」、「上下に隣接するユニット」、「階段部が互いによりかかった状態」、「孔部」、「ピン」、「スプリング」及び「ベルクランクレバー」は、本件請求項1に係る発明における、「内部が中空」、「支柱部」、「横桟部」、「ユニットを、nユニット設け」、「m番目とm-1番目のユニット」、「横桟部が接触した状態」、「係合孔」、「係合手段」、「付勢手段」及び「解除手段」にそれぞれ対応するものであり、引用例記載の発明においても、解除手段は、m番目とm-1番目のユニットの横桟部が接触している状態において、他端部が上記横桟部内に位置し、m-1番目のユニットの係合手段がm番目のユニットの係合孔に係合している状態において、上記他端部が上記横桟部の下方に突出しているから、本件請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明である。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、その特許は特許法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-02-19 
結審通知日 2001-03-02 
審決日 2001-03-13 
出願番号 特願平5-157911
審決分類 P 1 112・ 121- ZB (E06C)
P 1 112・ 113- ZB (E06C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 片寄 武彦
特許庁審判官 杉浦 淳
鈴木 憲子
登録日 1996-11-21 
登録番号 特許第2108956号(P2108956)
発明の名称 梯子  
代理人 木村 正俊  
代理人 田中 浩  
代理人 荘司 正明  
代理人 荘司 正明  
代理人 荘司 正明  
代理人 田中 浩  
代理人 田中 浩  
代理人 大賀 眞司  
代理人 木村 正俊  
代理人 田中 克郎  
代理人 木村 正俊  
代理人 稲葉 良幸  

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