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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1035551
異議申立番号 異議2000-72132  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-15 
確定日 2001-03-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3020916号「ヒッキー除去装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3020916号の請求項に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
特許3020916号の請求項1乃至2に係る発明は、平成10年5月21日に特許出願され、平成12年1月14日にその特許の設定登録がなされ、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】 単色又は多色オフセット印刷機械の印刷部の一部を構成する版胴の横幅方向に複数配設されたエアシリンダと該エアシリンダの先端に取り付けられた異物除去手段と前記エアシリンダ毎に取り付けられた電磁弁とから成るヒッキー除去ユニットと、前記電磁弁を個々に駆動制御する釦を備えた操作盤と、前記エアシリンダを駆動するためのエア源と、該エア源からの圧縮空気を択一的に各ヒッキー除去ユニットに個々の配管を介して供給できるユニット切換え弁と、実際の印刷物を前記版胴に対応させて載置し欠損部の有無と色別と位置関係とを検出するための色見台とを備え、前記ユニット切換え弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させるために、前記ユニット切換え弁を一つにして手動式にし且つ前記操作盤に隣接させて前記色見台上に配設したことを特徴とするヒッキー除去装置。
【請求項2】 前記電磁弁を個々に駆動制御する釦を備えた操作盤に制御機構が接続され、該制御機構によってユニット切換え弁で選択したヒッキー除去ユニットの各エアシリンダを順次駆動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のヒッキー除去装置。

2.申立ての理由の概要
申立人株式会社 ジー・エー・エスは、証拠方法として甲第1号証(特許第2540682号公報)、甲第2号証(ドイツ国特許公開公報DE4016305A1)及び甲第3号証(特開平7-145868号公報)を提出し、本件の請求項1乃至2に係る発明は、甲第1乃至3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1乃至2に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。

3.引用刊行物に記載された発明
当審が通知した取消の理由に引用された刊行物1(特許第2540682号公報)(申立人が提出した甲第1号証)、刊行物2(特開平7-145868号公報)(申立人が提出した甲第3号証)には、それぞれ、以下の発明が記載されている。
[刊行物1(特許第2540682号公報)]
a)オフセット印刷機の各色の印刷ユニットの版胴の表面に沿ってその中心軸方向に多数配列された版胴表面の汚れを掻き取る汚れ除去具と、各汚れ除去具を版胴表面に対し接触及び離反させるエアシリンダと、各エアシリンダ毎に配置された第1の電磁弁と、各印刷ユニットの第1の電磁弁のマニホールドと圧縮空気供給源との間に夫々設けられた第2の電磁弁と、汚れの発生した版胴及びその版胴上の汚れの位置について記憶し、該記憶に基づき該当する第1と第2の電磁弁を動作させることにより汚れ除去具を版胴表面の汚れ箇所に接触せしめる制御部とを包含してなることを特徴とするオフセット印刷機における汚れ除去装置。(特許請求の範囲の請求項1)
b)本発明は、オフセット印刷機における版胴表面の汚れを除去するための装置に関する。(第1頁第2欄1〜2行)
c)汚れ除去装置の本体部分6は、図1に示されるように、オフセット印刷機の各色の印刷ユニットにおける版胴1a,1b,1c,1dの表面に沿ってその中心軸方向に多数配列された版胴表面の汚れを掻き取る汚れ除去具7と、各汚れ除去具7を版胴表面に対し接触及び離反させるエアシリンダ8とを備えている。【0014】エアシリンダ8は、各印刷ユニットの所定のフレーム(図示せず)に対し各版胴1a,1b,1c,1dと平行に固定された梁状のマニホールド9に一定間隔で取り付けられ、・・・【0017】各汚れ除去具7は、対応するエアシリンダ8の作動により、版胴1の表面に対し接触したり離れたりすることとなる。前記各エアシリンダ8に対しては、図1に示されるように、各エアシリンダ8毎に夫々第1の電磁弁13が配置されている。第1の電磁弁13は、印刷ユニット毎に電磁弁用のマニホールド15に纏められている。【0018】また、第2の電磁弁14は、マニホールド15毎すなわち印刷ユニット毎にあてがわれており、圧縮空気供給源(図示せず)から各マニホールド15に至る配管中に設けられている。【0019】前記第1と第2の電磁弁13,14は、図1及び図3に示されるような制御部16によりコントロールされるようになっている。制御部16は、版胴1の表面の汚れaに対応して発生する印刷物17上の汚れb位置から版胴1の表面の汚れの位置を割り出して該当する電磁弁14,13を動作させることにより汚れ除去具7を版胴1の表面の汚れ箇所に接触せしめるもので、制御盤18と、操作盤19とを備えている。【0020】操作盤19は、色見台20の所定の辺に沿って配置されている。色見台20は、印刷物17を平らに置くためのテーブルであり、通常印刷機のデリバリ部の近傍に設置されている。この色見台20の所定の辺は印刷物17の印刷機中における走行方向と直角な辺と平行である。この場合、色見台20上の印刷物17はその印刷図柄c中にヒッキーと呼ばれる汚れbを生じており、印刷機のデリバリ部からオペレータにより抜き取られたものである。(第2頁第4欄1行〜第3頁第5欄9行)
d)また、操作盤19上の一端部には印刷機の各印刷ユニットに対応するユニット指定ボタン22が設けられている。図示例のように印刷機が4色刷りである場合は、印刷ユニットは4個設けられ、各印刷ユニットに対応して夫々ユニット指定ボタン22が設けられている。・・・【0024】操作盤19上には、その他、電源スイッチ28、メモリスイッチ29、スタートスイッチ30が設けられている。電源スイッチ28は当該制御部をON・OFFさせるためのもの、メモリスイッチ29は後述のメモリ回路を駆動させるためのもの、スタートスイッチ30は制御盤18の各種回路を始動させるためのものである。・・・【0027】メモリ回路25は、前記ユニット指定ボタン22及び汚れ位置指定ボタン21により指定される汚れの発生箇所を記憶するようになっている。(第3頁第5欄17〜47行)
e)次に、上記汚れ除去装置による汚れ除去作業について説明する。【0030】印刷機のオペレータは、印刷に際し、操作盤19上の電源スイッチ28をONにしておく。そして、図3に示されるように、色見台20上に印刷物17を置き、汚れbを発見すると、操作盤19のボタン操作により汚れ位置を指定する。【0031】例えば、印刷機のある色の印刷ユニットの版胴1aであって、インキネジNo.4の箇所に該当する汚れであれば、まず当該色の印刷ユニット指定ボタン22を押し、次にNo.4の汚れ位置指定ボタン21を押し、更にメモリスイッチ29を押す。【0032】他の色についても汚れが発見されれば、上記と同様にして該当する色の印刷ユニット指定ボタン22を押し、汚れ位置指定ボタン21を押し、更にメモリスイッチ29を押す。【0033】他に汚れが生じていなければ、スタートスイッチ30を押す。これにより、制御盤18は、汚れに対応する第2の電磁弁14及び第1の電磁弁13を開動作させる。そして、エアシリンダ8は圧縮空気の供給を得て汚れ除去具7を版胴1の表面に押し付ける。汚れ除去具7は、タイマ回路26により設定された時間中版胴1の表面に接触し、インキ滓、紙粉等の汚れを擦り取る。タイマ回路26が所定時間経過後に作動すると、第2の電磁弁14が閉じ、エアシリンダ8から圧縮空気が排除され、汚れ除去具7は版胴1の表面から離れる。【0034】汚れa,bが複数箇所に生じている場合は、メモリ回路25の記録内容に応じてエアシリンダ8が作動し、上記汚れ除去とに並行し又は順次汚れ除去が行われる。(第3頁第6欄14〜43行)

これらをまとめると、刊行物1には次のような発明が記載されている。
「多色オフセット印刷機の版胴の表面に沿ってその中心軸方向に多数配列されたエアシリンダと該エアシリンダの先端に取り付けられた汚れ除去具と前記エアシリンダ毎に配置された第1の電磁弁とからなる印刷ユニットと、操作盤と、前記エアシリンダを駆動するための圧縮空気源と、該圧縮空気源からの圧縮空気を各印刷ユニットの第1の電磁弁のマニホールド毎に設けられ導入管を介して供給できる第2の電磁弁と、実際の印刷物を前記版胴に対応させて載置し汚れの有無と色別と位置関係とを検出するための色見台とを備え、操作盤19のボタン操作によって対応する汚れ除去具が作動して印刷ユニットにおける版胴上の汚れを除去させるために、印刷機の各印刷ユニットに対応するユニット指定ボタン22、汚れ位置指定ボタン21、ユニット指定ボタン22及び汚れ位置指定ボタン21により指定される汚れの発生箇所を記憶するメモリ回路25を駆動させるためのメモリスイッチ29及び制御盤18に汚れに対応する第2の電磁弁14及び第1の電磁弁13を開動作させるスタートスイッチ30を操作盤に設けた汚れ除去装置。」

[刊行物2(特開平7-145868号公報)]
a)本発明は、複数の流路の切り換えを1基の切換弁で実現し、配管設備ならびに制御機器を大幅に簡略化することを目的とする。(第2頁第2欄欄28〜30行)
b)本発明によれば、円筒体底部に設けた1箇所の流体入口(あるいは出口)に対し、弁対を回転させることにより円筒体円筒表面に設けた複数箇所の流体出口(あるいは入口)に順次導通路が切り換わってゆくので、1基の切換弁で、複数の流路の切換ができる。(第3頁第3欄1〜6行)
c)弁体1の回転は、・・・手動でも操作できるよう、回転軸をさらに延長しておくことが望ましい。(第3頁第4欄4〜8行)

これらによれば、刊行物2には、「1箇所の流体入口に対し複数箇所の流体出口を切り換える手動式切換弁」が記載されている。

なお、申立人が提出した甲第2号証(ドイツ国特許公開公報DE4016305A1)には以下の発明が記載されている。
(甲第2号証には、翻訳文が添付されており、これは適切な翻訳文であると考えられるので、記載された技術の認定を翻訳文によって行う。)
a)本発明は、遠隔操作により版胴上に張られた版胴から汚れ異物を自動的に除去するために多色印刷機用ヒッキーキャッチャーに関する。(翻訳文第1頁3〜4行)
b)前記ヒッキーキャッチャーは版胴の長さに対応して複数ゾーン状に隣接して配設され、各々が二元駆動装置(10)を備えるヒッキーゾーンキャッチャーによって構成されている。図2は二元駆動式ヒッキーキャッチャーの操作図である。この二元駆動装置(10)は電動式、油圧式、圧搾式のいずれも可能である。前記二元駆動装置(10)の各々に対して電源の二元駆動装置が操作素子(15)は一つだけ設けられる。前記操作素子(15)は全体として駆動制御部(17)を構成する。各印刷ユニットのすべての二元駆動装置(10)の電流帰還(18)はまとめられて前記印刷機の電流帰路(19)となり、印刷ユニット電流帰路(19)は印刷ユニット切替スイッチ(20)に接続する。前記駆動制御部(17)は入力側で制御システムと接続する。制御システム(21)にはゾーン選択キー(22)及びプログラムキー(23)が配備されている。(翻訳文第2頁14〜28行)
c)2図は本発明のヒッキーキャッチャー用二元駆動装置の操作図である。ヒッキーゾーンの例えば圧搾式バルブなどの二元駆動装置(10)は全ての印刷ユニットに関して並列に接続されており、共通の給電源としての二元駆動装置(16)を有している。印刷ユニットの選択は印刷ユニットスイッチ(20)により行う。ヒッキーゾーンの選択は駆動制御部(17)において対応する操作素子(15)、例えば継電器によって行われる。前記操作素子(15)は前記制御システム(21)を介してプログラムキー(23)の選択プログラムに従いゾーン選択キー(22)により操作される。(翻訳文第3頁9〜17行)
d)図4はゾーン選択キー(22)とプログラムキー(23)を含む制御システム(21)を示す。一回だけ設定されるプログラムキー(23)を除き、昨日グループのゾーン選択キー(22)制御システム(21)はゾーン数に対応して配設される。(翻訳文第5頁1〜4行)

これらをまとめると、甲第2号証には次のような発明が記載されている。
「多色印刷機の版胴の長さに対応して複数ゾーンに隣接して配設され、圧搾式バルブなどの二元駆動装置を備えたヒッキーゾーンキャッチャーと、前記二元駆動装置と、前記二元駆動装置を駆動制御する操作素子を操作するゾーン選択キーとプログラムキーを備えた制御システムと、印刷ユニットを選択するため電流帰路を切替る印刷ユニット切替スイッチとを備えたヒッキーキャッチャー。」が記載されている。

4.対比・判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という)と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1には、本件発明1の「エア源からの圧縮空気を択一的に個々の配管を介してヒッキー除去ユニットへ供給できるユニット切換弁を操作盤に隣接させて前記色見台上に配設する」点及び「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」点について記載も示唆もされていない。
一方、刊行物2に「1箇所の流体入口に対し複数箇所の流体出口を切り換える手動式切換弁」について記載されているが、この手動式切換弁を単に刊行物1に記載された発明に適用するだけでは、本件発明1の上記の点を構成することはできない。
そして、本件発明1は、上記の点を具備することにより特許明細書記載の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に限定を加えたものであるから、本件発明1と同様、「エア源からの圧縮空気を択一的に個々の配管を介してヒッキー除去ユニットへ供給できるユニット切換弁を操作盤に隣接させて前記色見台上に配設する」点及び「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」点を具備している。
したがって、上記の(1)と同じ理由により、請求項2に係る発明は、刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

5.申立人の主張に対する見解
(1)申立人の主張
申立人は、本件発明1の「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」点について、概要、以下の(A)(B)のように主張している。
(A)甲第1号証の「第2の電磁弁14」が本件発明1の「ユニット切換弁」に相当し、また、甲第1号証の「当該色の印刷ユニットボタン22を押し、次にNO.4の汚れ位置していボタン21を押し、更にメモリスイッチ29を押す・・・スタートスイッチ30を押す。これにより、制御板18は、汚れに対応する第2の電磁弁及び第1の電磁弁13を開動作させる。そして、エアシリンダ8は圧縮空気の供給を得て汚れ除去具7を版胴1に押し付ける」という一連の手順から、メモリスイッチ29を押すステップとスタートスイッチ30を押すステップを単に省いたものが、本件発明1の「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」ことに相当する。(特許異議申立書第12頁第18行〜第13頁第12行参照。)
(B)甲第2号証に記載された「印刷ユニット切替スイッチ20により印刷ユニットを選択し、選択した印刷ユニットの任意の二元駆動装置10に対応するプラスキー25を選択して操作することにより直ちに対応するゾーンヒッキーキャッチャー9が作動して印刷ユニットにおける版胴2上の異物を除去することができる」ということが、本件発明1の「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」ことに相当する。(特許異議申立書第13頁第13行〜第14頁第6行参照。)

(2)申立人の主張に対する当審の見解
(A)について
甲第1号証(刊行物1)に記載されたものは、印刷ユニットに対応した複数の第2電磁弁を色見台上以外の場所に配設し、操作盤に設けた印刷機の各印刷ユニットに対応するユニット指定ボタン22と、ユニット指定ボタン22及び汚れ位置指定ボタン21により指定される汚れの発生箇所を記憶するメモリ回路25を駆動させるためのメモリスイッチ29と、スタートスイッチ30とを操作することにより、印刷ユニットに対応した第2の電磁弁を開くものであり、また、ユニット指定ボタン22は単にユニットを指定するだけでありこれを押しても第2の電磁弁を直ちに駆動するものではない。
すなわち、この一連の操作手順からメモリスイッチ29を押すステップとメモリスイッチ30を押すステップを省いてしまうと、第2の電磁弁14は開かないので、汚れ除去具7は作動せず、汚れ除去を行うことはできなくなる。
したがって、甲第1号証(刊行物1)に記載されたものから上記の一部の手順を省略したものが、本件発明1の「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」ことに相当するということはできない。
よって、申立人の主張(A)は採用することができない。

(B)について
甲第2号証に記載されたものの「印刷ユニット切替スイッチ20」は、帰路電流を切替ることによって電気的に印刷ユニットの切替選択を行うものであり、弁の開閉制御によって圧縮空気の供給先印刷ユニットを切替るものではない。
したがって、甲第2号証記載のものの「印刷ユニット切替スイッチ20により印刷ユニットを選択し、選択した印刷ユニットの任意の二元駆動装置10に対応するプラスキー25を選択して操作することにより直ちに対応するゾーンヒッキーキャッチャー9が作動して印刷ユニットにおける版胴2上の異物を除去することができる」ことが、本件発明1の「ユニット切換弁の操作によってエア源から圧縮空気が供給されているヒッキー除去ユニットのエアシリンダの中から任意のエアシリンダに対応する釦を選択して操作することにより直ちに対応する異物除去手段が作動して印刷ユニットにおける版胴上の異物を除去させる」ことに相当ということはできない。
よって、申立人の主張(B)は採用することができない。
そうすると、上記4.(1)(2)に説示したのと同様の理由で、甲第2号証及び刊行物2(甲第3号証)に記載された発明に基づいても、請求項1乃至2に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものと認めることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1乃至2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に、本件請求項1乃至2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-02-14 
出願番号 特願平10-139592
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B41F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 六車 江一
荒巻 慎哉
登録日 2000-01-14 
登録番号 特許第3020916号(P3020916)
権利者 ホーメン工業株式会社
発明の名称 ヒッキー除去装置  
代理人 川村 恭子  
代理人 石川 泰男  
代理人 佐々木 功  

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