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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1035579
異議申立番号 異議2000-70739  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-22 
確定日 2001-03-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2937942号「アクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法およびその装置」の請求1および7に記載された発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2937942号の請求1および7に記載された発明の特許を取り消す。 
理由 1.本件特許第2937942号(昭和60年11月21日に出願された特願昭60-261669号の分割出願として出願された特願平7-261543号のさらに分割出願として、平成9年5月6日出願)は、平成11年6月11日に設定登録がされたものであって、その後、異議申立人株式会社ニコンより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月25日に意見書が提出され、その後、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年10月17日に意見書が提出されたものである。
2.異議申立ての概要
異議申立人株式会社ニコンは、甲第1号証(特開昭57-192929号公報)、甲第2号証(特開昭60-186845号公報)、甲第3号証(電子材料別冊「超LSIの注目基礎技術」P.60〜P.65及び裏表紙)、甲第4号証(特公昭46-34057号公報)、甲第5号証(特開昭55-149929号公報)、甲第6号証(特開昭55-129333号公報)、甲第7号証(特開昭60-200525号公報)、甲第8号証(特開昭55-132039号公報)、甲第9号証(特開昭59-113426号公報)、甲第10号証(SEMICON NEWS 別冊 Buyers’Guide 85 P.255〜P.257)、甲第11号証(特開昭60-19143号公報)、甲第12号証(SemiconductorWorld l984.5 60〜61頁)、甲第13号証(特開昭56-111218号公報)、甲第14号証(特開昭60-218650号公報)、甲第15号証(特開昭60-180120号公報)及び甲第16号証(電子材料 1984年4月号 第175頁-第184頁)を提出し、本件請求項1に記載された第1発明及び本件請求項7に記載された第2発明は、甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本件第1及び第2発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。
2.平成12年8月7日付取消理由通知の概要
「本件特許第2937942号の請求項1(以下、「本件第1発明」という。)及び7(以下、「本件第2発明」という。)に係る発明は、甲第16号証及び慣用手段に基いて当業者が容易に発明することができたものであるので、本件第1及び第2発明の特許は取り消すべきものである。」旨の取消理由を通知した。
3.甲各号証の記載内容
3.1 甲第1号証
甲第1号証の第3図には、マスク2を通過した露光光Pは光学系1を介してウエハ8に到達し、マスク2とウエハ8を移動させる移動架台4の移動方向(水平方向)は、露光光Pに対して垂直な方向であることが示されており、マスク2はマスク台3によって、露光光Pに対して垂直に位置決めされるとともに、ウエハ8は平面位置出し装置7、ウエハチャック9によって、露光光Pに対して垂直に位置決めされることが開示されている。
甲第1号証の第4頁右下欄第16行から第19行には「以上の実施例は倍率1:1の投影式マスクアライナについて述べたが、・・・拡大投影式のマスクアライナについても同様にして本発明を適用することができる。」と記載されている。
3.2 甲第2号証
第2頁左上欄第1行から同欄第6行には、「本発明は、・・・半導体素子を製造するための露光装置に関し、特に1枚の被露光基板(半導体ウエハ)上に形成された・・・回路パターンにマスクの回路パターンを・・・重ね合せて露光する」と記載され、第17頁右下欄第12行から同欄第14行には、「本発明によれば、1枚の被露光基板(ウエハ)にマスク(レチクル)のパターンを繰り返し重ね合せ露光する」と記載されている。
3.3 甲第5号証
第2頁右上欄第18行から第2頁右下欄第11行には、「第1図はこの発明にかかる方法を実施するための拡大投影複写装置における露光ヘッド部分の斜視図、第2図はその主要部の模式説明図である。図において、(1)はプレートホルダーで支持および支持フレーム(ともに図示せず)に固定され、その面上に印刷版材などの感光材料(2)がテープ貼りまたは真空吸着、あるいは両者の併用で保持される。(3)は露光ヘッドキャリアで、図示されていないが、感光材料(2)の前後方向(以下Y軸方向という。)案内をなすY軸方向レールおよび感光材料(2)の左右方向(以下X軸方向という。)案内をなすX軸方向レールにそれぞれ移動可能なように係合されている。…(4)は感光ヘッドキャリア(3)の底部に感光材料(2)とたとえば2mm程度の間隔をもって取付けられたしゃ光用マスクで、中央部に拡大投影された原画の有効画像領域に相当する開口部(B)が設けられる。・・・(7)は光源で、アームに支持されたリフレクタ(8)内に配置され、原板ホルダー(9)と光源との距離を変化しうるように保持されている。(10)はコンデンサーレンズ、(11)は原板ホルダー(9)の下方に光軸にそって上下に移動しうるように配置された投影レンズである。」と記載されている。
3.4 甲第11号証
甲第11号証には、レンズ8、ミラー9を介して原稿の像を被露光物体である印刷原版上に露光することが記載されている。
第2頁右下欄第5行から第3頁左下欄第2行には、レンズ8とミラー9の位置を調整して投影倍率を可変とすることで、原稿像を印刷原版上に一度に拡大または縮小露光する旨記載されている。
3.5 甲第16号証
甲第16号証には、TFT方式アクティブマトリックス形の液晶表示素子をホトリソグライ法を用いて製造することが記載され、第180頁右欄第19行〜第180頁第25行には、「最近、・・・TFT(薄膜トランジスタ)の開発が・・・活発化している。その主要な理由は、TFTアクティブマトリックス駆動がこれからのマトリックス表示LCDに強く要請される、・・・からである。」と記載されている。
第182頁左欄第2行〜第9行には、「CdSe形TFTは、・・・Xerox社は、シャドウマスク法とホトリソグラフィ法のハイブリッド技術で・・・LCD用TFTの開発に成功している。」と記載されている。
4.異議申立に対する判断
4.1 本件第1発明及び本件第2発明
請求項1
「薄膜トランジスタをマトリックス状に配設した基板を複数回露光して形成するアクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法であって、
パターンを描いたマスク及びフォトレジストを塗布した前記基板を離間させた状態で光源からの光の光軸に対してそれぞれほぼ垂直に位置決めし、対応する前記マスクのパターン全体を前記基板のフォトレジストに等倍を越える倍率で光学系により面状に一度で拡大投影して露光し、
この露光されたフォトレジストのパターンに基づいてエッチングすることを特徴とするアクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法。」
請求項7
「光を照射する光源と、
薄膜トランジスタをマトリックス状に配設するためのパターンを描いたマスクおよびフォトレジストが塗布された基板を離間させた状態で前記光源からの光の光軸に対してそれぞれほぼ垂直に位置決めする位置決め手段と、
前記光源からの光を前記マスクを介して前記基板に照射し、対応する前記マスクのパターン全体を前記基板のフォトレジストに等倍を越える倍率で面状に一度で拡大投影して前記フォトレジストを露光する光学系と、
この露光されたフォトレジストのパターンに基づいてエッチングするエッチング手段とを具備したことを特徴とするアクティブマトリックス形液晶表示素子の製造装置。
4.2 本件第1及び第2発明と上記取消理由に示した引用例との対比
4.2.1 本件第1発明と引用例との対比
本件第1発明と、引用例に記載された発明とを対比すると、上記甲第16号証の182頁には、ホトリソグラフィ法をLCD用のTFTの製造に用いることが示されている。
甲第16号証記載の「LCD」及び「TFT」は、同号証第181頁を参照すると、本件第1発明の「薄膜トランジスタをマトリックス状に配設した基板を露光して形成するアクティブマトリックス液晶表示素子」及び「薄膜トランジスタ」にそれぞれ相当し、甲第16号証記載の「ホトリソグラフィ法」は、本件第1発明の「パターンを描いたマスク及びフォトレジスト」及び「露光されたフォトレジストのパターンに基づいてエッチングすること」を必然的に伴うから、両者は、「薄膜トランジスタをマトリックス状に配設した基板を露光して形成するアクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法であって、
パターンを描いたマスク及びフォトレジストを塗布した前記基板を露光し、
この露光されたフォトレジストのパターンに基づいてエッチングするアクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法。」である点で一致し、本件第1発明が、「複数回露光して形成」する構成(以下、「本件第1発明の構成1」という。)、「パターンを描いたマスク及びフォトレジストを塗布した前記基板を離間させた状態で光源からの光の光軸に対してそれぞれほぼ垂直に位置決め」する構成(以下、「本件第1発明の構成2」という。)及び「対応する前記マスクのパターン全体を前記基板のフォトレジストに等倍を超える倍率で光学系により面状に一度で拡大投影して露光」する構成(以下、「本件第1発明の構成3」という。)を有するのに対し、甲第16号証には本件第1発明の構成1〜3の記載がない点で相違する。
上記相違点について検討する。
本件第1発明の構成1については、甲第2号証に記載されているようにホトリソグラフィ法において慣用手段にすぎないから、本件第1発明の構成1は当業者が容易になし得たものである。
本件第1発明の構成2については、ホトリソグラフィ法においては、甲第1号証に示されるように、投影露光においては、当然配慮する慣用手段にすぎないから、本件第1発明の構成2は当業者が容易になし得たものである。
本件第1発明の構成3について検討する。
原版を面状に1度に転写することは、甲第5及び11号証に見られるように投影露光技術として慣用手段であり、
また原版を拡大して転写することも甲第1、5及び11号証に見られるように投影露光技術として慣用手段である。
してみると、本件第1発明の構成3は、前記慣用手段に基づいて、ホトリソグラフィ法を用い半導体露光する当業者が容易になし得たものである。
よって、本件第1発明は、甲第16号証記載の発明に慣用手段を単に付加することにより当業者が容易に発明できたものと認める。
4.2.2 本件第2発明と引用例との対比
本件第2発明は、本件第1発明の製造方法を単に製造装置としたものであるから、本件第1発明と同様に、甲第16号証記載の発明に慣用手段を単に付加することにより当業者が容易に発明できたものと認める。
よって、本件第2発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件第1及び第2発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件第1及び第2発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-16 
出願番号 特願平9-115885
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G02F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中西 一友松本 邦夫吉野 公夫河本 充雄  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 綿貫 章
辻 徹二
登録日 1999-06-11 
登録番号 特許第2937942号(P2937942)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 アクティブマトリックス形液晶表示素子の製造方法およびその装置  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 外川 英明  

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