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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05C
管理番号 1035604
異議申立番号 異議1999-72873  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-05-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-07-23 
確定日 2001-03-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2852923号「流体塗布装置及び流体塗布方法」の請求項1、2、3、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2852923号の請求項1乃至4に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2852923号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、出願日が平成5年5月31日である実願平5-34480号を平成10年6月25日に特許出願に変更したものであって、平成10年11月20日に請求項1乃至4に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、請求項1乃至4に係る特許について、申立人コニカ株式会社、中外炉工業株式会社、葛城範子より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年2月15日に特許権者平田機工株式会社、シプレイ・ファーイースト株式会社より意見書が提出されると共に訂正請求がなされ、申立人コニカ株式会社、中外炉工業株式会社、葛城範子に審尋がなされ、申立人中外炉工業株式会社、葛城範子より回答書が提出され、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年9月14日に特許権者平田機工株式会社より意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1乃至4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにしてノズル口から流出させるためのスロットと、塗布対象物に対向して開口するノズル口とを塗布ヘッドに形成され、塗布対象物の送り速度よりも小さな吐出速度で流体を流出させて塗布対象物に流体を塗布させるようにした流体塗布装置において、
塗布対象物の表面高さを検出する検出器を設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布装置。」
(2)引用刊行物記載の発明
訂正明細書の請求項1に係る発明に対し、当審が訂正拒絶理由通知で引用した刊行物1(特開平2-52742号公報)には、
公報第7頁左上欄第5行〜第9頁右上欄第16行の『第4図はその一実施例・・・保持することができる。』なる記載、及び第4〜9図の記載内容等からみて、
「基板23に対向して開口するノズル口をノズル11の先端に形成され、基板23にペーストを吐出し、パターン30を描画させるようにしたスクリーンレスパターン描画装置において、
基板23の表面高さを検出するセンサ12を設け、上記センサ12によって検出された基板23の表面高さに応じて吐出、描画動作時におけるノズル11の高さを調整するようにしたスクリーンレスパターン描画装置。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物2(特公平3-75229号公報)には、
公報第3頁第5欄第8〜19行の『上記吐出部について・・・同一構成である。』なる記載、同第3頁第6欄第13〜17行の『本発明方法は・・・塗布することにより実施できる。』なる記載、及び第5図の記載内容等からみて、
「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして吐出口22,24から流出させるための空間15と、被塗布物1に対向して開口する吐出口22,24とを吐出部23,25に形成され、被塗布物1に粘性物2を塗布させるようにした粘性物の塗布装置。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物3(特開平4-118076号公報)には、
公報第1頁右下欄第6〜8行の『本発明は・・・ものである。』なる記載、同第3頁左下欄第10〜16行の『実施例で用いた・・・塗料を用いた。』なる記載、及び第2図の記載内容等からみて、
「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにしてリップ7,8から流出させるためのスロット5と、帯状の金属板に対向して開口するリップ7,8とをダイに形成され、帯状の金属板に塗料を塗布させるようにしたダイコーティング装置。」
に関する発明が記載されている。
(3)対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「基板23」,「ノズル11」,「ペースト」,「センサ12」は、それぞれ、訂正明細書の請求項1に係る発明の「塗布対象物」,「塗布ヘッド」,「流体」,「検出器」に相当する。また、刊行物1に記載された発明の「吐出し、パターン30を描画させる」,「吐出、描画動作時」は、それぞれ、その作用からみて、訂正明細書の請求項1に係る発明の「塗布させる」,「塗布動作時」に相当し、よって、刊行物1に記載された発明の「スクリーンレスパターン描画装置」は、訂正明細書の請求項1に係る発明の「流体塗布装置」に相当する。
したがって、両者は、
「塗布対象物に対向して開口するノズル口を塗布ヘッドに形成され、塗布対象物に流体を塗布させるようにした流体塗布装置において、
塗布対象物の表面高さを検出する検出器を設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布装置。」
である点で一致し、以下の点イ,ロで相違する。
相違点イ;訂正明細書の請求項1に係る発明の「塗布ヘッド」は、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにしてノズル口から流出させるためのスロットと、塗布対象物に対向して開口するノズル口とを形成される」のに対し、刊行物1に記載された発明の「塗布ヘッド」は、「塗布対象物に対向して開口するノズル口を形成される」が、その余の構成を具備しない点。
相違点ロ;訂正明細書の請求項1に係る発明は、「塗布対象物の送り速度よりも小さな吐出速度で流体を流出させて塗布対象物に流体を塗布させる」のに対し、刊行物1に記載された発明は、「塗布対象物に流体を塗布させる」が、その余の構成について不明である点。
そこで、相違点イ,ロについて検討する。
相違点イについて;刊行物2に記載された発明は、粘性物の塗布装置において、「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして吐出口22,24から流出させるための空間15と、被塗布物1に対向して開口する吐出口22,24とを吐出部23,25に形成された」構成を、刊行物3に記載された発明は、帯状の金属板に塗料を塗布させるようにしたダイコーティング装置において、「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにしてリップ7,8から流出させるためのスロット5と、帯状の金属板に対向して開口するリップ7,8とをダイに形成された」構成を、それぞれ具備している。すなわち、刊行物2及び3に記載された発明は、流体塗布装置において、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにしてノズル口から流出させるためのスロットと、塗布対象物に対向して開口するノズル口とを形成された塗布ヘッド」の構成を具備している。そして、刊行物1に記載された発明の「塗布ヘッド」として、刊行物2または3に記載された発明の上記塗布ヘッドの構成を採用して訂正明細書の請求項1に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
相違点ロについて;流体塗布装置において、塗布対象物の送り速度よりも小さな吐出速度で流体を流出させて塗布対象物に流体を塗布させるようにすることは、当該技術分野における周知の技術事項(刊行物3の第3頁左下欄第6行〜第4頁左上欄第9行の[実施例]に関する記載、特にスロットのクリアランス280μ,塗膜厚さ15μ,搬送速度60m/分である点、参照。米国特許第3,526,535号明細書の第7欄の表及び図面の記載、参照。)である。したがって、刊行物1に記載された発明において、上記周知の技術事項を採用して訂正明細書の請求項1に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
以上のとおり、訂正明細書の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2、または刊行物1及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する同第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件請求項1乃至4に係る発明
本件特許第2852923号の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件請求項1乃至4に係る発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを塗布ヘッドに形成された流体塗布装置において、
塗布対象物の表面高さを検出する検出器を設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布装置。
【請求項2】塗布対象物の表面高さを検出する検出器を塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの両側部の高さをそれぞれ調整するようにした、請求項1に記載の流体塗布装置。
【請求項3】塗布対象物の表面高さを検出する検出器を塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さの平均値に応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした、請求項1に記載の流体塗布装置。
【請求項4】流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成された塗布ヘッドにより、塗布対象物に流体を塗布する方法であって、
塗布対象物の表面高さを検出する検出手段を設け、上記検出手段によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布方法。」
(2)引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用した刊行物4(特開平2-52742号公報)には、
公報第7頁左上欄第5行〜第9頁右上欄第16行の『第4図はその一実施例・・・保持することができる。』なる記載、及び第4〜9図の記載内容等からみて、
「基板23の表面高さを検出するセンサ12を設け、上記センサ12によって検出された基板23の表面高さに応じてペーストの吐出、描画動作時におけるノズル11の高さを調整するようにしたスクリーンレスパターン描画装置。」、
及び
「基板23の表面高さを検出するセンサ12を設け、上記センサ12によって検出された基板23の表面高さに応じてペーストの吐出、描画動作時におけるノズル11の高さを調整するようにしたスクリーンレスパターン描画方法。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物2(特公平3-75229号公報)には、
公報第3頁第5欄第8〜19行の『上記吐出部について・・・同一構成である。』なる記載、同第3頁第6欄第13〜17行の『本発明方法は・・・塗布することにより実施できる。』なる記載、及び第5図の記載内容等からみて、
「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして流出させるための空間15とを吐出部23,25に形成された粘性物の塗布装置。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物3(特開平4-118076号公報)には、
公報第1頁右下欄第6〜8行の『本発明は・・・ものである。』なる記載、同第3頁左下欄第10〜16行の『実施例で用いた・・・塗料を用いた。』なる記載、及び第2図の記載内容等からみて、
「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにして流出させるためのスロット5とをダイに形成されたダイコーティング装置。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物7(特開平2-40258号公報)には、
公報第2頁右上欄第10行〜同頁右下欄第15行の『図において、1は・・・設定値に補正する。』なる記載、及び第1,2図の記載内容等からみて、
「処理材Wの表面高さを検出する非接触型距離計5を設け、上記非接触型距離計5によって検出された処理材Wの表面高さに応じて塗装動作時におけるコータヘッド6の高さを調整するようにしたコータギャップ制御装置。」
及び
「処理材Wの表面高さを検出する非接触型距離計5を設け、上記非接触型距離計5によって検出された処理材Wの表面高さに応じて塗装動作時におけるコータヘッド6の高さを調整するようにしたコータギャップ制御方法。」
に関する発明が記載されている。
同刊行物6(特開平2-119967号公報)には、
公報第3頁左下欄第11行〜第4頁左上欄第6行の『12、12・・・ようになっている。』なる記載、及び第1〜3図の記載内容等からみて、
「ウエブギャップセンサ12とコーターギャップセンサ13とを、それぞれ、塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記ウエブギャップ12とコーターギャップセンサ13とによって検出されたウエブ3の表面高さに応じて塗布動作時におけるコーター2の高さを調整するようにしたウエブ塗布装置。」
に関する発明が記載され、
さらに、公報第4頁左上欄第8〜11行の『さらに、複数個の駆動手段を適宜配設してコーター2の塗布側エッジを湾曲させてビードギャップB2を制御できるように構成してもよい。』なる記載からみて、「ウエブ3の表面高さに応じて塗布動作時におけるコーター2の両側部の高さをそれぞれ調整する」構成が示唆されているものと言え、
また、公報第3頁右下欄第20行〜第4頁左上欄第11行の『即ち該駆動手段17は、センサ12、13の出力を、信号処理部14でデジタル化した後、演算処理部15で所定のアルゴリズムで演算した指令値に従って、第二コーター2の位置を適宜前後進させて制御し、ビードギャップB2を最適状態に維持できるようになっている。・・・さらに、複数個の駆動手段を適宜配設してコーター2の塗布側エッジを湾曲させてビードギャップB2を制御できるように構成してもよい。』なる記載からみて、「駆動手段17が1個配設される」構成が示唆されているものと言える。
(3)対比・判断
[本件請求項1に係る発明について]
<理由1>
本件請求項1に係る発明と、刊行物4に記載された発明とを対比すると、刊行物4に記載された発明の「基板23」,「センサ12」,「ペースト」,「ノズル11」は、それぞれ、本件請求項1に係る発明の「塗布対象物」,「検出器」,「流体」,「塗布ヘッド」に相当する。また、刊行物4に記載された発明の「吐出、描画動作時」は、その作用からみて、本件請求項1に係る発明の「塗布動作時」に相当し、よって、刊行物4に記載された発明の「スクリーンレスパターン描画装置」は、本件請求項1に係る発明の「流体塗布装置」に相当する。
したがって、両者は、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出器を設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点;本件請求項1に係る発明の「塗布ヘッド」は、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成される」のに対し、刊行物4に記載された発明の「塗布ヘッド」は、当該構成を具備しない点。
そこで、相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明は、粘性物の塗布装置において、「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして流出させるための空間15とを吐出部23,25に形成された」構成を、刊行物3に記載された発明は、ダイコーティング装置において、「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにして流出させるためのスロット5とをダイに形成された」構成を、それぞれ具備している。すなわち、刊行物2及び3に記載された発明は、流体塗布装置において、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成された塗布ヘッド」の構成を具備している。そして、刊行物4に記載された発明の「塗布ヘッド」として、刊行物2または3に記載された発明の上記塗布ヘッドの構成を採用して本件請求項1に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
<理由2>
本件請求項1に係る発明と、刊行物7に記載された発明とを対比すると、刊行物7に記載された発明の「処理材W」,「非接触型距離計5」,「塗装動作時」,「コータヘッド6」,「コータギャップ制御装置」は、それぞれ、本件請求項1に係る発明の「塗布対象物」,「検出器」,「塗布動作時」,「塗布ヘッド」,「流体塗布装置」に相当する。
したがって、両者は、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出器を設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点;本件請求項1に係る発明の「塗布ヘッド」は、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成される」のに対し、刊行物7に記載された発明の「塗布ヘッド」は、当該構成を具備するか否か不明である点。
そこで、相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明は、粘性物の塗布装置において、「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして流出させるための空間15とを吐出部23,25に形成された」構成を、刊行物3に記載された発明は、ダイコーティング装置において、「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにして流出させるためのスロット5とをダイに形成された」構成を、それぞれ具備している。すなわち、刊行物2及び3に記載された発明は、流体塗布装置において、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成された塗布ヘッド」の構成を具備している。そして、刊行物7に記載された発明の「塗布ヘッド」として、刊行物2または3に記載された発明の上記塗布ヘッドの構成を採用して本件請求項1に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
[本件請求項2に係る発明について]
本件請求項2に係る発明と、刊行物7に記載された発明とを対比すると、本件請求項1に係る発明との対比に加え、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出器を塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの両側部の高さをそれぞれ調整するようにした」
点で両者はさらに相違する。
しかしながら、刊行物6には、ウエブ塗布装置において、「ウエブギャップセンサ12とコーターギャップセンサ13とを、それぞれ、塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記ウエブギャップセンサ12とコーターギャップセンサ13とによって検出されたウエブ3の表面高さに応じて塗布動作時におけるコーター2の高さを調整するようにした」構成が記載され、また、「ウエブ3の表面高さに応じて塗布動作時におけるコーター2の両側部の高さをそれぞれ調整する」構成が示唆されており、当該構成を、刊行物7に記載された発明に適用して本件請求項2に係る発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に推考し得ることにすぎない。
[本件請求項3に係る発明について]
本件請求項3に係る発明と、刊行物7に記載された発明とを対比すると、本件請求項1に係る発明との対比に加え、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出器を塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記検出器によって検出された塗布対象物の表面高さの平均値に応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした」
点で両者はさらに相違する。
しかしながら、刊行物6には、ウエブ塗布装置において、「ウエブギャップセンサ12とコーターギャップセンサ13とを、それぞれ、塗布方向と略直行する方向に位置をずらせて少なくとも2個以上設け、上記ウエブギャップセンサ12とコーターギャップセンサ13とによって検出されたウエブ3の表面高さに応じて塗布動作時におけるコーター2の高さを調整するようにした」構成が記載され、また、「駆動手段17が1個配設される」構成が示唆されており、該駆動手段17が1個配設されるときには、結果として、「ウエブ3の表面高さの平均値に応じて塗布動作時におけるコーター2の高さを調整する」ものと言えるから、当該構成を、刊行物7に記載された発明に適用して本件請求項3に係る発明のような構成とすることは、当業者であれば容易に推考し得ることにすぎない。
[本件請求項4に係る発明について]
<理由1>
本件請求項4に係る発明と、刊行物4に記載された発明とを対比すると、刊行物4に記載された発明の「基板23」,「センサ12」,「ペースト」,「ノズル11」は、それぞれ、本件請求項4に係る発明の「塗布対象物」,「検出手段」,「流体」,「塗布ヘッド」に相当する。また、刊行物4に記載された発明の「吐出、描画動作時」は、その作用からみて、本件請求項4に係る発明の「塗布動作時」に相当し、よって、刊行物4に記載された発明の「スクリーンレスパターン描画方法」は、本件請求項4に係る発明の「流体塗布方法」に相当する。
したがって、両者は、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出手段を設け、上記検出手段によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点;本件請求項4に係る発明の「塗布ヘッド」は、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成される」のに対し、刊行物4に記載された発明の「塗布ヘッド」は、当該構成を具備しない点。
そこで、相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明は、粘性物の塗布装置において、「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして流出させるための空間15とを吐出部23,25に形成された」構成を、刊行物3に記載された発明は、ダイコーティング装置において、「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにして流出させるためのスロット5とをダイに形成された」構成を、それぞれ具備している。すなわち、刊行物2及び3に記載された発明は、流体塗布装置において、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成された塗布ヘッド」の構成を具備している。そして、刊行物4に記載された発明の「塗布ヘッド」として、刊行物2または3に記載された発明の上記塗布ヘッドの構成を採用して本件請求項4に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
<理由2>
本件請求項4に係る発明と、刊行物7に記載された発明とを対比すると、刊行物7に記載された発明の「処理材W」,「非接触型距離計5」,「塗装動作時」,「コータヘッド6」,「コータギャップ制御方法」は、それぞれ、本件請求項4に係る発明の「塗布対象物」,「検出手段」,「塗布動作時」,「塗布ヘッド」,「流体塗布方法」に相当する。
したがって、両者は、
「塗布対象物の表面高さを検出する検出手段を設け、上記検出手段によって検出された塗布対象物の表面高さに応じて塗布動作時における塗布ヘッドの高さを調整するようにした流体塗布方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点;本件請求項4に係る発明の「塗布ヘッド」は、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成される」のに対し、刊行物7に記載された発明の「塗布ヘッド」は、当該構成を具備するか否か不明である点。
そこで、相違点について検討する。
刊行物2に記載された発明は、粘性物の塗布装置において、「粘性物2を注入するための開口部18と、該開口部18から注入された粘性物2を幅方向に拡散させるための空間17と、該空間17内の粘性物2を一定の厚みにして流出させるための空間15とを吐出部23,25に形成された」構成を、刊行物3に記載された発明は、ダイコーティング装置において、「塗料を注入するための塗料注入口と、該塗料注入口から注入された塗料を幅方向に拡散させるための塗料保持部6と、該塗料保持部6内の塗料を一定の厚みにして流出させるためのスロット5とをダイに形成された」構成を、それぞれ具備している。すなわち、刊行物2及び3に記載された発明は、流体塗布装置において、「流体を注入するための流体注入口と、該流体注入口から注入された流体を幅方向に拡散させるための空洞部と、該空洞部内の流体を一定の厚みにして流出させるためのスロットとを形成された塗布ヘッド」の構成を具備している。そして、刊行物7に記載された発明の「塗布ヘッド」として、刊行物2または3に記載された発明の上記塗布ヘッドの構成を採用して本件請求項4に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なく想到し得る事項にすぎない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至4に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-16 
出願番号 特願平10-179291
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B05C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 関谷 一夫
栗田 雅弘
登録日 1998-11-20 
登録番号 特許第2852923号(P2852923)
権利者 平田機工株式会社 シプレイ・ファーイースト株式会社
発明の名称 流体塗布装置及び流体塗布方法  
代理人 古川 泰通  
代理人 前田 厚司  
代理人 中野 雅房  
代理人 青山 葆  
代理人 中野 雅房  

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