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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61M
管理番号 1035641
異議申立番号 異議2000-70105  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-18 
確定日 2001-03-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第2920541号「生体器官拡張器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2920541号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2920541号は、平成1年9月29日に特許出願され、平成11年4月30日に特許の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人テルモ株式会社により特許異議の申立てがされ、取消理由通知がされ、その指定期間内である、平成12年6月23日に訂正請求がされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成12年10月31日に手続補正書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書第2頁第14行記載の訂正事項a、
『特許第2920541号明細書の特許請求の範囲における請求項1の記載「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが、前記の生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さく、かつ、温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみであることを特徴とする生体器官拡張器。」を、
「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、
カテーテルと補綴材とで構成され、
前記カテーテルが、カテーテル本体と、当該カテーテル本体の先端部に設けられた膨張・収縮可能な第一のバルーンと、前記第一のバルーンの手元側に設けられた膨張収縮可能な第二のバルーンと、前記カテーテル本体に形成されて前記補綴材を昇温させる温水を供給するルーメンと、を有し、
前記補綴材が形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが、前記の生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さく、かつ、温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみであることを特徴とする生体器官拡張器。」に訂正する。』を、
『特許第2920541号明細書の特許請求の範囲における請求項1の記載「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが、前記の生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さく、かつ、温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみであることを特徴とする生体器官拡張器。」を、
「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、
可撓性を有しかつ生体との適合性に優れる材料で被覆された形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが、前記の生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さく、かつ、温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみであることを特徴とする生体器官拡張器。」に訂正する。』
と補正しようとしたものであるが、当該訂正請求に対する補正は、訂正事項の内容を変更するものであり、したがって、訂正請求書の要旨を変更するものであると認められるので、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合せず、当該補正は認められない。
(2)訂正の内容
特許権者が求めている訂正は、前記「訂正事項a」を含むものである。
(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
しかしながら、訂正前の特許請求の範囲は、その記載および明細書の詳細な説明中の「生体器官拡張器(以下、補綴材と呼ぶ。)」(特許第2920541号公報第2頁右欄第33行)の記載からみて、補綴材のみを対象としたものと認められ、一方、訂正後の特許請求の範囲はその記載からみて、カテーテルと補綴材とで構成される、より包括的なものを対象としたものと認めれる。
したがって、上記訂正事項aは特許請求の範囲に記載された発明の対象を変更するものであって、実質上特許請求の範囲を変更するものに該当し、上記訂正は同法第120条の4第3項で準用する平成6年改正前の特許法第126条第2項の規定に適合しない。
よって、他の訂正事項を検討するまでもなく、当該訂正は認められない。

3.特許異議申し立てについての判断
(1)特許異議申し立ての概要
申立人テルモ株式会社は甲第1号証(特開昭64-83251号公報)を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件発明の特許を取り消すべき旨主張している。
(2)本件発明
本件発明は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さく、かつ、温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみであることを特徴とする生体器官拡張器。」
(3)引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1(特開昭64-83251号公報)には、管状器官内腔の内径確保用器具に関して、第1〜6図とともに、
i)「従来、例えば冠動脈の狭搾部を血管拡張カテーテルで拡張した後、その部分の再狭搾を防止する等のために、管状器官の内腔の内径を確保する内径確保用器具(ステント)が提案されている。」(第1頁右下欄第20行〜第2頁左上欄第3行)こと、
ii)「本発明は、管状器官内で一端拡張させた場合でも再び自由に縮小させることができ、したがって留置位置からの回収が可能であるとともに、拡張後における留置位置の変更も自由にできる管状器官内腔の内径確保用器具を提供することを目的とする。」(第2頁右上欄第2〜7行)こと、
iii)「本発明に係る管状器官内腔の内径確保用器具は、温度変化にともなって径方向に寸法変化をし得る一方向性形状記億合金にて実質的に筒状に形成されてなり、その筒状体の母相における径が管状器官の内径より小さいようにしたものである。」(第2頁右上欄第9〜14行)こと、
iv)「内径確保用器具(以下ステント)10は、温度変化にともなって径方向に寸法変化をし得る一方向性形状記憶合金にて実質的に筒状、この例ではコイル状に形成されてな(る)」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第3行)こと、
v)「一方向性形状記憶合金とは、変態温度を有し、この温度以上になると母相の予め記憶させていた形状に変化するものをいい、変態温度以下では自由に変形でき、変態温度以上となり記憶形状に復元するとその後変態温度以下になっても記憶形状を維持するものをいう。」(第2頁左下欄第16行〜同頁右下欄第2行)こと、
vi)「そのステント10の母相における径が管状器官、この例では血管11の内径より小さく設定されている(第1図(A)参照)」(第3頁左上第3〜6行)こと、
vii)「さらに、本発明のステントを留置後に、回収(もしくは留置位置を変更)するには、例えば第7図に示す回収用カテーテル60が用いられる。回収用カテーテル60は、先端部に側孔61を備えてなり、主通路62に挿通されるガイドワイヤ(第5図(C)の67)にて管状器官内のステント留置部位にガイドされ、注液用副通路63から主通路62に供給されるステント加熱液を側孔61から流出し、側孔61の周囲に位置する拡張状態のステントを変態温度以上に加熱して、母相の記憶形状に復元すなわち縮径させるようになっている。」(第3頁左下欄第11行〜同頁右下欄第2行)こと、
viii)「上記ステント10の回収時、留置位置の変更時には、第5図(C)に示す如く、先端部に側孔61を有する回収用カテーテル60をステント10の留置位置まで導入しその側孔61より形状記憶合金の変態温度以上の液を排出することにより、ステント10を変態温度以上として記憶形状に復元すなわち血管11の内径より縮径させ、ステント10を回収用カテーテル60の先端部に巻付ける等の状態で該カテーテル60の移動とともに移動可能とする。」(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第6行」)こと、
ix)「筒状の内径確保用器具を構成している形状記憶合金の変態温度以下の状態下で、該筒状体を管状器官の内径より小径に変形し例えば管状器官拡張カテーテルの先端バルーン等に被着して管状器官の所望位置に導入後、この筒状体を例えばバルーンの拡張等に基づく外力の作用により拡径して留置し、管状器官の内径を確保する。次に、上記筒状の内径確保用器具の回収時、もしくは留置位置の変更時には、例えば先端部に側孔を有するカテーテルを筒状体の留置位置まで導入しその側孔より形状記憶合金の変態温度以上の液を排出する等により、筒状体を変態温度以上として記憶形状に復元すなわち管状器官の内径より縮径させ、この筒状体を例えばカテーテルの先端部に巻き付ける等の状態でカテーテルの移動とともに移動可能とする。すなわち、本発明によれば、管状器官内で一端拡張させた場合でも再び自由に縮小させることができ、したがって留置位置からの回収が可能であるともに、拡張後における留置位置の変更も自由にできる」(第2頁右上欄第16行〜同頁左下欄第15行)ことが記載されている。
(4)対比・判断
本件発明と刊行物1に記載されたものを対比すると、刊行物1の(イ)「管状器官内腔の内径確保用器具10」、(ロ)「一方向性形状記憶合金」、(ハ)「母相における径」が、それぞれ本件発明の(イ)’「生体器官拡張器」、(ロ)’「形状記憶材料」、(ハ)’「記憶形状の大きさ」に相当し、上記(2)i),ix)の記載からみて、刊行物1のものは、管状の生体器官の狭搾部をバルーン等を用いて拡張させる生体器官拡張器であり、一般に管状器官の内径に至るまで拡張されるので、(ニ)「管状器官の内径」は本件発明の(ニ)’「生体器官拡張時の形状の大きさ」に相当する。
結局、両者は、
「生体器官を拡張させるための生体器官拡張器において、形状記憶材料からなり、記憶形状の大きさが、前記の生体器官拡張時の形状の大きさよりも小さいことを特徴とする生体器官拡張器」である点で一致する。
さらに、上記(2)ii),v),viii)の記載からみて、刊行物1のものも本件発明のように「温度変化による形状変化が前記の生体器官拡張時の形状から前記記憶形状への変化のみである」と認められる。
してみると、本願発明の構成は、すべて刊行物1に示されているものであって、本願発明と刊行物1のものとは構成上の差異がない。
(5)むすび
したがって、本件発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-12-27 
出願番号 特願平1-256477
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (A61M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山中 真  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
熊倉 強
登録日 1999-04-30 
登録番号 特許第2920541号(P2920541)
権利者 日本ゼオン株式会社
発明の名称 生体器官拡張器  
代理人 西出 眞吾  
代理人 村松 貞男  
代理人 前田 均  
代理人 福原 淑弘  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 坪井 淳  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  

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