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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B21B
管理番号 1035709
異議申立番号 異議1999-70447  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-10 
確定日 2001-04-02 
異議申立件数
事件の表示 特許第2785639号「Si含有鋼板の熱延スケール疵防止方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2785639号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第2785639号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成5年3月16日に出願され、平成10年5月29日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、川崎製鉄株式会社及び株式会社神戸製鋼所より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知がされ、その指定期間内である平成12年9月12日に意見書が提出されたものである。

[2]本件発明
本件特許第2785639号の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれを「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 Si:0.15wt%以上を含むSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法において、P:0.012〜0.030wt%を含有させたスラブを1230℃超〜1300℃に加熱し、加熱後少なくとも仕上圧延前までに衝突圧2000kPa以上の高圧水でデスケーリングを行うことを特徴とするSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法。
【請求項2】 前項記載のSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法において、粗圧延前までに幅方向に1%以上の圧下率で圧下し、その後に前記デスケーリングを行うことを特徴とする請求項1記載のSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法。」

[3]異議申立ての概要
1.異議申立人 川崎製鉄株式会社は、甲第1号証(特開昭53-140219号公報(以下、「刊行物1」という。))、甲第2号証(特開平4-127912号公報(以下、「刊行物2」という。))及び甲第3号証(「第3版鉄鋼便覧III(1)圧延基礎・鋼板」昭和55年5月15日、丸善株式会社発行、第372頁、第383頁(以下、「刊行物3」という。))を提示して、本件発明1、2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべき旨主張する。
2.異議申立人 株式会社神戸製鋼所は、甲第1号証(日本鉄鋼協会講演論文集「材料とプロセス」Vol.2(1989),No.5、平成元年9月1日、日本鉄鋼協会発行、第1508頁、第1509頁(以下、「刊行物4」という。))及び参考文献として、日本鉄鋼協会講演論文集「材料とプロセス」Vol.3(1990),No.5、平成2年9月3日、日本鉄鋼協会発行、第1452頁(以下、「刊行物5」という。)を提示して、本件発明1、2は、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべき旨主張する。

[4]各刊行物の記載事項
異議申立人が提示した各刊行物には、それぞれ以下の事項が記載されている。
1.刊行物1
(1a)「C 0.05〜0.60%、Mn 0.5〜2.0%、Si 0.25〜0.60%、Al 0.05%以下、P 0.03%以下、S 0.03%以下、残部がFeと不可避不純物からなるキルド鋼材を加熱炉の均熱帯において、酸素濃度を2〜8%とし1250℃超〜1320℃未満の温度領域において10〜80分間均熱したのち、通常の熱間圧延を行なうことを特徴とするスケール疵のすくない熱間圧延鋼材の製造方法。」(特許請求の範囲)
(1b)「・・・研究した結果、本発明者等は特にSiについて注意を払わねばならぬことを知った。つまりSiは前記(1)〜(4)項に該当するうえに特に1200℃以上の高温になるとSiがスケール/地鉄境界層に富化して鉄酸化物FeOと合金成分を作り、Fe2SiO4(Fayalite)を生成し、前記Fe2SiO4の融点は1205℃附近であるため、それ以上の温度に加熱した場合、境界層に富化したFe2SiO4が溶融し、第2図のスケールと地鉄の境界層を撮った顕微鏡写真に示すように粒界に浸入し、あたかも楔16のような形で、スケールの固着性を高めるほか、溶融物が接着剤のような作用をするものと推察されているからで、・・・」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第4行)
(1c)「さて、前述のように加熱炉において圧延温度に達した鋼材は、通常のエッジング圧延あるいは上下方向のスケール割り込み圧延を経て、100〜200kg/cm2の高圧デスケーリング水によって上層のスケールが剥離され、ついで圧下、デスケーリングの繰返しによって残留スケールが剥離される。」(第4頁右上欄第11〜17行)

2.刊行物2
(2a)「Siを0.1重量%以上含有する鋼を熱間圧延して熱延鋼板を製造するに際し、仕上げ圧延に先立ち、単位散布面積当たりの衝突圧が20g/mm2以上40g/mm2以下で、単位時間当たりの流量密度が0.1l/min・mm2以上0.2l/min・mm2以下の高圧水スプレーを鋼板表面に施すことを特徴とする薄スケール熱延鋼板の製造方法。」(特許請求の範囲)
(2b)「第3表に示す化学組成の鋼から成るスラブを熱間圧延するに際して、第4表に示す条件でデスケーリングを実施した。熱延後のスケール厚とスケール疵発生率を示す。」(第4頁右上欄第5〜8行)
(2c)第4頁の第3表、第4表には、No.9として、Si:0.26%及びP:0.015%を含有する鋼Bを、供給水圧:300kg/cm2、デスケーリング温度:950℃、衝突圧Pt:30g/mm2、単位時間当りの流量密度V:0.20l/min・mm2の条件でデスケーリングした例が記載されてる。

3.刊行物3
(3a)「スケールブレーカには水平式のRSBと垂直式のVSBがある。両者には、本来の目的のほかに、前者はスラブの厚さを、後者はスラブの幅を一様にして次の圧延機に送る利点があり、最近の圧延機では幅圧下および幅精度向上のためほとんどVSBが採用されている。
最近では連鋳スラブの増加により、ホットストリップミルでの幅調整がますます重要になっており、強力なVSBにて、100mm以上の幅圧下を行なう傾向にある。」(第372頁「(ii)圧延機の配置(1)」の欄)
(3b)第383頁の図7.69にはVSBがR1〜R4の前に、またA〜HはF1〜F7の前に設置されていること、が記載されている。

4.刊行物4
刊行物4の第1508頁には、
(4a)「実験装置の全体レイアウトをFig.1に示す。デスケーラー、エッジャーを中心に、入側に加熱炉、マニプレーター、出側にテーブルを配し、更に圧延機をごく近傍に配置した。」(「2.装置レイアウト」の欄)、
「これらにより、加熱からエッジャー、デスケーラー、圧延までのテストが可能になり、熱延鋼板の表面性状の実機並のシミュレーションが可能になった。」(「3.装置の概要と特徴」(4)の欄)、「(1)いわゆる赤スケールは140kgf/cm2以上に圧力を上げると軽減するが、熱延常用圧力以上の170kgf/cm2まで圧力を上げても完全には、スケール疵がなくならないことが判明した。(2)このため、スプレー圧力を熱延常用圧力の140kgf/cm2に固定し、加熱温度の影響について試験を行った結果を第2報で報告する。」(「デスケーリング圧力降下実験結果」の欄)と記載され、そして、Fig.1には、入側から出側に向けて順に加熱炉、エッジャー、ノズルを備えたデスケーラー、テーブル、ローリングミルを配置したことが、表1には、デスケーラーの仕様として、水圧:100〜190kgf/cm2、噴射流量:〜330l/min、ノズル高さ:50〜500mmであることが、表2には、実験条件として、加熱温度:1250℃(1時間保持)、圧下率:エッジング140W→135Wであることが、また、Fig.2には、ほぼ140〜170kgf/cm2の水圧の範囲において、残留スケールの程度は良好(指標3)かつほぼ一定であることが、それぞれ示されている。
また、刊行物4の第1509頁には、
(4b)「実験材料は、Table1に示す、鋼中Si含有量を0.11〜0.40wt%とする鋼について、Table2に示す雰囲気、条件で実験し、表面観察ならびに断面ミクロ調査を行った。」(「2.実験方法」の欄)、「(1)赤スケールは、鋼の結晶粒界に侵入した低融点酸化物よりなるスケールがアンカー効果をなし(Photo1に1例を示す)、低融点酸化物を含む一次スケールの剥離性を悪化させ、デスケーリングで、完全に除去できずに生成するものと考えられる。(2)故に、結晶粒界へのスケールの侵入の有無が、赤スケールの発生の有無に相関があり、加熱温度の影響について調査した結果がFig.1である。圧延方向20mm当たりの侵入スケールは、1160℃加熱では認められず、1250℃、1300℃加熱では、個数が減少している。」(「3.実験結果」の欄)と記載され、そして、表1にはSi:0.26wt%、P:0.020wt%を含有する鋼材B、及び、Si:0.40wt%、P:0.017wt%を含有する鋼材Cが示され、表2には実験条件は、加熱温度:1160℃〜1300℃、エッジング:140W→135W(mm)、デスケーラー水圧:140kgf/mm2、ノズル高さ:300mmであることが記載され、また、Fig.1には、鋼材B、鋼材Cの侵入スケール数は1160℃以下では低く、1180℃〜1220℃で高くなり、1220℃を超えると減少する傾向にあることが示されている。

5.刊行物5
(5a)「・・ノズル流量V、水圧P、・・垂直距離H・・・(3)高圧水脱スケール時の衝突圧p(kg/cm2)は次式で表され、脱スケール性を高めるには、ノズル流量および水圧を大きくし、垂直距離は小さくして衝突圧を高くする必要がある。
p(kg/cm2)=5.64PV/H2 」(「3.実験結果および考察」の欄)
(5b)「脱スケール性を高めるには衝突圧を高くする必要があるが、鋼材の温度低下を抑制するための総合的な検討が必要である。」(「4.結論」の欄)と記載されている。

[5]当審の判断
1.異議申立人 川崎製鉄株式会社の主張について
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載のものとを対比すると、刊行物1に記載のSi含有鋼のSi、Pの含有量及び鋼材加熱温度は本件発明1のそれと重複し、また、刊行物1記載ものでは、デスケーリングは仕上圧延前までに高圧水で行われているから(記載事項(1a)、(1c))、両者は、Si:0.15wt%以上を含むSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法において、P:0.012〜0.030wt%を含有させたスラブを1230℃超〜1300℃に加熱し、加熱後少なくとも仕上圧延前までに所定値の衝突圧の高圧水でデスケーリングを行うSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法の点で一致し、本件発明1は、高圧水の衝突圧を2000kPa以上としているのに対して、刊行物1には高圧水の衝突圧について記載されていない点で相違する。 そこで、上記相違点について検討するに、まず、本件発明1は、その明細書及び図面の記載によれば、鋼中のP含有量、スラブ加熱温度及びデスケーリング高圧水の衝突圧と、スケール疵発生率の関係を試験し、スラブ加熱温度1230超〜1300℃において、P含有量を0.012wt%以上にすることによりスケール欠陥の程度を急激に低減させることが可能(本件特許公報【0021】参照)であり、かつ、かかるP含有量の場合にデスケーリング条件である高圧水の衝突圧2000kPa以上でほぼ赤スケール疵発生率が零に近い十分なデスケーリング効果が得られ、一方P含有量が0.012%未満の場合、高圧水の衝突圧が2000kPa以上であってもスケール発生率が40%程度となる(本件特許公報【0016】、【0019】、【0023】参照)という試験結果から、これら3因子(鋼中のP含有量、スラブ加熱温度、デスケーリング高圧水の衝突圧)の最適条件の組み合わせにより、経済性・安定性を損なうことなくスケールを有効に除去し得ることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させたものである(本件特許公報【0011】参照)といえる。
しかるに、刊行物2には衝突圧20〜40g/mm2すなわち196〜392kPaの高圧水でデスケーリングすること(記載事項(2a))、および実施例として供給水圧:300kg/cm2、衝突圧Pt:30g/mm2、単位時間当りの流量密度V:0.20l/min・mm2の条件でデスケーリングした例(記載事項(2c))が記載され、また、刊行物3には熱間圧延設備におけるスケールブレーカとして垂直式のVSBが記載されている(記載事項(3a)、(3b))のみで、前記相違点、即ち、高圧水の衝突圧を2000kPa以上とする点については何らの開示もない。
なお、異議申立人 川崎製鐵株式会社は、刊行物1〜3の記載について、デスケーリング処理において高圧水の衝突圧を大きくすればデスケーリング効果が向上するのは当業者の常識であり、また、本件明細書に記載された衝突圧P(kg/cm2)に関する実験式(本件特許公報【0017】の【数1】参照)に、刊行物2の実施例No.9の供給水圧と流量密度の値(記載事項(2c))を代入すれば、算出される衝突圧は2129kPaであるから、「2000kPa以上」程度の衝突圧は刊行物2に開示されているように従来から使用されていた程度の大きさにすぎないから、本件発明1における前記相違点「衝突圧2000kPa以上」に格別な技術的意義は見出せない(異議申立書第8頁第26行〜第10頁第14行参照)旨主張している。
しかしながら、刊行物2に記載の供給水圧300kg/cm2と流量密度0.20l/min・mm2(実施例No.9)とを、本件発明1に係る実験式に代入して得られた算出値が2129kPaであったとしても、衝突圧は単に供給水圧と流量密度の値によって一義的に定まるものでなく、このことは、刊行物2記載の実施例No.9について、その衝突圧が30g/mm2、即ち、294kPaであると明記されていること、さらに、刊行物2記載の発明では、高圧水の衝突圧を20〜40g/mm2、即ち、196〜392kPa、とすることを必須の要件としていることからも明らかであるから、「「2000kPa以上」程度の衝突圧は刊行物2に開示されているように従来から使用されていた程度の大きさにすぎない」との異議申立人 川崎製鉄株式会社の主張は採用し得ない。
してみると、刊行物2、3に記載のデスケーリングにおいて用いられる衝突圧は、本件発明1の「2000kPa以上」よりは格段に小さいせいぜい500kPa以下程度のものにすぎないから、刊行物1記載のものにおいて、前記相違点「衝突圧2000kPa以上」をその構成として採用することを当業者が容易になし得たものとすることはできない。
そして、本件発明1は、鋼中のP含有量、スラブ加熱温度及びデスケーリング高圧水の衝突圧という3因子相互の最適条件の組合せにより、材質劣化・経済性・製造安定性上何の問題もなく、かつ有効にスケール疵の発生を防止し得るという明細書(本件特許公報【0028】参照)記載の格別な効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用し、更に構成を付加、限定したものであるから、上記と同様な理由により、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.異議申立人 株式会社神戸製鋼所の主張について
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物4に記載のものとを対比すると、刊行物4に記載のSi含有鋼のSi、Pの含有量及び鋼材加熱温度は本件発明1のそれと重複し、刊行物4記載のものでは、デスケーリングは仕上圧延前までに高圧水で行われているから(記載事項(4a)、(4b))、両者は、Si:0.15wt%以上を含むSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法において、P:0.012〜0.030wt%を含有させたスラブを1230℃超〜1300℃に加熱し、加熱後少なくとも仕上圧延前までに所定値の衝突圧の高圧水でデスケーリングを行うSi含有鋼板の熱延スケール疵防止方法の点で一致し、本件発明1は、高圧水の衝突圧を2000kPa以上としているのに対して、刊行物4には高圧水の衝突圧について記載されていない点で相違する。
そこで、上記相違点について検討するに、前記「[5]1.(1)」で既に述べた如く、本件発明1は、鋼中のP含有量、スラブ加熱温度及びデスケーリング高圧水の衝突圧という3因子の最適条件の組み合わせにより、経済性・安定性を損なうことなくスケールを有効に除去し得ることを見出したものであるところ、刊行物5には、熱延鋼材のデスケーリング処理において高圧水の衝突圧を大きくすれば脱スケール性すなわちデスケーリング効果が向上すること、およびノズル流量V、水圧P、垂直距離Hを用いて高圧水脱スケール時の衝突圧p(kg/cm2)を算出できることが記載されているばかりであり、前記相違点「高圧水の衝突圧を2000kPa以上」とする点については何らの開示もない。
なお、異議申立人 株式会社神戸製鋼所は、刊行物5には熱延鋼材のデスケーリング処理において、高圧水の衝突圧を大きくすれば脱スケール性すなわちデスケーリング効果が向上することが記載され、同刊行物に記載の衝突圧の算出式に刊行物4に記載のデスケーリング例の水圧値、ノズル高さ値及びデスケーラーの噴射流量の上限仕様値を代入して算出した衝突圧値473kPaからみて、前記相違点「衝突圧2000kPa以上」は実験的に数値範囲を最適化したにすぎず、この点に進歩性はない(異議申立書第6頁第22行〜第7頁第15行参照)旨主張する。
そこで、上記主張について検討すると、刊行物4には、デスケーラー水圧140kgf/cm2、噴射流量330l/min、ノズル高さ300mmのものが記載され、これらの数値を用い、刊行物5記載の式から衝突圧を算出すると、確かに、衝突圧473kPaという数値が得られる。しかしながら、この値は、「衝突圧2000kPa以上」よりはるかに小さい値であって、前記相違点である「衝突圧2000kPa以上」を示唆するものであるとは到底いえず、さらに、刊行物5には、熱延鋼材のデスケーリング処理において高圧水の衝突圧を大きくすれば脱スケール性すなわちデスケーリング効果が向上することが開示されているにしても、それは脱スケールに及ぼす衝突圧の一般的な影響を述べたにすぎず、本件発明1の如く、特定の鋼組成及びスラブ加熱条件のものに対して、最適な衝突圧が2000kPa以上であることを開示乃至示唆するものではない。
よって、刊行物4に記載のデスケーリング処理において、そのP含有量やスラブ加熱温度が、本件発明1のそれと重複するものであったにしても、前記相違点「衝突圧2000kPa以上」をその構成として採用することを当業者が容易になし得たものとすることはできない。
そして、本件発明1が、鋼中のP含有量、スラブ加熱温度及びデスケーリング高圧水の衝突圧という3因子相互の最適条件の組合せにより、格別な効果を奏するものであることは、既に述べたとおりである。
したがって、本件発明1は、刊行物5の記載を考慮したとしても、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、請求項1を引用し、更に構成を付加、限定したものであるから、上記と同様な理由により、刊行物4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

[6]むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-12 
出願番号 特願平5-80253
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B21B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 池田 正人
中村 朝幸
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2785639号(P2785639)
権利者 日本鋼管株式会社
発明の名称 Si含有鋼板の熱延スケール疵防止方法  
代理人 青木 純雄  
代理人 小谷 悦司  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 植木 久一  
代理人 徳永 博  
代理人 高見 和明  
代理人 中澤 直樹  
代理人 吉原 省三  
代理人 中谷 光夫  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 杉村 純子  
代理人 梅本 政夫  
代理人 杉村 興作  

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